カタストロフィ・メシア 作:汐海朔夜
紅炎が、まるで生きているかのように渦を巻く。
焦土のように焼け爛れた床に、グレイの足音だけがコツ、コツと場違いなほどに軽やかに響いていた。
「ハッ、ただ燃やすだけで終わるとでも思ったのかァ? ……浅ェよ」
「……っ、く……そッ!」
フレアの左腕は、醜く焼き尽くされていた。
それは攻撃する際に、自分の炎にすら耐え切れなかったのではない。
喰われたのだ。
術式の動線と、呪文の精密構成を。
「俺は魔術を発動する際の重要なところを食えばいい。結果、魔術が成り立たなくなったことで、そのために引き出したテメェの魔力が暴走して自爆。楽でいいじゃねェか」
ケタケタと笑いながらフレアの無力化を確認したグレイは、ひんやりとした地面に手をつける。
その指先から溢れ出す魔力が、グレイの意思に応えるように踊り、
「《
呪文ではない。これは……術式の完成宣言のようなもの。
現在、フレアやグレイがいる神ロビザーン帝国……その
「
「……っ、ふざけ……」
「なァ、最高にワクワクしないか!?」
フレアの叫びは、咽せた咳どグレイの叫びによってかき消される。
焼かれたことで出血はしていないが、それでも視界が暗くなっていき、とても立っていられない。
だが、ここで倒れたら……グレイを止められるものは、どこにもいない。
そうなれば、この国は。そして、この国で過ごしている数多の人々はどうなる。
「……ぅ、あああああッ!」
まだ、終わるわけにはいかない。
フレアは喉から声を出し、体中の力を振り絞ることで無理にでも立ち上がろうとして。
──
そんな軽い音が、確かにそこで鳴った。
「…………あァ?」
グレイが下を向くと、そこには大量の血が撒き散らされていた。
それが自分の血だと、そう気づいた瞬間、二発目の弾丸がグレイを襲う。
「ぐあっ……!」
一発目で既に重症を負っていたグレイが反応できるはずもなく。
そして──ドサリ、という音とともに、
「暗殺完了……ってところかな」
影から姿を表したメシアは、安心したと言いたげな顔でフレアを見た。