その歩み、大山へと至る   作:枯山水の庭園

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 12000UA突破!
 ありがとうございます‼︎
 お気に入り&評価もありがとうございます‼︎


※本作に於ける魂の新たな設定が出て来ます‼︎
 本作の世界ではこう!というだけなのでそこら辺ご理解した上でご覧ください‼︎




 …………。
 ……それと、結果発表です。




大山リザルト

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼女がそうなのね」

 

「えぇ、はい」

 

 

 

 

 神社の拝殿内部の様な暗い空間。

 四角に縄で囲われる中に倒れる人影を見遣る者が居る。

 

 

 

 

「があぁ……、……ぁぁ……」

 

「彼女は阿南三姉妹の一人です。ご存知ありませんでしょうか?」

 

「あぁ、あれ。噂より()()()()()()

 

 

 

 

 肌は爛れ痩せ細り半死半生と言った有様で呻く女を見下ろすのは、魔防隊総組長・山城恋と陰陽寮寮長・木国(きのくに)和歌子(わかこ)

 

 

 

 

「捕獲した十五名の内、生死問わず()()()()()()()()()()()()()彼女だけです」

 

 

 

 

 組織の長が組織の長に説明しているのは──それが()()()()()()()()

 

 

 

 

「容体は?」

 

「体機能の過剰な活性化と、刻印によるものと見られる衰弱で大きく負荷が掛かっています。予断を許さない状態です」

 

 

 

 

 後に『神奉者(しんぽうしゃ)』との呼称が判明する襲撃者を魔防隊は全員撃退し、幾人かは生きたまま捕らえる事にさえ成功した。

 被害の少なさを考えれば大勝と言って良い戦果だったが──、──敗北した神奉者は内から破裂したかの様に引き裂かれ、その大多数が死亡した。

 分析の結果、神奉者に施された歪んだ光放つ太陽に似た刻印が呪いの様な作用を齎したのだと推測された。

 刻印は摘出しても、部位毎切除しても再出現し、治癒の能力を施しても生命力の注入を試しても消し去れない。

 配下であろうと人間を死に至らしめる、八雷神の執拗で酷薄な呪いだった。

 

 

 しかしたった二名、その呪いを受けて生存した襲撃者が居た。

 一人は刻印に蝕まれながらも、念動の能力で自らの心臓を動かし続けて生存している元魔防隊七番組組長・下村夢路。

 

 

 

 

「彼女に治癒系の能力は?」

 

「ブラックリストの情報が正しければ所持しておりません。八雷神の改造により追加された可能性もありますが、使い捨ての兵に呪い(首輪)を解除できる能力を付与する可能性は低いと見られます」

 

「──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「残念ながら」

 

 

 

 

 もう一人が、十番組組員・日ノ出冬美に不明な手段で刻印を消去されかかったと見られる阿南三姉妹、その一人だった。

 ……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言う事実。

 ──それが分かり山城恋は日ノ出冬美を即座に連行した。

 

 

 

 

「日ノ出冬美に刻印は無かったのね?」

 

「体表面・鼻腔及び口腔内・消化器内壁までには存在しませんでした。ただし能力で視認できていない体内に有る場合や、既に消し去られた場合は分かりません」

 

「八雷神による改造の痕跡は?」

 

「肉体的には今の所見受けられません。ただし能力出力の高さ、内包魂魄量の巨大さ及び魂魄の自己維持作用により観測が歪められている可能性があります」

 

 

 

 

 そうして意識を失っている彼女を時間が許す限り調べ上げたが……、……日ノ出冬美が“黒”であるという証拠は得られない。

 

 

 

 

「……()()調()()()()()()。彼女の完全な拘束は可能?」

 

「能力の封印はその出力の高さにより不確定です。そしてあれだけ巨大な内包魂魄を抑える術を我々は持ち合わせておりません。仮に国際級プロジェクトを立ち上げ、十年単位で研究を行なってもそれが手に入る保証は一切ありません」

 

「……そう、…………全く、面倒ね」

 

 

 

 

 そして、折角意識を失っているのにそれを拘束する術が無い。

 そこらの強者ですら能力を封じ無力化出来る陰陽寮の拘束は『大山(たいざん)(こころ)』の出力が高過ぎて朽ちかけた障子紙のように不安定になる。

 何より能力そのものではなく、能力の産物でしかないその巨大な魂を抑える術が無い。

 その“上乗せ(【援姿】)”があれば手錠だろうと牢獄だろうと引き千切り、生き埋めにしようと耐え抜くだろう。

 それは鯨を捕らえる檻が無い様なものだ。

 

 

 彼女(日ノ出冬美)は規格外過ぎる。

 

 

 ……ひょっとしたら、自分より……。

 ……そんな考えが頭を過った恋は表情を歪めながら、愚痴を零した。

 

 

 

 

「失礼します。日ノ出冬美に覚醒の兆候が見られるとの事です」

 

「すぐ行くわ。()()()の延命も頼んだわよ」

 

「は……」

 

 

 

 

 そしてそこに一人の女が、冬美の目覚めが近いと報告しに訪れる。

 それを聞いた恋は和歌子に半死半生の神奉者の延命()頼み、病室へと向かう。

 ……()()()()()()()()と思いながら。

 

 

 

 

「傷の具合は?」

 

「……()()()()()()()()()

 

「そう……」

 

 

 

 

 ……案内の女は少し、怯えていた。

 ……無理も無いわ、と恋もその理由が分かる。

 

 

 ──そもそも、恋が駆け付けた時、冬美は重傷だった。

 発動すれば手の届くくらいの範囲は巻き込む神の制裁の余波を喰らい、全身を切り裂かれていた。

 ……後の証言と比較すれば他の制裁よりも規模が小さかったが、太又や腕の大動脈の断裂で出血多量、裂傷は肺や腹膜・肝臓にまで達し、恋の目には致命傷と見えた。

 

 

 ……()()()()()()()()()()()()()()()()

 屋内に運ばれるまでも微かな身じろぎを絶やさず、五番組から治癒能力を持つ五木カイコが出雲天花による転移で駆け付けた時には()()()()()()()()()()

 それでも致死量の失血をしている筈だったが、その生体反応は途絶えず、連行される最中に繋がれた輸血と点滴を肉体は異常な速度で飲み干す。

 今の一室に落ち着く頃には念の為の魔都包帯すら必要ない程に回復したばかりか、肌の色艶が良くなる始末。

 

 

 ……本来治らない筈の傷まで治ったここまで一日もかかっていない。

 この目覚めでようやく一日経つかどうかだ。

 ……横浜の爾後、魔都に運び込まれた時もそうだが、意識を失ってから目が覚めるまでもまた早過ぎる。

 

 

 ……一部の醜鬼の様にすぐさま傷が治った訳ではなく、ある程度とは言え時間を掛けて治ったからこそ、逆に生々しく現実味を与える異常な生命力。

 ……しかしこれが冬美に“黒”ではないかと言う疑いだけでなく、“白”ではないかとする根拠も与えていた。

 

 

 

 

「(()()()()()()()……。あの襲撃者(阿南三姉妹の一人)にも過剰な体機能の活性化が見られた。()()()()()()()()()()()()()。つまり同じ手段で自らの治癒能力を高め、あの襲撃者の刻印を消せた可能性がある)」

 

 

 

 

「(──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。…………本当、に面倒な話ね)」

 

 

 

 

 ……日ノ出冬美の成長は著しい。

 平凡な一般人として入隊してから一ヶ月で、戦い方次第で組長でも手を焼く程までに強くなった。

 未だ未知の多い魂の地平を切り開き、その運用法を見出して来た才覚なら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 少なくとも(山城恋)なら出来る。

 

 

 

 

「…………」

 

「ひぃっ⁉︎」

 

「(…………問題は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()())」

 

 

 

 

 ……あの生意気な奴が自分に()()と一瞬でも考えてしまった恋はその不機嫌を更なる思考で洗い流した。

 

 

 ……日ノ出冬美が一般人だったのは、横浜戦後に検査の一環として行われた体力テストの結果から肉体的には明らかだ。

 ……だがあの魂を用いた技の数々を用いれば、肉体が弱くとも常人以上の活躍が出来るだろう。

 体力テストなどなんの意味も無いし、()()()()()()

 一般人に偽装していたと言う線もあり得なくは無い。

 

 

 ……政府上層部は最早血眼になって、スマホの通話履歴・交通系ICカードの使用履歴・勤務先の社員全ての経歴など微に入り細を穿つまで洗い出して冬美と八雷神との繋がりを探している。

 『自分達の中に裏切り者が居る』と言う情報を否定したいかの様に。

 ……()()()()()()()()()()()/()()()()()()()()()()

 

 

 ……まあ総理の目も冬美の経歴漁りに加わっているのだが。

 

 

 

 

「(自業自得だわ、いい気味ね)」

 

 

 

 

 そうなったのは『冬美が恋の一撃を受けきった』と言う要素(ファクター)が大きいだろう。

 元より『信じ難い情報を齎した』と言う薪は有ったが、『山城恋(誰も敵わない存在)に抗しうるものがいきなり現れた』事実は動揺という火種を生み、今回の襲撃の結果を以って発火した。

 それだけ山城恋と言う存在は大きい。

 

 

 

 

「さて……」

 

 

 

 

 ……これから冬美に行なうのは聴取と、何度目かの『踏み絵』だ。

 それに使われるのは未だ生き長らえる襲撃者・下村夢路。

 今回測られる項目は『彼女に何をするか』。

 ……今、夢路の側には彼女を此処に運び込んだ羽前京香と生命力注入の為召集された東海桐花が居る。

 ……『東の星霜(うたかた)』の生命力の吸収はそれ程意味が無いが、冬美が怪しい行動を取っても組長格が三人も居れば余裕を以って取り押さえる事も、……殺す事も出来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……尻尾を出すなら、早くして欲しいわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……他ならぬ自らに、確かに示した素養。

 彼女とは深く関わりの無い研究者(和歌子)が確かめた傍証。

 

 

 

 

 ……『地球の答え』は、揺らぎ始めている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ようするに、魂とは『揺らぎ』だ。

 

 

 

 

 遺伝子が細胞を作り、細胞が遺伝子を作る。

 その繰り返しの中に保持される『何か』。

 リズムを刻むタンパク質の中に有って、()()()()()()()()()()

 

 

 それが魂。

 生命の全てと結び付くもの。

 

 

 感触がガムシロップみたいだったり光ったりするのは、電気が光や熱に変わるように、そういう形で変換されてこちらの世界に漏れ出て、感じられるからだ。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 六十兆もの細胞がより集まり、形を作って、骨・肉・皮・神経・髪・爪・軟骨etc(などなど)種々の器官となり、私という一個体の生物を成す。

 ()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()

 オーケストラの合奏みたいなものなんだろう。

 数多の旋律(揺らぎ)が重なりあって、一つの旋律(揺らぎ)となる。

 

 

 ……そう、魂は揺らいでいる。

 ()()()()

 【()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと光りますけど、いいですか?」

 

「……ああ」

 

「構わんぞ」

 

「……いいわよ」

 

 

 

 

 私の魂が発する『揺らぎ』と、同じリズム、同じ音程で【震動】を起こす。

 

 

 それは、強く、強く、頭のてっぺんからつま先まで、全ての(細胞)の和音を生み、魂の力を引き出す。

 

 

 

 

「──……ふぉお……」

 

 

 

 

 ──気持ち良く。

 

 

 引き出された力は山を覆う木々の葉のような、緑の光をこちらの世界に出力し、それは個々の細胞の調子に合わせて炎のように揺らめいていた。

 ──【翠炎(すいえん)】といった所か。

 【震動】の延長であり私の巨大な魂で使うから、他の魂持つもの(生き物)にも効果は及ぶけど……。

 

 

 

 

「……あの、これ『生きる力』を活性化するみたいなんでアレルギーとか癌とかだとむしろ悪化する可能性があるんですけど大丈夫ですか……?あとこれぶっつけ本番なんですけどいいんですか?」

 

「いいわ、やりなさい」

 

「……それじゃあ海桐花さん、生命力の補充をお願いします。活性化するだけでエネルギーは補充しないはずなので、下手すると栄養失調とかで死んじゃいます」

 

「構わないがの……、……もうちと抑えてくれんか?その炎に触れると此方、暴走した生命力がはち切れて爆散する予感がするんじゃが……?てか今の時点でちとヤバい」

 

「あっ、はい」

 

 

 

 

 ……ああ確かに、それはありえそうだ。

 それはマズいので()()()()()()()()()()和音を起こし、【翠炎】を腕周りだけに灯す。

 

 

 

 

「よっと……」

 

「うむ、それでよい。では、始めるかの」

 

 

 

 

 そうしてベッドの左側に回り込み、横たわる人を【翠炎】で炙る。

 同時に右側についた海桐花さんが生命力を注ぎ込む。

 

 

 

 

『う……、うお……‼︎』

 

 

 

 

 その効果はすぐに現れた。

 静かに横たわってた身体がびくり!と動き、うめき声を上げる。

 

 

 

 

夢路(ゆめじ)……!……起きろ!総組長が来ている‼︎」

 

『ううっ、うぅっ……!』

 

 

 

 

 ……ただ、それは意識を取り戻しての事ではない。

 身体が反射的にうめきを上げてるだけで、脳の活動がこの部屋に居る、起きている人のパターンではない。

 ……僅かな【震動】の反響から分かる。

 

 

 

 

 

「情報を出せ!お前は、助かるんだ!見捨てられてなどっ、いないんだ‼︎」

 

 

 

 

 京香さんが手を掴んで、必死に、──……泣きそうに見える程──呼びかける。

 ……いや、それはいいんだけど。

 

 

 

 

「あの、海桐花さんをこっちに押さないで……」

 

「邪魔じゃあ、羽前京香!……おっ?」

 

「……!」

 

 

 

 

 海桐花さん押されるのは、危な過ぎるっ……!

 

 

 そう思ったら、ピクリ、と横たわる……『ユメジ』さんの指先が動いた。

 

 

 

 

「……3、……5、……1、……4、……0……」

 

「……座標ね」

 

 

 

 

 ……静かに、京香さんが読み取ったそれは、確かに魔防隊で使う座標表記に当てはめられる。

 

 

 

 

「……あと、すいませんが京香さん。コレ(【翠炎】)私にとってもぶっつけ本番で未知が多いので、助かるとは断言できませんよ」

 

「…………そうか。すまない」

 

 

 

 

 重要情報なのだろうけど、その前にどう転ぶかは未知であると言っておかなければならない。

 ……下手に希望持たせて……死なれたら、どんな顔をすればいいのか。

 

 

 

 

「……実際調子はどうなの、冬美。ちゃんと燃やせてるの?」

 

「これ、炎っぽく見えるだけで燃やしてる訳じゃありません。……この人に巣食うものはすぐには消せないみたいです。少なくとも今日中には消えません」

 

 

 

 

 ……パタリ、と力尽きたユメジさんの手がベッドに下ろされる。

 ……じわり、と汗の匂いがした。

 【翠炎】はあくまで炎っぽく見えるだけなので燃えはしないし熱も出さないから、代謝が活発になったせいだろう。

 そうして私の魂に共鳴して、ユメジさんの身体を活性化させる魂の調べの中に……、……確かにやな感触を感じる。

 『活性化』とは真逆の、人を死に至らしめる何か。

 ……この感じ、醜鬼、いや、八雷神?

 ……じじじと押し合いながら僅かに縮んでる感じはするけど……。

 

 

 

 

「……この人桃は食べてるんですよね?」

 

「……ああ、そうだ」

 

「なら良かったです。これ、多分八雷神の仕業ですよね。私は活性化するだけなので、桃の力が無いと……」

 

 

 

 

 醜鬼には通常兵器が効かない。

 倒す為には桃の力が居る、それが常識。

 ……実際に通常兵器が無効化されるのを見た訳じゃないけど、どうも八雷神も近しい性質を持っているようだ。

 だからただ生きる力を活性化させるだけではこの……、……()()()()()()()()()()

 けれど桃を食べていれば、生きる力ごとその力を活性化させて異常を排除できる。

 

 

 …………。

 …………()()()()()()()()()

 

 

 

 

「……どうして八雷神だと分かったのかしら?」

 

「醜鬼に近いものを感じましたし、一度食べられてもいますので。……それにあの襲撃は八雷神の仕業かなーって思ったので。この人も襲撃者なんですよね?」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 

 

 ……それに、()()()()()()()()()()()()()()()()

 ……どうも京香さん、海桐花さん、総組長の三人ともこの人を知ってるみたいだ。

 特に京香さんはさっきもそうだったように……、……強い感情を感じる。

 ……銀奈ちゃん曰く、京香さんは組員に無理を強いる先代の組長から決闘で七番組組長の座を勝ち取ったという。

 ……この人がそうなのだろうか。

 元七番組組長の、魔防隊。

 

 

 ……どうも総組長は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「それくらいは答えてやっても良いのではないか?」

 

「……後で貴方か京香が教えなさい」

 

「意地悪しおって、ところで冬美よ」

 

「はい?」

 

「エネルギーは供給されんと言っておったが()()のお前は大丈夫なのか?」

 

「えっ」

 

 

 

 

 ちょうど、

 

 

 

 

 ぐうぅ〜〜……、……と大きな音が私のお腹から鳴り。

 

 

 

 

「あっ……、……」

 

「とりあえず治療の目処も立った事じゃし、飯くらいは食わせてやってもバチは当たらんのではないか?」

 

「……いいわ。冬美、その前に教えなさい。彼女は治るの?」

 

 

 

 

 

「…………完治はしないと思います。押し合って、再生してるみたいな感じがあるので。大多数は活性化で消し去れると思いますけど、残りがどの程度の害になるかは分かりません。大元の八雷神次第では、消した分も元に戻るかも」

 

「……分かったわ。京香と海桐花はこのまま付いてなさい。冬美は私に着いて来なさい」

 

「おう」

 

「……了解」

 

 

 

 

 ……【翠炎】を消し、私は一旦この部屋を離れる事になった。

 

 

 

 

「……冬美」

 

 

 

 

 最後に京香さんが、

 

 

 

 

「……ありがとう」

 

 

 

 

 私の背中に声をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おかわりお願いできます?」

 

 

 

 

 ……お椀一杯のうすあじ鮭雑炊を平らげたけど。

 ……全く足りない。

 

 

 

 

「あっ、その……」

 

「貴方はまだ病み上がりよ。明日からにしなさい」

 

「……それもそうですね」

 

 

 

 

 ベッドの側に立つこれまた巫女服姿の人におびえられ、椅子に座る総組長にたしなめられる。

 ……やっぱり怪我してたんだ、私。

 

 

 

 

「…………」

 

「……?」

 

 

 

 

 そうしておかわりを諦めると総組長がじっとこちらを見る。

 ……いやしい奴だとバカにしてる、感じでも無いけど。

 

 

 

 

「……分からないわね、貴方」

 

「?……そんなの当たり前の事では?自分自身についてだって」

 

「…………」

 

 

 

 

 一言呟いた総組長に返事すると、少し、怒った。

 すごく微かに、血管が浮かぶ。

 

 

 

 

「…………貴方が倒した襲撃者にも、刻まれた者を死に至らせる刻印が有ったのよ」

 

「……相討ちだったのでは?……まぁそれはそうと、私以外はそれを消せなかったから、利敵行為をしたのではと疑われ、こうして手錠をはめられている、と」

 

「…………ええ、その通りよ」

 

 

 

 

 そして、こうなってる理由を説明される。

 ……まあ、そうじゃないかとは勘付いてたけど。

 

 

 

 

「…………聡いわね。それも、隠してたのかしら?」

 

「総組長は私が何を隠しているとお疑いなのでしょう」

 

「…………。…………貴方への聴取、重大な情報だったから読心の能力が使われたのよ」

 

「……まぁ内容が内容ですから。プライバシーの侵害とは言いませんが」

 

()()()()()()()()()()。情報圧が大き過ぎてね。貴方の魂のせいじゃないかと推測されているわ」

 

 

 

 

 ……それはまた。

 ……多分横浜前からだったんだろうけど、空折の乗っ取りといい、生命力の多さといい、私が気付きそうにも無い所に力発揮するな『大山の魂(私の魂)』……。

 

 

 

 

「……あの、総組長ならスカウト前か後でそれ知ってましたよね?なんでそれで私を入れたんですか、魔防隊に」

 

「…………貴方があそこまでとは、想定外だったのよ」

 

「それで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「⁉︎」

 

「…………」

 

 

 

 

 図星、か。

 

 

 ……心を読めないなら身体を、か。

 ……アホらしい。

 最初から留置所なり陰陽寮なりにブチ込んで拷問なりなんなりしとけばよかったものを。

 ……まぁ、そうされてたらココさん波音さん達の事がちょっと不味かったけど。

 恐らくはこいつ(総組長)のせいで余計な一手間がかかってる。 

 

 

 ……それに私が何かを隠してる事自体は分かってるんじゃ?

 それが『陰陽寮が実験動物扱いしてきた人型醜鬼と呼ばれる人達の事である』とまでは特定できてないだけで。

 私に対して『私は情報系能力に対して無敵である』と勘違いさせようと話す事を選んでる感じだ。

 

 

 

 

 アホか。

 

 

 

 

 お前のようなアホじゃないんだし、自分が無敵だなんて勘違いできるか。

 

 

 

 

「それで、どうされるのですか?これから聴取のやり直しですか?」

 

「…………それも後日するけど。今は刻印の解除を命令するわ。貴方の情報に対する傍証の足りなさが貴方が信用されない理由の一つよ。心してかかりなさい」

 

「……私が言うのもなんですけど、本気で言ってます?そんな疑わしい奴に治療任せるとか」

 

「どの道魔防隊への襲撃者よ、何かやって貴方の疑いが確定して()()()ならそれだけでもいい。何事も無く治って情報源が増えるなら喜ばしい事よ。…………それに、特に三番組出向中の魔防隊組員としての貴方の働きは魔防隊強化に貢献している。貴方の貢献が無ければ()()はならなかったでしょうね」

 

 

 

 

 ──。

 

 

 

 

 

 

 

 

「──三番組は襲撃者一人に重傷を負わせ、一人と相討ち。組長がもう一人は欲しい敵相手に健闘したし、妥当な判断をしたと評価するわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 『大山(たいざん)(こころ)』を普通に発動し、淡く光る。

 ……魂は別に不滅不変じゃない。

 私の中で個々の細胞が日々死ぬように、魂も日々僅かに剥がれ落ち、消えて行く。

 この光はその隙間に埋まり、また押し出されて外に剥がれ落ちる魂の欠片だ。

 【淡衣(あわごろも)】とでも呼ぼうか。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 ……そして、無意識の作用で剥がれる魂に意思を以って動きをつけ、能力を使うと()()()()()()()()()()()()()()

 ……無意識の作用に相乗りするからだろう。

 幽体離脱にはぴったりだ。

 ……そのまま脳死するだろうけど。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 意識して手の中にチャージする【花閃】や【扇道】なら大丈夫だし、【淡衣】でもごく短時間なら問題無い。

 ……【援姿】あたりで意識たる電気信号や熱量の源たる……ブドウ糖をさらになんか加工した奴を皮膚表面でせき止めながら、魂を動かしたり能力を使うなら大丈夫だろうか。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 ……そんなマルチタスク能力は、ない。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 ……皮膚や髪は死んだ細胞だ。

 魂は持っていない。

 だが、同じ遺伝子から生まれた魂をよく通し、留めておける。

 それが魂の音色の中でも『固い』調子を生む。

 一つのものとしての魂に於いて、それは『外殻』とでも呼べるものだ。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 ……合掌し、魂を詰める。

 【震動】で再現した皮膚表面の調子を流しつつ、お椀を作るように手を開く。

 イメージは、シャボン玉。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 ぼわん、と。

 光る球体が吐き出される。

 御霊ならぬ【御玉(みたま)】、……それじゃあ『おたま』と被るか。

 やがて【震動】が消え、ふわっ、と光は弾けて消える。

 ……何も、残らない。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 ……いや、そうでもない。

 【淡衣】と【霞分】を合わせて、【翠炎】を火炎放射のように振るうと、見えなくなっても残留する魂が活性化し、光と熱と衝撃を以って発散する。

 ……ばあん‼︎と弾けて、無駄に大きな音を立てる。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 ……六十兆の連環である魂は、腕の中だけ、血液に流して、とバラバラに動かす事もできる。

 …………違う『音色』を奏でる事も。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 ……一人一人の遺伝子が違うように、魂の『揺らぎ』もまた個々人で違う。

 私、総組長、京香さん、海桐花さん、みんな違うように、生物の種類でもまた違う。

 人、花、……醜鬼。

 私の【震動】が一番震わせやすいのは私自身で、他の生物でも人間は共鳴しやすいが、花や醜鬼は震わせにくい。

 醜鬼に【震動】が効きにくい理由はこれだったようだ。

 『音色』を変えてそれぞれの魂の揺らぎに合わせれば、よく震わせられるけど……、……めっちゃ気持ち悪い。

 吐き気を催す異物感のある嫌な音、これは他の人間の揺らぎを真似しても同じ事だ。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 ──一つ、確信した事がある。

 八雷神は通常形態と全力形態を行き来できる。

 ()()()()()()()()()()

 【震動】は、それを揺らして身体を壊せる、はずだ。

 ……別物だから、効果は限られるだろうけど。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 ……全身の魂が一つの和音と繋がった事で、魂が行なう神経の模倣にも新たな意味が出て来た。

 神経が受け取る情報を、高密度に詰まった魂がより細かく捉えて、常に感知できるのだ。

 私ってば常人より遥かに魂がデカいし?

 一万倍のデカさに一万倍の強さとして、しめて一億倍の魂、細胞換算で六十兆×一億で六十ガイとかそこら辺?

 そんだけの魂が詰まってんじゃん、すごいねえ。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 そんだけの魂で感知するなら輪郭を作れる分の細胞だけ【悠景】で膨らませて腕増やしたりとかできんじゃん。

 【御玉】だって腕に貼っ付ければ腕増やせんじゃん。

 【淡衣】だって腕になんじゃん。

 

 

 手はいくらでもあったじゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………」

 

 

 

 

 ……………………どうして今更気付くんだよ、私。

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………三番組で無事なのはベルちゃんだけ。

 紅葉ちゃん、小粋ちゃん、鞠ちゃんの全員が病院送り。

 結界は壊れ、三番組寮は【三式決戦砲】の爆発により半壊。

 そうまでして敵は一人しか倒せず、一人は動けるままで──、──駆け付けた総組長に仕留められる。

 …………相討ちの私も含めれば、大敗だ。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 …………【襲撃者、撃退──されど損害多し】と言った所か。

 

 

 ……………………。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 ……魔防隊は、厳しい職場だ。

 過去には殉職者も出ている。

 ……ここ最近は出ていないけど、それくらいは知った上で居続けたのに、…………なんにも分かってないじゃん。

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 ……『音色を変える』とか、単純な事じゃん。

 煙幕の中で突破口を開いた時とか、もっと詳しい情報も送れたじゃん。

 ……なんで気付かない。

 

 

 ……宝の持ち腐れじゃん。

 ……魂がすごくても、頭と身体がそれについてない。

 

 

 

 

「……………………」

 

 

 

 

 大バカの間抜けが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「──なんじゃあ、しけた面しおって」

 

「…………海桐花さん」

 

 

 

 

 ……背後から賑やかな声がする。

 

 

 

 

「せっかく借りたというのに、どんより座り込みおって。しゃきっとせえ、しゃきっと」

 

「…………」

 

 

 

 

 ……今更ながら、ここは陰陽寮。

 その屋内実験場。

 敷地内から出る事は許されてないが、手錠はもう外されてる。

 ……『あの炎(【翠炎】)によって身に付いた事を試したい』と言ったら、かつて魔防隊の一員だったというここのトップと知人である海桐花さんが話を聞きつけて借り受けてくれたのだ。

 

 ……にしても、いかにも海桐花さんらしいはげまし方だ。

 

 

 

 

「…………と、言いたい所じゃがな。多めに見ておいてやる。──お前は此方には出来なかった事を成しおった」

 

「……?」

 

 

 

 

 ──と思ったら、なんか私の思う海桐花さんとは違う言葉が出て来た。

 ……。

 ……ああ。

 

 

 

 

「──……そういえば、スカウトしたのは海桐花さんでしたね。ベルちゃんの事」

 

「……そう睨むな……。上手う出来なかったとは思うておる」

 

 

 

 

 自分の能力に似てる、とベルちゃんをスカウトし、いきなり組長会議に放り込むという暴挙をしたのはこの人だ。

 

 

 

 

「いや、此方なりにフォローはしようとしたんじゃがの……。すっかりおびえられてしもうて……。……そうこうしてる内に山城恋が目を付けて、暇はみんなあいつが持って行くようになってしもうた」

 

「…………」

 

 

 

 

 『……でも貴方の強引さなら割り込む事もできましたよね?“期待外れだった”って事ですか?』と、ちょっとした実験を兼ねてそんな感じの思いを込めながら睨み付ける。

 

 

 

 

「……いや、その……、…………『期待外れ』と言う程ではなくとも、…………『思った程ではなかった』、とは確かに考えた。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 ……無事、伝わったみたいだ。

 

 ……で、()()()()()()

 

 

 

 

「いや分かったから(【翠炎】)を向けるでない‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……死なぬ、という事は。

 それだけで価値じゃ」

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

「魔都出現期、ですか」

 

 

 

 

 炎を下ろす。

 

 

 

 

「……そうじゃの。誰も彼も死におった。“能力が無い”というだけでの」

 

「…………」

 

 

 

 

 ……1980年代。

 

 魔都(地獄)とは、日本列島全域であった。

 

 文明を嘲笑う地獄の門と、無敵の鬼。

 

 人は死に、街は壊れ、社会は崩れる。

 

 ……魔都防衛などと、語れる日は夢の如く。

 

 

 ……魔防隊のスカウトとは、その頃の名残だ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 若々しさで忘れてしまいそうになるけど、海桐花さんはその頃を生き抜いて来た人だ。

 それは、それだけで重みのあるものだ。

 だけれど。

 

 

 それでも。

 

 

 

 

「…………大元がある以上、いつ回帰してもおかしくない。忘れちゃ、ダメな記憶です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それでも、時代は変わりますし。

 やるべき事、とるべき手段だって変わりますよ。

 海桐花さん」

 

 

 

 

「……。……そうじゃの。此方は月夜野ベルが死なないだけでも能力としては十分、如何な敵でも滅ぼせる『攻め』があるなら万々歳と思うておった。組長としての仕事もこなせておったしの。……此方には日万凛という孫がおっての。能力は外れ、肝心な時に失敗する落ちこぼれと思うておった」

 

「はあ?」

 

 

 

 

 『青雲の志(ラーニング)』でコピーする能力は劣化すると聞いたけど、落ちこぼれ?

 ()()()月夜野家(ベルちゃんを見捨てた家)の同類か?

 

 

 

 

「……それを、羽前組長は見事磨き抜いてみせた。お前は、縮こまっていた月夜野ベルに新たな道を開きおった。魔防隊から狙撃銃の注文なぞそうないからの?此方にも噂が届いたぞ」

 

「……はあ」

 

「……そうじゃの。時代は変わるし、此方では開けない道がある。お前はそれを見事に開いてのけたのじゃ」

 

 

 

 

 ──……()()()()()の顔は、殊勝な顔、という奴に見えた。

 

 

 

 

「それは山城恋にもできなんだ事じゃぞ?此方とあいつ、どちらも総組長経験しとるのにじゃぞ?加えてお前も、三番組も強くなっておる。三番組が相手したのが阿南(あなん)三姉妹だったと聞いた時は驚いたわ」

 

「……強いとは思いましたけど、そんなに有名だったんですか?」

 

「応とも。あいつらは此方の頃から中々尻尾を掴ませなんだ強者(つわもの)じゃ。八雷神に強化されたなら、一人一人が組長級でもおかしくなかろうに……、……入隊ひと月で倒しおって!」

 

「わわっ」

 

 

 

 

 頭をぐしぐし掴まれる。

 

 

 

 

「考えても見よ⁈お前は入社ひと月で社運を賭けた計画を成功させるようなバケモノ新人じゃ‼︎もっと胸を張れぇい、この贅沢者め!」

 

「……いや、入社ひと月で私を追い越した後輩ならいるんですが……」

 

「じゃあお前も()()()()()という事じゃ!まだひと月じゃぞひと月⁈それで組長級と相討ちなぞ末恐ろしいにも程があるわ‼︎」

 

「うーん、……」

 

「それに、お前は生きておる」

 

 

 

 

 不意に、手が離されて。

 

 

 

 

「冬美、気付いておるか?()()()()()()()()()()()?魂が如何に作用してるか分からんが、()()()()()()()と此方は思うぞ」

 

「…………」

 

 

 

 

 そんな事を、言われる。

 

 

 …………、……思い当たる節はある。

 三番組のみんなに18から27まで幅のある年齢に間違われた事。

 特に18なんてそれだけ若く見えなきゃ言われないだろう。

 あと【援姿】で血行が悪くなった事。

 魂を少し固めるだけで体調が悪くなるなら、もっと長年、人の何千・何万倍の濃度の魂を入れて来た私の身体はどうなるのか。

 

 

 ……()()()()()()()()()()()()()

 魂が生命の裏付けであるのなら、魂が濃く、強ければ()()()()()()()()()()()()

 そりゃいきなり一億倍とかにしたらヤバい影響が出そうだけど、八・九年くらいかけてその濃さにはもう慣れているのではないか。

 ……細胞の劣化も、魂が抑えていたりする?

 ……もしかして魂が多かったり強かったりする分、致命傷を負ったとしても魂がほどけて死ぬまでの猶予時間が延びてたりするんじゃ……。

 ……それに『時間をかけて』、か……。

 

 

 

 

「まだお前の人生、序盤も序盤かもしれん。──慰めになるかは分からんが、三番組もまた五体満足で全員生きておる。なら、挽回の機会もあろう。落ち込んで無駄にするなど、もったいないぞ?」

 

「…………そうですね、ありがとうございます。海桐花さん」

 

 

 

 

 ……うん。

 ……少しは、気が楽になった。

 

 

 

 

 ……ただ、気になってしまう事はある。

 

 

 一つはベルちゃん。

 ……私がやった事で、……この襲撃の結果で。

 一人無事に残ったあの優しい子が、深く、深く、傷付いているんじゃないかと心配になる。

 

 

 

 

「お前のはとこが心配か?信じてみい」

 

「……はい」

 

 

 

 

 だけどそこはもう信じるしかない。

 ()()()()()()()()()()()()

 ……また会えたなら、いっぱいいっぱい抱きしめる。

 

 

 

 

 ……けど、それも叶わないかもしれない。

 

 

 

 

 ……もう一つは、微かに、微かに感じる魂のノイズ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……私の魂に、すごくすごくすごく僅かに感じる、私のものではない『揺らぎ』。

 ほこりみたいに小さいからはっきりとは分からないけど……、……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 それはつまり、その『揺らぎ』が八雷神に由来するものかもしれないという事で。

 

 

 

 

 …………これって、空折の残滓じゃない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 ……。


〈三番組交戦結果〉
月夜野ベル…健在。
肥後紅葉…負傷。入院中。
新粥小粋…負傷。入院中。
上総鞠…負傷。入院中。
日ノ出冬美(出向者)…負傷。入院後、回復・復帰。
備考…組員寮建屋、半壊。現在再建中。
   敷設結界、全壊。現在再敷設完了。

 襲撃者三名中二名撃退。
 一人は山城恋魔防隊総組長により撃退。
 全員陰陽寮に連行。


 ※色々
・魂
…この世界では生命活動が起こし、同時に生命活動の基盤となる『揺らぎ』が正体。
 物質としての生物が存在する基底三次元空間とは異なる、しかし物質としての生物に内包されているいずこかの同じ座標に存在しており、物質的な観測器ではその全容を知る事はできない。
 稀に下手な観測では見逃しかねないごくごく僅かな光や音として基底三次元空間に漏れ出る……みたいな。
 (冬美の【光】は異常な濃度と規模の生成によっておよそ誰でも目視できるし物質への干渉もできる)
 多細胞生物の場合、個々の細胞の魂が重なりあったものが一つの魂となっている、みたいな。
 ……そんな感じだとしといてください。
 オリ設定です。

・魔都出現期
…妄想。
 原作では『数十年前』とは言っても『半世紀前』とは言ってないので、3〜40年程前にあったとするのが妥当だろうか。
 原作1話が2020年とされてるので、本作ではとりあえず1980年代に魔都が出現したとしときます。

 ……その場合気になるのは同時期に生まれた〜幼少期だったと思しい風舞希さん。
 原作最新話見る限り、この人が中学生?の頃には魔防大学及びその附属というシステムができてるようなので。

 ……あとそうだとしたら、現実の歴史に当てはめるとすっごい皮肉になりそう。

・スカウト
…それで↑なら魔都発生期に民間人を徴用して桃を食べさせた/なんらかの形で桃を食べた者を徴用したのが魔防隊のスカウト制度の原型なのでは?と思った。
 もちろんこれも妄想のオリ設定。

・東海桐花と月夜野ベル
…13巻によれば『海桐花はベルの能力を高く評価しています』との事。
 『……その割にはスカウトした時の回想以外でベルの周りに出て来ないよね?』とか『『笑う寿老人』は確かに強いけど色々弱点もあるし……』とか気になり、
○海桐花は何より“不死身”である事によってベルを評価している。
 それは魔都対処で多くの人員が死傷し、活動に影響をきたした魔都出現期の経験から。
 加えて“必滅”も備え、組長業務も及第点であった事から全体的にベルの事は高評価。
○……だが初っ端組長会議に招集した事で怯えられ、総組長としても忙しくしている内に組長(※当時)の恋がベルに目をつけ、以後余暇の多くをかっさらうようになり、ヒラの組員となった今に至ってもほぼ没交渉。
○それでも海桐花の求める基準は満たされているし、三番組も回していけてた(※八雷神出現前)ので改めて干渉する事も無かった。

 ……そんな感じの解釈としました。

 孫という血縁者であり、デンジャラスな能力(※小説版)を発現させた八千穂への溺愛とは似て非なる感じの評価。
 『強力な能力』という同じ評価軸はあるが。
 ……これもまた然程強くない能力やそもそも桃すら食べない身で醜鬼に立ち向かい、死傷した者がいた魔都出現期の経験によるもの……と本作ではしときますのでご理解の程お願いします。


:冬美
…めっっっっっちゃ落ち込んだ。

 条件満たしてスキルツリーの新たなスキルが数多解放され既存スキルも大幅強化されたようなもん、…………なのだが、そうなったと自覚したのが全てが終わったからだったので余計に自分の無能さが刺さって余計に落ち込んだ。
 呪術廻戦で言やぁ、領域展開できてりゃ勝ててた仲間を大勢傷付けた相手と黒閃発動で相討ちになって、どうにか生き残ったら領域展開と反転術式とそのアウトプットと術式反転と空気の面蹴っての移動と黒閃の自在発動ができるようになり『なんで今さら……』と落ち込んでるようなモン。

 ……十分バケモノ側。
 アデノシン三リン酸がパッと出て来ないとか『垓』の漢字が思い浮かばないとか穴はあるが、んなもん気になるか‼︎って具合に一ヶ月強で破格の成長を遂げた。
 だからと言って落ち込まない訳ではないが、立ち直るのも早くなった。

 刻印による神の制裁に唯一巻き込まれ致命傷と見られる重傷を負ったが、無事生還。
 そればかりか条件が揃えば延命できるくらいがせいぜいだった神の刻印を完全ではないが除去できるようになった。
 ……そのせいで『……政府上層部に裏切り者がいるなんて世迷言吐いてきてるし、やっぱコイツ八雷神側じゃね?』と疑われもしているが。
 世知辛い。
 魂の新たな技能にも開眼した。

 ……しかし八雷神由来と思わしき『揺らぎ』という不安要素も見つけた。
・『日ノ出冬美という生き物』
…クッッッッッソしぶとい。

 魂のバックアップで死にづらいし、傷が治るのも意識が戻るのも体力回復も早い。
 【翠炎】使うとさらに早くなる。
 それに魂の補助で寿命も長い。
 もし全く魂に気付かなくとも200年くらいは生きるし、そのほとんどを20代頃の若さで生きる。
 大半の世界では多分50代くらいで『……もしかして私、老けない?』みたいに気付くけどその頃には色々スレて魂が鈍ってるので500歳くらいで主人公と対立する大規模組織のボスとかやってる。

 この世界では20代で魂に気付いたのでもっともっと長く生きる。

 あと並大抵の強さでは読心も洗脳も憑依も通用しない。
 組長クラスに通るものでも通用しない。
 魂が自我を保証するのでエヴァの人類補完計画みたいなの喰らったら一つになった人類が皆冬美の魂で汚染されて自我が潰れ、最終的に全ての人類を材料にして日ノ出冬美という一個体を再構築する事になりかねない。

 ただし【援姿】などの魂が関係ない身体能力や耐久面ではまだまだ発展途上。
 銃弾も通る。
・『大山の魂』
…魂を自覚し、動かせないと何事もなく十年くらい生きてては気付きにくい恩恵ばかり身に付く。
 (記憶力の微上昇・生命力減少時の大幅補填・負傷回復速度の上昇と致命傷時の生存時間の延長・一定以下の精神干渉の無効化・老化防止及び長寿化……)
 催眠アプリが横行するエロ同人誌みたいな世界だったらすぐ恩恵に気付けたかもしれないが、生憎この世界は少年誌+な世界だ。
・【大山翠炎】
…魂の『揺らぎ』に合わせて【震動】を起こす事で、『揺らぎ』を強め、魂を活性化させる技。
 活性化した魂が放つ緑の光が個々の細胞の調子に合わせて揺らめく事で、緑の炎を纏っているように見える。
 一度でも発動できれば、全ての細胞の魂が共鳴する事によって魂の把握と理解の度合いが段違いになる。
 また、活性化した魂によって体機能の全てが向上し、お肌も髪も艶々になる。
 冬美の場合魂が大きいので発動を止めてもしばらく効果が持続する。
 活性化した魂に共鳴させる事で、他者の魂を活性化させる事で連動して体機能を活性化させて治療もできる。
 魂の活性化によって通常治らない傷の修復や神の刻印の相殺など特殊な治療も可。
 ただし活性化させる()()なので栄養や生命力なんかを補充しないとエネルギーを使いきって痩せ細り、皮膚の爛れ・胃潰瘍・脱水症状などを併発する。
 つまり傷は治せても、体力の回復はできない。
 アレルギーや癌など体機能に由来するものは活性化によってより悪化してしまう。
 
 栄養や生命力を補充しない事で攻撃にも使える。
 通常では強まった『揺らぎ』がブレない身体に纏う近距離が射程だが、他の魂の応用技と合わせる事で遠距離にも届く。
 炎っぽく見えるだけの光の揺らぎなので、燃焼現象は起こさない。
 過剰に生命力を蓄えた状態で受けると活性化した身体が急速に生命力を喰らうのを制御できず、過剰な細胞分裂の促進によって身体が爆散する。
 これによって海桐花にとって冬美は相性最悪の相手になった。
・【大山淡衣】
…『大山の魂』を普通に使って淡く光った状態。
 これ単体では大した意味はないが、様々な技の起点になる。
 形を作るように動かせば、腕のようにもなる。
・【大山御玉(仮)】
…【光】で増やした魂に【震動】で外殻的なのを作って切り離し、光って浮かぶ球体を生み出す。
 超絶濃縮増幅された人魂みたいなもん。
 外殻の【震動】が切れると光って霧散する。
 ……が、浮かんでいる所や霧散した所に【翠炎】が当たると枷なき魂が活性化して発散、爆発する。
 【震動】が切れる前に身体に引っ付ければ、外殻の【震動】が皮膚表面の『揺らぎ』と繋がり、分離する前の魂の延長として扱える。
 形を変えれば身体の部位を増やす事もできるが……。

 そのうち名前は変わる。
・その他
 【翠炎】の習得で魂についての理解と把握が深まった事で、
○微細な魂の操作。
○【震動】をそれぞれ別の箇所から放つ。
○細胞単位で【悠景】を発動し、腕として扱えるものを増やす。
○魂に感じる感覚の精細化。及びそれによる感知機能の向上。
○細胞単位から意思をより集め、何を言いたいか分かる程の“雰囲気”を放つ。
 ……など、様々な事ができるようになった。

:恋
…スカウトした前後で不安材料はあったのに、『私ならなんとかなる』と冬美の事を甘く見過ぎた。
 ……が今現在神の刻印をなんとかできるのも冬美しかいないので手放す事もできない。
 冬美に滅茶滅茶悪感情を抱かれてる。
 具体的には冬美が抱く悪感情の9割9分5厘以上はこの人に対するもの。
 見事冬美の中での好感度ランキング最下位に位置付けられた。
 冬美の好感度の低さで不動の次点となった夜雲さんへの悪感情でさえ『夏にめっちゃ蚊が湧く家のすぐ近くの濁った沼』な感じには大嫌いだが、この人に対しては『底がどんどん深くなるマリアナ海溝』くらいの感じで冬美は何かある度にこの人を深く深く深く嫌いになっていく。
 本作にアンチ・ヘイトタグが付く理由の大半を占める。

 この人自身も生意気で自分よりベルと仲良しであっさり三番組(ベルの周りの環境)を向上させてたり色々あって冬美の事が嫌い。
 …………だけど、成した事はちゃんと評価する。(……皮肉気に。……冬美が被害にショック受けて伝わらなかったが)
 …………絶対認めないようにしてるけど、冬美に自分に迫るものがあると、思い始めてる。

:木国和歌子
…陰陽寮寮長。
 原作でも要所要所で現れ、不気味な雰囲気を出している老婆。
 知人の海桐花さんと違ってちゃんと皺の有る老婆。

:京香
…夢路の後を()った組長。
 色々、感情は有る。(原作とは言い回しも変わってる)
 ……だけど病室ではお静かに、落ち着いて。

:海桐花
…CV井澤さんの老兵。
 自分が期待してなかった者を鍛え上げた京香、自分を制圧してのけた風舞希に続き、自分がこれでいいと思った者に新たな道を示した冬美が現れた事で、時代の変化を深く実感している。
 ……生命力を吸い切れず、生半な攻撃では倒せず、それでなくても一撃で回復もできない戦闘不能に追い込める高威力の攻撃ばっかりなのに喰らえば一発で爆死させられてしまう【翠炎】まで身につけた冬美との相性が最悪である事をよーく分かってる。

:阿南三姉妹の鳥人型
…総組長の耳にも届く程の悪名高い犯罪者、……だったが神の制裁を受け冬美と相討ち、捕らえられ連行される。
 同じく捕らえられた他二人が刻印で死亡した為、現在姉妹唯一の生き残りとなった。
 栄養補充など一切されなかった為ひどい有様になったが、生き残る目は有る。

:下村夢路
…かつての七番組組長。
 生き残る目は有る。




:月夜野ベル
… ……………………。

 ……原作最新話、案の定上手く介入できとりませんね。
 まぁ残る八雷神が飛べる×2・ワープできる・素早くて近接戦闘が強い・触れられると危ないでどれも『攻め』を決めるにはイマイチ相性がよくないというのもあるんでしょうが。
 むしろ本気とまともにやりあったら大変ヤバそうな奴に決められたのが大大大金星と言いますか、ええ。

 ……………………。

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