さて、二番バッターは完全記憶能力の生塩ノア選手です。忘れられないというアドバンテージをどういかしてくるのか楽しみですね
各話ごとの世界線は違う者とします。
「さてと、今日の薬は……」
身体がこんな状態になってからかれこれ数週間は立った今の私は毎日薬漬けの日々を送っている。
黒服に警告された時……いや、先生としてこのキヴォトスに就任してきた時から覚悟してきたことではあったがその恐怖が消えるかと言えばそれは違う。ただ、【先生】としての意地やプライドがその恐怖を紛らわせているだけなのだ。私の心の底ではきっと……
「あれ……?」
今日の分の薬を飲もうと思って薬箱の箱を開けるが、中は空っぽだった。
「不味い、これじゃ誤魔化せな…ウッ、ゲホッゲホッ…」
症状を抑える薬がないという焦りからくる精神的動揺の影響か眩暈と吐き気、そして吐血を起こしてしまう……洗濯機の中にいるような感覚の中、なんとか立ち上がろうととするが、全くいうことを効かず今度は立ち眩みを起こしてしまい後ろ向きに倒れてしまう。
(なん、とか……受け身…は…取った…けど、この…ままじゃ……)
ぼやける視界で天井を眺め何とかしなければと焦る…それが逆に体に更なる負荷をかけてしまう。
――何処か遠くで扉が開く音と同時に意識が闇の中へと落ちていく
―――
私は軽やかな足取りで歩を進める。先ほどよりも歩くペースが速くなっていますね…それもきっと、今日の出来事のせいなのでしょう。私は手帳を開き昨日のメモを見直す
12月2*日19時34分
スマホを見たら私が明日のシャーレの当番になった旨を書いたモモトークが先生から送られてきた。
そう今日はシャーレの当番の日。普段から色んな生徒が立候補しているようで中々私にお鉢が回ってきませんが今日は別です……運はいいことに私が選ばれました。後でユウカちゃんに自慢してあげましょう…楽しみです♪
シャーレに到着し先生の下へ歩いているとガタガタっと物音のようなものが聞こえてきました。
「……?なんでしょう?先生が何か物でも落としたのでしょうか?」
悠長にそう思いながら私は先生のいるであろう執務室の扉を開ける。
「先生物音が聞こえたんですが何…か、え……?」
私の視線に映ったものは……血を吐いて倒れている先生の姿……
「せ、先生!大丈夫ですか先生!ど、どうしたら……」
『先生の意識の消失を確認……JCS意識レベル200と診断。近くに生命体の反応を感知しました……生塩ノアと判断、直ちに先生の救助を依頼します』
「……先生を助けるにはどうすればいいですか?」
普段、先生が腰に下げているシッテムの箱の液晶が光りを放ち、言語を発している。不思議と正体はわからながらも「先生を救うにはこれしかない」と確信できた。
『直ちに医療技術の整った環境へと先生を運んでもらいたのですが……病院ではだめなので連邦生徒会へ連絡しました。10分ほどで到着するそうです。こちらで指示を出しますのでノアさんには先生の救急医療をお願いします』
「わかりました」
それから間もなくしてヘリで救助隊が到着し、先生は何とか事なきを得た。
―――
「……診察結果ですが精神的なダメージが肉体に影響したと見て間違いないでしょう。偶然先生が近くにいてくれてたのは不幸中の幸いですね……まぁ、先生によっては正しく弱り目に祟り目でしょうけど」
「………」
サンクトゥムタワー内の病室にて私は目覚めた。どうやら意識を失ったところをノアに助けられたようだ。それはありがたいが……
「先生、説明してください」
代わりにノアに説明しなくてはいけなくなってしまったが……。普段の悪戯好きな少女の姿はそこにはなく、震えながらも私の手を掴む姿は弱弱しかった。罪悪感で鼓動がまた早くなる。
『先生落ち着いてください。また倒れてしまいますよ』
(すまないアロナ。ちょっと取り乱した)
スッーと深呼吸をした後、ノアの手を握り返す。
「……どうやら私はお邪魔のようですね。失礼させていただきます」
リンちゃんは席を外してくれた。心の中で感謝しながらノアの方へと向き直る。
「説明するよ。包み隠さずにね……」
「はい、お願いします」
―――
「――だから、私はもう長くないんだ。きっと今年の桜も見れないほどにね」
先生の言葉を聞き終えた私は……言いようのない感情に支配されていた。それは狼狽だったろうし、恐怖だったろうし、悲しみでも怒りでもあっただろう。あるいはその全て……
「……んで」
私は先生の胸倉をつかんでしまう
「ノア?」
「何で黙ってたんですか!ユウカちゃんには!会長は!残された子達の気持ちはどうなるんですか!」
あぁ、何てずるい女だろう。他人の名前が出して自分のことは直接口にしない。でも、私の中ではも信じていたものに裏切られた怒りの方がそれらよりも勝っていた。
「ノア……あぁ、確かに君たちを傷つけることになるだろう。『君達には何も知らないで生きていてほしい』なんて私のわがままをわかってくれなんて言わない。でも、それでもやっぱり私は『先生』なんだ」
『先生』その言葉を恨むことになるなんて朝の私には思いもしなかっただろう。でも、その言葉のおかげで私は吹っ切れた。
「先生、私の我がまま聞いてくれますか」
「いいよ、私の叶えられる範囲でいいならいいよ」
やっぱり先生ならそうゆうでしょう…
「私を抱いてください」
「それは……」
「脳裏から離れないんですよ……先生が倒れている光景がずーっと頭の中を駆け回ってその時の恐怖が消えないんです」
先生は体を震わせる…やっぱりこう言えば先生の心を揺さぶられる。
「だから、一晩でいいんです。私に刻んでください。永遠に……あなたと言う人がいたことを、記憶だけじゃなくて体で……」
先生の胸板に手を当て、耳元でささやく下に視線を落とせば……
「先生の体は正直ですね?」
「ノア本当にそれでいいんだね?」
「はい、私はそれで構いません」
私と先生はシャーレに戻り、そして……
―――
私は日差しを感じ瞼を開く……隣には先生が…
「先生……?」
隣を見ると先生が居なかった。なぜ……さっきまでいたのに…
「まさか……いえ、ありえません」
一瞬頭に浮かんだ疑念を振り払い、ベットから出て立ち上がる。流石にこの時期に裸でいるには寒いのでそこらへんに放り投げてあった服を着込み、寝室から出る。
寝室の隣室に当たる執務室に出ますが、先生はいませんでした。ですがマグカップが一つだけ置いてありました。色合いや匂いからコーヒーだとあたりを付けるが中身は飲み干されており、明らかにさっき飲んだ形跡があった。
「先生は何処に行ったのでしょう……あれ?これは…」
マグカップの横に視線をずらすと手紙が置いてありました。筆跡から先生だと分析し、手に取って読んでみる。
| 拝啓、
この手紙を読んでいるであろうノアへ。
言葉にするのが難しいですが、あなたがこの手紙を読んでいるということは、私はもうあなたの目の届くところにはいないことでしょう。突然の別れになってしまい、申し訳ありません。
私の死にゆく不幸を受け入れてくれることを、心から願っています。人生は時折予期せぬことで満ちています。私の旅はここで終わりを迎えるかもしれませんが、ノアの人生はまだまだ続くことをあの世で祈っています。私はいままで先生として生徒の幸せだけを願っていました。ですが、ノアと一夜とはいえ愛し合ったが故に私は決断することにしました。『先生』としてではなく一人の『男』としてあなたの中で残りたいと思ってしまった罪を背負って、私の願う通りこのままあなたと共にいればきっとノアは私の死を目の当たりにし、耐えようのない苦しみを味わい続けけるはずです。ですから私は旅に出ます。何処かで生きているかもしれないと信じていてください。私はそれを願っています。
人は誰しも過ちを犯すものです。私も例外ではありません。だからこそ、私のこの行動を許してくれることを願います。そして、記憶に残り続けても心に残るのは良い思い出だけでありますように。
感謝の気持ちを述べることもできないほど、あなたには多くのことを私は感じています。助けてくれたこと、笑顔をくれたこと、共に過ごした時を心から大切に思っています。
私の存在があなたに何かしらの影響を与えたなら、それが何であれ、それは私にとっても誇りです。私のことを忘れない貴方を私は一人の女性として愛し続けるでしょう。
最後に、あなたと共有したすべての瞬間に感謝します。私は永遠にあなたを心に留めておくでしょう。
さようなら、そしてありがとう。
追記
もしもできてしまっていたら。私の通帳と暗証番号を置いていきますので使ってください |
「こんなの……ずるいですよ…先生っ!」
こんな言い方されたら怒るに怒れないじゃないですか!?……先生の遺言通り私は信じ続けますよ?ヨボヨボのお婆ちゃんになっても諦めません。
「『もしも』ですか」
フフッと笑ってしまう。先生は知らないのだろう。私は行為の前に誘発剤を飲んでいること、こっそりゴムに穴をあけていること……
「先生……あなたとの記録残させてもらいますね」
ノアは何故か未亡人になっている姿がくっきりと想像できる。あと、絶対忘れないから死んで冷たくなった姿みたら絶対一生引きずると思うのよ、曇らせ大っ嫌いな先生はどうするか。その結果の雲隠れなんだよね…
活動報告にて短命ばれしてしまった生徒の意見を募集しています。存分に呪い会おうじゃないか❤
この中で一番最高のエピソードと言えば?
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コユキ
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ノア
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ミネ
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黒服
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ヒマリ
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アスナ