俺がお兄ちゃん属性なのはまちがっていない。   作:八重垣八雲

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EX1-2 デート激震!

 愛車を走らせる事二十数分、特にトラブルもなく無事に目的地へと到着した。

 

 途中テンションが上がってFULL FORCEを熱唱していたのは内緒である。運転中歌いたくなるのはなんだろうね、あれ。

 

 んで、あの日振に来たマクシーム宙果だが、やはり戦闘の傷跡が残っており至るところに規制線が貼られている。とは言っても広大な敷地面積を誇るだけあり、駐車場の半分とメインホール以外は無事である。今日のイベントはその無事だった小ホールで催されるというわけだ。

 

 徐行し駐車場へと侵入する。ミニイベントと思っていたがそれなりに盛況のようだ。既に半数以上の駐車スペースが埋まっていた。どこか空いている場所はないかしらと探していると、一部不自然にぽっかりと空いたスペースが。その中心にはなんか見覚えのある超高級車が停まっている。

 

 うん、そうだよね。好き好んで高級車の横に停めたくないよね。まかり間違って傷つけたらと思うと近づきたくないもん。だが、駐車場には次々と車が入っており空いているのは彼処ぐらい。仕方ないか……

 

 溜息一つつき、マシンを横のスペースへと走らせる。なるべく離して駐車をしたら、エンジンを切りヘルメットを外す。圧迫から開放され、頬を撫でる外気が心地良い。

 

 「あら、比企谷君だったのですね。おはようございます」

 

 すると隣の高級車の窓が開き、神堂が挨拶をしてきた。やはり神堂家の車だったのか。まぁ、この辺でこんな超高級車乗っているのは神堂のとこぐらいなもんか。

 

 「おう、神堂。おはよう」

 

 車から降りてきた神堂に挨拶をする。本日の神堂の格好は白のワンピースと、実にお嬢様といった服装である。

 

 「そのワンピースいいな。シンプルだけど襟裳の花の刺繍で華やかさがあって、神堂によく似合っている」

 

 花はすべての女性を輝かせる、っておばあちゃんが言ってたからな。小町にも、まず女性の服装は褒めるように言われてるし。

 

 「ふふ、ありがとうございます。比企谷君のジャケット姿も素敵ですよ。ウインドスケールですのね」

 

 神堂からお褒めの言葉を頂く。そんな事を言われ慣れてないから、少々むず痒い。

 

 「おう、再販かかってたからな。つい買っちまった」

 

 ジッパー閉めれば風を通さないし、バイクに乗る時に羽織るのに丁度いい。

 

 「あの…比企谷君、そちらのバイクはもしかしたら………」

 

 そわそわしながら俺のバイクをチラチラ見る神堂。随分と落ち着きがないが、特撮に続いてバイクが趣味だからというわけではない。

 

 「お?流石神堂、気付いたか。お察しの通りXR250だよ」

 

 「やっぱり!これがあの数多の平成ライダーマシンのベースになったバイク!」

 

 そう、オートバジンを始めとした多くの平成ライダーマシンのベースになった車種である。免許を取ったら絶対コイツに乗ると常々思っていたからな。何度もベース車になる程普及された車種だから、中古品もかなり出回っていた。親父の伝手で割安で入手出来たし。

 

 大の特撮マニアたる神堂もこの車種の事をよくわかってらっしゃる。今も興味深げにあらゆる角度から眺めているぐらいだ。

 

 「あー、よかったらシートに座ってみるか?」

 

 あまりにも楽しそうに眺めているから、ついそう提案してみた。

 

 「よろしいんですの!」

 

 わー、と嬉しそうにハンドルを掴んだ神堂の動きがピタリと止まる。

 

 あ、やべ……。神堂の格好はワンピースな上に、そもそも小学生と見間違えられるほど小柄なんだ。車高の高いオフロードタイプには跨り辛い。

 

 途端にしょんぼりとする神堂。女の子を泣かせることは、男がやってはいけない事の一つだとおばあちゃんが言ってたのに………

 

 「お嬢様……」

 

 そんな神堂に桜川さんが耳打ちをする。途端にハッ、と顔を上げる神堂。え、急に元気になったけど、どしたの?

 

 「すまないが、比企谷。バイクに跨ってくれないか」

 

 次いで俺に伝える。瀟洒なメイド然とした佇まいからは想像の付かないぐらい男前な口調だが、これには理由がある。

 

 最初は神堂にする様に丁寧な口調だったんだが、俺がお願いして神堂のプライベートで接する時は素の言葉遣いにしてもらった。桜川さんみたいなタイプに丁寧に話しかけられるとぞわぞわするんだよな。なんか知らんけど。

 

 「え?まぁ、いいッスけど」

 

 桜川さんの言葉に理由は分からんが了承し、愛車へと跨る。女の子を悲しませてしまった以上、選択肢がないとも言う。

 

 「それでは、お嬢様。失礼します」

 

 そう言うと、神堂を抱えてタンデムシート、つまり俺の真後ろに座らせた。

 

 え何なんでいきなり女子とニケツしてるのちょっと神堂さんそんなにぎゅっとしがみつかないで悲しいぐらいに感触はないけどそれでも柔らかいしあったかいしいい匂いががががが━━━━

 

 「キャーーーーー!お嬢様良かったですね!」「記念撮影しましょ!」「これで奥様に良い報告が出来ますね」

 

 いつの間にかいたメイドさん'sが好き勝手言いながら写真を撮っている。

 

 って、ちょっと待て!奥様に報告って、神堂の母ちゃんに言うつもりなのか⁉あの極妻に出てそうな女傑に!?お宅のお嬢様に不届き者の羽虫が集ってますよ、ってか。やめてー、八幡のライフはもうゼロよ!これ以上は死体蹴りになっちゃう!

 

 

 

   ・   ・   ・

 

 

 

 「ありがとうございます。十分堪能させていただきましたわ」

 

 念願のライダーマシン(無改造)に乗れたからか、神堂は笑顔全開でえらくご機嫌だった。

 

 「おう……、神堂が満足して何よりだよ………」

 

 対する俺は満身創痍。イベントが始まる前なのに既にグロッキーである。帰っちゃ駄目かな?

 

 「さて、そろそろいいお時間ですし、会場に向かいましょう」

 

 ウキウキ気分の神堂。おっと、水を指すようで悪いが肝心な事を聞いてなかったわ。

 

 「そーいや、これって何のイベントなんだ?」

 

 今更ながらの質問だが、神堂はよくぞ聞いてくれましたとばかりほっそりとした人差し指をピンと伸ばす。

 

 「ふふ、なんとテイルレッドオンリーイベントですわ!」

 

 はい?テイルレッドオンリーイベントぉ?

 

 「おい、神堂。テイルレッドが出て来て十日やそこらなんだが、もうイベントなんてすんのか?」

 

 いくらなんでも早すぎない?フットワーク軽すぎだろ。

 

 「いいえ、比企谷君、今やテイルレッドは全世界で話題の中心なのです。イラストを始め、漫画にSS、並びにフィギュア、そういった物が日々生み出されています。ですから、この規模のイベントでしたら開催するのも造作はありませんわ!」

 

 誇らしげに胸を張る神堂。小規模とはいえイベントが開催可能になるなんて、世のオタク共のバイタリティはどれだけなんだよ。もうエレメリアンに匹敵するんじゃね?

 

 だが、それにしても早すぎる。小さかろうがイベントを設営するには人がいる。それなりの人数を集めるんだ、なんらかのデカい後ろ盾がない限り、って………

 

 「あー、もしかしてだが、これって神堂家が関わってる?全力で支援するって言ってたし、このイベントもその一環とか」

 

 「流石に比企谷君には隠し通せませんわね。その通り、このイベントには神堂家が協賛しておりますわ。それだけではなく市、及びマクシーム宙果も積極的に協力しておりますわ。なんと言っても、こここそがテイルレッドが最初に戦った場所ですもの!」

 

 あぁ、市も協力って……、観光資源、それこそ聖地的な感じにするわけね。

 

 「あそこのテイルレッドが勢い余って突っ込んだ場所とかモニュメントになりそうだな……」

 

 「はっ!それは素晴らしい案ですわ!尊!」

 

 「かしこまりました、お嬢様。すぐに手配致します」

 

 思わずポロリと溢した言葉にすかさず神堂が食いつく。そして、あれよあれよという間にテイルレッドが突っ込んだ跡のモニュメントが作られることになった。

 

 スマン、総二。俺の不用意な一言でお前の魚拓モニュメントが作られることになっちまった。でもほら、しっかりツインテールの形が残ってるからお前も見る分には楽しめるぞ。駄目かな?駄目か。

 

 「ふふ、比企谷君のお陰でいい物が出来ますわ。こういった物で注目されて、応援する人が増えれば、きっと支えになりますものね。ツインテイルズのお二人は喜んでくださるかしら?」

 

 ますますご機嫌な神堂に引き連れられ、俺は会場へと向かうのであった。

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