カタストロフィ・メシア 作:汐海朔夜
「暗黒蓮華機関、神秘の到達者《
「暗黒蓮華機関、神秘の到達者《
ジャケットの少年と、メイド服の少女の名乗り。
それを聞いたメシアは、喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。
すなわち……何で二人同時に来てるんだクソがなる絶叫を。
「……あー」
この状況をどうにかして打破しようと思考を巡らせるが、何一つ思いつかない。
ひとまず、メイド少女に目を向けると。
「……ん? どうかされましたか? そんなに私のことを見つめて。……ハッ、まさか私に一目惚れでもしてしまいました? いやぁ、照れちゃいますね。まぁ私可愛いですし? そうやって惚れさせちゃうのも仕方ないですけどね〜、まさか敵まで惚れさせちゃうとは。ねぇグレイ、私って魔性の女すぎません?」
「あァ……? 何言ってやがる、メイド女。ついにイカれたか?」
「はぁ……これだから絶賛中二病発症中の男は。もうちょっと洒落た返しをしたほうがいいですよ。そうじゃないとモテませんよ?」
「うるせェよ」
呆然とするメシアを他所に、漫才のような掛け合いを始めるクロエとグレイ。
その仲の良さが伺える会話をぶった切るように、飛び出した者がいた。
「──《福運の幾幣》ッ!」
フェリだ。
そろそろ漫才を見続けるのも限界だったようで、その額には青筋が浮かんでいた。
その目に宿る意思はただ一つ。
──
「
それは、ただの叫び。
だが、フェリが行った途端に"幸運"によって呪詛へと早変わりする。
運というたった一つの要素だけで、クロエとグレイの二人の心臓が不運にも止まりそうになり──
「あー、これ私は相性悪いですね。グレイ、どうぞ」
「他人任せすぎねェか? 《暴食の指輪》」
ボソッと文句を言いながらも、グレイは右手を翳す。
そして、
「ッ、これで!」
手応えがあったと言わんばかりに顔を上げたフェリ。
だが、そこに倒れている姿は無かった。
「……あ、あれ? 何で、生きてるの? わたし、幸運なのに……」
「テメェの
ほら簡単だろ、と。
フェリを煽るように、手を広げてオーバーなリアクションをする。
「…………」
グレイの言葉を受けて、絶句するフェリ。
それに構わず、グレイは右足による蹴りをフェリにお見舞いしようとして──
「それは、許容できないな」
その蹴りを完璧に受け流したメシアが入り込む。
そのしかめっ面で、メシアは口を開いた。
「で、何のようなんだ? 私達を待ってたんだろ?」
どうしてここにやって来たのか、という疑問を解消しようと、メシアは情報収集を目的にした。
その疑問を聞いた、二人は。
「え? いやー……別に、待ってたわけではないんですけど……というか自称救世主様にここで会うつもりは本当に無かったんですよ。それなのに、この男のせいで撤収するのが遅れて鉢合わせるなんて最悪というか……」
「……俺か? 俺は、このメイドに強ェ奴がいるから来いって言われたから、こうして来てやっただけだ。テメェに用は無ェよ」
「えぇ……」
この出会いはお互い想定していなかったことらしく、メシアは困惑した。
どうすればいいんだろ、これ。
メシアは悩んだ。どうするべきか。
悩んで、悩んで……頭の中で結論を出した。
「
「蛮族な何かです!?」
メシアの死刑宣告に、クロエは悲鳴をあげた。
それを無視して《神銃エクリプス》を起動させ、"一撃必殺"と"霊感機能"という二つの権能を同時発動する。
魂を直接撃ち抜く弾丸が、銃口から発砲された。
「……これ、さっきもやりませんでした? 学習してくださいよ」
呆れた顔でクロエはわざとらしくため息をついて。
クロエの胸を、弾丸が貫いた。
「……は? ……か、はっ!? なん、で……!?」
「お前がさっき私の弾丸を無効化したのは、おそらくノアの空間魔術と同じで、無限の空間を作り出すことで自分に届かせないようにしたんだろ? だったら簡単だ。……
メシアはクロエに右手を見せびらかす。
その指には、指輪が嵌っていた。
「これは天時ノアの持っていた《怠惰の指輪》だよ。権能は時間操作。アインシュタインの『特殊相対性理論』……だったかな。それによると、時間と空間は密接な関係にあるらしい。それなら、空間魔術を時間を操ることで相殺出来ると分かるだろ」
クルクルと銃を回しながら、メシアは得意げにドヤ顔をした。
「ちなみに今のは、お前と弾丸の距離を無限大にさせられたから、弾丸のお前への到達時間を刹那にした。……終わりだよ、
バタリ、と。
思っていたよりも軽い音を立てて、クロエが倒れた。
メシアが冷たい目で見たクロエは、自らの血の海に溺れて眠っていた。
「さて、次はお前だな。グレイ……だったか? まぁ、名前なんて興味は無いが」
次に目線を向けられたグレイは、一瞬驚いた顔をして。
「……へェ、なかなかやるじゃねェか、テメェ」
ニヤリ、と。
上等だと言わんばかりに、獰猛な笑みを浮かべた。