俺がお兄ちゃん属性なのはまちがっていない。   作:八重垣八雲

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5-7 その少女、お嬢様でヒーロー!

 画面に映るのは騎士のように傅き剣を捧げる異形と、戸惑いながらも満更な様子ではない愛香(ブルー)。なんとも面白……もとい珍妙な状況だが、俺が着替えていた数分の間に一体何があった?

 

 「どういう状況だ、これ?」

 

 佐藤太郎ポーズをやめ、モニターの下に近づく。

 

 「んー?なんかねー巨乳属性と貧乳属性がいて、貧乳属性の方が愛香ちゃんを見たらこうなった」

 

 「ほーん、貧乳属性ね。あっ…(察し)」

 

 その属性でだいたい分かった。極限まで無駄を削ぎ落としたフラットなボディ、レッドには及ばないとはいえ極上のツインテール。奴からすれば垂涎もの、まさに理想の姫君として映るのだろう。それが数多のエレメリアンに恐怖を刻みつけたブルーだとしてもだ。

 

 つーか、ブルーに対して貧乳だから好きですなんて、どうぞぶち殺して下さいって言ってるようなもんだぞ?幸いに当の本人は告白された衝撃が強すぎて気づいていないようだが、それも時間の問題である。

 

 小町なんかとっくに気付いて、必死に笑いを堪えてるし。間違っても大声上げて笑うなよー。ブルーにバレたらアイアンクローだぞ。

 

 それに対してトゥアールは敵に言い寄られて満更でもないビッチと騒いでる。いつもならいの一番に気付いてこれでもかと嗤い転げている所なんだが……… 

 

 そんなに愛香がモテることが不思議なのかね?言っておくが、愛香は俺達幼馴染みの中では一番モテるぞ(恋香さんは除く)。まぁ、相手は女子ばかりなんだが。

 

 画面の向こうのブルーはといえばやんわりとお断りの言葉を伝えていた。普段はエレメリアン即斬なブルーでも、敵とはいえここまで情熱的な告白をされれば、それに対する反応は穏やかである。それが下心に塗れた相手だろうが、気付いていないなら平和に済む。このまま通常戦闘によるエレメリアンの死(穏便)に終わると思ったんだが━━━

 

 『我が麗しき貧乳の姫君よ!』

 

 あーあ、ついに言いやがった。その言葉にブルーは今までの照れた様子から一転、一気に冷たい空気を纏う。目なんか道端に転がる汚物を見るように光を宿していない。いつまでもご機嫌だと思うなよ。

 

 特に今日は新型テイルギアの事もあったからな、その怒りっぷりは修羅もかくや。更地にしてでも滅ぼすと言い出す始末。いくら避難が進んでいるとはいえ、まだちらほら人は残っているんだが。

 

 つーか、神堂いるし。画面内に見覚えのある少女を見つける。避難指示を出しつつもちゃっかりツインテイルズの勇姿を拝もうとしたんだろうなぁ、このお嬢様は。

 

 「あー、行ってくる」

 

 妹分の暴挙に友人が巻き込まれるのは忍びない。エレメリアンの牽制よりも味方のコントロールが優先とはな……

 

 「はいはい、行ってらー」

 

 未だ笑いを堪える小町の気のない返事を後に、ヘルメットを深く被りながら転送の光りに包まれるのであった。

 

 

 

   ・   ・   ・

 

 

 

 極彩色の光と共に現場から少し離れた路地裏に降り立つ。この場が無人なのは事前に把握済みだ。いきなり目の前に転送されるのは怪しすぎだからな。

 

 懐に忍ばせたものを確かめつつ足早に移動をする。短気をこじらせたブルーがエグゼキュートウェイブをぶっぱしかねんならな。ドラグギルディの時みたく山中ならまだしも、街中が水浸しになるのは勘弁だ。

 

 そんな事を考えつつ現場にたどり着けば、そこには駄々っ子のようにぎゃん泣きするブルーと、悠然と触腕を構える烏賊野郎。そんな姿を見て困惑するレッドと、なんかもう帰りたそうな残り一体の姿があった。いや、何があったTake.2。

 

 「小町、説明アゲイン」

 

 『なんかクラーケギルディが戦闘形態になったら

急に叫びだしたよ。愛香ちゃん、触手が嫌いだったみたいだね』

 

 「………は?触手が怖い?素手で熊を倒した愛香が?」

 

 ここに来て発覚する新事実。長年幼馴染みをやっていたがまさかブルーにこんな弱点があったとは。イカ下足だろうが蛸足だろうが美味い美味いとモリモリ食べてたし。まぁ、日常でリアルな触手を見ることなんてまずないから、気付きようもなかったんだが………

 

 「そーじ(あんた)のせいよ!あんたがいつまでも何もしないから初プロポーズがあんなやつに!このツインテールバカ!」

 

 おっと、いつまでも呆けている場合ではないな。ブルーのレッドへの理不尽な糾弾により我に返る。何にせよ妹分が泣いてるんだ。手を差し伸べなければお兄ちゃんじゃない。

 

 さぁさぁ、と孔雀の様に触手を広げブルーに躙り寄る不届者をこれ以上進ませんと、懐に忍ばせていた熱線銃を構える。

 

 『ちょっと!いつの間にアンチアイカシステム一号を持ち出したんですか!?』

 

 通信機越しにトゥアールの絶叫が聞こえる。

 

 「いつの間に、ってさっき着替えた時だよ」

 

 そう、持ち出したのはトゥアールが対愛香に開発して、俺が評価試験をしたアレだ。ダメ出しを食らって改良予定だったが、ここ最近は新型のテイルギアに付きっきりだったんでそのまま放置されていた。そいつをパク……もとい拝借してきたってわけだ。蠍野郎や蟹野郎みたいに硬い奴だと素手では相手してられんからな。

 

 「そこまでだ、アルティメギル!」

 

 殿を模した静止の言葉と共に構えた銃の引鉄を絞る。放たれた熱線は寸分違わず烏賊野郎の足元を穿つ。アスファルトが溶解し、一条の黒煙が立ち上った。

 

 うわ、普通に威力は高いな、これ。誤射なんかしたら大惨事だな。あんま使わんどこ。

 

 「何者です!?」

 

 足を止め睨みつける様に振り向く烏賊野郎。釣られて残りの一体と、神堂達の視線が向けられる。尋ねられたからには名乗らないとな。シンケンレッドよろしく銃を肩に掲げ見栄を切りながら名乗りあげる。

 

 「仮面ブラザー、ひき━━いや、なんでもない」

 

 危ない。シンケンジャーロールをしてたから思わず本名まで言うところだった。なんか神堂にじっと見られてるし。

 

 「妹分に手を出そうとする不届者、この仮面ブラザーが相手するぞ」

 

 改めて烏賊野郎に銃口を向けて、啖呵を切る。俺がヘイトを稼いでいる内に復活してくれませんかね。いや無理か。

 

 「ちっ!」

 

 そんな俺の言葉に、もう一体のウツボみたいな野郎が舌打ちをする。

 

 「興が削がれた上に、思わぬ邪魔が入ったわ!小手調べのつもりであったが、それすら叶わん!テイルレッドよ、勝負は預ける!それまでにその不甲斐ない相棒の涙を拭っておけ!それと仮面ブラザーなる者よ!歯向かうなら、このリヴァイアギルディ容赦はせんぞ!」

 

 ぎゃん泣きするブルーに思うところがあったのか、悪態をつきながらも烏賊野郎の首根っこを引っ掴んで撤退をしていく。ははーん、さてはツンデレだな。

 

 「ああぁぁぁ、姫!姫ェ!」

 

 当の烏賊野郎は、引きずられながらも未練たらしくブルーへとその触手を伸ばしていた。転移の光に消える中、その一本がブルーへと触れた。

 

 「へ?……………きゅう」

 

 途端に目を回して気絶するブルー。瞬間ブルーの身体が発光を始める。不味い、変身が解ける。

 

 「しまった、ブルー!」

 

 「レッド、ブルーを連れて急いで離脱しろ!」

 

 素早くレッドが近付きブルーを抱えるとオーラピラーで身を包む。そしてそのままギャラリーを突っ切って駆け出した。とりあえず、これでブルーの身バレの心配はなくなった。

 

 俺もずらかるかと、あたりを見回せばまだチラホラ残るギャラリーに、いつの間にやら来ていたテレビクルー。つーか、テレビ局来ていたのか。マジで間一髪だったな。

 

 何かを聞きたそうな神堂やテレビクルーがこちらに向かってくる。さて、ここから上手く離脱するにはと、懐に入れていた自作ツインテイルズカードをばら撒いた。

 

 「何だコレ?テイルレッドのカード?」「こんな絵柄は見たことがないですわ!」「ブルーは入らないからレッドたんを寄越せ!」

 

 ギャラリーがそれに気を取られている隙に包囲から離脱する。

 

 「はっ!お待ちになって!」

 

 後ろから神堂の声が聞こえるが、応えるわけにはいかない。うっかり何時もののりで話してボロが出かねんからな。撹乱するため壁をよじ登り屋根を伝いながら一気にその場を離れるのであった。

 

 

 

   ・   ・   ・

 

 

 

 「小町、レッド達は?」

 

 『少し離れた路地裏にいるよ』

 

 小町のナビに従い駆けつけてみれば、完全に変身が解けぐったり気絶した愛香と、それを支えるレッド。

 

 「おう、総二。間一髪だったな」

 

 「ああ、八兄か………。流石に肝が冷えたよ」

 

 気絶して変身解除は特撮あるあるだが、実際になると洒落にならないな。

 

 『流石にこれは危険ですね。次のメンテナンスでは変身解除の対策をします』

 

 通信から聞こえるトゥアールの済まなそうな声。開発者としてもこの問題は放っておけないだろう。

 

 「ああ、頼む」

 

 そう言って変身を解除するレッド。今に思えば、想定外の事態を切り抜けた安堵で油断していたのだろう。

 

 『総二くん!ダメ!』

 

 咄嗟に入る静止の声。かさりと背後から聞こえる物音。

 

 「観束君が………テイルレッド………」

 

 聞き覚えのある透き通った声。はっと視線を走らせれば、路地裏の入口には神堂がいた。ここまで走ってきたのだろう。何時もなら毛先までしゃなりと整えられたツインテールは乱れ、大きく息を切らせていた。

 

 あまりの事態に咄嗟に動けなくなる俺達。神堂は胸に手を当てて呼吸を整えている。その後ろには桜川さんも控えていた。

 

 「と、言うことは………」

 

 そのままつかつかとこちらに近付くと、俺の前で立ち止まる。そして俺を見上げると、

 

 「そのヘルメットを取ってくれませんか?比企谷君」

 

 そうはっきりと述べた。え………、バレてる!?イマジンチャフ仕事してんのかよ。

 

 じ~っと穴が空くほど見つめてくる神堂。その視線に根負けしてヘルメットを外す。

 

 「………なんで分かんだよ。これでも認識阻害が働いてるんだが」

 

 「私が比企谷君を見間違えるわけありませんわ」

 

 軽く口元に弧を描きながら、そんな事を宣う神堂。やめてよね、勘違いして告白して振られちゃうでしょ!?後ろで小町が確定キターッ!!と喧しいが、こちらはそれどころではない。

 

 『………これは小町さんの時と同じパターンですかね』

 

 そんなトゥアールの言葉にため息をひとつつきたくなるのであった。

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