テイルレッドを見送った後、モニターに目を移す。画面上には、俯瞰風景で眺められた巨大な建造物が映されている。
流石、千葉が誇る日本最大級のコンベンション施設だけある。マクシーム
つーか、また展示場か。アルティメギル侵攻の三回中二回がコンベンション施設だな。何、自分達の侵略は展示会のつもり?どれだけ顕示欲強いんだよ。既に一度失敗してんだから、今回も契約は諦めとけ。
そんな間抜けな
空いてるシートに座りコンソールをポチポチいじる。しばらく構っていればサブモニターに別アングルの拡大映像が現れた。よし、これで見やすくなった。
「なんでさらっと使ってるんですか⁉」
その様子を見ていたトゥアールが素っ頓狂な声を上げる。今日はツッコんでばかりだな。いつもの色ボケキャラはどしたの?
「なんでって……お前が使ってるの見て覚えたから。こんなもん基本はどこも同じだろ?」
別に脳波やら視線誘導でコントロールしてるわけでもない。それならこの手の物は似通ってくる。外国だろうが異世界だろうが大差はないだろう。
それに、昨日と今とトゥアールが実際に動かしているところを見たんだ。百聞は一見に如かず、使えん道理はない。
「お兄ちゃんずるい。小町にも教えて!」
「便利そうだし、私も覚えようかしら」
他の機能を確認する為にカチャカチャしていると、面白いもの好き二人が寄って来た。
アルティメギルがどれだけの数がいるかは知らんが、これから暫くの間は戦い続ける事になるだろう。だったら、ここにいるメンバーが覚えておいても損はない。
トゥアールは博士ポジションだからな。オペレーターまでやらせるのはアレだ。本家のスーパー戦隊では割と兼任しているが、流石に現実でそれをやると無理が祟る。
「もう!この人たちはもう!」
「あんたも振り回される側の苦労が分かったでしょ。だったらこれからは少しぐらい自重なさい」
そんな俺の心を知らず、地団駄を踏むトゥアールは愛香に窘められていた。あらいやだ、トゥアールちゃんってば落ち着きがないわよ。
そんな二人を尻目に、レクチャーをしつつエレメリアンの確認をする。そうこうしている内にテイルレッドが到着したようだ。
対峙するのは、余計な肉が削ぎ落とされたスラリとした細身の人型。それでいて、どこかヌルリとした嫌らしさがある。
「これって何の怪人なんだろうね?」
今までいた奴らからして、こいつにもなんらかのモチーフとなる生物がいるのだろう。こいつ等のリーダーはドラゴンっぽいし、トカゲ、カメと続いたからおそらくは爬虫類系のエレメリアンのチームだな。
「角みたいな棘があるし、角トカゲかイグアナとみた」
そこはかとない自信を込めて言う。さて、正解は?
奴は暫くの間テイルレッドに見惚れていたが、やがて万感の想いを込めて言葉を紡ぐ。
『嗚呼、ようやくお会いできましたね、テイルレッド。私はリボンに魅せられしもの、フォクスギルディ。以後お見知りおきを…』
「いや、爬虫類じゃないのかよ!」
そこは統一しろよ。つーか、それ、角じゃなくて耳のつもりか。分かり辛いんだよ。思わせぶりな姿格好で騙しやがってこの狐野郎!←言いがかり
「ありゃ、大ハズレだね」
しかも、イケボなのがムカつきに拍車をかける。
なんだよアルティメギルって奴は、どいつもこいつも無駄に良い声しやがって!
「なんかさ、モモちゃんみたいな声だね」
小町は狐野郎の声を聞いてそんな感想を述べる。確かに、この独特のクセのあるイケボは関◯彦さんっぽいな。
「喋り方はどっちかっつーとウラだな」
ナンパするモモちゃんなんて嫌だー、とケラケラ笑う。なんにせよ汚えモモタロスだことで。
「あんたたち兄妹はほんとマイペースね」
比企谷兄妹のライダートークに愛香が呆れ気味だ。
「あらあら、ほんと仲がいいわねー。兄妹ってのもいいわね。総ちゃんの為にもう一人ぐらい仕込んどけば良かったかしら?」
………ノーコメントで。
と、俺達が馬鹿やっている間にも事態は進んでいく。
炎を操るテイルレッドに布製のリボンとは。あれか、ゴーグルピンクのつもりか?お前は声的にモモライダーだろ。
先に仕掛けたのは狐野郎だった。手にしたリボンを投げつける。それで拘束するのかと思いきや、リボンはテイルレッドの周りをくるくる回った後、再び狐野郎の元に戻っていった。叩き落とそうと身構えていたテイルレッドも、何がしたかったのかと疑問を浮かべている。
『おお……これ程のものとは………グフッ!』
なんか勝手に吐血して倒れてやがる。いや本当に何がしたかったんだよ。
『ハァ………ハァ……………、結晶せよ!我が愛!』
息も絶え絶えな様子で叫ぶと、身体から属性力が放たれる。ふわふわと漂っていたリボンに吸い込まれると、目まぐるしく変形し始めた。なんだ、武器でも作る気か?
グネグネと形を変えていたそれは二つに割れ、テイルギアの
『おっ!』
ツインテールに釣られて、テイルレッドの動きが止まる。お前ツインテールなら何でもいいのか。拍手までしそうになってるし。
テイルレッドが見惚れている間にも、そこから頭、身体、手足が形作られやがて完全な人型となる。つーか、これって……
『俺じゃねーか!』
なんということでしょう。ただの布切れが
それにしても、コピーを生み出す敵か。先に戦った二体はパワータイプだったが、ここでテクニックタイプが来たか。この手の輩は厄介だからな。この戦い上手く立ち回らないと厳しいものになるぞ。
『俺の力をコピーしてるのか?』
『まさか鏡に写した程度のもの。ただの人形です。リザドギルディほどの強大な人形属性を持たぬ私では動かすことも出来ません』
動かせないのかよ。じゃあなんで作ったんだ。
『ですが、動かせなくても姿形はこの通り、ほぼ忠実に』
そう言いながら、慈しむ手つきで人形に触れる狐野郎。
『ひぃぃぃ………』
自分と同じ姿のものが触れられたんだ。テイルレッドはあまりの悍ましさに後退っている。
そこからは奴の独断場だった。人形の手を取りワルツを踊りだす。挙句の果てには風呂上がりのテイルレッドが裸で走り回っている姿を妄想しだす始末。女性陣ドン引きの光景である。現に小町も愛香もゴミクズを見る目をしている。
『うっぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ━━━
!!』
流石に限界なんだろう。テイルレッドは頭を掻き毟り絶叫した。
テラードーパントとは違った意味での恐怖を与えてくるエレメリアン。いや、恐怖というより生理的嫌悪か。なんにせよ悍ましい。
つーか、気持ち悪い。キモいじゃなくて、気持ち悪い。隣で愛香もキモいキモいと呟いている。俺が言われているわけじゃないが、こうも横で連呼されると心に来る。
「総二様!そんな紛い物、粉々にしてしまえばいいんです!」
見兼ねたトゥアールが通信を入れる。
まぁ、奴も妄想の源がなけりゃこれ以上続けることは出来んだろ。真実を惑わせる鏡なんて割ればいい、って龍騎でも歌ってたしな。
「ねぇ、お兄ちゃん。そもそも、総二くんってツインテールに攻撃できるの?」
ふと、小町が疑問を口にする。
「いや、いくら総二がツインテール馬鹿でも流石に大丈夫だろ」
あくまで人形だし、見た目は自分なんだ。現にテイルレッドも壊す為に、トカゲ野郎の属性玉を使おうとする。
だが……
『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!出来ねぇ!例え偽物でも俺にツインテールを壊すことなんて出来ねぇ!』
え?マジで。総二のツインテール馬鹿は想像以上だった。ただのツインテール馬鹿じゃねぇ!ド級のツインテール馬鹿、ドツインテール馬鹿だよ!ドツイてやろうか馬鹿!
『やはり貴女は本物だ!そう、これはただの人形に過ぎない。ですがツインテールを愛する貴女……最強のツインテール属性を持つ貴女にはツインテールを破壊することは出来ません!』
がくりと膝を付くテイルレッド。狐野郎はそれを見ながら嬉しそうに人形を愛でるのを再開するのだった。
あれ?これってもしかしなくて超ピンチじゃね?