表向き一般村人ビーの冒険手記   作:タータスタータ

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第2話

 次の日、つまり11日目

 

 僕は乗り合いの馬車に乗って街を出ていた。

 

 昨日もう少しここにいるなんて言った気がしないでも無いけど、やっぱりこう、同じ場所に居続けるなんて違うよね! どんどん違う場所に移動して世界を見て回るべき! うん! 

 だから何も考えず僕は馬車に乗った! そういう事にしておこう! 

 

 それにマジカルマジマジも近くにいたら嫌だし! 

 世界が滅ぶと困るもんね! 

 いや、流石に大げさかな? まあいいや! 

 

 馬車には僕の他に2人の女性が乗っている。

 多分昨日酒場で見かけたような気もする人たちだ! 

 

「初めまして〜、私はミーナライカ、戦士をしているわ〜、短い間でしょうけどよろしくね〜」

 

 ミーナライカさんは巨大な盾を持っている、青色の髪で、大きくて綺麗なおねーさんだ。

 

「あ、はい、僕はビーですよろしくお願いします」

 

「……」

 

「こ〜ら、リスちゃんも名乗りなさいよ〜、ごめんなさいね〜、この子人見知りで〜」

 

「弱い奴興味ない」

 

「え? 僕弱くないですけど」

 

 僕最強だけど? 

 

「……本当?」

 

「だって僕は主人公だから!」

 

「ふーん、リステライカ、よろしく」

 

 リステライカさんは小さな杖を持っている、銀色の髪をしている小さな子供だ。

 リステライカさんは魔術師だね。

 才能はありそうだけど、そんなに強くは、って、あー、この子あの子か。

 

「坊やはこれからどこに向かうの〜?」

 

「あ、リースティユルってところに行きます」

 

「へぇ〜? やめておいたほうがいいわよ〜? 今はウッドエレメンタルが〜暴れてるって噂だし〜」

 

「あ、僕強いので大丈夫です」

 

 あの程度の精霊なら全然怖くないしね! 

 

「ふ〜ん、ま〜そこに向かおうとしている私達が〜とやかく言えることじゃ無いわね〜、それに〜、今出て行った街は昨日領主様が亡くなられたって噂だし〜、留まっててもいろいろ問題に巻き込まれたわよね〜」

 

 ん? ……今、おかしくなかった? あれ? 

 

「ビーは弱そう、どれくらい強い?」

 

「え? あ、勿論世界最強ですよ!」

 

「……ふーん」

 

 あ、これは間違いなく疑われているな! 

 僕には分かる! 

 

 その時、急に馬車の動きが止まった。

 そして、御者の人が外から声を掛けてきた。

 

「おーっと、すいやせんねお客さん方、ちょいとゴブリンが出てきたんで、処理してきますわ、少々お待ちを」

 

 ゴブリン! これは僕の出番だ! 

 

「ちょっと待って! この襲撃イベントは僕に任せて! 僕の実力を見せてあげるから!」

 

 ここは僕が現れたゴブリンをかっこよく倒すイベントだね! 

 

「ゴブリン程度で、何見ろと」

 

 僕は馬車を勢いよく飛び出した。

 

「グギャ! グギャ!」

 

 そこには、僕と同じような錆びた剣を掲げるゴブリンが4体いた。

 

 4体!? くっ、なんて多さだ! 

 

「こんな所に出てくるたぁ、数も少ねぃですし、逸れですな、お客さん、すぐかたぁつけるんで馬車に戻ってぃやしていいんですぜぃ?」

 

「いいや! 僕が戦います!」

 

 馬車襲撃イベント! ここは僕の活躍の場だ! 

 僕は先頭のゴブリンに向けて走り出した。

 

 まずは数を減らそう! 

 

 出し惜しみは無しだ! 最初から全力で行く! 

 

「くらえ! うおおおおおお!」

 

 必殺! 

 

「☆YOKO GIRI☆」

 

 ガキン! 

 

「グギャ! グギャ!」

 

「っなぁ!? 馬鹿な!?」

 

 僕の全力の横切りが、防がれた!? 

 それに小さい体なのに、なんて力だ! 押し切れない! 

 

 ゴォォォォォォォォ! 

 

 今、僕と1体のゴブリンが鍔迫り合いをしている。

 

 だけど、何故か他の3体のゴブリンが怯えた表情をして後ずさっている。

 まさか! この土壇場で僕の主人公力が覚醒した!? 

 これなら、僕が囲まれることはない! 

 僕の覚醒した主人公力に恐れをなしているんだね! 

 

 なら! 

 僕は一度距離をとった。

 

 体が熱い、今、僕は燃えるように熱くなっている! 

 

「これだけは使わないと決めていた……けど、仕方ないみたいだ、お前には、この一撃が相応しい……この世界の力を借りた究極の一撃! 受けられるものなら受けてみろ!」

 

 うぉぉぉぉぉおおおお! 

 秘奥義! 

 

「☆TATE GIRI☆」

 

 ガキン! 

 

「グギャ! グギャ!」

 

「っ!? 馬鹿な!?」

 

 この僕の縦切りを、防いだ!? 

 縦切りは僕の力だけじゃない! この世界の重力だって力に加わっているというのに! 

 

 なんて強さだ! 

 

「……グギャ?」

 

「……フレアレイン」

 

 ゴォォォォォ! 

 

「あっ」

 

 僕の目の前で、ゴブリン4体が、降ってきた炎に包まれて消えてしまった……

 

 あ、僕の後ろでリステライカさんが魔術使ってたから熱かったのかな……うん。

 

 今のはレイン系フレア魔術だね。

 炎に変換した魔力を空中で収縮し、前方上空に向かって放射状に解放。

 雨のように炎を降らせる極極低威力、極低範囲の魔術。

 

 リステライカさんが放ったのかな? 

 

 …….うん! 

 

 これぞ仲間との連携! パーティの勝利! 

 主人公には仲間がいるからね! 

 

「あなた、弱い」

 

「え? 僕弱くないですけど」

 

「ゴブリンに苦戦、ざーこ」

 

「こ〜ら、リスちゃん、ダメよ〜そんな言葉使ったら〜ごめんなさいね〜」

 

「ほぉ、中位魔術たぁー、なかなかつぇーじゃないですかい」

 

「弱い人興味ない」

 

 そう言って、リステライカさんは馬車に戻っていった。

 

 よし! 僕も戻ろう! やっぱりこの戦闘はいいイベントだったね! 

 

 

 

 

 主人公には仲間がいるものだ。

 つまり、この出会いは大切にしないといけないね! 

 一緒にゴブリンを倒した仲! つまりリステライカさんは仲間! 

 リステライカさんと一緒にいるミーナライカさんも仲間! 

 

 よし! この2人を僕の仲間に加えよう! 

 

「2人とも! 僕の仲間にならない?」

 

「ならない」

 

「あ、はい」

 

「リスちゃんが仲間になるなら〜考えてもいいけど〜」

 

「あ、はい」

 

 つまり、リステライカさんを仲間にすれば2人とも僕の仲間だね! 

 よし! 頑張ってリステライカさんを仲間にするぞー! 

 

「……押し付け……」

 

 ん? リステライカさんがジトーッとした目でミーナライカさんを見てる。

 どうしたんだろう? 

 

「因みに〜ビー君は〜知り合いにお金持ちの人とかいたりする〜?」

 

 お金持ちの知り合い? うーん? 

 

「知り合い、にはいないですかね?」

 

 知り合いって確か、互いが互いを知っていて、友達未満の人のことだよね? 

 1番のお金持ちの人は、僕のことをお父さんだと思ってるだろうし。

 一応お父さんもお金持ちではあるのかな? でも家族だしね! 

 僕も多少は持ってるけど、僕のことを聞いてるわけじゃなさそうだし! 

 

「そう〜? 残念ね〜」

 

「ミナ、金しか興味ない」

 

「お金は大事よ〜?」

 

「そんなもの、力、あれば不要」

 

「いいえ〜力なんてあったって〜お金の前には無力よ〜世の中〜お金が全てよね〜」

 

 あれ? 二人の間に火花が見える? 気のせいかな? 

 

「力、あれば、お金簡単、取れる、逆、無理」

 

「いいえ〜お金さえあれば〜強い冒険者に依頼を出すことも〜優秀な護衛を雇うことも〜容易だし〜力よりお金よ〜」

 

「自分、強ければ、不要」

 

「強くなるにしても〜お金さえあれば、有能な教師を雇って自分磨きもできるし〜優れた武器防具を買うことだって〜できるわ〜」

 

「無駄、力が全て」

 

「お金が全てよ〜」

 

「力」

 

「お金〜」

 

 力、お金、力、お金、力、お金、力、お金、力、お金、力、お金、力、お金、力、お金、力、お金、力、お金、力、お金、力、お金、力、お金、力、お金、力、お金、力、お金、力、お金、力、お金、力、お金、力、お金、力、お金、力、お金、力、お金、力、お金。

 

 馬車には2人の声がずっと響いている。

 

 僕が会話に入る余地がない! 

 

 馬車は揺れながらゆっくりと進んでいった。

 

 父親視点

 

「そう言えば、最近息子を見ぬな、娘よ、息子が何処にいるか知らぬか?」

 

「にぃー?」

 

 最近娘は言葉を覚えた。

 だが、私には娘の言葉がよくわからぬ。

 妻や息子は完璧に理解出来ているそうだが……

 だが、流石に私でも今の言葉はわかる。

 

 ビーと、言ったのであろう。

 息子は自らの名を語らぬ、基本的に語るのは略称だ。

 既にその名に見合う実力を兼ね備えているというのに、なぜ名乗りを渋るのかは私には分からぬ。

 

「ああそうだ、びーさん、などと名乗っておる息子のことだ、どこに行ったかわからぬか?」

 

「おーくのーおやぅめー!」

 

 ……随分猟奇的な娘に育ってしまった。

 唐突にオークの親が美味いと叫ぶとは、何処で教育を間違ってしまったのか。

 

「……そう、か」

 

 やはり、まだ娘との会話は難しいか。

 今度妻が帰ってきたら、猟奇的に育っていることも含めて娘の教育に関して話をしよう。

 

 しかし、暇だ。

 ここ最近はお役目がめっきり減った。

 我らの役目が無いことはいいことではあるのだが。

 

 王家より家名を頂いている手前、お役目が無くていいのかという懸念点はある。

 だが、我が家名の元となった使者が、最近は全く現れぬ。

 つまり良い、ということなのであろう。

 

「平和だな」

 

 昔は考えることもなかった、平穏。

 少し退屈で、しかしそれ以上に心休まる長閑な、のんびりとした雰囲気。

 

 それは、なかなか良いものだった。

 

「お前もそう思わないか? ワールドよ」

 

「うー? いいー!」

 

「ふっ、まだ幼き娘には分からぬか」

 

 しかし、世界の名を与えた娘が、無垢に、無邪気に育っている。

 

「世は安泰、だな」

 

 …………………………いや、

 

「猟奇的だったな」

 

 オークの親うめぇ、は…………まあ、よいか。

 

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