NTR救済・アンチNTRを一つのジャンルとした場合の、一般的構造について…。
皆様がアンチNTRモノを書く一助になれば幸いです。

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扶桑の意見 NTR救済・アンチNTRプログラム

秋雲の名を持つ艦娘は、例外なく漫画やイラストを描いている。

ジャンルや画風、作風は個々の秋雲によって違う。

コミケに参加する秋雲は多いし、(副業として)商業誌で連載なんか持ってる秋雲も居る。

逆にあくまでも趣味の範囲で漫画やイラスト、絵画を描いている秋雲も居るけど…漫画やイラストを描かない秋雲ってのは、存在しない。

 

だから、私・黒鉄秋雲も当然漫画を描いている。

 

以前私は、某サイトでNTRが人気第一位のジャンルであるという統計を見た、という理由だけでNTRモノの本を描いた。

正直私自身はNTRってのはあまり好きじゃないし、このときNTRモノを描いたのは、ホントにほんの気まぐれなチャレンジだった。

で、そんな気まぐれで描いたNTRモノだったけど…それなりに好評を得ることが出来た。

 

好評は好評だったんだけど…それなりに、だった。

 

このとき、改めて他の秋雲たちが描いたNTRモノの本を見てみた。

正直言うと、何本かの作品には圧倒されてしまった。

人間の作家が描いたNTRモノには、もっとスゲぇやつがあった。

それで、柄にもなく対抗意識を燃え上がらせちまった私は、次の本もNTRで行こう!と決めてしまったワケ。

 

そんで、タイトルを「Final NTR」と決めて、私は制作に取りかかった。

タイトルには「これでコケたら、このジャンル(NTR)からは手を引く!」という決意の意味を持たせてみた。

もっとも…私のことだから、忘れた頃に、気が向いたらまたこのジャンルに手を出すかもしれない。

だからこのタイトルは最初から看板に偽りがあったりするんだけどね。

 

制作は順調に進んで、これと言ったトラブルもなく原稿は完成した。

それでその日、甘味処「間宮」で、扶桑さんに完成原稿を見てもらっていた。

 

…違和感を感じた人も多いと思う。

何で扶桑さんが、私の原稿を見ていたのか?

艦娘・扶桑と漫画・イラストって、そんなに関係なさそうなんだけど?

…その違和感や疑問は、まあごもっともだと思う。

でも実際その日、甘味処「間宮」で、扶桑さんはプリントアウトされた私の原稿を見ていた。

 

「………。」

扶桑さんはコーヒーを飲みながら、黙って私の原稿を読んでいた。

(なぜだかわからないけど、岩川台営業所(うち)の扶桑さんはお茶よりコーヒーを好んでる。)

私は出版社に持ち込みをしたわけじゃないし、扶桑さんは編集者でも何でもない。

…けどどういうわけか私は、扶桑さんからの評価を、固唾を飲んで待ってしまっていた。

 

そういえば、前に扶桑さんが小説を読む場面に遭遇したことがあった。

その時扶桑さんは、結構な分量の文章をビックリするような速さで読んでしまっていた。

そんな扶桑さんだから、私の原稿もアッという間に読み終えてしまった。

 

扶桑さんは読み終えた原稿をテーブルの上に丁寧に置いて…ニッコリと微笑みを浮かべながら、こう言った。

「…とても不愉快な話ね?原作者を縊り殺してやりたいと思ってしまったわ。」

 

…!?

「え、ちょ、ふ、扶桑さん?そ、その原作者って、私なんですけど!?」

 

「ああ、安心して?そんな感覚に囚われてしまったのは本当だけど、本当にあなたを縊り殺してやろうとは思っていないから。」

「…それに、艦娘のあなたを素手で縊り殺すなんて、そもそも出来ないでしょう?」

艦娘は銃で撃たれた程度では死なない。

艦娘が艦娘を殺そうとするなら、艤装を展開した上で、実弾を撃つ必要がある。

だから素手の状態では、確かに私は扶桑さんに縊り殺されてしまうことはない…。

…ってか、扶桑さん、その言い方だと、縊り殺せるなら縊り殺していたっていう風にも聞こえるんですけど?

 

扶桑さんは、コーヒーを一口して話を続けた。

「それに、今の『不愉快な話』とか、『原作者を縊り殺してやりたい』っていう言葉はこの場合、むしろ賛辞なのよ。」

「…賛辞、ですか?」

 

「そう…あなたにとっては釈迦に説法、孔子に論語な話になるかもしれないけど。」

「優れた詩文や物語って、心を打つものよね?」

「心を打つ、というのは…強い感情を呼び起こす、ということでもあるのではないかしら?」

「今私はあなたの原稿を読んで『不愉快な話』だと思ったし、『原作者を縊り殺してやりたい』と思ってしまったけど。」

「これはあなたの原稿が、私の強い感情を呼び起こしたということではないかしら?」

「もちろん、私の感情を呼び起こせたからと言って、このお話が優れた作品であると断定することは出来ないけれど。」

「それでも、この作品が高い評価を得る見込みはある…ぐらいなら、言えると思うわ。」

「この作品は物語として、少なくともそのぐらいの力はある。」

「『不愉快な話』とか『原作者を縊り殺してやりたい』と私が思ってしまったことは、あなたの原稿にそれだけの力があることの証なのよ。」

 

 

気にくわねーけど、スゲぇ作品ってのは、確かにある。

私自身にも、確かに覚えがあることだ。

縊り殺すって言い方には面食らってしまったけど、そもそもNTRそのものが不愉快な話だ。

不愉快な話を描いて、不愉快な話だとシッカリ評されるのは…作家としてはむしろ誇るべきことだってことなんだろう。

 

「それにしても…。」

扶桑さんは続けた。

「力のある作品だとは思うのだけど、それでも不愉快なお話には違いないわ。」

「こういうお話を見てしまうと、何と言うか…。」

「裏切られた主人公に救いを、裏切ったヒロインに罰を、ついでに間男には破滅を与える」

「そんなお話が欲しくなるわね。」

 

扶桑さんの要望を受けて…。

「そうっすね、まあ私も本来NTRってのはあんまり好きじゃないし…。」

「一度は絶望の淵に堕ちた主人公が逆転してハッピーになったり、チョーシぶっこいたヒロインや間男が得意絶頂から転落する話ってのも描いてみたいですね。」

「アンチNTRモノとでも言うんでしょうか?」

「そんなお話の一般的構造っつーか、パターンみたいなものって、ないですかね?」

 

口に出してしまってから、これは普段から創作に携わってる私が自分で考えることなんじゃないかと思った。

けど、質問されたからには何か回答しなければならないと思ったのか、扶桑さんは少し考えるそぶりを見せた。

それから、もう一度私の原稿を手に取って、もう一度それを読み返した。

また読み終えて、テーブルに原稿を置いてからもう一度考えるそぶりを見せてから、扶桑さんは口を開いた。

 

「秋雲さん、このお話…『Final NTR』だけど…。」

「このお話には、秋雲さんの考える『寝取られ物語』の本質が描かれていると理解しても良いのね?」

 

「え?…まあ、そうっすね…私が考えるNTRの本質っつーか、私のNTRに対する偏見で構成された話ですね。」

 

「そう…それでは先ず、この『Final NTR』を題材にして『寝取られ物語』の本質を確かめましょう。」

「そして確かめられた本質を基にして、『寝取られ物語』への反発・反動である『アンチNTRモノ』のパターンを構成しましょう。」

 

そしてコーヒーに口をつけてから、扶桑さんは本題に入った。

 

 

「まず寝取られ物語を構成するときに、絶対外せない登場人物は三人。」

「主人公の男性、主人公の伴侶たるヒロイン、そして、間男。」

「まずは主人公の男性について。」

「主人公の男性が主人公であるための要件は…善良な人間であること。」

「次に主人公の伴侶たるヒロインだけど。」

「このヒロインがヒロインであるための要件は…少なくとも初めのうちは誠実で貞淑であること。」

「それで最後に間男について。」

「間男が間男である要件は…セックスが上手なように見えること…これだけ。」

 

そう言えばこの原稿を描いているとき、間男については「自分はセックスが巧い」ことをやたらと強調してくるヤツ、としか設定していなかった。

二回読んだだけでそれを見抜いた扶桑さんが鋭いのか、二回読まれただけで見透かされてしまう私のキャラ構想が薄っぺらいのか…。

わかってるつもりだったけど、やっぱ私が征くマンガの道は、果てしなく遠く続いているんだなぁ…。

 

扶桑さんの説明は続いた。

「それで、物語自体の構成だけど。」

「物語は三つの段階から構成されているわね。」

 

「第一段目は、主人公とヒロインについての描写。」

「ここでヒロインが誠実で貞淑であることが描かれる。」

「そして主人公も善良な人間であることが描かれる。」

「それから、主人公とヒロインに肉体関係があることもここで描かれる。」

 

「第二段目は、間男の登場とヒロインへの陵辱描写。」

「この段階で描かれることは…。」

「先ず間男の登場。」

「次に間男とヒロインの接触。」

「それから間男によるヒロインの陵辱・陵辱・陵辱…。」

「ヒロインが快楽の沼に沈み、狂い、良心、そして主人公への愛情を失ってゆく様の描写ね。」

「第二段目と言ったけど…全体の分量という点では、この段階が寝取られ物語の主要部分を成しているわね。」

「…ちょっと言い難いけど、私が一番引き込まれてしまったのは、この段階だったわ。」

 

艦娘は男にも女にも性欲を感じる。

実を言うと、私もこの段階を描いていたときが、一番筆が乗ったときだったりする。

 

「第三段目は、結末。」

「ヒロインが主人公を捨てて、間男を選ぶところが描かれる。」

「曰く、主人公とのセックスより間男とのセックスの方が気持ち良かった。」

「曰く、間男は自分を満たせるけれど、主人公は自分を満たせない。」

「曰く、だから自分が主人公を愛していたのは、気の迷いだった。」

「曰く、だから自分はこれから、間男と本当の愛に生きることにした。」

「曰く、さようなら。」

「そして最後の『さようなら』には、ヒロインの主人公に対する、侮蔑と嘲りが露骨に現れている…。」

「そして主人公は、変わり果てたヒロインの姿を目の当たりにし、信じていたヒロインに裏切られ、切り捨てられ、男性としての自信を失い、絶望して廃人となって…。」

「そこで物語は終わる。」

 

「分量だけ見れば、第二段目が主要部分になっているけれど…。」

「寝取られ物語を寝取られ物語たらしめている部分は、やはり第三段目ということになるわね。」

「善良な主人公が、もっとも信じ、愛していた人に」

「理不尽な理由で裏切られ、切り捨てられ」

「男性としての自信、誰かを愛して信じる心、人間としての尊厳も踏み躙られ、踏み砕かれてしまう。」

「それが寝取られ物語で最も不愉快な点で…最も求められている点、というわけね。」

 

こうして扶桑さんは「NTRモノの本質とは?」という問いに答を出した。

ただNTRモノの中には、恋人や夫をホントに愛しているのに、間男とのセックスに溺れるヒロインの苦しみを描いた作品もある。

扶桑さんは私の「Final NTR」の原稿を基にしてNTRについて語っていたワケだけど…。

…もしかすると私は、扶桑さんに偏見を持たせちゃったかもしれない。

 

「この原稿を読む限り、私の考える限りという限界はあるけれど。」

「寝取られ物語の本質は、主人公の自信、心、尊厳が踏み躙られ、踏み砕かれてしまうところにある。」

「これを前提として、『寝取られ物語』への反発・反動である『アンチNTRモノ』のパターンを構成してみましょう。」

 

扶桑さんの話は、ここからが本題になった。

「しつこいようだけど。」

「寝取られ物語の本質は、主人公の自信、心、尊厳が踏み躙られ、踏み砕かれてしまうところにある。」

「だからこうした『寝取られ物語』に対する反発・反動を表現するには…」

「踏み躙られ、踏み砕かれた主人公の自信、心、尊厳を回復させるお話を描けば良い、ということになるわね。」

 

「自信、心、尊厳を回復させる話…ですか。」

「でも、どうやって?」

 

「主人公はヒロインに、自分とのセックスを間男とのセックスと比べられて、劣っていると言われて自信をなくしたのよね。」

「ならその自信を回復させるには、やっぱりセックスによって、ということになるわね。」

 

「セックスによって…ですか。」

「だったら相手が必要ですよね?」

「そうなると半ば必然的に、新しいヒロインを登場させることになりますね。」

「元のヒロインと違って本当に誠実で、貞淑なヒロインを…。」

 

「いえ、むしろ新しいヒロインは、本当にセックスが好きで、誰とでも寝るような女性である方が良いわ。」

 

「ええ!?」

「主人公は、ビッチに成り果てちゃったヒロインに傷つけられたのに?」

「そんな主人公に、またビッチをあてがっちゃうんですか?」

 

「もう一度言うけど。」

「主人公はヒロインに、自分とのセックスを間男とのセックスと比べられて、劣っていると言われて自信をなくしたのよね。」

「ならその自信を回復させるには…」

「主人公のセックスは、()()()()()()劣っていない、と言う必要があるわ。」

「そのために、新しいヒロインは、セックスの経験がある程度豊富な人である必要があるのよ。」

()()()()()()主人公のセックスは劣ってないと言える人である必要が、ね。」

 

「新しいヒロインには、他にもいくつか条件があって…そうね…。」

「まず、自分がセックス好きだということを隠さない人。」

「来る者は拒まず、去る者は追わない人。」

「それで誰かを救えるなら、躊躇いなくその誰かに肉体を許す人。」

「人を裏切ったり、切り捨てたりしない人。」

「切り捨てられるのは自分の方だという覚悟ができている人。」

「まあ一言で言えば、一本筋の通ったビッチ、とでも言うのかしらね。」

 

一本筋の通ったビッチ…。

私には一人思い当たる人…いや、艦娘(ひと)がいる。

扶桑さん、もしかするとその艦娘(ひと)を念頭に置いて話してるのかな?

私がその疑問を口にする前に、扶桑さんは説明を続けた。

 

「そして主人公はこの一本筋の通ったビッチ…新しいヒロインと、確りと絆を深めていくの。」

「ビッチだった新ヒロインが、主人公と絆を深める中で生き方を改めるのも良いし」

「主人公が、新ヒロインがビッチでも構わないと思えるようになっても良い。」

「とにかく主人公と新しいヒロインは、作中で決して途切れることのない絆で結ばれていく…。」

「これを『アンチNTRモノ』の中核としましょう。」

 

「主人公が癒やされ、救われることが『アンチNTRモノ』の中核、ですか…。」

「でも、自分でNTRモノなんて描いておいてこんなこと言うのもどうかと思うんですけど。」

「主人公が救われたら…あとは主人公を裏切ったヒロインと、間男にも何か罰を与えてやりたいところですよね。」

 

「そうね、まずヒロインについてだけど…。」

主人公を裏切ったヒロインと、間男への報復・復讐。

これも本来は自分で考えるべきことだったんだけど…扶桑さんは既にこの要望についても考えていたらしい。

私が要望を口に出すや否や、扶桑さんは要望に対して回答し始めた。

 

「ヒロインは何と言って主人公を切り捨てたのか?」

「曰く、主人公とのセックスより間男とのセックスの方が気持ち良かった。」

「曰く、だから自分が主人公を愛していたのは、気の迷いにすぎなかった。」

「曰く、だから自分はこれから、間男と本当の愛に生きることにした。」

「でも、これって結局セックスの快楽に溺れて、その快楽のために全てを擲つということよね?」

「これって、何かを連想させないかしら?」

 

「…何かって…薬物依存?」

 

「やっぱりあなたもそう思う?…そう、私もそう思ったわ。」

「で、ヒロインは間男と本当の愛を育む…なんてことを言っている。」

「これはヒロインが、自分はまだ純愛物語のヒロインだと思い込んでいることを意味しているし…」

「…自分が主人公を裏切ったビッチだということを認められていないことを意味しているわね。」

「薬物依存に陥っている人が、自分が薬物依存であることを認められなかったらどうなるかしら?」

「…セックスの快楽を失いたくない、間男に捨てられたくない。」

「だから間男のためなら、間男に求められたら、どんなことでもしてしまう。」

「それこそ、自分自身を破滅させてしまうようなことも、ね。」

「そして何かをしでかして、自らを破滅させてしまったら…。」

「…結局間男にも切り捨てられ、誰からも信用されず、受け入れられることもなく、孤独と絶望の中で人生を終える…。」

「こんなところかしら。」

 

「…そんで、ヒロインが具体的に何をしでかしてしまうのか、その後の絶望をどう描くかってのが、私の腕の見せ所ってことですね。」

 

「その通りよ。」

 

「なるほど…そんで、間男の方はどうしましょうかね?」

 

扶桑さんは答えて言った…。

「あからさまに言ってしまえば、間男って結局…」

「セックスの業前と立派なオチンチンだけの存在でしょう?」

 

「………。」

 

「どうしたのかしら?」

 

「いえ…扶桑さんも、オチンチンとか言っちゃうんだと思って…。」

 

「他所の扶桑や山城が聞いたら卒倒するかもしれないけど」

「私は使う必要がある言葉を使うことに、躊躇はしないわ。」

 

「はあ…そうですか。」

やっぱり岩川台営業所(うち)の扶桑さんは普通と違っている。

話が逸れたけど、扶桑さんは話を続けた。

 

「でも、業前なんて後から身につけられるものだし…」

「大体女性を悦ばせるために、オチンチンが立派であることは必須なのかしら?」

 

「…ヒロインが大きいー!大きいのおー!とか言ってアヘってるところを描いてて思ったんですが…。」

「イクのに大きなモンが必要なら、ディルドか何か使った方が良いですよね?やっぱ。」

 

「でしょう?」

「なら…ああ、伊良湖さん、ちょっとホワイトボードを貸していただけるかしら?」

扶桑さんは突然、伊良湖さんにホワイトボードを持ってくるように頼んだ。

扶桑さん、ここは飲食店ですよ…と思ったけど、伊良湖さんは店の奥からホワイトボードを持ち出してきた。

 

「間男をどうするかについて話す前に、『アンチNTRモノ』の基本的な構成について纏めておきましょう。」

扶桑さんはそう言って、ホワイトボードに書き始めた…。

 

1.寝取られ発生パート

 ・主人公の目の前で、ヒロインと間男のセックス 快楽に狂い、主人公を侮蔑するヒロイン

 ・回想 ヒロインが誠実で貞淑だったこと 主人公が善良であること

 ・絶望して、半ば廃人となる主人公

 

「あまり分量を取るわけにはいかないけど、先ずここで”圧縮された”寝取られ物語を展開することになるわね。」

「注意点としては、主人公が善良であることを直接的に表現しないことかしら。」

「まあ…ヒロインが誠実で貞淑だったことを、主人公視点で強調すればその点は達成出来ると思うわ。」

「他人のことを『良い人』と言う人は、その人自身も『良い人』と見做されるでしょうから。」

「難しいところは…ヒロインに主人公を、どれだけ不当に、理不尽に侮蔑させるかというところかしら。」

「あと、主人公の絶望をどのように表現するかというところね。」

「さっきも言ったけど、裏切られた主人公の絶望こそが『寝取られ物語』の本質なのだから。」

 

 

2.真ヒロイン登場パート

 ・真ヒロイン、主人公と接触

 ・真ヒロインと主人公のセックス (真ヒロイン主導)

 ・またセックスをしようと約束して、一旦別れる (真ヒロインの方から話を持ちかける)

 

「真ヒロインというのは、さっき話した『一本筋の通ったビッチ』のことね。」

「真ヒロインと主人公を、どんな形で接触させてセックスの場面に持ち込むか。」

「真ヒロインが『一本筋の通ったビッチ』だということを、どう表現するか。」

「これがこのパートでの難問になるわね。」

 

3.主人公救済パート

 ・何度も体を重ねる主人公と真ヒロイン

 ・セックスを通して、心を癒やされていく主人公

 ・セックスを通して、主人公を特別な存在として見るようになる真ヒロイン

 ・奇妙な形で、それでも強く結ばれる主人公と真ヒロイン

 

「奇妙な形、というのは…」

「主人公は真ヒロインのもので、真ヒロインは主人公のもの。」

「このことさえ忘れなければ、お互い自分以外の誰とセックスしても構わない。」

「こういう形のことね。」

「まあ…岩川台営業所(うち)では、この形の方が標準なのだけど。」

 

4.偽ヒロイン破滅パート

 ・ふとしたことから、自分は間男に捨てられるかもしれないと思い始める偽ヒロイン

 ・不安から、精神に異常をきたし始める偽ヒロイン

 ・結局、本当に間男から捨てられてしまう偽ヒロイン

 ・主人公に縋るも、受け入れられない偽ヒロイン

 ・間男に捨てられ、主人公にも受け入れられず、ヒロインは生きながらにして地獄に堕ちる。

 

「偽ヒロインというのは、言うまでもなく冒頭で主人公を裏切ったヒロインのことね。」

「ここでの注意点は、精神に異常をきたし始めた偽ヒロインに対して、間男は特に何もしないということ。」

「そうすることで、偽ヒロインがどんな男性を選んでしまったのかを示すの。」

「主人公が偽ヒロインを受け入れないのは…。」

「復讐心からではなく、偽ヒロインから受けた侮蔑が精神的外傷(トラウマ)になっているから。」

「主人公は偽ヒロインを受け入れられないことを謝りながら、偽ヒロインを突き放すの。」

「偽ヒロインが堕ちる生き地獄は…まあ、実際に描く人へ丸投げしておくわ。」

 

5.真ヒロイン対間男パート

 ・間男、真ヒロインと接触

 ・間男と真ヒロインのセックス やはり快楽に狂う真ヒロイン

 ・快楽に狂っていたのに、間男の言いなりにならない真ヒロイン

 

「真ヒロインが『一本筋の通ったビッチ』であることの真髄を示すパートになるわ。」

「真ヒロインは間男とのセックスで、狂ったように良がるけれど…。」

「それでも間男の言いなりにはならず、間男より主人公の方を優先する。」

「間男が、真ヒロインは自分とのセックスで満足したのだから、自分のものになるべきだと主張すると…」

「真ヒロインは、セックスで満足させたぐらいで調子に乗るんじゃない、と間男を一喝する。」

「ここで真ヒロインは、間男がセックスの業前と立派なオチンチンだけの存在であるという事実を突きつけて…。」

「…そしてそれは大した意味は無いという事実も突きつけるの。」

 

6.結末

 ・間男の目の前で、真ヒロインと主人公のセックス 快楽に狂いながら、間男を罵倒する真ヒロイン

 ・奇妙に、それでいて固く、確りと結ばれる真ヒロインと主人公

 ・対して、自分の身の程を認められず、精神の安定を失い、破滅に向かっていく間男。

 

「さっき問題になっていた、結局間男をどうするのかと言うことだけど。」

「この結末パートで、間男の末路が描かれることになるわね。」

「ここで真ヒロインは、間男の目の前で、主人公とセックスしながら…」

「いくらオチンチンが立派で、セックスの業前が優れていても」

「それで私の自由を奪い、人形にしようとする男などお呼びじゃない。」

「人形が欲しいなら、玩具屋さんに行きなさい。」

「私の『特別』は主人公!間男は所詮玩具に過ぎないのだから。」

「…と、言い放つの。」

 

「立派なオチンチンとセックスの業前は、間男の自信・自尊心の源だけど。」

「この真ヒロインの罵倒によって、自信・自尊心の源は打ち砕かれるの。」

「打ち砕かれた自信・自尊心を修復しようとして、間男はまた色々な女性に手を出すけれど」

「自信を打ち砕かれた動揺から、以前のように巧く振る舞うことが出来ず、誰からも相手にされなくなって落ちぶれていく…。」

「あるいは、焦りから手を出してはいけない相手…例えばヤクザの情婦に手を出してしまって、惨たらしい最期を遂げる…。」

「いずれにせよ間男は、真ヒロインと主人公のあずかり知らぬところで、勝手に滅びていく。」

「そして主人公と真ヒロインは、その絆をさらに深めていって…そこで物語はお終い。」

「『アンチNTRモノ』の一般的構造、パターンとしては…まあこんなところかしら。」

 

ここで扶桑さんの話は終わった。

 

まとめると…。

 

1.寝取られ発生パート

 ・主人公の目の前で、ヒロインと間男のセックス 快楽に狂い、主人公を侮蔑するヒロイン

 ・回想 ヒロインが誠実で貞淑だったこと 主人公が善良であること

 ・絶望して、半ば廃人となる主人公

 

2.真ヒロイン登場パート

 ・真ヒロイン、主人公と接触

 ・真ヒロインと主人公のセックス (真ヒロイン主導)

 ・またセックスをしようと約束して、一旦別れる (真ヒロインの方から話を持ちかける)

 

3.主人公救済パート

 ・何度も体を重ねる主人公と真ヒロイン

 ・セックスを通して、心を癒やされていく主人公

 ・セックスを通して、主人公を特別な存在として見るようになる真ヒロイン

 ・奇妙な形で、それでも強く結ばれる主人公と真ヒロイン

 

4.偽ヒロイン破滅パート

 ・ふとしたことから、自分は間男に捨てられるかもしれないと思い始める偽ヒロイン

 ・不安から、精神に異常をきたし始める偽ヒロイン

 ・結局、本当に間男から捨てられてしまう偽ヒロイン

 ・主人公に縋るも、受け入れられない偽ヒロイン

 (主人公「ごめん…でも、あの時のキミの言葉が、忘れられないんだ…!」)

 ・間男に捨てられ、主人公にも受け入れられず、ヒロインは生きながらにして地獄に堕ちる。

 

5.真ヒロイン対間男パート

 ・間男、真ヒロインと接触

 ・間男と真ヒロインのセックス やはり快楽に狂う真ヒロイン

 ・快楽に狂っていたのに、間男の言いなりにならない真ヒロイン

 (「ちょっとチンポがでかくて、セックスが巧いからって調子に乗るんじゃねーよバーカ!」)

 

6.結末

 ・間男の目の前で、真ヒロインと主人公のセックス 快楽に狂いながら、間男を罵倒する真ヒロイン

 (「私はてめーの人形じゃねーんだよ!人形が欲しけりゃ玩具屋へ行きな!」)

 ・奇妙に、それでいて固く、確りと結ばれる真ヒロインと主人公

 ・対して、自分の身の程を認められず、精神の安定を失い、破滅に向かっていく間男。

 (完全なスランプに陥って落ちぶれる。/手を出してはいけない相手に手を出して惨たらしい最期を迎える。)

 

「アンチNTRモノ」の一般的構造・パターンとは?と言う私の問いかけに対して、扶桑さんはこう答えた。

ホワイトボードに書かれた(そして私が補足した)『アンチNTRモノ』の構造を見ると、いくつか気になる点があった。

 

NTRモノは「主人公とヒロイン」、「ヒロインと間男」、「結末・捨てられる主人公」の三段階から構成されている。

対して「アンチNTRモノ」は六つのパートから構成されている…これでは「薄い本」が分厚くなってしまう。

扶桑さんは、主人公が癒やされ、救われることが「アンチNTRモノ」の中核だと言った。

なら、偽ヒロイン破滅パートと真ヒロイン対間男パートは削除するか…。

…でも、チョーシぶっこいてる偽ヒロインと間男の無惨な末路ってヤツは、私も描きたいところだし…。

 

あと、「アンチNTRモノ」の「一般的」構造ということだったけど、扶桑さんが示した答は、それほど「一般的」とは言い難いように思えた。

特に、真ヒロインのキャラは一般的どころか、かなり特殊なキャラなんじゃないか…。

でも主人公を救う真ヒロインのキャラを一般的なキャラにすると、そんなフツーのキャラが主人公をどうやって救うのか…。

それと、偽ヒロインは勝手に自滅するようにできるから良いとして、間男の方はどうしよう?

間男に立ち向かう真ヒロインを一般的なキャラにすると、そんなフツーのキャラがどうやって間男に立ち向かうのか…。

 

まあ、これについてはまた後で考えよう。

そもそも「物語のパターン・お約束」なんてものは、実際に創作に携わっている私が、自分で考えなくちゃならないことなんだから。

 

 

話の締めとして、扶桑さんはこう言った。

「今日はこうして、『寝取られ物語』について考える機会を得たわけだけれど。」

「見てみると寝取られ…寝取りという行為は、男性の心と尊厳を踏み躙り、踏み砕く行為というだけじゃなくて」

「女性の人間性も破壊し、性欲処理の道具にして貶めてしまう行為だと言えるかもしれないわね。」

「私は、伴侶以外の相手とセックスをすることが悪いことだとは思わないけど。」

「そんな私から見ても、人と人の絆を、心を、尊厳を、踏み躙り踏み砕く寝取りという行為は、どうにも許し難く思えるわ。」

「だとすると寝取りという行為は、誰から見ても、どんな立場の人から見ても絶対的な悪と言えるのではないかしら。」

「それこそ『吐き気を催す邪悪』そのものと言えるのではないかしら。」

「…『寝取られ物語』は今、とてもとても人気を博しているそうだけど。」

「私としては踏み躙られた人が救われるようなお話も…『アンチNTRモノ』も、もっと興隆してほしいわね。」

「秋雲さん。」

「改めてお願い…というか、注文するわ。」

「あまり洗練されていないけど、今回私がした話を基にして『アンチNTRモノ』の本を一つ、本当に描いてくれないかしら?」

 

 

「そっすね…じゃ、一つ挑んでみます。」

こうして、次の本のネタは決まった。

 

…しかしマジな話、NTRモノと同じぐらいに、アンチNTRモノも興隆しないもんかね?

もしかすると私の次の本が、興隆の魁になる、かも?

 


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