ツインテール部が発足して幾ばくの日にちが過ぎた。学校に通いながらも襲ってくるアルティメギルどもをしばく、代わり映えの無い日常。いや、戦闘を日常と言ってしまうのもどうかと思うが……
兎に角、そんな毎日を過ごしていたが、一点だけ変化が起きた。なんと新しいテイルギアが完成したのだ。
今まであったのは元々トゥアールが使っていたブルーの物と、トゥアール自身の
しかもただ開発するだけではない。なんと、改良発展させた次世代型が完成したのだ。ゲネシスドライバーやスクラッシュドライバーみたいなもんだな。見た目は変わってないけど。
最大の特徴は使用する属性玉が二つというハイブリッド仕様ということだ。
二つ目のコアにはこの数日の間に倒したバッファロー型のエレメリアンの物が使用されている。それはなんと巨乳属性。
……うん、巨乳である。なんとも愛香がブチギレそうな属性だ。だがしかし、愛香がキレるような事態は起こらなかった。いやむしろ、このあと起きる蛮行からすればキレてくれた方がどれだけマシだったか。
巨乳属性のエレメリアンというのが愛香の琴線に触れた。エレメリアンである以上倒せば属性玉が手に入るのである。そう、巨乳属性の属性玉が。
その事実に気づいた愛香は、何としても属性玉を奪取すべく開幕からの
下手人曰く、「どんな手段を使っても巨乳になりたかった。母性の象徴がない事があたし唯一の欠点」との事。そんなんだから蛮族呼ばわりされるんだぞ。
念願の巨乳属性玉を殺してでも(実際殺した)奪い取った愛香は、帰還後喜び勇んで
トゥアールが言うには属性玉の純度が高過ぎて変換には向いていないらしい。その最たる物がツインテール属性。属性自体が強すぎる為、下手したら暴走しかねないとの事。暴走フォームは浪漫だが、現実となるとなればたまったもんじゃない。総二達に余計なリスクは負わせたくないからな。
そんな話をしていると未春おばさん司令官による、だったら新しいのを作ればいいじゃない、の一言が。どうせ作るならば、とトゥアールが構想していた物を発表。それが件の次世代型テイルギアである。なんでも、発動しない巨乳属性玉を身体変化のみに作用させるとの事。つまりは、総二の幼女化よろしく変身したら巨乳になるというわけだ。
その言葉にガチ凹みしていた愛香も思わずニッコリ。次世代型テイルギアを手に入れるべく、一時はトゥアールの小間使いとして甲斐甲斐しく奉仕をしていた。
トゥアールもトゥアールで積年の恨み(一ヶ月未満)を晴らすべく、かなりの無茶振りを強いていた。草加張りのゲス笑顔を浮かべていたからな。曲がりなりにも美少女がしていい面じゃない。
そして今日、とうとう完成したとの連絡が入った。待ちに待った言葉に愛香はいまだかつてない笑みを浮かべている。
よくもまぁ、途中でキレなかったもんだ。振り上げそうな拳を、
「見ててね!ちゃんと見ててね、あたしの変身!」
きらきら笑顔を浮かべて何度も念を入れる愛香。初めての授業参観ではしゃぐ小学生みたいだな。
真新しい黄色いテイルブレスに付け替え、見せつけるように腕を天に掲げる。そして━━━
「テイルオンッ!!」
力強く変身のキーワードを告げるが、肝心のテイルブレスは一切反応を示さなかった。
「え………なんで?テイルオン!テイルオン!」
その後も何度も変身しようとするが、ブレスは沈黙を保ったままだった。
「ちょっとトゥアール!これ失敗作じゃないの⁉」
期待していた分その絶望も
「そんな事はありえません。絶対に変身できるはずです」
そんな一縷の望みをきっぱりと切り捨てるトゥアール。まぁ、普段の言動はアレだが、それでも天才を自称とするトゥアール。科学者のプライドとして未完成品を出す事なんぞ許さないだろうな。
あまりにも無慈悲な現実に、愛香はガクリと膝をつき項垂れてしまった。ゲートだったらファントムが生まれていたレベル。
「なぁ、トゥアール、テイルギアにセキュリティが組み込まれているんじゃないのか?一度起動したら別の物が使えなくなるって感じの」
俺は
「確かに奪われないようにある程度のプロテクトはあります。しかし、そもそもが最高位のツインテール属性持ちしか使用できない代物。わざわざそんな仕様にするのは無意味です」
そうだよな、ゲーマドライバーしかり資格のない者が使えないってのはある意味最高のプロテクトだ。その説明に素直に納得してしまう俺ガイル。スマン、愛香、お兄ちゃんは無力だ。
「そうだ、何でしたら総二様も使ってみますか?」
トゥアールは総二に顔を向け、そう提案する。これで総二が起動出来ればテイルブレス側には何も問題がないと言う事になる。
しかし、総二は自分の腕に嵌っている真紅のブレスを見つめると、何かに納得したかの様に頷いた。
「折角だけど━━━俺はこれでいいよ」
トゥアールの提案に総二はゆるりと首を振る。
「いや、これがいいんだ。トゥアールのツインテール属性━━━想いが込められた、このテイルギアが。これじゃなきゃ駄目なんだ」
そして、未だに項垂れている愛香に向き直る。
「愛香が変身できない理由も何となく分かるよ。お前もきっとブルーのギアじゃなきゃ駄目だと思っているんだ。俺も絶対にこのギアじゃなきゃ変身できないと分かる。トゥアールから想いを託された俺達が他のギアを使うなんて有り得ないんだ」
「そーじ………」「総二様………」
総二のその言葉に、愛香は俯いていた顔を上げ、トゥアールは瞳を潤ませる。
想いが込められているからこそ使える、か………。さらっとそんな事を言える辺り、やはり総二にはヒーローの資質がある。我が弟分ながらカッコいいじゃあないか。
こうして新しいテイルギアは予備へと回すことになった。まぁ、ツインテール属性持ちがいないから当然だな。
復活した愛香もトゥアールと仲良く喧嘩している事だし、こうしてまたいつもの日常に戻るのであった。
・ ・ ・
「余っているならお兄ちゃんが使ってみなよ?お兄ちゃんが変身できたら、鬼に金棒どころかハイパーフォームにパーフェクトゼクターだよ」
と、小町が提案をする。
「八兄が変身したらブルー並の狂戦士が生まれるな」
「誰が狂戦士よ!でも、ただでさえ厄介な八兄さんがより一層凶悪にはなるわね」
「おう、好き勝手言ってくれるな」
だが、変身できるチャンスがあるとなれば試さない手はない。なんだかんだ言ってもヒーローには憧れているんだよ。
テイルブレスを受け取り右手首に装着する。自動調整機能により俺の手首にぴったりとフィットする。おぉ……これだけでも感動………
では、早速変身をしますか。ブレスレット型ならこの変身ポーズが相応しい。
小町達から離れて、監視モニターの前に進みでる。モニターに自分の姿が映るように立つと、
「テイル━━━━」
拳を握りしめ、テイルブレスを付けた右腕を顔の横に掲げる。
「━━━オン!!」
そして、力いっぱい左拳をブレスの下に叩きつけた。
「………やっぱ無理か」
万感の想いを込めて叫んでみたが、愛香のときよろしくテイルブレスは何も反応を示さなかった。わかっていたとはいえ、ちょっぴり残念だ。
「なんでアクセスフラッシュのポーズなのさ」
元ネタを知っている小町からツッコミが入る。
「ブレスレット型だからな。光って展開もするし」
それに先生は小説版も執筆されていたからな。いや、先生って何のことだよ。
「八幡さんのツインテール属性は一般人よりは高いですが、変身の規定を満たしていません」
黙って見ていたトゥアールから補足が入る。コンソールを操作すると、ツインテイルズと俺、一般人のツインテール属性の差がグラフで表示される。これはわかりやすい。
だが、まぁ、そうだろうな。総二との付き合いがあるからある程度理解出来るってだけで、俺自身はそこまでツインテールに夢中になっているというわけでもない。精々、神堂のツインテールを見て可憐だと思うぐらいなもんだし。
「代わりと言ってはなんですが、お兄ちゃん属性なる理由わからないものが異常なまでの数値を誇っています。仮にそんな属性玉があったとすればもしかするかもしれませんが」
ツインテール属性の横にお兄ちゃん属性なる項目が出てくる。その数値は比べるまでもなく圧倒的であり、それこそ今現在の総二のツインテール属性に僅かに及ばない程。
「ほーん、やっぱ俺はどこまで行ってもお兄ちゃんって事だな」
そんな物があるかはわからないからな。それこそ何かと共通点のあるゾンビギルディなる奴が怪しいが、そんな美味い話はそうそう転がっているわけがない。
「ちぇー……、せっかくお兄ちゃんがお姉ちゃんになるのかと思ったのに」
小町は不服そうに頬を膨らます。
「ちょっと小町ちゃん、お兄ちゃんじゃ駄目なの?」
「だってお兄ちゃんが女体化したら絶対に謎の色気がたっぷりなアンニュイ系美人になるんだよ!そんなの見たいに決まってるじゃん!」
ウェヒヒヒと笑い声を漏らしながら力説する小町。可愛い妹だけど、ちょっぴり怖い。
「なぁ、最近、小町がどんどんヤバくなってないか?」
そんな様子を眺めていた総二がポツリと零す。
「恐らくは属性力という概念を認識した事により素養が高まり開花したのかと思われます」
それに対し冷静に考察を返すトゥアール。
「そもそもが八兄さんの妹なのよ。それに元から素質はあったわ」
同性故に元より何かに感づいていたであろう愛香からの無慈悲な一言。
「あぁ、ちょっぴりおバカで可愛いかったのに、どうしてこうなったんだ……」
俺の嘆きの声は小町の笑い声の中に沈んでいくのであった。