放課後━━━本日は生徒会活動も休みなんだが、俺は神堂(+桜川さん)と連れ立って部室棟へと繋がる渡り廊下を歩いている。ここ、陽月学園は近隣で最大級の生徒数を誇るだけあり、部活動だけにしても圧倒的な数がある。その為、部室だけで丸々一つの建物を使用している。下手したら小さな校舎ぐらいの規模はある。
さて、俺達がわざわざこんな所を歩いているには理由がある。
というのも、今朝総二が言っていたツインテール部の設立について、生徒会で確認をする為だ。部活新設の書類は休み時間に渡したのにあっという間に完成されていた。さらに部室すら確保している始末。昨日の今日ならぬ今日の今日で、しかも朝一でアルティメギルをぶっ倒してきてこのスピード。やはりツインテールが関わった時の総二の行動力は目を見張るものがある。
とはいえ、わざわざ生徒会長が出向く必要はない。なんなら俺一人でも事足りる。身内だから殊更だ。そもそもが生徒会は休みなんだ。神堂も夜に用事があるって言ってたし。
だが神堂は「比企谷君の身内でしたら、わたくしにとっても同じですわ」という事でこうして並んで行くことになった。いやどういう事だよ。
だが、何やらご満悦そうに隣を歩くお嬢様を見ればNOと言えない俺ガイル。桜川さんからも断ったら解ってんだろうな、ってプレッシャーがひしひしと伝わってくるし。
ちなみに総二達には事前に連絡をしてある。部室をツインテイルズの拠点として改造するだろうから、見られちゃ不味いものを置きっぱなしにならない様にしないとな。
大丈夫だよね?頼むから扉を開けたらラビットハッチでしたとかは止めてくれよ。神堂だったら喜びそうだけど……
「まさか比企谷君も部活に所属するとは思いませんでしたわ」
隣を楚々と歩む神堂が語りかけてきた。まぁ、わざわざ不特定多数がいる部活に入って汗水垂らすなんて俺のイメージには合わないわな。なんなら天道よりも集団行動が苦手なまである。まぁ、今回は身内しかいないから問題ない。
「弟分が立ち上げたからな。それに所属するのが一年だけってのもアレだしな」
新入りばかりとなれば無礼られかねんからな。まぁ、所属者全員が現役ヒーローと元ヒーローだから余程の事はないだろう。そこいらの武道系部活動よりも武闘派である。むしろ愛香一人で平定出来るレベル。
まぁ、だからといってわざわざ余計なトラブルを招く必要はない。二年の、しかも悪名高い生徒会副会長がいると分かればちょっかいを出す輩はまずいない。
「いいお兄さんですわね」
と、神堂は手を口に添えくすくす笑う。一挙一挙が上品で可愛い過ぎませんかねこのお嬢様は。
「それにしても……ツインテール部、ですか」
「あー、まぁ、お前にとってツインテールはアレだったからな」
神堂家は家訓でツインテールにしなければならないと聞いたことがある。小学生と見紛う程の外見をした神堂からすれば、より幼さを際立たせるツインテールは苦手を通り越して嫌悪に至るまでであった。
「確かにツインテールはわたくしにとって幼さの象徴でしたわ。いくら内面を高めたところで、この様な幼い容姿、どなたからも幼子としか見られない………」
どれだけ実績を出そうとも幼子が背伸びをしている様にしか見られない。実際はそうやって笑っている奴らなんかよりもよっぽど高みにいるんだけどな。
「ですが、比企谷君が『は?ツインテールが嫌い?容姿で侮られるから?ほーん、侮りたいなら侮らせておけ。神堂が積重たさねてきたもんもわからん大した輩じゃないんだろ。自分という世界の中心の端くれとでも思っとけ。それに俺は神堂のツインテールは嫌いじゃないぞ。カントリースタイルだから落ち着きがあって見えるし、綺麗な金髪と相まって太陽みたいだな』っておっしゃってくれまして。普段特撮の事以外は口数の少ない比企谷君にここまで褒めていただけるとは思いもしませんでしたわ」
そう言ってほにゃりと笑みを浮かべる。その表情からはマイナスの要素など一切感じ取れない。
「それ以来、この髪型はお気に入りですの」
「まぁ、神堂が気に入ってるなら問題はないけどな。でも何その恥ずかしい台詞、俺そんなこと言った?」
「一言一句忘れていませんわ!」
ずいっと顔を寄せてくる神堂に、気恥ずかしくなり顔を背けて首を掻く。
そうこうしている内に部室前に到着した。既に入口にはツインテール部と書かれた手作りのプレートが填められていた。いや、気が早いわ。
「あら?ここは閉鎖されていたのではありませんでしたか?」
神堂がそんな疑問の声を上げる。おー、知っていたか。
「はい、お嬢様。確か幽霊の目撃情報が耐えない曰く付きの部屋かと。何でもかなり昔に自殺した女学生の霊が出るとか」
俺達の後ろに控えていた桜川さんが補足をする。
そう、ツインテール部の部室に選ばれたのは所謂開かずの間という奴だ。まぁ、今は四月の末、いくらマンモス校の陽月学園といえども、今更新規に部活を申請した所で空いている部屋なんか限られている。
「………よく、この様な場所が開放されましたわね」
その話に若干青ざめる神堂。
「あぁ、空き教室がなくて最初は渋ってたみたいなんだがな、部員に俺がいるなら大丈夫だろってことでここになった」
まぁ、幽霊なんてもんは魂の具現化━━━即ち精神体って事だしエレメリアンとは大差ないだろ。つまりは圧倒的な力で潰せば死ぬ。いやもう死んでいるか。
「比企谷君への信頼が厚いのか、それとも別な理由なのでしょうか………?」
…………多分、後者なんだろうな。やべー奴的な意味で。むしろやべー奴しかいないから幽霊が逃げ出すまである。
「まぁ、出たならそん時はそん時だ。それよりも今は認可のチェックだろ?」
「いざとなったら神堂家からそれ系統の人材を派遣しますわ」
寺生まれの天空寺さんでも来るんかね。
「まぁ、そうなったら頼むわ。おう、俺だ。邪魔するぞ」
ノックをして声を掛け反応を待つ。いきなり扉を開けることはしない。親しき仲にも礼儀あり。何処かの
総二のどうぞの声を確認し扉を開ける。開いた扉から中を見れば、長机にパイプ椅子といかにも文化系な内装の普通の部室。机の上にあるのはスマホぐらいで、特に変な物もないしセーフだな。事前に連絡をしといて良かったぜ。
一歩横にずれ神堂の後から入室をする。神堂が入室しただけで総二達の背筋がビシッと伸びたから面白い。
「申請のあった書類を見て、少し気になりまして。こうして直接確認をする事により、認可するかを決定いたしますわ」
そうして部長である総二と二言三言を交わす。特に問題はなく無事にツインテール部は認可された。まぁ、表向きの活動内容はツインテールの啓蒙とツインテイルズの応援だからな。ツインテイルズを応援すると言い出した神堂が認めないわけがない。
「あら?」
ふと何か気になったのか、疑問の声を上げながら神堂は総二の右手首をまじまじと見る。視線の先にあるのは真紅のテイルギア。ああ、神堂はツインテイルズのファンだから気になるのか…………って、イマジンチャフで見えないんじゃないのか!?
「部室の中とはいえ、あまり派手なアクセサリーはいけませんよ。テイルレッドのデザインのものですわね。最近良く見かけますわ」
レッドの物と認識してるって事は、バッチリ見えてらっしゃる!?
突然の自体に総二は右腕を胸元に抱え、愛香はとっさに背に隠した。俺も何か言おうとするが言葉にならない。
「お嬢様、お時間になります」
桜川さんからの声。そういや、これから用があるって言ってたな。
「あら、もうそんな時間ですの?それでは、ツインテール部の皆さんのこれからの躍進を期待していますわ」
そう言って優雅に一礼。「比企谷君もお先に失礼しますわ」と手を胸の前で控えめにふりふりして去っていった。あら可愛い。じゃなくて。
「おい、トゥアール。イマジンチャフで一般人からは見えなくなっているんだよな」
神堂達が完全に立ち去ってから、トゥアールに問いかける。なんてったって身バレはヒーロー活動をするにあたって死活問題だからな。
「ええ、その筈です。現にそういった反応は観測されませんでした。貴方たち兄妹みたいなバグったイレギュラーを除いて」
俺達兄妹がバグ扱いされている件。
「俺も今まで気付かれたような素振りはなかったな」
「あたしもよ」
二人からもそんな兆候はなかったという。
「つーことは、テイルギアにトゥアールが見逃すようななんらかのバグがあるのか……」
「もしくは会長が八兄みたいにイレギュラーなのかだな」
とりあえずテイルギアは急遽メンテナンスをするという形になった。これからも戦いは続くんだ。もし不具合が起こって戦闘中に変身が解けたなんてなれば洒落にならない。
これで何か見つかればそれでいい。あくまでこちらの技術上の問題ってなるからな。だが、これで何もなければそれは即ち神堂側に何かがあるという可能性が浮上する。
ただでさえ神堂は何度か狙われているんだ。その上でイレギュラーな事態があるとなったら、いよいよ危ない。いざとなったら全力全開で守護るしかないか、そう決意する俺であった。