カタストロフィ・メシア 作:汐海朔夜
「…………………ん」
メシアが目を覚まして最初に見たのは、馴染みのあるアジトの天井だった。
「
「……アイン、か?」
ふと横を見れば、安心したと言わんばかりに胸をなでおろす機械の乙女、アインが立っていた。
「ここは……」
怠さが残っている身体に鞭打って無理矢理起き上がると、そこはメシアの自室の部屋に備えられているベッドだった。
「……何が、あった?」
「
「そう、か……ありがとう」
アインに礼を言ったメシアは、痛みを訴えている身体をベッドに再び横たわらせて、これからのことを考え始めようとした。
「
「…………」
が、アインの質問に答える方が先かとメシアは思い、天井を見上げたまま口を開いた。
「……闇月イフ、という女と戦ったんだ」
「! ……闇月イフ、ですか?」
一瞬アインが違和感のあるような反応をした気がしたが、気にせずメシアは話し始める。
「ああ。……元とはいえ、あれでも神秘の到達者になった奴だからな。強かったよ」
「……
「ああ、そこからだな」
ふーー……と、メシアは息を吹いて。
「私が元は暗黒蓮華機関の実験体だったことは前に話したな」
「
「その時に、私で実験していたのがイフだよ。この"滅界の魔眼"を作ったのもな。……正確には、滅びを与える性質をもった極小の
「……元、と言ってましたよね? そのイフが、裏切りをしたというのは一体?」
「あれか……昔の話だよ。帝国と機関の戦いが一番激化した戦争があったんだが、イフはその戦争で死んだ者達を、
無表情で淡々と語るメシアに、アインは一つの疑問を尋ねる。
「……闇月イフを、恨んでいますか?」
「恨んでるさ」
即答だった。
だが、とメシアは言葉を続ける。
「正直、良く分からないんだ……私はあいつを恨んでるが、何故かあいつは私のことを好んでいる。……理由はさっぱり分からないがな」
そう語るメシアの目は、ここではない何処かを見ているようだった。
「……この話はこのくらいにしておこう。それより、私はどのくらい寝てた? "PROJECT・WORLD BREAKER"の開始まで、あと何日だ」
「
「は? ……すまん、もう一度言ってくれ」
アインの言葉に、メシアは聞き間違えたかと聞き返す。
「
「……アイン、すぐに龍脈の力が強い場所を探知してくれ」
身体の痛みだとか言っている場合ではない。
メシアはすぐさま飛び起きて包帯まみれの体にいつもの戦闘用服を着始める。
「
「早くしろッ!」
びくり、とアインは震えた。
怒鳴ったメシアの表情が、とんでもなく焦っていることが分かったからだ。
「……【
アインが目を閉じて、近くの地中にある龍脈に接続し、魔力濃度の高い場所の探知を始める。
その端でメシアは近くに置かれていた、イフが残した
「……報告、視えました」
「場所は?」
「《日輪神殿》を除いた、計画を実行できると思われる場所は──この国の王城です」
その、アインの言葉に。
「…………くそ、よりによってそこか」
メシアは心の底から嫌そうな、苦々しい顔をした。
「アイン、出るぞ!」
「動揺、待ってください! 今のマスターの身体は万全では──」
「そんなことを言ってる場合じゃない!」
扉のドアノブに手を掛けるメシアの顔に、余裕は一切無かった。
「イフはあの《日輪神殿》を毒素で汚染した。あんなに汚染された場所が計画に使えるわけが無い! つまり、天時ノアが龍脈と繋がるのは別の場所──つまり、王城だ。……このままじゃ、世界ごと終わる」
「主様……」
「……手伝ってくれるか? アイン」
「……はい、どこまでも」
メシアとアインは目を合わせて頷きあうと、二人は部屋から飛び出した。
この世界を、壊させないために。