カタストロフィ・メシア   作:汐海朔夜

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二十四話・空間魔術

「…………ん?」

 

 ──ふわ……

 

 風が吹くと、そこには真っ二つになった筈のメシアの死体は存在していなかった。

 

「……なるほどね、()()()()()

「正解だ」

 

 声の聞こえた真後ろにノアが顔を振り向くと、そこには血だらけでありながらも生きているメシアの姿があった。

 

「ふぅん……あの場で対応できないと判断して回避に専念したんだ」

「ああ、その通りだよ、ノア」

「だけど、そこで僕が気づく前に逃げなかったことはミスだよ」

 

 ノアはおかしいように、嘲笑うかのような笑みを浮かべていた。

 

「もうわかっていると思うけど、僕が極めた魔術は空間魔術。この世界を支配する魔術さ」

「支配、ねえ」

「そうだよ。もう見せただろう? 君の攻撃は無限の空間によって届かず、空間転移による僕の攻撃を君は避けられず、ほぼ回避不可能の即死攻撃である空間切断……まだ、僕に勝てると思ってるの? それは勇気じゃなくて無謀だよ」

 

 ──パン!

 

 ノアに対するメシアの返答は、言葉ではなく一発の弾丸だった。

 

「はあ……だから無駄だって」

 

 そうして、ノアは再び弾丸と自分の間に無限の空間を発生させて。

 

 そうして、ノアは疑問に思った。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「──?」

 

 ふと、ノアは衝撃の発生源──右腕を見た。

 

「────は」

 

 そこには、血があった。

 

 ダラダラと血を流している右腕……その傷口には、メシアの銃による弾丸があった。

 

「ぁ、がっあああああああああああああ──ッ!?」

 

 絶叫が、王城の屋上で迸った。

 

 吐き出されていく血を止めるように左手で無理にでも傷口を押さえつけてノアはメシアを睨みつける。

 

「な、なにを、なにが、なんで、どうして、どうやって……何をしたッ、メシアぁあああああ──ッ!」

「別に特別なことは何もしてないぞ? ただ、この銃で撃っただけだ」

「その、銃……? その普通の銃が、一体何を──はぁ!?」

 

 そうして、ノアはようやく気づく。

 

 それが、メシアの銃が、古代魔具(アーティファクト)であることに。

 

「神銃エクリプスの、"一撃必殺"という権能だ。一度撃てば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それだけだよ」

 

 ネタばらしをするように、ゆらゆらと銃を揺らし てみせる。

 

(……それにしても、この銃を渡してきたイフはどこまで読んでいたのやら。相変わらず食えない女だ)

「さて、これで終わりだ」

「やめろぉお!!」

 

 そうして、メシアはノアに向けて銃を撃った。

 

 その弾丸は正確無比に、ノアの心臓に向かっていき。

 

「──なんてね。《怠惰の指輪》」

 

 途端、ノアに手を向けられた弾丸は()()()

 

「え」

 

 何が起こったのかすら理解できないメシアに向けて、急加速したノアは突進する。

 

 負傷していたはずの右腕はまるで怪我をしていなかったかのように綺麗になっていて。

 

 その手には、一本のナイフが握られていた。

 

 対するメシアはその超速度に反応できずに、茫然と固まっていて。

 

(──あ、終わった)

 

 メシアはそう悟った。

 

 そんなメシアの視界には、どういう理屈か分からないが完全回復しているノアがナイフを振りかぶっている姿と。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()()……ん?

 

「ぎゃあああああああああ──ッ! そ、そこの人避けてぇッ!」

「死ね、メシ──え、誰……うぼぁッ!?」

 

 その吹っ飛んできたフェリにモロに衝突したノアは、物理法則に従って吹き飛ばされる。

 

 そのままノアの身体は地面に叩きつけられ、ゴロゴロと少し転がった後にようやく止まった。

 

「え、ぇえ……?」

 

 その様子を見て、メシアはドン引きした。

 

「ん、うぅ……あ、わたしのメシア」

 

 そこでようやくメシアを認識したのか、フェリは目を擦りながら立ち上がった。

 

「こんなところで会えるなんて、わたしは本当に"幸運"だね」

 

 急なツッコミ所の多すぎる展開に、メシアは思考を放棄した。

 

 だって面倒くさそうだから。

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