俺がお兄ちゃん属性なのはまちがっていない。   作:八重垣八雲

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3-6 戦慄のB/二人はツインテイルズ

 戦い終わって翌日の朝。勤勉な学生たる俺は妹&幼なじみ's+おまけで登校をしていた。

 

 話題は勿論昨日の戦闘に関して。今朝のニュースにも大々的に取り上げられてたからな。

 

 

 ━━━涙目のテイルレッドが。

 

 

 鮮烈なデビューを飾った筈のブルーは隅っこに追いやられおまけ扱い。偶に取り上げられたと思えば、目に余る程の暴力性故にレッドの仲間かは不明とまで言われる始末。まぁ、レッド人形顔面クラッシュを見られていたからな。残念ながら当然である。

 

 「納得いかない!なんであたしの扱いがあんなんなのよ!」

 

 当然ながら変身者たる愛香はご立腹。さっきからぷりぷりと憤慨している。

 

 「うわー……、ネットでもいろいろ書かれてるよ」

 

 スマホでエゴサをしていた小町が呟く。

 

 「歩きスマホは危ないからやめなさい。んで、なんて書かれてるって?」

 

 軽く窘めながらも、小町が差し出したスマホを一斉に覗き込む。某掲示板のまとめサイトみたいだが、内容はまぁ酷いものだった。暴力性云々についてはあれだが、特に目につくのはブルーの胸についての書き込み。貧乳を揶揄する事ばかり書かれている。

 

 「……おいおい、愛香に貧乳ネタって。命が惜しくないのか?」

 

 思わず総二がそんな言葉を零す。

 

 「あ゛?」

 

 その言葉に対し愛香の睨みが入る。怖っ━━そういうとこだぞ、愛香。

 

 「うぷぷ…、愛香さんが貧乳なのは事実ですから。周知されたところで今更……アギャア!」

 

 そして、トゥアールはさらに余計なことを言ってテンプルを鶴頭で打ち抜かれて悶絶している。昨日床に沈められてずっと眠ってたのに、懲りない奴だ。

 

 登校風景にさらっと混じっているトゥアールだが、今日から転入してくるらしい。今朝初めて聞いたんだが、転入試験なんていつ受けたんだ?

 

 なんにせよ、これからは更に騒がしい登校風景になりそうだ。

 

 「なんかお兄ちゃんっぽいのも書かれてるよ」

 

 愛香とトゥアールのじゃれ合いを総二と共に眺めていると、まだスマホを構っていた小町が新たな情報を口にする。

 

 「どうせウォズがいたとかそんなんだろ?」

 

 祝福するのはこれで二回目だが、我ながら渾身の出来だったからな。話題になるのも仕方ない。

 

 「んーん、そうじゃなくてさ。小町を助けた時に虐殺したでしょ?」

 

 「虐殺ゆーな」

 

 そこまでしてねーよ。せいぜい抹殺ぐらいだ。

 

 「んで、それがどうしたよ」

 

 「その時の動画はなかったけどさ、目撃者はいたんでしょ?なんか話に尾ひれが付いてテイルブルーの正体がお兄ちゃんじゃないか?ってなってる」

 

 「いやなんでだよ!」

 

 何処をどうトチ狂えばそんな話になるんだよ。

 

 「どんな尾ひれが付けばあたしが八兄さんになるのよ!」

 

 もう一人の当事者たる愛香も大層ご立腹だ。まぁ、自分の正体が男だと言われたらさもありなん。

 

「んーとね、簡単にまとめると、

 一つ ブルーは胸ない癖に露出高い、もしかして男?

 二つ レッドが初めて目撃された時、一緒に大暴れした男がいたらしい!

 そして三つ ブルーの正体は女装したその男に違いない!

 だって!」

       

 オーズ風にまとめる小町。長々と説明されるよりも分かりやすい。

 

 「間違えるにも無理が有りすぎだろ……。そもそも体格が全然違う」

 

 互いに細身ではあるが、男である分俺の方がガタイはいい。身長自体も頭一つ分差があるし。

 

 「そうだよね。愛香ちゃんよりもお兄ちゃんの方がおっぱい大きいし」

 

 小町はケタケタ笑いながら言う。おっぱい言うな、俺のはまな板じゃなくて胸板なんだよ。

 

 「小町ぃ〜バカな事言うおくちはこれかしら〜!大体あんたも変わんないでしょ!」

 

 「いひゃいいひゃいいひゃいいひゃい!ひゃひゅけへほにぃひゃん!」

 

 青筋を浮かべた愛香が小町の両頬をぐにーっと引っ張る。おー、すっげー伸びるわ。

 

 そんな風に和気あいあいと通学路を歩く。学園に近付き登校する生徒が増えてくると、総二の視線がキョロキョロと辺りを彷徨い出した。

 

 「そーじ、さっきから女の子ばかり見て、どうしたのよ?」

 

 そんな様子を見て咎めるように愛香が言う。若干ご機嫌斜めなのは、他の女子に目移りしているからか。

 

 「いや、気がかりなんだ。ツインテイルズの影響でツインテールにする子が増えている」

 

 総二の言う通り、ツインテールにした女子が矢鱈と目に入る。今までなら一学年につき十人いればいい程度だったものが、一グループに一人はいる。増えすぎだろ。

 

 「ニュースでもそんな事言ってたな。だが、総二的には目の保養だろ?」

 

 「勿論!」

 

 力強く返事をされる。その迷いのなさはすげえよ。

 

 「なんでこんなに増えてんのよ。あたしも焦ってきたわ………」

 

 「焦る?何で?」

 

 ぽそりと呟かれた言葉に総二は疑問符を浮かべる。その言葉にさっきまでの疑問もすっ飛んだのか、にぶにぶムーブしながらも無意識に愛香のツインテールを弄りながらわちゃわちゃお喋りをしている。

 

 「かーっ!見てよお兄ちゃん!甘酸っぺえ!小町朝からお腹いっぱいだよ!」

 

 「かーっ!見て下さい八幡さん!卑しか女です!」

 

 そんな二人を見て正反対な反応をする小町とトゥアール。いや、見りゃ分かるから二人して背中をバシバシ叩くな。地味に痛いんだよ。

 

 つーか、トゥアール、見てくれはいいんだから痴女らず接すればあのくらいの雰囲気は作り出せるんじゃねぇの。知らんけど。

 

 「そういや神堂会長もツインテールにしたの最近なのかな」

 

 「何でいきなり会長の話になんのよ⁉」

 

 愛香の疑問もご尤も。自分の髪を触っていたと思えばいきなり別の女の話だ。愛香的にはポイント低いんじゃねーの?

 

 「いやだって、あんな凄いツインテールの人がいたら中等部の頃から絶対気付いていた筈だしさ」

 

 「神堂は高等部からの編入組だ。初めて会った時からあの髪型だったから、少なくとも一年前からツインテールだな」

 

 総二の疑問に答える。俺がこの面子で一番神堂に関わりあるからな。

 

 ひと目見た時から優雅で蠱惑的な美事(みごと)なツインテールだったしな。総二じゃないが心奪われたってやつだ。

 

 「転入して半年で高等部の顔になったんでしょ?すごいよね」

 

 「へぇー、そんな凄い人だったんだな」

 

 自慢の友だちだ。そんな神堂に恥じないよう、俺も立派なお兄ちゃんにならんとな。

 

 「でもどうでしょう。凄くいい人に限って、意外と腹黒いんですよ。あのツインテールも狙ってるというか…、あざといというか……「は?言うに事欠いて俺の天使に向かって腹黒いとは何様のつもりだあいつはちょっと世間知らずなとこはあるが頑張り屋で芯の通った尊敬できる女の子なんだよそれを狙ってるとかあざといとかってあれは可愛いって言うんだよお分かりかあん?」ぴぇ!」

 

 「あれだけ愛香に殴られても懲りてないトゥアールが怯えてるぞ……」

 

 「ていうか、聞いたこともない鳴き声あげてんだけど……」

 

 「お兄ちゃんがそこまで慧理那さんの事を想ってるなんて!これはお義姉ちゃん決定だね!」

 

 外野が何か騒いでるがそんな事はいざ知らず、この不届き者に対し神堂が如何に素敵な少女かOHANASHIするのだった。

 

 

   ・   ・   ・

 

 

 「カワイイエリナサンカワイイエリナサンカワイイエリナサン………」

 

 滾々と説明した甲斐あってか、神堂に対する誤解は解けたようだ。その結果、同じ言葉を延々と繰り返すだけになったが、そんなもんは大した問題じゃない。天使を称える聖句みたいなもんだろ。

 

 「八兄、トゥアールが同じ言葉しか喋らないんだけど…」

 

 「そう?いつも程騒がしくなくていいじゃない」

 

 「うわ…、流石に洗脳はやりすぎだよ…」

 

 問題ないったらない。

 

 「おはようございます!皆様、いい朝ですわね!」

 

 「会長おはよー」「おはよーございまーす」「朝から会長に会えてラッキー」

 

 微妙な空気を割くかの様に、後ろから聞こえる可憐な声。振り返れば、件の神堂が登校する生徒たちに挨拶を交わしながら歩いてくる。

 

 「ほれ、ああやってすれ違う生徒一人ひとりと挨拶してんだよ。生徒会長だからって中々出来ることじゃない」

 

 こうした行動の積み重ねで、あそこまでの人望があるんだろうな。

 

 勘違いする輩を量産しそうだが……。神堂、罪深いぜ。

 

 「副会長のお兄ちゃんはしないの?」

 

 「俺だぞ?するわけないだろ」

 

 「なんで自信満々なのよ……」

 

 今でこそ人前に立つことが増えたが、基本コミュ障の俺だ。なんで見ず知らずの他人に率先して声掛けなきゃならん。

 

 よしんばやった所で、目つきの悪い男子高校生に突然挨拶された、って不審者メールが回るだけである。通報されちゃうのかよ。

 

 「あら、比企谷君?おはようございます!」

 

 こちらに気付いた神堂がぱたぱた駆け寄ってくる。合流する為に歩調を緩める。

 

 「おう、神堂、おはようさん」

 

 「おはようございます、慧理那さん!」

 

 「「おはようございます」」

 

 「カワイイエリナサンカワイイエリナサンカワイイエリナサンカワイイエリナサン………はっ!本物の天使!?」

 

 「はい、おはようございます」

 

 挨拶しながら神堂にぎゅっと抱きつく小町。神堂も笑顔で受け止めている。天使と天使がハグしている。ここが天国かな?

 

 バグってたトゥアールも神堂の声を聞いて直ったみたいだ。エリナエルの声には人を正気に戻す力が宿る。

 

 「そーいや、初対面だし紹介しとくわ。俺の弟分&妹分の観束総二と津辺愛香、あと転入生のトゥアール。んで、知っての通り生徒会長の神堂だ」

 

 「まぁ、貴方たちが!比企谷君からお話は伺ってますわ」

 

 よろしくお願いしますしますわ、と胸の前でぱんと手を合わせ挨拶をする神堂。可愛い。

 

 「よろしくお願いします。……八兄、俺達の事、なんて説明したんだよ」

 

 「まさか変な事言ってないでしょうね?」

 

 おやおや、弟達からの視線が厳しい。安心しろ、そこまで変な事は言ってない。多分。

 

 「ふふ、ご安心なさって。自慢の弟たちだ、と仰ってましたわ」

 

 にこにこ笑顔のままフォローを入れてくれる神堂。その言葉に納得したのか、総二達からの訝し気な気配は止んだ。少しはお兄ちゃんの事を信用してくれてもいいんだぞ。

 

 「日頃の行いの差だよ」

 

 ご尤もで。

 

 「それにしてもご機嫌だな。どしたの?」

 

 話題を変えるように神堂に尋ねる。基本穏やかな笑みを浮かべている神堂だが、今日はいつにも増してその笑みが深い。

 

 「ふふ!テイルレッドに仲間がいると分かって、嬉しいんですの!」

 

 よくぞ聞いてくれました、とばかりに神堂は答えた。2号ライダー、もとい新たなツインテールの戦士が参戦したからな。特撮好きには納得な理由である。

 

 「そうよね!そうよね!ブルーだって━━」

 

 その言葉を聞いて前のめり気味になる愛香。テレビやネットで散々いらない子扱いされていた中、ここに来てまさかの好印象だからな。厄介ファン並みに食いつく。本人だけど。

 

 「━━━ええ、本当に良かったですわ。テイルレッドが一人きりで戦い続けなくて………」

 

 そんな愛香の様子を不審に思うこともなく、神堂は言葉を続ける。そんな神堂の様子に愛香も静かになる。

 

 「例えどんなに強くても、一人ぼっちではいつか辛くなってしまいわすわ。でも仲間がいれば、支え合っていけますもの。わたくしたちがいくら応援しても、本当の意味では支えられない………」

 

 確かにその通りだ。いくら応援するとは言っても、それはあくまで言葉のみ。実際に手を差し伸べているわけではない。俺達も秘密基地が完成するまでは横で見てるぐらいしか出来なかったからな。

 

 「わたくしにも比企谷君の様に立ち向かう力があれば…、そう思うこともあります。だからって比企谷君は危険な事はしないでくださいね」

 

 やらかしたのは最初の時だけだ。今の所は大人しくしているだろ?なお、やらないとは言ってない。

 

 「ですから、テイルレッドに仲間がいてくれて、本当に嬉しいんですの」

 

 単に特撮好きだからか、それとも名家たる神堂の娘だからかは分からない。神堂は、ヒーローの━━━強者の苦悩というものを知っている。だからこそ、テイルレッドが孤独くに戦わないでいい事をこれほど喜べるのだろう。

 

 俺がでっち上げたテイルレッドのカバーストーリーの性もありそうだけど………。やばい、罪悪感が湧いてきた。

 

 「会長は本当にツインテイルズがお好きなんですね」

 

 「この年で変だと思われるでしょうが………わたくしヒーローに憧れていますの。特撮番組を見たり、玩具を買ったり……」

 

 恥ずかしそうに笑いながら神堂は言う。確かに、花も恥じらう女子高生の趣味が子供向け特撮番組というのは、気恥ずかしく感じてしまうかもしれない。

 

 だが俺は知っている。この神堂慧理那という少女は、小学生以下のお子様対象(合言葉キャンペーン)で特典を貰う剛の者だという事を。例の如くメイドさんの目を掻い潜って抜け出しおもちゃ屋に一人突撃していった事を。慧理那ちゃん十歳として元気よく店員に合言葉を伝えていた事を。首尾よく貰えて大喜びしていた事を。

 

 まさか神堂も、俺に目撃されていたとは思うまい。見なかった事にしたのは正解だったな。

 

 と、一人納得している間にも会話は続いていく。

 

 「大丈夫です、会長。むしろ俺達は見慣れてるんで」

 

 「そうね。憧れすぎて実行してるのがいるぐらいだし」

 

 見慣れるほど特撮を語り、憧れるままパーフェクトお兄ちゃんを目指す奴。どうも俺です。

  

 「ふふ、そうでしたわね」

 

 神堂は総二達からの返答にたおやかに笑う。

 

 「実はあの日も、メイド達の目を盗んで出掛けたら襲われてしまいましたの。小町さんも巻き込んでしまってごめんなさい」

 

 小町に聞いた所、マクシーム宙果の隣にあるおもちゃ屋にいて巻き込まれたらしい。あの日は新作アイテムの発売日だったからな。

 

 「いえいえ、小町も慧理那さんに庇ってもらいましたから。それに兄が助けてくれましたし」

 

 「ええ、あんなに必死な表情を浮かべて、恐ろしい怪物相手でも一歩も引かないで……。それなのに、わたくしたちにはあんなに優しい声で髪を撫でてくれて……」

 

 そういや、どさくさで神堂の髪を触ってしまっていた。大丈夫だよね。セクハラにならないよね。

 

 「比企谷君もわたくしたちのヒーローですわ」

 

 ほにゃり、と神堂が微笑む。セクハラにはならなかった様だが、その笑顔にむず痒くなり首の後ろを掻く。気恥ずかしさを誤魔化すように話題を逸らす。

 

 「あー、神堂は応援するしか出来ないって言ってたが、アルティメギルからの避難誘導とか色々考えてんだろ?そういうのだって十分助けになるだんじゃねーの。総二もそう思うだろ?」

 

 そう言って総二に会話を繋げる。なんてったって、ここには素顔の戦士がいるからな。

 

 「ああ、八兄の言う通りだ。それに、テイルレッドも……ブルーだって、会長みたいに応援してくれる人がいるだけでありがたいと思っている。支えになっている筈だよ」

 

 身内以外の純粋なファンの声に真摯に答える総二。

 

 良かったな、神堂。テイルレッド本人からのお墨付きだぞ。

 

 「ありがとう。比企谷君、観束君も」

 

 神堂は静かに微笑んだまま礼を言った。その笑顔、Priceless。

 

 

 「ほれ、いつまでもくっちゃべってると遅刻しちまう。そろそろ行こうぜ」

 

 「わたくしもご一緒しても?」

 

 「どうせ向かう場所は同じなんだ。神堂の好きにすればいい」

 

 「なら、好きにさせていただきますわ」

 

 何が楽しいのか、くすくすと笑いながら神堂は俺の隣に並ぶ。え、もしかして社会の窓開いてた?それだったら間抜け過ぎんだけど。あ、大丈夫だったわ。

 

 そうして、俺達は肩を並べて学園までの残りの道のりを行くのであった。

 

 

 

   ・   ・   ・

 

 

 

 「ねえ、小町。会長ってもしかして……」

 

 「ふっふっふー。愛香ちゃんの予想通り、最有力お義姉ちゃん候補だよ」

 

 「やっぱり。八兄さんも満更じゃなさそうだし、あとは時間の問題ね」

 

 「でも八兄鈍いからなー」

 

 「そーじ……。八兄さんもあんたには言われたくないわよ」

 

 「総二くん、ギャグとして言ってるなら寒いよ」

 

 「いえいえ、総二様はそのままでいいんです!余計な雌どもに集られるより遥かにマシです!」

 

 「なんでディスられてんの俺!?」

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