俺がお兄ちゃん属性なのはまちがっていない。   作:八重垣八雲

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3-2 戦慄のB/二人はツインテイルズ

 時間が飛んで放課後、俺は小町と連れ立ってお隣の観束家に向かう。

 

 まさかの小町バレを連絡後、観束家ではさらに大騒ぎになったようだ。

 

 幼女化バレをした総二は言わずもがな。属性力の技術の結晶たるテイルギア、そのイマジンチャフを突破されたら、流石のトゥアールも暫くの間宇宙猫になっていたらしい。こうなったら徹底的に説明するということで、こうして秘密基地に向かうことになった。

 

 「秘密基地なんてあるんだね!どんなとこか楽しみ!」

 

 瞳にキラキラ光を宿して俺の前を歩く小町。ワクワクが抑えられないようで、テンション・フォルテッシモである。

 

 俺の、というか幼なじみ連中の影響もあってこういった男の子っぽいものも大好きだからな。ツインテール馬鹿を除けばそこいらの男子と感覚の変わらない総二に、同性ではあるが武芸百般、並の男より漢らしい愛香。んで、身近にいる()。どうしても少年らしい趣味に偏ってしまう。

 

 唯一の例外は愛香の姉ちゃんである恋香さん。俺より三つ上で、ほんとに愛香の姉ちゃん?って思うほど優しく家庭的な女性である。ちと怖いけど。小町と愛香が多少がさつさを残しながらも、年頃の少女らしさを保てているのはこの人のお陰である。頭が上がらん、マジで。

 

 「おう、まさに戦隊の秘密基地って感じだからな。見たら度肝を抜かれるぞ」

 

 昨日の放課後には完成していたんだが、初めて見た時は流石に驚いた。まさか一晩でやってくれましたを実際に目の当たりすることになるとは思いもしなかった。しかも建造物作成なんて、どこまで技術力高いんだよ。

 

 「およ?そっちから入るの」

 

 喫茶店(アドレシェンツァ)の勝手口より、文字通り勝手知ってる他人の家とばかりに入る。事前に許可を得てるから不法侵入ではない。

 

 「ああ、秘密の入口ってやつだ」

 

 その言葉に小町の瞳のキラキラは増し早く早くと急かしてくる。おいおい、そんなに引っ張らなくても秘密基地は逃げないぞ。

 

 小町を腕に引っ付けたまま業務用冷蔵庫に向かう。食品関係の仕事に就いているなら見覚えのあるデカいあれだ。

 

 「ほれ、小町、このスイッチを押してみ」

 

 冷蔵庫の扉に備え付けられた赤いスイッチを指差す。「了解でありま〜す」の掛け声と共にスイッチを押すと、音を立て冷蔵庫が床下に収納され、その裏にある隠し扉が現れた。

 

 「喫茶店の冷蔵庫が入口なんて仮面ライダービルドみたい!」

 

 「正確には入口の偽装扉だけどな」

 

 俺の影響で仮面ライダーの知識は万全な小町ちゃん。流石に神堂ほどガチでディープではないが、リアルタイムで放送を追いかけるぐらいは好きである。今でも、リアル桐生戦兎だー!と大喜びだ。

 

 確かに天才(てぇんさい)科学者ではあることは間違いではないが、それ以上に変態(へぇんたい)痴女なんだよなぁ……

 

 いや、変人っぷりと言えばベクトルは違うが戦兎の演者の犬飼氏もかなりのものだったな。某漫画の実写版では全裸になっていたし。それにトゥアールの奴もある意味Love&Peace(総二への愛欲)で戦っていたな。なんてこった、俺の中でトゥアール≒戦兎の図式が立ってしまう。変態の法則は決まった!

 

 俺の中でのイメージ崩壊を恐れつつも、隠し扉をくぐり抜ける。中はエレベータールームとなっていて、ここから地下にある基地へと直通で繋がっている。

 

 基地に着くまでの暫くの間呆っと突っ立っている。窓がないから分からないが、かなり地下深くまで潜っている様だ。まぁ、そうじゃないと地盤がヤバいからな。下手しなくても崩れるってのもある。特に隣接する比企谷家と津辺家は大ピンチだ。

 

 程なくしてエレベーターは目的地に到着する。小町は扉の前にスタンバイして、まだかまだかと開くのを待っている。散歩に行きたい犬じゃねぇんだから……

 

 シュッ、と音を立ててエレベーターの扉が開かれる。そうして視界に映るのは、壁一面を占める超巨大モニター。何に使うか回目見当のつかない謎の計器。コンソール前のやたらメカニカルなシート。まさにスーパー戦隊でお馴染みの超科学の秘密基地って風貌だ。

 

 「ふぉぉぉぉぉぉぉ!すごい!すごいすごいすごい!」

 

 ここに来て小町のテンションは最高潮。興味深げにあっちへキョロキョロこっちへキョロキョロと視線を彷徨わせている。

 

 わかる。わかるぞ、その気持ち。俺も昨日初めて来た時はあまりの出来栄えに興奮しっぱなしだったからな。なんなら総二と未春おばさんも揃ってウェイクアップフィーバーしていたまである。愛香からはものすっごい冷めた目で見られたけど………

 

 「ようこそ小町ちゃん、テイルレッドの秘密基地へ!歓迎するわ~」

 

 そう言うのは、部屋の一段高い位置にあるデカいシートに腰を掛けていた未春おばさん。すっかり司令官ポジションである。気に入ったんスね。

 

 「おまねきありがとうございまーす!」

 

 近づいてきた小町とイェーイ!とハイタッチをする。大概ノリのいい人だ。

 

 「総二くんも愛香ちゃんもイェーイ!」

 

 とてとて二人に近付く小町。身バレした総二は些か気まずそうな顔で、愛香は仕方ないわねといった感じで応える。一番年下の小町は幼なじみの中でも妹ポジションだからな。可愛いから仕方ない。

 

 「やや、あなたがトゥアールさんですね。お兄ちゃんの妹の小町です。よろしくお願いします」

 

 目敏くトゥアールを見付けた小町は挨拶に向かう。初対面の人間に物怖じをせず友好的に接するのは、兄贔屓抜きにしても素晴らしい才だと思う。俺?大概怖がられて逃げられるよ。

 

 「これはどうもご丁寧に。ええ、私がトゥアールです。この度はご足労いただきありがとうございます」

 

 「ふぉぉぉぉぉ!お兄ちゃんすっごい美人さんだよ!それでいてものごし柔らかで天才科学者なんて完璧超人だよ!」

 

 ウェヒヒヒヒと、ここに来てまたテンションアゲアゲな小町。最近頓にその兆候が出て来たが、どうやら小町は神堂やトゥアールの様な見目麗しい女の子大好きなようだ。小町ちゃん、貴女、総二よりも男子していない?将来がちょっぴり心配である。いや、余計な毒虫に靡くようなことがなくていいのか?

 

 「おう、外面は完璧だな。だがそいつはロリコンで痴女の変態不審者だ」

 

 アルティメギル監視衛星に“ようじょ”なんて名付けるぐらいだからな。

 

 「は?いやなに言ってんのさ」

 

 「そうですよ失敬な!ただ少し、幼くて可愛い女の子が好きなだけなんですぅー!あと、痴女じゃありませんー!ヘタレな愛香さんと違って自分に正直なだけなんですぅー!総二様が好き過ぎてムラムラして童貞を食べに行きたいだけなんですぅー!」

 

 「おのれはなに言っとんじゃ!」

 

 童貞喰い発言と、ヘタレ呼ばわりされた愛香による怒りの鉄拳制裁が決まる。いいぞ、愛香。小町の前で下品な事を言ったんだ、もっとヤれ。

 

 「ギブギブギブギブギブギブ!小町さん、美人で有能なお姉さんがピンチですよ!助けて下さい!」

 

 腕ひしぎ十字固めを極められ開いてる手でタップしながらも、この場にいる救い手になりそうな人物に縋るトゥアール。俺達には今更でも、小町にとっては初見だからな。そこに一縷の望みを賭けたのだろう。

 

 だがな、小町の目は美人で有能なお姉さんから、残念なナマモノを見る目になっている。いや、残念っぷりならさっきの小町も大差ないけどな。

 

 

  ・   ・   ・

 

 

 「さて、小町さんに来ていただいた事ですし、まずは事のあらましから説明しましょう」

 

 トゥアールは今迄の痴態がなかったかの様にキリッとした態度で始める。その切り替えの速さは羨ましい。

 

 そうして、自分の素性やアルティメギルの正体など、俺達に語ったことをあらためて小町に伝える。話が終わった頃には、やらかした檀黎斗神を見るような小町の目も元に戻っていた。

 

 「なるほどなるほど。だいたいわかりました。精神力をエネルギーにしたのが属性力(エレメーラ)。セルメダルみたいなもんですね。それで、ツインテールが最強の属性力で、この世界での最強の適正者が総二くんだと。アンデッド融合係数みたい。ケンジャキみたいにならないよね?あと、その欲望(属性力)をコアにして生まれたヤミーみたいなのがエレメリアン。ライフエナジーみたいに精神エネルギーを食べるから、吸収された人間は無気力になっちゃう。そしてそんな怪物が集まって出来た悪の組織(ショッカー)みたいなものがアルティメギルなんですね!」

 

 流石、俺の妹、素晴らしい理解力だ。

 

 「うわー、兄妹揃ってまったく同じことを言ってますよ」

 

 「似た者兄妹だからな」

 

 珍しくげんなりした表情のトゥアール。慣れている総二は平然としたものだ。

 

 「よっくわかりました。トゥアールさん、今まで大変でしたね。これからは不肖・比企谷小町もお手伝いします!」

 

 ガシッとトゥアールの手を握りしめ、ずずいと小町は迫る。あまりのオシの強さに、普段は飄々としてキャラ強めのトゥアールが負けている。やはり小町が最強。小町しか勝たん。

 

 「ん、んん。では早速、一つお聞きしたいことがあります」

 

 咳払いをして調子を取り戻そうとするトゥアール。どうした?流石の痴女も小町の可愛さには勝てなかったか?さすこま。

 

 「聞きたいことは他でもありません、総二様の正体を見抜いた事です。本来ならイマジンチャフの効果により無意識下で正体を認識出来ないようになっています。テイルギアを調べ直しても正常に機能しており、現に世間でもテイルレッドの事は謎の少女としか報道されていません」

 

 そこで一旦言葉を区切る。

 

 「確かにイマジンチャフには弱点はあります。ですが、それはあくまで変身前の容姿を知っていればというもの。ここまで容姿が変わる総二様は例外になります」

 

 まぁ、幼女になっちゃうからな。一目で総二と気付くのは不可能だわ。

 

 「それなのに、小町さん、貴女は気付いた。これはテイルレッドの正体の秘匿性において由々しき問題です。テイルギアを万全な状態にする為にもお答えください」

 

 「うーん……なんでって聞かれても、なんとなく?」

 

 小町は腕を組み首を傾げる。

 

 「テレビ見てたら、テイルレッドの慌てぶりがなんか総二くんっぽいなー、って思って?そう思ってたら総二くんにしか見えなくなって、お兄ちゃんにカマをかけてみたら案の定?」

 

 自分でもよく分からないのか、うんうん唸りながら答える。

 

 「しいて言えば、長年幼なじみでいた違和感から、とか?あ、これ小町的にポイント高い!」

 

 ここで小町の謎ポイントが発動。くっ…、総二に加算されてしまった。もっと稼いで差をつけねば。

 

 テイルギアの修正という点では、あまり当てにならなかった回答にトゥアールはがっくり。

 

 「まぁ、身内だから分かったって事で、技術的な問題じゃなかったからいいんじゃねぇの?」

 

 取り敢えずフォローしておく。だが、トゥアールはお気に召さなかったようだ。

 

 「絞り滓とはいえ精神生命体であるアルティロイドを倒してしまう八幡さんに、イマジンチャフをそれもテレビ越しですら突破してしまう小町さん。本当になんなんですか、貴方たち兄妹は⁉」

 

 あらやだ、俺にも飛び火?何って言われても、それはまぁ━━━

 

 「俺はお兄ちゃんだから」

 

 「小町はお兄ちゃんの妹ですから」

 

 これしかないよな。

 

 「この兄妹に関しては深く考えるだけ無駄よ」

 

 まだ何か言いたげなトゥアールに対して、溜息をつきながら愛香が答える。

 

 「八兄さんはあれでやること為すこと全部がハイスペックだし、その八兄さんの影響受けまくりな小町が普通なわけないでしょ」

 

 「まぁ、トゥアールとはベクトルは違うが、八兄も天才なところがあるからな」

 

 おいおい、そんなに褒めたって何も出ないぞ。

 

 ……家の冷蔵庫に作ったフルーツタルトがあったな。今のうちにおやつに持ってくるか。

 

 

  ・  ・  ・

 

 

 「コホン、失礼しました。科学者としてあるまじき事態に思わず取り乱しました」

 

 総二と愛香に宥められて落ち着いたようだ。うんうん、科学者はクールであるべきだ。沸騰したお湯は蒸発するだけだからな。

 

 「じゃ、落ちついた所で一旦休憩にしましょうか。八くんがフルーツタルト持ってきてくれたわよ」

 

 コーヒー入れるわね、と未春おばさん。いつの間に備え付けたのか部屋の片隅にあるコーヒーマシンへと向かう。あれもトゥアールが作ったのか?

 

 「おー、八兄のタルトか。美味いんだよな、あれ」

 

 嬉しいこと言ってくれるね、総二。料理人にとって美味いが何よりも一番の感想なんだよ。

 

 「ほんと、いくらでも食べちゃえるぐらい」

 

 だがな愛香、ワンホールは食いすぎだと思うんだ。食いそびれた総二との喧嘩はまだ記憶に新しい。

 

 「そんなに美味しいんですか?」

 

 とは、俺の料理の腕を知らないトゥアールの疑問。

 

 「もちろんです。腕もプロ並みですよ」

 

 ちらりと俺を見て小町が答える。おっと、このフリは。

 

 「プロ以上って言ってもらいたいね」

 

  ズビシと指さして、天道総司風(元ネタ通り)に答える。

 

 メカメカしい秘密基地には似合わない和気あいあいとした団欒風景があった。

 

 だが、突如鳴り響く警報音。なんてタイミングの悪さだ。その音を聞いたトゥアールは急いでコンソールの前に行き手早く何かを操作する。パッ、と正面のモニターが切り替わり、外の景色が映る。

 

 「エレメリアンの反応がありました!場所は、千葉県・幕張メッセ!」

 

 何!俺の心の故郷・千葉にアルティメギルの魔の手が迫っているだと!おやつタイムはお預けだな。

 

 「総ちゃん、出動よ!」

 

 「おう!」

 

 未春おばさん司令官の要請により勢いよく立ち上がる総二。そして、右手のテイルブレスを胸の前に掲げ、

 

 「テイルオン!」

 

 変身のキーワードを唱えた。キーワードが認識されると共に、テイルブレスの機構が作動しコアパーツである属性玉が解放される。発生した炎の渦に包まれる総二。だが、それも一瞬の事。炎がかき消されると、真紅の戦闘服を纏った幼女・テイルレッドが現れる。

 

 くぅ~、やっぱ変身シーンはこうじゃないと!

 

 「ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!ほんとに総二くんがテイルレッドになっちゃったよ!うわぁ!ちっちゃい!めちゃくちゃ可愛い!ねぇねぇ、小町お姉ちゃんって言ってみそ?」

 

 小町ちゃんまたまた大興奮。なんなら今日一番のテンションまである。欲望が駄々漏れだ。小町ちゃん落ち着きなさい。お兄ちゃんちょっぴり恥ずかしいよ。

 

 「行ってくる!」

 

 そんな小町の痴態を気にするでもなく、テイルレッドは基地の壁に設置された空間跳躍カタパルトに向かう。これはトゥアールが手にしていたゾーンメモリ、もとい転送ペンを強化したものである。携行性はなくなった分、せいぜい数十kmだった転送距離の制限がなくなり、世界中どこへでも移動できるようになった。これなら、例え外国にアルティメギルが出現しても瞬時に駆けつけられるってわけだ。

 

 「戦況は逐一こちらでモニターしております。総二様は戦う事だけに集中を」

 

 「そーじ、気をつけなさいよ!」

 

 「総ちゃん、ファイトよ」

 

 「総二くん、小町も応援してるから頑張ってね」

 

 「おう!」

 

 出動するテイルレッドに各々がエールを送る。

 

 俺はただ無言でサムズアップをする。それにニッと笑いサムズアップで答えるテイルレッド。男同士はこれぐらいでいいんだよ。片方は今女の子になってるけど……

 

 極彩色の光に包まれ転送されていくテイルレッド。それを見送りながら、俺達はこれから起きる戦いに思いを馳せるのであった。

 

 あんま、弩級の変態じゃなきゃいいけど………

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