カタストロフィ・メシア   作:汐海朔夜

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二話・廃墟の探索

 姫壊メシア。

 

 それが、神ロビザーン帝国の裏に潜む悪の魔術結社である暗黒蓮華機関から被害者を解放している人物の名前である。

 

 超一流と言える魔術と銃術によって、裏の科学者及び魔術師を殺す存在。

 

 その名は裏の魔術界では知れ渡り、ある人にとっては希望、またある人にとっては絶望を齎すものだった。

 

 そんなメシアは今、彼女が解放した被害者によって構成された組織〈HEAVENS(ヘヴンズ)〉の集まる根城と言える地下の部屋に居た。

 

 そこで彼女らは、何をしているかと──

 

「スキップです」

「あぁ、ちょっと!」

UNO(ウノ)

「え、もう残り一枚!?」

 

 ……ほんわかと、UNO(ウノ)をしていた。

 

「姫様もUNO(ウノ)やりませんか〜?」

 

 UNO(ウノ)をしていた内の一人が、離れた場所でイスに座ってコーヒーを飲んでいるメシアに声をかける。

 

「いいや、私はいい」

「そうですか……やりたくなったら何時でも声かけてくださいね〜」

「ああ、そうするよ」

 

 声をかけた男は返事を聞くと、UNO(ウノ)に戻っていった。

 

 ……そもそも、"暗黒蓮華機関"の施設を潰しているのはメシアではなく、大体は〈HEAVENS(ヘヴンズ)〉のメシアの部下なのだ。

 

 別にメシアが弱いから、などという理由ではなく……ただの過保護だ。

 

「…………はぁ」

 

 メシアは人知れず、愛用しているサングラスを磨きながらため息をついた。

 

 ……実は、あの田中ヒデキを始末するという件も、最初はメシアは行かない予定だった。

 

 だが、メシアが単独行動をして先に潜入し、一人で解決した。

 

 逆に言えば、部下が過保護すぎて自分から動かないと何も出来ないのだ。

 

 信用されていないなどではなく、むしろメシアに傷付いて欲しくないという善意なので余計苦しい。

 

「何か、やることは……」

 

 ……やることは、今の所は何もない。

 

 あの暗黒蓮華機関の目撃情報もなければ、調べなくてはいけないモノも無い。

 

「……掃除でもするか」

 

 コーヒーの残りを一気に飲み干したメシアは立ち上がり、サングラスを掛けて箒の入っているロッカーへ足を向けた。

 

 

■□■

 

 

 ……それから数日後、メシアは部下から、新たに発見したと報告された研究施設に、相棒の自動拳銃を持って忍び込んでいた。もちろん単独行動である。

 

 だが、妙なことがある。

 

 認識阻害の結界魔術などの()()が、何時も暗黒蓮華機関が愛用している物とは違っている。

 

「…………誰も、居ない?」

 

 それが、二つ目の奇妙な点。

 

 研究施設には当たり前だが、研究員及び魔術師が居る。

 

 犠牲になってしまう被験体も居るはず。

 

 だが、既に廃棄されたのか、この施設には誰も居ない。

 

 しかも、あの暗黒蓮華機関の研究施設独特の雰囲気が一切無い。

 

「一応は魔術に関する場所のようだが……本当にあの魔術結社のものか?」

 

 ……正直、不気味だ。

 

 だが、歩みを緩める訳には行かない。

 

 メシアは隠密しながら、奥へと進む。

 

 そしてその先には、大きな広間のような場所があった。

 

 扉を開けるとそこには沢山のケーブルがあり、その全てが中心の椅子に座らせられて眠っている裸の少女に繋がっていた。

 

 天井からは光があるが、それは中心の少女へスポットライトのように浴びせていた。

 

 ……いや、正確には()()は人間ではない。それは。

 

「……機械の少女……人工知能みたいなものか?」

 

 そう言葉を出したとき、機械音声のアナウンスが広間の全体に響いた。

 

『音声を確認。データを照合中……』

 

 機械音声はメシアの声を認識して、それに対し何かをしているかのように発声する。

 

「──っ!」

 

 油断していた。

 

 咄嗟に銃を抜き、数多の最悪の事態を考えて、その対策を頭に浮かべながら、即座に戦えるように構える。

 

「…………」

『……照合、完了。()()()()()()()()()()

「なっ!?」

 

 どうして私が、とメシアは困惑する。

 

 自分のことが分かるということは、この場所のデータベースに"姫壊メシア"の情報があるということ。

 

 メシアは警戒を強くするが、機械音声はそれだけで何も言わなくなり静寂が訪れた。

 

「…………」

 

 ……何も、起こる気配が無い。

 

 メシアは警戒しながら、目の前で一糸纏わずに眠っている機械の少女の元へ歩く。

 

 いや、眠っているっているというのはただの比喩。実際には、機能停止しているという言い方が正しいだろう。

 

 目の前までメシアが来たとき、機械の少女はふと、電子音を鳴らして目を開いた。

 

 そして、メシアを見て。

 

「……認証完了。貴方をマスターとして情報の書き換えが終了。

これからよろしくお願いします。マスター」

「マスター、だと……?」

 

 マスターと、メシアのことを言った。

 

 何がどうしてそうなったのか、当たり前だがメシアも分からない。

 

「……君は、誰だ?」

謝罪(アポロジー)。データが存在していません」

 

 データが無い?

 

 つまり、記憶なども無いということか?

 

 本当に、この機械少女のことが何も分からない。

 

 だが、それでもメシアは思考を続けようと──

 

「……質問(クエスチョン)。マスター、そのサングラス、ダサくないですか?」

 

 ……………………お、ぉう。

 

 初めましての相手(ロボ)に、いきなり罵倒されたメシアは。

 

「…………スクラップにしてやろうか?」

 

 静かにキレた。

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