俺がお兄ちゃん属性なのはまちがっていない。   作:八重垣八雲

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4-4 ツインテール・ディサイシヴバトル

 『ふぅむ、初めて見た時から何か引っかかっておったが………。青の戦士よ、その姿を直に見て確信したぞ。やはりあの世界の戦士の差し金であったか!』

 

 『なに?どういうこと⁉』

 

 『その口振では知らぬと見えるな。我らがかつて最も追い詰められた戦があった。その時にたった一人で挑んできた少女が、その衣を纏っていた━━━』

 

 そこから滔々と昔語を始めるドラゴン野郎。

 

 オーズの冒頭風に要約すれば、

 

 一つ。トゥアールが先代のテイルブルーとしてアルティメギルと戦っていたということ。

 二つ。その姿を見た人々により神格化。憧れから姿を真似るために爆発的にツインテールが広がったこと。丁度、今のテイルレッドみたいにな。

 三つ。それによりアルティメギルの餌場が一気に増え、侵略は一気に進んだ。

 

 って感じか。

 

 驚愕の事実に絶句するレッドとブルー。ツインテールの剣技なんて頓痴気により生まれたおバカな空気は一瞬で吹っ飛んでいた。特にブルーは裏切られたとばかりに悲壮な表情を浮かべている。トゥアールの事を訝しんでいた割には、なんだかんだで仲は悪くなかったしな。

 

 「「あー、はいはいそのパターンね」」

 

 それに対して、秘密基地内の空気はお気楽なもんである(比企谷兄妹のみ)。

 

 「大方、属性力(エレメーラ)の制御技術も奴らが意図的に流出させたんだろ。マッチポンプもいいとこだな」

 

 「やり方がエボルトとおんなじだね。ヒーローごっこをしてたんだー、みたいな?」

 

 希望を持たせてへし折るのは、反抗の芽を潰すには効果的な手段だからな。そのへし折ろうとするのをへし折ってやるのが正義(こっち)の役目なんだけど。

 

 「だから、トゥアールさんも一人じゃ勝てないと分かって、こっちの世界に来たんでしょ?」

 

 「ツインテール属性もブルーのがアルティメギルからの流出のもんなら、レッドに渡したのがトゥアール自身の物ってとこか?」

 

 「へー、つまりは継承って事だね。ジオウみたいじゃん」

 

 「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください!私が騙してるとか思わないんですか?」

 

 「なんだ、違うのか?」

 

 割といい線いってると思ってたんだが。長々と語ってこれで外していたとなれば、黒歴史がまた一つ積み重なる。

 

 「いえ、合ってますが……。むしろ当たりすぎて気持ち悪いぐらいなんですが………。貴方たち兄妹のその洞察力はどっから来たんですか?」

 

 「どこ、って……」

 

 そんなもん決まっている。

 

 「「大事な事は特撮で勉強した!」」

 

 二人揃ってサムズアップして答える。

 

 子ども向け番組と侮ることなかれ。複雑な人間関係に人の闇、愚かさ、暗部もしっかり盛り込まれているからこそ、ここまで長年愛され続けてきたんだ。

 

 「この兄妹は………」

 

 頭痛いと言いたげにこめかみを抑えるトゥアール。だが、口元は軽く綻ばせている。

 

 「さて、トゥアール。理解者が出来て喜ぶのは分かるが、まだ何も片付いちゃいない」

 

 「誰が喜んでいますか!」

 

 お前さんだよ。お兄ちゃんの目は誤魔化せないんだよ。

 

 「あいつらなら大丈夫だと思うが、お前もあんなデカいトカゲモドキに好き勝手言われちゃ腹立つだろ?こっちは任せて、ケジメつけてこい」

 

 背中を押してやる。それがお兄ちゃんってもんだろ。

 

 「………お願いします」

 

 トゥアールは一言告げると、開発室からヘルメットをひっ掴みレッド達の元へと向かっていった。

 

 

 「んじゃ、小町。俺もちょっかい入れてくるから、あと頼むわ」

 

 同じく開発室からヘルメットをひっ掴みカタパルトへと向かう。

 

 「小町的には危険な事して欲しくないんですけど………」

 

 ギロリとジト目で睨んでくる。あら、小町ちゃん、かわいいお顔が台無しよ。

 

 「つってもな、あちらさんも本腰入れてるっぽいしな、雑魚戦闘員をわんさか引き連れてきてもおかしくはない。そうなりゃ、いくら総二と愛香でも荷が重い。まぁ、俺が加わった所で焼け石に水みたいなもんだが、ないよりはマシだろ」

 

 お兄ちゃんとしてはほっとけんしな。

 

 「お兄ちゃんは水どころかニトログリセリンだよ………」

 

 あらやだ、爆発しちゃうじゃない。あまりの衝撃で地形が変わるな。

 

 「はぁ…………、小町がバックアップするから絶対に怪我しないでね!約束を破ったらポイント低いよ!」

 

 不承不承とばかりに深い溜息ひとつ。小町のお許しも出たことだし、あらためてカタパルトに乗り込む。

 

 「それは怖いな。だったら、小町に嫌われない為にも全力でやらんとな」

 

 軽口を付きながらも、手にしたヘルメットを被る。小町の操作に伴いカタパルトが音を立てる。視界が極彩色に染まった後に、浮遊感。

 

 覚悟しておけアルティメギル。ここからが俺達のステージだ!

 

 

   ・   ・   ・

 

 

 極彩色の光が晴れれば、視界いっぱいの緑。どう見たって山の中だな。転送は成功したみたいだ。

 

 マイナスイオンで空気がうまそうだ。フルフェイスヘルメット被ってるからまったく分からんけど。

 

 『お兄ちゃん、そのまま真っすぐ進んで、総二君たちはそこにいるから』

 

 小町のナビゲートに従い、木々の茂る山中を突き進む。人里離れて人の手の入らない森は野生の熊あたりが出て来てもおかしくない。まぁ、今の俺なら十分に対抗できるから問題ないけど。それを小学生当時でのしていた愛香はいったい何者だったんだろう?

 

 暫く進めば啖呵を切る幼い声。ここまで来りゃもう目と鼻の先だ。

 

 「ツインテールは、左右の髪を支える頭があってこそツインテールなんだ………。俺達は三人でツインテイルズだ!」

 

 ほーん、レッドの奴、熱い事を言うじゃねぇか。これは俺も負けてられないな。お誂え向きのタイミングだし、全力で祝福するとしますか。

 

 「祝え!」

 

 俺の声が響く。やっぱ喧騒のない山中だけあって、よく声が通るわ。

 

 「今、ここにツインテイルズに新たな仲間が加わった。希望を紡ぐため、己の属性力(アイデンティティ)を次代に託した歴戦の戦士。その名も仮面ツインテール!偉大なる戦士の復活である」

 

 「いや、なんだよその格好!」

 

 俺を視界に収めたレッドからのツッコミ。

 

 I♥弟妹Tシャツ(私服)にフルフェイスヘルメットを装着、紛う事なき不審者ですありがとうございます。町中で見かけたら通報待ったなしだな。

 

 しかも被っているメットもバイク用の物ではなく、トゥアールお手製の特殊な代物。ぶっちゃけ、今トゥアールが被ってるやつのコンパチだな。

 

 違うのは、サイドにあるツインテールを模したウィングパーツがなく、代わりにシールド部分がジオウのインディケーションアイよろしく“オニイチャン”の文字となっている。つーか、めっちゃくちゃ視界悪いな、コレ。

 

 まぁ、通信機能にボイスチェンジャー、簡易的なイマジンチャフが付いてるから背に腹は代えられない。デザインしたの俺だけど。

 

 「ツインテール属性ではないが、それでもただの人間にあるまじき属性力………。貴様、一体何者だ!」

 

 見た目色物枠の闖入者なのに、律儀に尋ねてくるドラゴン野郎。聞かれたからには答えてやらんのは無作法というもの。

 

 「通りすがりの仮面ブラザーだ!覚えておけ!」

 

 世界の破壊者よろしく眼前にカードを掲げポーズを取る。いや、特に意味はないんですけどね。

 

 「キャラがごちゃごちゃで渋滞しすぎよ……」

 

 「つーか、なんだよそのカード」

 

 「何って、俺お手製のツインテイルズカードだ。何枚か刷ってあるし、いるか?」

 

 見た目は俺ツイフェアの店舗特典カードそのまんまだな。ん、俺はいったい何を言ってるんだ?

 

 「いらな………………いる」

 

 レッドは反射的に断ろうとしたが、カッコよくポーズを決めツインテールを靡かせた理想のツインテール(自分)の姿に折れた。それでも羞恥心はあるのか、えらい小さい声で返事をする。俺がお兄ちゃんじゃなきゃ聞き逃しちゃうね!

 

 「何作ってんのよ………。無駄にクォリティ高いし」

 

 「ん?勿論ブルーのもあるぞ」

 

 懐より新たなカードを取り出して見せる。そこには頭上に槍を掲げたブルーの姿。

 

 「へ、へー………、そーなんだー。まぁ、せっかく作ったんだし、あたしも貰おうかしら?」

 

 世間一般からはアルティメギル以上の危険物扱いで一切グッズのないブルーもこれにはニッコリ。興味のないふりをしながらも、目線はカードに釘付け。ういやつめ。

 

 「私、私にもください!ブルーのはどうでもいはいですが、レッドのは言い値で買います!」

 

 どこから取り出したのか、財布を片手に身を乗り出してくる仮面ツインテール。そう慌てなさんな。身内だからタダでやるよ。なんだったら、追加カードとして仮面ツインテールを加えてもいい。

 

 「ほう?ハンドメイドながら既製品と遜色のないクォリティ。どれ、我も一つ頂こう」

 

 なんかデカいトカゲがちゃっかりと貰おうとしているんだが。いや、なんで貰えると思ってんだよ。

 

 「悪いなドラゴン野郎これは良い子な妹たちへのお兄ちゃんからのプレゼントなんだ悪い侵略者のお前らにやるのは一枚もないんだよどうしても欲しけりゃ古巣を潰して清い体になってから出直して来なさいごめんなさい」

 

 癪だったんで、てへぺろウィンクが世界一似合うあざとかわいいクソ女後輩ばりの高速お断り芸を披露してやった。いや、誰だよ後輩。

 

 「くっ………!ならば貴様を倒した後の戦利品として頂こう!来い、アルティロイドよ!」

 

 ドラゴン野郎の合図と共にどこからか雑魚戦闘員が湧いてくる。今までいた十体、二十体どころの騒ぎではない。三桁、下手したら四桁に届くぐらいいるんじゃねぇの。

 

 「どれだけカードが欲しいんだよ!」

 

 レッドの叫びが山中に谺する。まぁ、おそらくは本格的な侵攻の為に準備していたんだろうけど、このタイミングで出されちゃカード欲しさに大人数で強盗する様にしか見えんわな。

 

 「あー、もう!グダグダじゃない!」

 

 「こいつらと戦ってる時は最初からそうだっただろ?諦めろ」

 

 常時ギャグ回のバトルが続いていると思えば、まだ心の安寧は守られる。

 

 「私は戦闘ではお役に立てそうにはありません。下がって援護に徹します」

 

 こんな空気の中でも冷静に状況を把握し、最適な行動を取る仮面ツインテール。普段は率先してグダグダな状況を作る側なのに、こういった時は歴戦の戦士て所か。

 

 「八━━━仮面ブラザーも下がらなくていいのか?」

 

 「ん?ああ、雑魚戦闘員相手なら俺でもどうにかなる。どうせドラゴン野郎はレッドが相手をすんだろ?だったら俺はブルーと雑魚狩りに勤しむだけだ」

 

 むしろ、あんな化物とサシでやり合わなければならないレッドの方が大変なまである。

 

 「いくら雑魚といってもこれだけの数よ。そもそも生身じゃない」

 

 「んなもん、全部避ければどうって事ない。それに、折角のリアルバトライド・ウォーだ。鍛錬にはもってこいだ」

 

 俺はお兄ちゃんだから、妹たちを守護る為の力ならどれだけあってもいいからな。

 

 「それに、小町と約束したからな。怪我をしずに全力でやるって」

 

 「シスコンモードになってりゃ止められないな……」

 

 「ま、あたしもいるし、よっぽどの事はないでしょ……」

 

 二人揃って、やれやれとばかりに首をふる。手のかかるお兄ちゃんでゴメンネ。

 

 俺達がくっちゃべっている間も、ドラゴン野郎は一切手を出すことなく悠然と腕を組み佇んでいる。ホントに律儀だな。

 

 俺達は自然と円陣を組む形となる。

 

 「レッド、お前が最強のツインテール馬鹿ってこと、奴に突き付けてやれ!」

 

 「負けたら承知しないわよ。あることないことねネットに書き込んでやるんだから!」

 

 「ああ!」

 

 三人で拳をコツンとぶつけ合い、それぞれの敵に立ち向かう。うん、なんか剣のOPぽいな。一人足りんけど。

 

 「さて、ブルー。相手は鎧袖一触の雑魚とはいえ数も数だ。どうする?」

 

 視線の先にひしめく雑魚の群れを眺めながら、隣に立つブルーに投げかける。

 

 如何に生身の俺でも潰せる雑魚とはいえ、それは数体の時のみ。千に近い数になると骨が折れるを通り越して、軽く致命傷だ。それだけ数の暴力ってやつは厄介だ。凶暴なスズメバチも数百匹のミツバチによって殺されるぐらいだからな。どうでもいいけど、熱殺蜂球って名前、カッコ良すぎ。

 

 「そんなもん、あたしが突っ込んで掻き回すから、八兄さんが取りこぼしを潰せばいいわ。楽勝でしょ?」

 

 そんな状況でも、なんて事ないようにさらりと言う。俺なんかよりもよっぽど男前だな。ホントにカッコいい妹分だよ。

 

 「突っ込むのはいいが、飛ばし過ぎてへばるなよ」

 

 「そっちこそ、ヘマして怪我しないでよね」

 

 軽口を叩き合いながら眼前の敵へと歩みを進めて行く。

 

 「トゥアールはブルーのバックアップを頼む。小町、行けるな」

 

 『分かりました』『勿論であります!』

 

 オペレーターの二人に声を掛け、一歩また一歩と歩みを進める。

 

 雑魚戦闘員の群れとはもう一体一体の表情を見分けれそうな距離まで近づいた。のっぺらぼうだから分からんけど。

 

 改めて見ると、千体という数の多さには辟易する。大体うちの学園の生徒数ぐらいか。視界にギッチギチで非常に気持ち悪い。集合恐怖症は卒倒するレベル。

 

 まぁ、一万のライオトルーパーを相手取るのと比べればマシだな。数的にも強さ的にも。

 

 何にせよここからが正念場だ。一匹でも逃したらアウト。この場で全て方を付ける。

 

 「絶滅タイムだ!」「さっさと終わらせるわよ!」

 

 各々拳と槍を構えて、敵のひしめく真っ只中へと突撃するのであった。

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