Q.少し目を離した隙に弟分が幼女になっていました。この時、俺のすべき行動を答えよ。
A.笑えばいいと思うよ。笑え……笑えよ………
「笑えるかよーーー!!」
あまりの衝撃で脳内問答にツッコミを入れてしまう。
「いきなりどうしたんだよ、八兄!」
そんな俺の行動にビクッと震える総二(仮)。無意識なのか自分のツインテールを握って身をすくめる様は、幼女そのもの。傍から見れば、幼女に向かって大声を上げる不審者の図である。
やめてよね…本気で通報されたら、俺が世間の目に敵うはずないだろ…
「いや、お前がどうしたんだよ⁉」
ついさっきまで、どこにでもいる男子高校生って感じだっただろ!?何でさらっとTSした上に幼くまでなってんだよ!?
「どうしたって……何がだよ?」
気づいてないのかよ……
めっちゃ背縮んでんじゃん。しっかりツインテール握ってんじゃん。無意識かよ。
「ウ………ウォォォォォ━━━━━━!」
唐突に上がる野太い雄叫び。
そういやいたね、トカゲ野郎。総二(幼女)のインパクトが強すぎてすっかり忘れてたわ。
何、スルーされたから怒ってるのん?かまってちゃんなのん?
「あまりの強大な幼気に、意識を吹き飛ばされたか……」
また変態なこと宣いだした。いちいち性癖暴露しないと喋れないのかよ。露出狂なの?
「なんと見事なツインテールか!今までのものなどもはや比べものにならぬ!まさに、非の打ち所のなき、究極のツインテールだ!!」
ツインテールツインテール喧しいな。どんだけツインテール好きなんだよ。やっぱりこいつ、総二が生み出したヤミーだろ。
「究極の……ツインテール……」
トカゲ野郎の様子から、ようやく何かがおかしいと気付いたのだろう。俺を見上げ視線の高さが違うことに気付き、不安そうな顔になる。その表情は幼い頃の小町がコップを割っちゃった時を思い起こす。やめてくれ、それは俺に効く。
内心の葛藤を抑えつつ、無言で車のフロントガラスを指差す。
「お…」
ガラスに映る自分の姿を確認する総二(少女)。ペタペタと顔を触って確認しつつも、ちゃっかりツインテールを弄っている。ホントぶれないな。
「お…」
そして、恐る恐ると股間部に触れる。
「女になってるじゃねーかーーーーーーーー!!」
現実を受け入れた総二(童女)の絶叫が駐車場に響く。まぁ、なんだ、ドンマイ。
◇ ◇ ◇
「まあ、良い。あれ程のツインテール、秘められた
と、そんな中でも状況は進んでいく。
「うわ!ちょちょちょ!」
いきなりの事で駄々っ子の様に手をバタつかせる総二(ロリ)。その手が確保すべく近寄ってきた雑魚に当たる。テレフォンパンチよりも大振りな一撃ではあったが、トラックがぶつかったかの如くはね飛ばした。
さっきも見たが、とんでもないパワーだ。やるじゃねぇか。
「ぬぅぅぅ…、アルティロイドを一撃で……… ツインテールが素晴らしいだけでない!貴様、何者だ!」
ほう、変態の癖に理解ってるじゃないか。いや、変態だから理解出来るのか?
「俺か?俺は━━━」
自分に秘められたパワーを認識したのか、落ち着いたようだ。眉を吊り上げ、トカゲ野郎を指差す。
これも特撮マニアには垂涎のシチュエーションだ。格好良く名乗ってやれ。
だが、言葉が続かずそのまま止まる。どしたの?
「………なぁ、八兄。俺ってなんなの?」
その言葉に思わずずっこける。名前決めてなかったの?
仕方がない、ここはお兄ちゃんが一肌脱ぐか。勝手に名付けちゃうけど良いよね?答えは聞いてない。
ヒーローの名前は小さい子でも覚えやすい安直な物がいい。ツインテールレッド……長いな。テールレッド……長音符だと言いづらい。だったら……
「祝え!」
唐突な俺の大声に、敵味方問わず注目が集まる。大袈裟に身振り手振りを加えながら、隣にいる総二(21)を指し示す。
「自らツインテールとなり、侵略者の魔の手よりツインテールを護るツインテールの守護者!その名もテイルレッド!…まさに生誕の瞬間である!」
彼の魔王の預言者の如く、弟分の晴れ舞台を盛大に祝う。やってみたかった事が出来て、特撮マニアとしては大満足である。
「テイルレッド!良い名だ!強く美しいものよ、これを抱いてくれい!」
鼻息荒く、総二改めテイルレッドに近寄っていくトカゲ野郎。その手には、武骨な異形には到底似合わない可愛らしいぬいぐるみが。紛うことなき変態不審者である。キモイ、ただひたすらにキモイ。
あまりの悍ましさに身の危険を感じたのか、雑魚軍団をぶっ飛ばしながら、トカゲ野郎から離れて行く。それを血走った目で追いかけるトカゲ野郎。
いい感じに離れて行くテイルレッドとトカゲ野郎with雑魚軍団。
さて、俺は俺のやるべきことをするかね。
そそくさと捕まっていた少女たちのもとに行く。あれだけいた雑魚軍団もほいほい着いていき、今では見張りの一匹のみ。肝心なそいつもテイルレッドに見惚れているし。
人質ほっぽりだしていいのかよ。悪の組織としては三流としてもいい所だよ。
こんくらいならどうとでもなる。カカッと近付いてさくっと処す。回し蹴りによって吹っ飛び、近くにあったでっかい輪っかの様な装置にぶつかる。ぶつかった衝撃で所々から煙を出しスパークし始める。
「モ゛ゲゲゲゲゲ!」
あ、感電した。そしてそのまま機械と共に沈黙。
あからさまな怪しさを醸し出す装置ではあるが、俺たちの乱入により日の目を見ることなく御臨終となった。弁償はしないぞ。
さて、一先ずこれで監視はなくなった。
「ほれ、悪い奴らはヒーローがぶっ飛ばしてくれる。今のうちに逃げろ」
見るからにテイルレッドと変わらないぐらいの年頃の子ばかりである。まぁ、隣におもちゃ屋があるし、そこにいた客だろう。
怒濤の展開について行けなかったのか、雑魚戦闘員がいなくなっても呆然と佇んでいた。
無理もないな。俺も当事者側にいなければ、阿呆みたいに口を開けて佇んでいた自信がある。
普段なら俺みたいな腐った目の不審者の言う事など誰も聞きしないが、明らかに異形じみた化物に比べたらマシなのだろう。一番年上らしい━━━綺麗な黒髪をツインテールにした小学校高学年ぐらい少女が促す。最後にこちらにぺこりと一礼をすると、そのまま離れていった。
少女たちが安全圏まで離れたのを見届ける。俺も小町と神堂をお米様抱っこで担ぎ上げて、元いた場所に戻るのであった。
◇ ◇ ◇
「おう、戻ったぞ」
ちょっと
やだ、字面にすると凄い犯罪臭。
「何やってるんですか、あなたは」
戻って早々、何故かボロボロに薄汚れたトゥアールは掴みかからんばかりに詰め寄ってきた。元気が良いなぁ、何かいいことでもあったのかい?
「何って、お兄ちゃんを遂行してきただけだ」
お兄ちゃんだからな。妹のピンチに駆けつけるのは当たり前だ。なんならピンチじゃなくても駆けつけるまである。ストーカーかよ。
「無駄よ、トゥアール。シスコン全開になった八兄さんを止めるのは、あたしでも苦労するわ」
やれやれと、出来の悪い兄を見るように言う愛香。ついでに心配かけた罰、と言ってデコピンをされる。
心配、ね。確かにそうだな。そこらのチンピラやヤクザ崩れならともかく、正真正銘の化物相手だったんだ。愛香の言う事も最もだな。
ズバンという決してデコピンが立てるようではない音と共に額にかかる衝撃。意識と頭も飛びそうになったが……妹分からの愛のムチだ、甘んじて受け入れる。目茶苦茶痛いけど。
「んで、なんで総二のやつ幼女化してんのん?」
ヒリヒリ痛む額をこすりつつ、気になっていたことを聞く。
「こいつの趣味よ」
愛香は忌々しげにトゥアールを指差す。
ここにもいたよ、変態。いや、分かってたけどさ。つーか、痴女でロリコンかよ。役満じゃねぇか。神堂を近づけんどこ。
「変態を制すには変態が必要なんです!」
“総二の身体がそうなったのは私の責任だ。だが私は謝らない。”とばかりに、その豊満な胸を張るトゥアール。
何その訳解んないロジック。これだから理系は(偏見)。
「まぁ、元に戻るんならいい」
戻るんだよね?
「勿論!総二様の総二様がなくなってしまったら私も困ります。主に捕食的な意味で」
堂々と宣う痴女。総二の奴、これまたヤベー女に目をつけられたもんだ。見た目はとびきりの美少女なのに言動がぶっ飛びすぎている。ぶっちゃけトカゲ野郎とも大差ない変態だ。美人局云々でなくても関わりたくないタイプである。
でも、総二が戦う事を決めた以上、バッチリ関わり合うことになるんだろうな…… ハァ………
「ばっ……!捕食って、あんた何言ってるのよ!」
「勿論ナニです!まぁ、貧相な愛香さんにはむ、あだだだだだおっぱい千切れますぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
後ろのじゃれ合いは全力でスルーして、テイルレッドに意識を集中させる。
いつの間に手にしたのか真っ赤な剣を携えて、雑魚戦闘員を吹き飛ばしている。やたらメカニカルなその剣は真紅の炎を噴き出しながら、押寄せる雑魚どもをずんばらりんと斬り捨てる。アギトフレイムフォームみたいでカッコいい。
あれだけいた雑魚軍団も最早片手の数程度。まさに鎧袖一触。初登場補正のライダー張りの強さである。
「でぇっ…やぁぁぁぁぁぁーーーーー!」
そうして、最後の一匹が爆散する。残すところはトカゲ野郎のみ。
つーか、雑魚どもがぶっ飛ばされてる間も身動き一つ取らなかったな。何なの、強者の余裕気取ってるわけ?
「釘付けになって動けなかった…… 剣閃と共に舞うツインテール!俺は神話世界の楽園に迷い込んだと錯覚したぞ!」
違う、ただの変態だった。シリアスかと思えば変態。今日の脚本は大◯屋氏担当なの。
「やめろ気持ち悪ィ!」
テイルレッドは悍ましさに怯みながら、それでも一息で詰め寄るとそのまま斬り飛ばす。
「ふん、その程度の攻撃など効かぬわ!」
変態だろうが、腐っても怪人級。戦闘員とは大違いだ。力む事により、ただでさえ強靭な肉体を硬化してテイルレッドの剣戟を弾き返した。
お返しとばかり手から複数の光線を放つ。紫電を伴うそれは弧を描きながら飛翔、テイルレッドへとぶつかる。
「い……なんともねぇ?」
だが、テイルレッドには傷一つついていない。破壊の光は、テイルレッドを取り巻く光のベールにより消し飛ばされていた。
「フォトンアブソーバーがある限り、いかなる攻撃も通しません!」
トゥアールが自信満々に言う。ようするにエグゼイドムテキゲーマーみたいなもんか。それならその自信も納得だ。変態痴女だが、その技術力は侮れん。
このままでは千日手だ。もっとも、打開する術がなければだがな。
柄にもなくワクワクしながらその時を待つ。
「だったら………オーラピラー!」
テイルレッドの剣先に炎の塊が宿る。そしてそのまま振り抜くとトカゲ野郎に向かって一直線に飛んでいった。
「無駄だ!その様な攻撃はきか………ぬぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
だが、奴の余裕はここまでだった。
強靭な肉体で耐えようとしたのだろうが、その直前で爆発。そのまま炎の渦を形成し、トカゲ野郎をその場に張り付ける。これは、スパークルカット系か!
「よっし、決めろテイルレッド!」
腐った目を輝かせ拳を握り、テンションマックスで応援する男子高校生がいた。ていうかそれは俺だった。
「ブレイクレリーズ!」
掛け声と共に剣が中央から割れる。そこから炎が噴き出し、巨大な刃を形成した。
腰のスラスターを吹かせ一気に跳躍━━━━
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!グランドブレイザァァァァァァーーーーーーーー!!」
必殺技名を叫びながら、炎の拘束ごと縦一文字に切り裂いた。流石、俺の弟分、お約束というものが分かってる。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
離れた場所からでも分かるほど立ち昇る爆炎。流石のトカゲ野郎もこれ程の威力にはひとたまりもなかったようだ。
「ふははは………素晴らしい…………ツインテールに頬を撫でられて…………果てる。なんの悔いがあろうか!」
さらばだ、の一言と共に大爆発。最後まで締まらないが、そのブレなさだけは敵ながら天晴とも言うべきか?いや言わないな。
なんとも言えない気分になっていると、遠くからサイレンの音が聞こえてくる。これだけ派手にドンパチしていれば、警察も消防も来るのは当たり前か。
愛香とトゥアールに合図をし、一先ずこの場からずらかることにする。小町と神堂を抱え直して、人混みを避けるように移動する。
トゥアールの奴にはまだまだ聞きたいことがあるが、それは後回しだ。まずは総二にお疲れ様と言ってやらんとな。これもまたお兄ちゃんの務めだろ?
こうして、俺と幼なじみたちのツインテールをめぐる戦いは始まった。巻き込まれることは覚悟していたが、まさか俺自身があんなことになろうとは、この時は知る由もなかった。
プロフィール
比企谷八幡
性別:男
年齢:16歳
誕生日:8月8日
身長:175cm
体重:68kg
誰よりも妹を愛する高校生。
そのお兄ちゃんっぷりは年下幼なじみの二人にも適応される。
腐った目とネガティブな言動が多さが特徴。その本質はお人好し。妹曰く捻デレ。
弟分が最強のツインテール属性を持っていたことにより、変態共との戦いに巻き込まれていく。
妹たちに危害を加えられそうになると、異常なまでの戦闘力になる。
その強さには何やら秘密がありそう。