俺がお兄ちゃん属性なのはまちがっていない。   作:八重垣八雲

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4-5 ツインテール・ディサイシヴバトル

 先行するブルーと共に仁王立ちするドラゴン野郎の横をすり抜けて、雑魚戦闘員軍団に突撃する。その際こちらに一切手を出す事なく見逃したのは、武人の吟醸ってやつか。俺だったらすれ違いざまに蹴りの一つぐらい入れてたね。

 

 『アルティロイドの数は987体だよ。ライオトルーパーより少ないからお兄ちゃんたちなら楽勝だね』

 

 大軍の基準でライオトルーパーが出る辺り、流石、兄妹。思考回路がよく似ている。

 

 千近い大軍なら普通は脅威どころでは済まないが、こちとら生身でも一騎当千のブルーがいる。それに俺が加われば戦力比でもこちらが有利。なんかいける気がする!

 

 「ハァァァァーーーーーーーーーッ!!」

 

 先頭集団とぶつかったブルーが手にしたウェイブランスを大きく薙ぐ。清らかな流水を纏った一閃に、最先頭にいた数体が巻き込まれ消滅した。

 

 それでも濁流の如き集団は止まらない。瞬く間にブルーはその奔流に呑み込まれた。それでも果敢に槍を振るい蹴散らしていく。

 

 妹分がキバッてんだ、俺も負けてられない。

 

 だからといって、生身故に囲まれて袋叩きにされたら即アウト。なるべく密度の薄そうな所へと飛び込む。

 

 「疾ッ!」

 

 挨拶代わりに跳び蹴りでダイナミックエントリー。着地と同時についでとばかり両脇の奴らの頭を引っ掴んで後頭部から地面へと激しくベッドインさせてやる。とりあえず三匹。

 

 横からの闖入にブルーに注目していた視線が一斉にこちらに向く。目が付いてないからよく分からんけど。

 

 十把一絡の雑魚といえど、こうもうじゃうじゃした姿を見れば流石に恐怖を抱く。

 

 「最初じゃないけど言っておく。今日の俺はかーなーり本気だ!」

 

 萎えそうな心を桜井流の台詞で己を奮い立たせ敵中へと突っ込む。

 

 話は変わるが、俺達が武術を習うにあたり、愛香のじーちゃん(師匠)より禁じ手と呼ばれる技も習っていた。所謂、殺傷能力が桁違いに高い技でまかり間違っても人に振るわない様にと教えられた。孫娘である筈の愛香は容赦なくトゥアールに使っているが………。師匠…、貴方の教えは届かなかったみたいです………

 

 そんな禁じ手だが、やはり禁じられるだけあってその威力はお墨付きだ。特にこういった化物を相手取る場合には。

 

 目や股間のない奴らには抜手や金的などは効果がない。テイルギア並のパワーがあればぶち抜く勢いで穿てば可能だが、それだったら何処を狙っても変わらん。こいつらに有効なのは関節の破壊、それも延髄や脊髄を狙った兇悪なもの。

 

 「水影(みなかげ)流柔術・水面穿ち」

 

 掴みにくる腕をいなし、すれ違いざまに延髄に肘を打ち付ける。俺が修めた水影流柔術の禁じ手。

 

 ありがとうございます、師匠。師匠からすれば不本意でしょうが、禁じ手を教わったお陰でこうして俺も戦うことが出来ます。今度、仏前に好物を供えます。どうせ愛香が全部食べるだろうけど………

 

 崩れ落ちる雑魚戦闘員を捨て置き、次の相手に対峙する。相手はまだまだ沢山の入れ食い状態。嬉しくないけど。

 

 「おかわりはいっぱい、てか。はやいとこごっつぁんしたいな……」

 

 ぼやきながらも次の相手へ突撃するのであった。

 

 

   ・   ・   ・

 

 

 問:潰しても潰しても減らないものなーんだ?

 

 答:雑魚戦闘員

 

 そんなくだらないなぞなぞが浮かぶくらいに、雑魚どもを処理し続けている。

 

 「あと、何匹だ!」

 

 『754…753になったよ!』

 

 ようやく200匹ってか、そりゃまた315です!

 

 『あ、なんかブルーが大技を使うみたい。上からくるよ、気を付けて!』

 

 「は?上からって何だよ」

 

 言葉につられて空を見上げれば、属性玉変換機構(エレメリーション)・リボンの効果でフォースリヴォンを翼に変えて空に浮かぶブルーの姿。構えた槍の穂先には水の玉が宿り、さながら魔砲少女の様。水の玉はどんどん大きくなり………って、まさか。

 

 ズドン、と轟音を立てて水流が放たれた。迸る奔流が地面ごと雑魚戦闘員を吹き飛ばす。大地ごと・軽く・ぶっ壊れろ(S・L・B)とばかり撃ち出すその姿は某・管理局の白い魔王そのもの。冷やす頭ごと消し飛ばしそうだけど。

 

 そしてそのまま腕を振るい、辺り一帯をふっ飛ばしていく。S・L・Bと思ったらライザーソードだったでござる。あまりもの迫力に首根っこ引っ掴んだ雑魚戦闘員と共に呆っと眺めてしまう。

 

 『お兄ちゃんボケっとしてていいの?そっち向かってるんだけど』

 

 「は!」

 

 小町の言葉で我に返り咄嗟に飛び退く。一拍の後に先まで居た場所を奔流が駆け抜けていった。ギリギリセーフとばかりに額に浮かぶ汗を拭う。見れば傍らの雑魚戦闘員も同じ動きをしていた。あらやだ、引っ掴んだまんまだったわ。速攻で潰しといた。

 

 「ちょっと愛香ちゃん、お兄ちゃん目茶苦茶巻き込まれかけたんですけど」

 

 『八兄さんならこれくらい避けられるでしょ。あと、何よその喋り方』

 

 通信で文句を言ってみればなんともあっさり返される始末。お兄ちゃん、生身なんだけどなあ。

 

 軽く言い合いながらも、お互い手は止めない。押して寄せる雑魚どもを蹴り、薙ぎ、殴り、貫き、穿ち、吹き飛ばす。

 

 あと、何匹だ?体力自慢といえども流石にきつくなってきた。

 

 『残すところジャスト200!』

 

 小町からのカウントが入る。あと四分の一。

 

 『特大の撃つから、取りこぼしたらよろしく!まとめてーーーーーー、オーラピラーーーーーーーーーッ!!!!!!』

 

 ブルーの叫びと共に、間欠泉の如く吹き上がった強大な水の柱が雑魚戦闘員を尽く飲み込み、空へと打ち上げる。

 

 『エグゼキュートウェイブッ!!!!!!』

 

 放たれた一撃は真っすぐ水柱へと向かい、拘束された雑魚諸共吹き飛ばした。すっげ、これ俺のフォローいらないんじゃね?

 

 『残存数0。全部倒したよ、お疲れ様!』

 

 小町の報告を聞きながら、ブルーへと駆け寄る。流石のブルーも疲労困憊か、槍を杖にしもたれかかっていた。

 

 「お疲れさん。ナイスファイトだったぞ」

 

 「ホント、疲れたわよ。八兄さんはまだ余裕そうね」

 

 「まぁ、お前さんよりは働いていないからな。小町、撃墜数はどんなもん?」

 

 『お兄ちゃんの243に対して、愛香ちゃんが744だよ』

 

 だいたい三倍か。

 

 「ほーん、やっぱ愛香の方が倒しまくってるな」

 

 『生身でそんな数値出せるのは十分脅威なんですけど。こわ………』

 

 「十分働き過ぎよ………。流石にタフね」

 

 まぁ、スタミナだけなら勝てると自負しているからな。ステータスにしたら1200/1700/1400/1300/1300ぐらい。超ステイヤー向け。

 

 「ごめん………ちょっときついかも………」

 

 話している内にもブルーはふらふらしだす。流石のフィジカルモンスターも限界か。

 

 「あとは任せて、先に基地に戻ってろ。あっちも決着着きそうだしな」

 

 ちらりと横目で戦いの場を見る。

 

 「うん……、そーじの事お願い」

 

 「おう、ゆっくり休め」

 

 回収の光がブルーを包む。それを確認するとレッドの元へ足早に向かった。

 

 

   ・   ・   ・

 

 

 俺が到着する頃にはレッド側も決着が着いていた。レッドの二刀流グランドブレイザーが決まり、ドラゴン野郎を斬り伏せた。

 

 ドラゴン野郎は身体から紫電を上げながらも、レッドと最期の会話を交わしている。余程レッドとの会話が楽しいのか、雄叫びのように高らかな笑い声を上げている。揃いも揃ってツインテール馬鹿だからか、友情みたいなもんが生まれたのかね。進兄さんとハート様みたいだな。何にせよ今際の際の癖に豪胆な奴だ。

 

 「おい」

 

 ポケットからカードを取り出し手首のスナップを使い投げ付ける。寸分たがわずドラゴン野郎の手元へと飛んでいった。ナイスコントロール。

 

 「これは……」

 

 自分の手元へと来たそれをまじまじと眺めるドラゴン野郎。そこにはさっき渡す事を拒否されたレッドのカードがあった。

 

 「まぁ、なんだ、三途の川の渡し賃替わりだ。せいぜいあの世で自慢しな、ドラグギルディ」

 

 阿呆みたいな理由で侵略してくる傍迷惑な輩ではあるが、一人の武芸者としてこいつの振る舞いには殊更悪く思うところはない。ある意味弟分の最大の理解者たりえたからな、餞別ぐらいくれてやる。

 

 「おぉ……感謝する………ゾンビギルディの様な物言いをする戦士よ」

 

 大切そうに懐に抱きながら感謝の言葉を述べてくる。

 

 つーか、ここでもゾンビギルディか!どれだけ有名なんだよ、そいつ。

 

 「来世(いつか)…また逢おうぞ」

 

 「お前がツインテールを愛する限り…そんな事もあるかもな」

 

 「俺はゴメンだな」

 

 各々別れの言葉を告げ背を向ける。同時に大爆発。こうして、アルティメギルの幹部たるドラグギルディは、散った。

 

 

  ◇   ◇   ◇

 

 

 明けて翌日。

 

 昨日の一大決戦は人知れず行われたからか、どのメディアでも一切報道されることはなかった。

 

 今日も今日とて変わりなく可愛いレッドの映像が流れている。人々は世界滅亡の瀬戸際だったという事を知る由もなく、代わり映えのない日常を送っている。人知れず世界の平和を守護ったって、ヒーロー的にポイント高い。

 

 そんな日常を噛み締めながら、俺達五人は学園へと歩を進めている。総二を取り合い愛香とトゥアールがじゃれ合い、それを見て小町が笑う。

 

 「どうしたんだよ、八兄。遠い目をしながら空なんか見上げて」

 

 「いや、なに、平和だなと思ってな」

 

 「ああ、俺達が護った平和だ」

 

 二人して空を見上げる。

 

 何処までも青く晴れ渡る空は平和な日常を象徴している様だった━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『うわーーーーーはっはっはっは!!ツインテイルズよ!勢いづいているであろうが、そうはいかんぞ!ドラグギルディ様が昇天された今、この場は我らにとっても死地!なんとしても属性力(エレメーラ)は奪わせてもらう!』

 

 空にデカデカと浮かぶエレメリアン(阿呆ども)の面。あーあ、余韻が台無しだよ。

 

 「…やっぱ諦めるわけねぇか」

 

 「もう、毎日ペースになっても驚かないわよ…」

 

 げんなりとする総二と愛香。昨日の今日でこれだから無理もない。 

 

 「予鈴まであと二十分だよ」

 

 時計を見て小町が言う。まぁ、十分もありゃ片付くだろ。

 

 「なぁ、愛香、トゥアール、部活決めたか?」

 

 突然、総二がそんな事を言い出す。何、現実逃避?

 

 「まだ決めてないわよ、ゴタゴタしてたし」

 

 「私は総二様に着いていきます」

 

 突然の質問にも律儀に答える二人。

 

 「八兄、部活の申請って頼めるか?」

 

 「ん?ああ、生徒会の管轄だから必要事項書いてくれりゃやっとくが…」

 

 「……なら、俺達で作ってみないか、ツインテール部」

 

 空に浮かぶ無粋な輩に拳を突き出しながら、総二は答える。なるほど、そういう事ね。

 

 「ふうん、いいじゃない。活動内容は?」

 

 何かを理解した愛香がニヤリと笑いながら問いかける。

 

 「もちろん━━━━」

 

 右腕のテイルブレスを掲げ、総二は飛び出す。

 

 

 俺たちのヒーロー活動は、まだ始まったばかりだ━━━━




ようやく一巻分が終わりました。なんか最終回っぽいですけど、まだまだ全然プロローグです。
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