カタストロフィ・メシア   作:汐海朔夜

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十八話・執着心

 魔術を使うには、魔力が必要不可欠。

 

 それが世間の一般常識であり、真理だ。

 

 だが、王族や貴族ではない一般の平民は魔力を持っていない。

 

 であるから、必然的に強者というのは魔術師になれる王族や貴族なのだ。

 

 だが、闇月イフは例外だった。

 

 そもそも彼女は平民出身であり、魔力を持っていないので魔術を使うことができない。

 

 だが、それを上回るほどの研究者としての才能があった。

 

 それは、現代では破損してしまい、使用不可となっていた古代魔具(アーティファクト)を修復、再生させられるほどに。

 

 その功績によって、彼女は過去に暗黒蓮華機関で唯一魔力を持たずに神秘の到達者《強欲(グリード)》という座を手に入れた。

 

 古代文明の探究によって、彼女は数々の古代魔具(アーティファクト)を修復し、手に入れたのだ。

 

 そうして、彼女は魔術を使うことができないという欠点を抱えながら、それを古代魔具(アーティファクト)で補うことによって強者となった。

 

 ……まぁ、何が言いたいのかと言えば。

 

 彼女は、魔術の面を除けば絶対的な天才だということだ。

 

 

■□■

 

 

「はい、そこ」

「──ッ!」

 

 いつの間にか目の前にあったイフの刀、《絶刀》を間一髪で避けたメシアが咄嗟に発砲するが、勝ち筋が全く見えてこない。

 

 弾が《聖羽の結界》に阻まれるのではなく、そもそも全てが簡単に避けられるのだ。

 

「ほいっと」

「ッ、クソッ!」

 

 イフが地面を脚で蹴ると、メシアは何故か自分の身体に力を入れられなくなりバランスを崩す。

 

 そんな隙をイフが見逃すはずがなく、急接近して振られた斬撃。

 

「《力を寄越せ(フルブースト)》ッ!」

 

 それをメシアは身体強化全開で無理矢理避けて後ろに下がる。

 

「今のは……ッ!?」

「ん? えっとね、震脚って知ってるかな? 強く足で地面を踏み付けた衝撃で打撃の威力を強化して……ってやつ」

 

 イフは話しながら赤く光る石を取り出し、メシアの方へ全力で投球する。

 

 メシアはその石へ、走りながらも銃をクルリと回して調整した精密射撃で弾を撃って命中させる。

 

「けど、さっきのは少し違ってさ。地面を踏み込んだ時、その衝撃を特徴的な振動数のなるよう調整して地面に流して、同じ地面に立っている貴女の足の裏に流してるの」

 

 ──ドガァァアアンッ!

 

 弾に当たった赤い石が大爆発を巻き起こし、メシアとイフの間を白い花火で染め上げる。

 

「そうなると、右足と左足から伝わった衝撃が体内で伝播して上手くかち合うと、さっきのメシアみたいに体中の筋肉がほんの数秒麻痺しちゃうんだよね。凄いでしょー?」

「……知るか」

「ええっ? 折角教えてあげたのに……なら、これ使っちゃうよ!」

 

 そう言って取り出したのは──

 

「……笛?」

 

 古びた、鈍い金色の笛だった。

 

「そそ。古典では心を揺さぶる混沌の音(パニックフルート)なんて書かれてた、古代魔具(アーティファクト)……だったんだけど」

「……だけど?」

「そのままだと単なる恐慌とかを引き起こす精神干渉系の音波を出すだけだったんだよね。けど、それじゃつまらないなって思って、現代兵器も参照して、音波兵器としての破壊的な特性(データ)も修復するときについでに加えてみたの」

「ッ!」

 

 メシアがその言葉に反応して咄嗟に逃走しようとするが、時既に遅し。

 

「すーー……っ」

 

 ──ピィィィィイイイイッッ!

 

「ぅあァッ!?」

 

 甲高い音に耳が割れるような激痛が奔り、思わずメシアは蹲る。

 

「……げほっ、げほっ」

 

 座り込んだままその場で咳をすると……その地面には、血があった。

 

「……ぇ……?」

 

 見れば、自分の口から血が流れていて。

 

「……今の音波で、体内が傷ついて吐血したか」

「そうみたいだね。ホントはもっと重症のハズなんだけど、そこは流石私の最高傑作(むすめ)ってところかな?」

「さぁ、な……!」

 

 ぺっ、と固まった血液を吐いたメシアは、痛みに耐えるように愛用している自動拳銃を握りしめる。

 

 確かに、今の状況は絶望的だ。

 

 敵へ攻撃は通じないし、魔術なしのデタラメ攻撃を使ってくるし、しかもメシアは単独だ。

 

 それでも、諦めることはしたくない。

 

 こんな状況でも立ち上がってみせるのは、そんなメシアの理想への執着心だった。

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