その歩み、大山へと至る   作:枯山水の庭園

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 ……さて、いよいよです。


大山試練

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……眼前に、一つの光景が現れた。

 

 

 

 

「……ヤッバ……」

 

 

 

 

 三番組最高火力の紅葉(もみ)ちゃんも、

 

 

 

 

「…………これは……」

 

 

 

 

 普段表情が顔に出にくい小粋ちゃんも、

 

 

 

 

「…………これって、……もしかして、あたしのせいになったり……、……します?」

 

 

 

 

 だらだらと汗を流す上総ちゃんも、

 

 

 

 

「……引き金を引いたのは、ベルです。……上総ちゃんのせいには、しません」

 

 

 

 

 動きをこわばらせ、冷や汗を流しながら、それでも、組長を背負うベルちゃんも。

 

 

 ……みんな、()()()()()()()()()その光景に圧倒され、戦慄していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………、……それでも、私達が無かった事には、ならないよ……」

 

 

 

 

 …………私は、

 

 

 ……ベルちゃんのその背中を見るまで。

 

 

 …………言葉を失っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……もちろん、恋ちゃんには、正直に……報告します」

 

 

 

 

 その横顔が赤く、照らされる。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 ……三番組管轄区域にあった、魔都ではありふれた岩山は。

 

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……そんな試射でヤバいくらいに環境を破壊した技を生み出したせいなのかは知らないけど。

 

 

 

 

『ヴォオオオオオ……』

 

『げっ、また来る⁉︎』

 

『『『グアオオオ‼︎』』』

 

 

 

 

 今日の醜鬼──いやもう特殊醜鬼な奴はひときわヤバい。

 まず全身が燃えてる。

 迂闊に触れないし、普通に火球とかも出してくる。

 更に炎を通して咆える事で、何か特殊な音波でも出してるのか醜鬼を呼び集められる。

 ……だけでなく自分をコアにして巨大醜鬼と化す事で、燃える巨大醜鬼と化す。

 

 

 ……まぁでもそれだけなら私・ベルちゃん・上総ちゃんで十分に撃破できた。

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()‼︎もう警告する余裕もないので、くれぐれも振り落とされないでください‼︎」

 

「は、はい……」

 

「おかあさーん……!」

 

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ……多分【花閃】を一・二発であの醜鬼は倒せるけど、このパトロールメンバーで降り注ぐ火球と横からも前からも地面からも飛び出して来る醜鬼を避けるドライビングテクニックがあるのが私しかいないので運転に回ってる。

 いや正直まだまだぶっつけ気味だけど……!

 

 

 

 

「大丈夫です、近づけませんから……!」

 

『ギャッ⁉︎』

 

『とりあえず普通の奴から優先して()りますね!これ以上デカくなられたらヤバいし……‼︎』

 

『『『アアアーッ⁈』』』

 

 

 

 

 後部座席のベルちゃんが進路を見切って拳銃と狙撃銃で邪魔になる奴を撃ち抜き、上総ちゃんが上空からより広い範囲で醜鬼を減らし、逃げ続ける。

 

 

 

 

『──こちら肥後、新粥と現着するよ……!』

 

「お待たせしました、鞠さんも攻撃に」

 

『よっしゃー‼︎『「「待って」た!」ました‼︎』」

 

 

 

 

 そうこうしてるうちに寮で待機・休息していた紅葉ちゃんと小粋ちゃんが駆けつけて来てくれた!

 煙で守りも張られたし、もうだいたい大丈夫だ。

 

 

 

 

『ヴォ……?……オオッ……⁈』

 

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

『オオッ……‼︎オオッ……⁉︎』

 

『そんな慌てなくていーよ、()()()()()()()()()()()()()()()()()、さっ』

 

『ヴォ、オオオオオ⁉︎』

 

 

 

 

 自分の当然が機能してないと見えて狼狽えた様子の特殊醜鬼は、──次の瞬間、その巨体よりも巨大な火柱に呑み込まれる。

 

 

 紅葉ちゃんの『不知火(しらぬい)』はライターやろうそくくらいの小さな火を操ってビルより巨大な炎にする事もできるけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 それどころか相手の火炎放射や火球を乗っ取って撃ち返せるし、万が一炎が当たっても温度なんかを操って無傷でいられる。

 炎を幻と為す、故に『不知火(幻の揺らぎ)』なのだ。

 

 

 

 

『おーし!あとは……、……やりぃ‼︎特殊醜鬼、撃破しました‼︎』

 

「ナイス‼︎」

 

『周りのもウチがやるよ、【波炎濤火(はえんとうか)】』

 

『『『『『『ァアアアアア……‼︎』』』』』』

 

「す、すっごい……」

 

 

 

 それでも炎には耐性があったのか纏った醜鬼を焼き尽くす大火の中でも耐えてたみたいだけど、紅葉ちゃんが炎開けた所に上総ちゃんの攻撃を喰らってやられたみたいだ。

 そして紅葉ちゃんのコントロール下に置かれた大火はそのまま車の左右に放たれ、炎の大壁として醜鬼を群れごと焼き消す。

 助手席でお母さんに抱えられる幼稚園生くらいだろう男の子もこの光景のインパクトには圧倒されている。

 

 

 

 

『‼︎右からなんか来るよ!』

 

『ルルルルルル……!』

 

 

 

 

 だけどそれだけの火力があっても魔都では油断できない。

 炎の壁を突き破って突進して来た黒い球体は、身体を開いて醜鬼としての姿を現し飛び掛かって来る‼︎

 また特殊醜鬼‼︎

 

 

 

 

「小粋ちゃん、反対お願い!」

 

「はい……!」

 

『ルルッ……⁈』

 

「きゃあっ⁈」

 

「わぁん‼︎」

 

 

 

 

 ……けど、耐久力が高いだけみたいだ。

 【悠景】で大きくした手で掴んでも特に異変は無い。

 でも小粋ちゃんが煙で左側を支えてくれても、まだ車が揺れるくらいの重さと勢いがある。

 

 

 ──()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「えい、っ!」

 

『ル、……‼︎』

 

「ナイス、っ‼︎」

 

 

 

 

 私の腕を駆け上がったベルちゃんに『命』を抜かれ丸みある甲殻の特殊醜鬼はあっさり灰と化す。

 

 

 ──それでしまい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「──では必要事項を記入して、こちらを提出してくださいね?それで交通費が補償されますよ」

 

「ありがとうございます、助けて頂いて……‼︎」

 

「おねーちゃんたちありがとー!」

 

「はい!」

 

「どういたしまして、気をつけて帰るんだよ?」

 

「転ばないようにね!」

 

 

 

 

 無事三番組寮にたどり着き、怪我も無く、諸々の手続きを終えて。

 寮内部のクナド()から現世に帰る事を選んだ親子を見送って、救助は終わり。

 

 

 ……()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、それでも日々は連なってく。

 そんな魔防隊(私達)にとっての日常だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま戻りましたー」

 

 

 

 

 

 魔都東方・三番組担当区域。

 魔防隊三番組組員寮。

 

 

 居間に集まる三番組組員に、総本部への報告から戻って来た出向組員が帰着の挨拶を告げる。

 

 

 

 

「おかえりなさい、冬美さん」

 

「おかえりー」

 

「おかえりでーす」

 

「お帰りなさい」

 

 

 

 

 

 三番組の組員達はそれに返答を返す。

 ──彼女等が出会った頃のぎこちなさが嘘のようだ。

 

 

 

 

「……あ″ー、っ……」

 

「……どしたん、冬美さん。なんかまた無茶振りでもされた?」

 

「いや、……ちょっとキレちゃってさ。私が」

 

 

 

 

 

 濁声(だみごえ)を出して身体を伸ばしながら床に転がる日ノ出冬美の様子は、この空間への馴染み様が窺える無用に取り繕わないリラックスしたものだった。

 ──それは以前であれば、ありえなかった事だ。

 誰かが横臥したとしても、そこに安らいだ空気など無かった。

 この居間は待機か、食事の為の無機質な場所。

 それが無言の規則(ルール)だった。

 

 

 

 

「まぁそりゃうち(三番組)と十番組の掛け持ちですからねー、あたしだったらキレますよ」

 

「総本部が揺れて、お皿やら書類やらが落ちちゃって……」

 

「スケールが違うっ……⁉︎」

 

「……なんでそんなにキレたん?」

 

 

 

 

 今は違う。

 ここ(居間)は待機と団欒の為の場所となり、会話も交わされる。

 ──冬美が仲介役となり、お互いを知り合うまではそれすら有り得なかった。

 無用に掛けられた圧力(プレッシャー)により肥後紅葉・新粥小粋・上総鞠は互いを牽制する事に終始し、碌な会話が無かった。

 だがそれも終わりを迎え、互いを知る段階に移っている。

 

 

 

 

「まぁ、 ちょっとね」

 

「(……絶対総組長(山城恋)組長(月夜野ベル)関連だ)」

 

「(絶対ちょっとじゃない……、一拍にめっちゃ詰まってる……)」

 

「(…………組長に、総組長以外の味方が出来た。それも間違いなく総組長より人が良く、具体的な能力向上について共に試行錯誤してくれる(日ノ出冬美)が。…………その上で、あの中々に意地悪な人(総組長)を組長はどう見做すのでしょうか……)」

 

 

 

 

 ──それは出向組員(冬美)も含めて、互いに互いの好悪の当たりを付けられる程に進んでいる。

 

 

 

 

「……あっ!冬美さん‼︎このお店のミルクアイスがおいしいそうですよ‼︎」

 

「どれどれっ⁈」

 

「池袋の近くにあるみたいなんですけど……(……あの、ベルの為に怒ってくれたんですよね?ありがとうございました)」

 

 

 

 

 ──当然、組長である月夜野ベルもその輪の中にある。

 

 

 

 

「(……きっとベルちゃんと総組長の関係にヒビ入れちゃってるから、別にいいよ?……むしろごめんね?)……ふむふむ?」

 

「(こちらこそ、……後回しにしちゃって)……期間限定でポテトフェアもやってて……」

 

「(いいよいいよ)じゃがいものニョッキかぁー」

 

 

 

 

 そもそも三番組の変化は彼女を冬美が助けようとした事で齎された事であり、即ち常にその(変化の)中心に居たと言う事でもある。

 

 

 

 

 

 

 

 

「外出許可が取れたら、行ってみませんか?」

 

「もちろんいいよ、行こっ?」

 

「はいっ‼︎」

 

 

 

 

 ──そして、そこには笑顔が齎されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「(……ま、なるようになるか……。いざという時は冬美さん側かな)」

 

「(ヤバ……、くなる前にあたしらからも声かけなきゃかな?うん)」

 

「(…………冬美さんが総組長に悪印象を抱いているのは組長だけが理由ではないようですし)」

 

 

 

 

 三番組はそれ(変化)に相乗りする事を選んだと言うだけの事。

 

 

 

 

 ──それが如何に働いたかは結果が示すだろう。

 人を呪う、魔都(この世界)で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──ドンッ‼︎と重く鈍い音が鳴る。

 

 

 

 

「結界が揺れた⁈」

 

「緊急⁉︎」

 

『──三番組に通達ーっ‼︎醜鬼の大量発生!速やかに迎撃してー‼︎』

 

 

 

 

 それは変転を告げる音色。

 

 

 

 

「皆さん、緊急です‼︎」

 

「うん、全員で」

 

「おっしゃ、行きますよ!」

 

「はい」

 

「焦らないで──」

 

 

 

 

 ばさり、とさっ、ごそっ、ばたっ、ばたっ。

 それぞれの息抜きを中断する調べは凶兆への追奏。

 

 

 

 

 

 

 

 

(八番組に醜鬼の大群‼︎)

 

 

 

 

 ──そしてその調べを奏でるのは、三番組だけに限らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 総本部の合瀬ちゃんからの直接警告を受け取り、出撃しようとした矢先。

 ……同じ部屋(総本部管制室)にいるのか、端末から小さく、蓼科ちゃんの声が聞こえてきた。

 

 

 

 

「……みんな、ちょっと待った方がいいかも」

 

「え?」

 

「……どうしたのですか?」

 

 

 

 

 現在進行形でドンドン結界が揺れてる中で、悠長かもしれないけど……。

 ……嫌な予感がした。

 

 

 

 

『──‼︎八番組寮の醜鬼に混ざって、()()()()()()()‼︎』

 

『大変ですっ!休暇中の東九番組親子が襲撃を‼︎』

 

『下校途中の多々良組長より通報‼︎敵襲‼︎』

 

『六番組に迫る醜鬼あり!大群、大群です‼︎』

 

 

 

 

 直後。

 端末の向こうが騒がしくなる。

 それはどれも魔防隊が襲撃されたという報告、それも現世に出ている組員すら対象にされたもの。

 ……どうやら予感は当たったらしい。

 現世で魔防隊、またはその関係者が狙われる事はある。

 ……だけど大群の醜鬼が三つの管轄区域に現れるほど、大規模となると……。

 

 

 

 

「……ベルちゃん、ちょっと(端末借りて)いい?」

 

「はい、どうぞ‼︎」

 

「もしもし、合瀬ちゃん。()()()()()()()()()?」

 

 

 

 

 仕向けられるとこは限られて来る。

 ()()()()()()()()

 

 

 

 

『えっ……⁈……さらさ‼︎』

 

『えーと何?『八雷神‼︎』……‼︎今切り替えたよっ‼︎……『星読む銀盤(ギンガサガシ)』にそれらしいエネルギーは無しっ‼︎けど、隠蔽されてたら分からないかも‼︎』

 

「ふむ」

 

 

 

 

 返事を代わってくれた蓼科ちゃんの『星読む銀盤(ギンガサガシ)』は、エネルギー反応を星のような光として召喚した銀盤に映し出せる。

 しかし映し出すには個々のエネルギー反応を登録しなければならない為、今までの八雷神の魔都出現では未知のエネルギー(八雷神)未知のエネルギーによる隠蔽(紫黒の【暗幕】)に遅れを取ったという。

 だから確実ではないけど……。

 

 

 

 

「じゃあ、統幕(自衛隊)とか他の政府機関から通知や警告は?』

 

『……えっ⁈この状況で人間⁈』

 

 

 

 

 ……そう、確実でないからこそかなーり確率は低いけど、まだこれが諸外国の仕向けたものである可能性もあるのだ。

 ……まぁこれで純人間の仕業だったらびっくりだけど。

 

 

 

 

『とりあえず今は届いてないです‼︎』

 

『あっ、八番組の奴ら(醜鬼)に混ざってる人間、()()()()‼︎()()()()()()()()()()()()()()()……、……ああっペンコ組長が能力使っちゃった‼︎』

 

「……分かりました、二人ともありがとう。ベルちゃん、ありがとう」

 

「はい、ありがとうございました!」

 

『気を付けてー‼︎』

 

 

 

 

 ブツリ、と通信が切れる。

 ……ドン!ドン!と結界の揺れる音が続く。

 

 

 

 

「……つまり何、魔防隊への一斉攻撃って事?」

 

「……それも人間も加えて、と」

 

「……そうみたいだね」

 

 

 

 

 ……人と醜鬼を合わせる、となるとココさん波音さん達が浮かぶけど、七番組・六番組と戦った時ですら魔防隊全てを襲えるような規模じゃない。

 素直に考えれば八雷神だ。

 ただ紫黒が人間を傘下に集めてる、とは空折の小耳に挟まれてるけど戦力にするという話は聞いてない。

 ……まぁ空折が聞き逃してるのかもだけど……、……それとも空折がやられて方向転換?

 ……()()()()()()()()()()()

 広く魔防隊を狙ってるけど……、……八雷神がいない。

 全面攻勢なら中途半端だ。

 威力偵察なら醜鬼で十分だろうし……。

 

 

 

 

「──相手が誰でもそろそろ結界がヤバいですよっ‼︎早く出ないと‼︎」

 

 

 

 

 ──上総ちゃんが叫ぶ。

 ……そうだそうだ、考えるのは後、後っ。

 

 

 

 

「……そうでしたね」

 

「はい、行きましょう‼︎」

 

「──じゃあ強敵が出て来るかもしれないから、まずは私が出るのはどうかな?」

 

 

 

 

 みんなでドタドタ廊下に出ながら作戦提案。

 今の所いつでも前衛が務まるのは私だけだし、不意打ちや八雷神相手でも【援姿】の耐久ならある程度耐えられるはずだ。

 

 

 

 

「それならば私が煙幕を貼ります。結界の外まで問題なく広がりますので」

 

「小粋ちゃんありがとう。ぜひお願い」

 

「了解しました」

 

「あー、それなら結界の上の方の奴優先で始末してくれません?」

 

 

 

 

 揃ってロッカールームにたどり着くと上総ちゃんがそんな事を要望してくる。

 

 

 

 

「前に上から飛び出そうとしたら結界這い登って、近くまで寄られてた事あるんで……」

 

「ああ、あれね……」

 

「いいけど、……結界割っちゃわないかな……」

 

 

 

 

 言いながらもガチャリ、と動作チェックした拳銃をホルスターに、予備マガジンをケースに突っ込む。

 ……結界の上という高さに確実に届くのは【光】系しかないけど、【光】に結界がどの程度耐えられるかなんて流石に試してないし……。

 

 

 

 

「なら冬美さんの次にウチが出るよ、結界避けるくらいなんともないし。ガードよろしく」

 

「うん、分かった!ありがとう」

 

「……ところでベルはどこに居ましょうか……。強敵が来るなら冬美さんと肥後ちゃんと一緒に出た方がいいのかな……?」

 

 

 

 

 着替え途中の紅葉ちゃんの申し出の後、もう着替え終えたベルちゃんが狙撃銃を手に文字通り所在無げにそんな事を聞いてくる。

 

 

 

 

「「「あー……」」……この状況だと後ろからとにかく減らしてほしい気もするけど……」

 

「……失礼ですが組長、組長格以上相手にお一人で『命』を抜く自信は?」

 

「……ありません」

 

 

 

 

 手袋をはめながらの小粋ちゃんの質問に、ベルちゃんは少しこわばりながらも、正直に答える。

 

 

 

 

「じゃあベル組長が欲しい相手はとにかく動きを抑え込む、ってのがいいっすかね?」

 

「そうなるかな。何が出て来るか分からないから、後ろからの目も欲しいしね」

 

「……、‼︎」

 

 

 

 

 ──その正直さをバカにする者はここにはいない。

 

 

 

 

「じゃあおおまかにウチ・冬美さん。組長・小粋・鞠ってチーム分けって感じでいいかな、組長?」

 

「……はいっ‼︎八雷神が敵なら飛べるのも、転移してくるのもいます!注意してください‼︎」

 

「「「「了解‼︎」」」」

 

 

 

 

「溝畑さんには避難指示を!三番組、出ますっ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白い煙の中。

 視界はほとんど効かない。

 

 

 

 

『オォッ……⁉︎』

 

『グオッ⁉︎』

 

 

 

 

 ……ただ、()はよく分かる。

 ……まずは正面に張り付いたのから。

 

 

 

 

「……‼︎」

 

『グアッ‼︎』

 

『ギャアッ!』

 

 

 

 

 拳銃を連射、

 と同時に、

 

 

 

 

「(突っ込む‼︎)」

 

『⁈』

 

 

 

 

 ドンッ‼︎と【悠景】加速の体当たりで吹っ飛ばす。

 あとはとにかく、

 

 

 

 

「(──斬りまくる!)ああああああっ‼︎」

 

『グッ……‼︎』

 

『ガッ⁉︎』

 

 

 

 

 斧を振って縦横無尽に叩き斬る。

 ……スペースが広がったら、

 

 

 

 

「(鎖っ‼︎)」

 

『ガギャア⁈』

 

 

 

 

 【援姿】で鎖を振るい更にスペースを広げる。

 ──よし‼︎

 

 

 

 

「【花閃】っ‼︎」

 

 

 

 

 左側の醜鬼らが煙幕ごと消し飛ばされる。

 ……呆然と見つめる醜鬼に視認されるけど、

 

 

 

 

「【龍炎旋火(りゅうえんせんか)】っ‼︎」

 

 

 

 

 次の瞬間には龍頭が突進し、そいつは焼き尽くされる。

 飛び出した火炎の龍はぐる、ぐるとうねりながら行きつ戻りつ舞い続け、

 

 

 

 

「よし、結界に張り付いたのは全部倒した……!」

 

「うん!」

 

 

 

 

 灰と火の粉を散らした。

 特殊醜鬼の類もいない。

 ()()合図を。

 すると今度は煙幕が群れを突き破ってより遠方に展開し直される。

 ──同時に背後でジェットエンジンの猛りが天へと征く。

 

 

 

 

『離陸支援サンキューでーすっ!対地攻撃行くよー!』

 

『見える範囲に人影ありません、射撃、始めます……!』

 

『──、』

 

 

 

 

 二つの声に、うなずく気配。

 ──次の瞬間多連装空対地誘導弾が降り注ぎ、ずどん、ばすん、と醜鬼の顔面に穴が空く。

 

 

 ──爆炎。

 

 

 

 

「私と結界の間にいて!走るよ‼︎」

 

「了解!【狼炎従火(ろうえんじゅうか)】‼︎」

 

 

 

 

 三番組寮を囲む醜鬼の大群に生まれた隙を広げるべく、二人、いや、爆炎から生まれた炎の狼達と天を舞う炎龍も共に走り出す!

 

 

 

 

「──【花閃】‼︎……【扇道(おうどう)】っ!」

 

「灼けろ、っ──‼︎」

 

 

 

 

 結界に沿って走りながら、【光】を撃ち、龍が地を舐め、狼が飛びかかり、数を減らしていく。

 ……いくんだけど……。

 

 

 

 

「(…………ねえ、醜鬼の群れ、まだ続いてる?」

 

『(──はい、煙幕内に突入が続いています)』

 

『(……上からも見えてますよ、ヤバい数ですよ……!)』

 

 

 

 

 ……()()()()()()()()()()()()()

 ……三番組はここ一週間でパトロールやら練習台やらで四百匹以上は醜鬼を狩ったはずだ。

 いくら狩ったって醜鬼は湧いて来るけど、一週間でこの規模まで回復するなら出現数が鬼門・裏鬼門並みでなければならないはずだ。

 ……まぁこれは紫黒謹製醜鬼カードで説明がつく、

 けど……。

 

 

 

 

「(じゃあ、()()()()()()()()?私からは見当たらない)」

 

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 少なくとも八番組相手には一緒に突撃して来たのに。

 

 

 

 

「(……そーいえば、いないね)」

 

『(ベルの見た限りではいないです……!)』

 

『(私が見た範囲にも居ません。……ですが偽装なら煙で触れれば分かる筈、動かして探ってみます)』

 

 

 

 

 時々【震動】撃ってる私も、私と並走する紅葉ちゃんも、寮の見張り台に居るベルちゃんと小粋ちゃんも見つけてない。

 と、なるとあとは上総ちゃんの航空偵察だけど……。

 

 

 

 

『(……あたしの観測機器(やつ)だとそこまで詳しく分かりませんけど、それでもやってみます?対地支援中断しないといけませんけど?)』

 

「(うん、お願いしてもいいかな、……多分醜鬼をぶつけきって消耗と油断したとこ狙ってる気がするから)」

 

 

 

 

 『N.A.R.I.T.A.(新世代航空兵装)』は索敵が専門ではない。

 レーダーやソナーで人型の反応があっても、それが人間か醜鬼かはたまた八雷神かは分からないのだ。

 魔都では岩のアーチなんかで視線も遮れてしまうけど──、──それでも上空からの目はありがたい。

 

 

 

 

「(……じゃあアタシもなるだけ無駄は抑えるね、備えとく)」

 

『(どうやら仮面とローブが特徴の様ですが、その服装に囚われる訳でも無い様です)』

 

『(……でもやっぱり見当たらないです。岩陰とかに隠れてるんでしょうか?)』

 

 

 

 

 小粋ちゃんからの追加情報を胸に、醜鬼を掃討しながらも、各々周囲への注意と備えを忘れない。

 誰かいないか、誰かいないか、誰かいないか。

 ──そしてついに。

 

 

 

 

『ァァァ……』

 

「──終わっちゃった……」

 

 

 

 

 ()()()()()()()

 とりあえず見える範囲の醜鬼は一掃したけど……。

 ……いやその緩みこそが狙いかもしれないからまだ気は抜かない。

 

 

 

 

「人手が足りなかったとか……?」

 

『…………一番組と九番組の襲撃者も人間だったようです。……それに二番組や十番組も襲撃され始めたようです。それだけの規模で私達(三番組)だけ居ないと言うのは不自然だと思いますが……』

 

『とりあえずセンサーはばら撒きましたけど、反響とか反射とかあるんでもうちょっと地表に近付いてみますね』

 

「【震動】はまだ撃っとくね、ソナー(音響探査)とも競合しないし」

 

『お願いしますっ』

 

 

 

 

 見回しても、耳を澄ましても、

 

 

 

 

「‼︎高速の、」

 

 

 

 

 ‼︎

 

 

 

 

「反応!……、っ、ぇ……?」

 

「──ケケケ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──咄嗟に、

 

 

 下りて来つつあった上総ちゃんとの間に割り込み、

 

 

 

 

『煙が(しょう)……、……え?』

 

「──【牙炎猛火(がえんもうか)】っ‼︎」

 

 

 

 

 バランスを崩す私を尻目に、紅葉ちゃんが放つ反撃は、

 

 

 

 

「ふんっ‼︎」

 

「──……全弾発射(フルファイア)っ‼︎」

 

 

 

 

 拳で相殺され、

 そいつに放つ上総ちゃんの全弾発射は、

 

 

 

 

「ぬうんっ‼︎」

 

『……‼︎』

 

 

 

 

 狙撃と共に()()()()()()

 

 

 ……全ては一瞬だった。

 

 

 

 

「──冬美さん‼︎」

 

「冬美さんっ!」

 

『腕、が……』

 

 

 

 

 ……爆炎が炸裂する。

 

 

 

 

()()()()()()()?」

 

「この調子だな」

 

「奴ら動揺しておるわ……‼︎」

 

 

 

 

 炎に照らし出されるのは角を生やし格闘家のような筋骨隆々の奴に、大岩のようなデカい奴、

 

 

 ──()()()()()()()()()()()()()()()()、腕を翼に、足をカギ爪にした鳥人型の奴。

 

 

 ……流暢に喋るそいつら三人が三番組担当なのだろう。

 

 

 

 

「このっ……‼︎」

 

『早く止血を、……⁉︎』

 

 

 

 

 ……「大丈夫」。

 

 

 

 

 ──()()()()()()()()()

 

 

 

 

「……あれは?……‼︎それを離せっ‼︎」

 

「──‼︎」

 

「──遅い」

 

 

 

 

 【震動】。

 ──ひるませた一瞬で()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「しい、っ‼︎」

 

「──ぐがあ!」

 

 

 

 

 ──咄嗟に【悠景】を使って、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 おかげで【悠景】解除の引き戻しを使って()()()()()()()()()()()()の元へ飛び込み下顎にキックできた。

 いや、向こうが腕を取りに行かなくても、布地を指で裂けなくても、爆炎が当たっててもヤバいか。

 とにかく……!

 

 

 

 

「──逃がさない‼︎」

 

「ぬわっ⁉︎」

 

「このっ‼︎」

 

 

 

 

 鎖を、引っ掛ける!

 ──後ろから、格闘家型が何かしようとする声がする。

 

 

 

 

「──まだこやつらがいるぞ‼︎」

 

「……クソっ‼︎」

 

「──そうだったな‼︎」

 

「わあっ⁉︎」

 

 

 

 

 ドオンッ、と爆炎が防がれる音。

 ボウッ‼︎と何かの塊が動く音。

 ……上総ちゃんの悲鳴。

 ……不安になる、

 心が揺すぶられる声。

 

 

 

 

 

 

 

 

「──こいつは私がなんとかする‼︎()()()()‼︎」

 

 

 

 

 ──()()()()()()

 (かず)ちゃんより速いこいつを離したらもうどうにもならない‼︎

 全員速度で蹂躙される‼︎

 いくらだって不安はあるけど、今やるのはとにかくこいつ(鳥人)を倒す事!

 

 

 

 

「……任せた‼︎」

 

「もちろん!」

 

『こちらこそ……!』

 

 

 

 

 

『──……ベル達も、頑張ります!』

 

 

 

 

 ──だから、冬美さんも頑張って‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

「──了解っ‼︎」

 

 

 

 

 耳から外れる通信機を背に。

 

 

 

 

 ──私は、拳を振るった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








 ……三番組+(プラス)
 VS神奉者、開戦。




組長:月夜野ベル
 能力は『笑う寿老人(カノープス)』。
 魔防隊屈指の生存能力を誇るが、戦闘能力に課題が多い。
 しかし銃器の使用に高い適性を発揮しており、能力使用で重要となる身体能力の向上にも努めつつある。
 遠距離戦闘能力は確保され、近接戦闘能力の向上が求められる。

副組長:肥後紅葉
 能力は『不知火(しらぬい)』。
 能力による殲滅は組長格に迫る。
 持続性・効果範囲・精密性も高く、能力開発による応用にも優れる。
 反面、能力不使用時及び近接戦闘時の戦闘能力と対応に難有り。
 改善が求められる。

組員:新粥小粋
 能力は『煙を掴む物語(スモーキィテイル)』。
 阻害・拘束・撹乱・防御・浮遊・飛行・探査・攻撃と多用途の活用が可能。
 但し、攻撃手段としてはやや効率に欠け、能力不使用時及び近接戦闘時の対応にやや難有り。
 改善が求められる。

組員:上総鞠
 能力は『N.A.R.I.T.A.(新世代航空兵装)』。
 能力による高速飛行と多彩な武装の行使により、制空権の確保と上空からの攻撃が可能。
 しかし、誘爆の恐れによる防御能力の低さが問題。
 能力不使用時及び近接戦闘時の対応もまた難が有るが、近接戦闘に関しては改善が見られる。
 更なる向上が求められる。

組員(十番組より出向中):日ノ出冬美
 能力は『大山(たいざん)(こころ)』。
 『魂』の活用と武器使用により交戦距離を選ばず、高い防御能力を発揮可能であり、索敵も可能。
 そしてその戦闘様式を入隊から一ヶ月余りという短期間で整えた。
 徒手格闘を始めとした戦闘技能などの習得及び習熟もまた脅威的な速度で行われている。
 対高速戦闘に不安が有ると自己申告されているが、更なる成長が期待される。
 


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