表向き一般村人ビーの冒険手記 作:タータスタータ
14日目
街が見えてきたぞー!
「またのご利用をお待ちしておりやすぜ!」
御者のおじさんとは門の前で別れた。
なんか面倒な手続きが色々あるんだとかで。
僕たちは身分証を見せればすぐ入れるけど、大変そうだなー。
「じゃあ街に入ろう!」
門番の所で並んで手続きをする。
門番の人は金髪のカッコいい若いお兄さんだ。
まずはミーナライカさん。
「次! でっ……コホン……おお、金級冒険者か、通ってよし!」
次はリステライカさん。
「次! ……おお、金級冒険者か、若いのにすごいな! 通ってよし!」
次は僕!
「次! ……ん? なんだこれは?」
「あ、はい」
「私は身分証を出せといったのだが? なんだこの子供の落書きみたいなものは? こんなものを出せなどいってないぞ! 後ろにも人がいるんだ、早くしろ!」
「いや、あの、あ、はい」
大丈夫かな、この人。
それは置いておいて、どうしよう? これが使えないとなると、他の身分証……あ、そういえばこれがあった!
「あの、これ」
「ふむ、冒険者証か、最初からそれを出せばいいものを……屑鉄級か、ならば色々と手続きが必要だ、こっちに来い!」
あれ? ミーナライカさんとかリステライカさんはいいのかな?
「あの、2人は」
「あん? 金級なら門はフリーパスだ、冒険者としての信用があるからな、だがお前は屑鉄級だ、冒険者ギルドで最低限の講義とテストを受かるだけでなれる屑鉄級に、信用なんてものはない」
講義? テスト? なんのことだろう?
「今この街はちょっと問題ごとが起こっている、金級冒険者が来てくれるのは素直にありがたいが、問題があるからこそ、余計に変な奴を入れるわけにはいかない」
精霊関係かな?
これからアクアエレメンタルも来るみたいだし、大変そうだよね。
「だからお前はこっちだ、それともあの2人が身分を証明してくれるのか? それなら」
「ここでお別れね〜じゃあね〜」
「じゃ」
そう言って、ミーナライカさんとかリステライカさんは街に入っていった。
「じゃあねー! またねー!」
仲間になってくれなかったのは残念だけど、旅は、出会いもあれば別れもある!
また再開した時に、今度こそパーティメンバーになってもらおう!
「……捨てられたんだな、ドンマイ」
「?」
急に門番の人の雰囲気が柔らかくなった。
どうしたんだろう?
「俺も餓鬼に何イラついてんだか、大人気ねぇ、はぁ、まあいい、おい! リュウザキ!! 俺はこいつの手続きをしてくる! 後は任せたぞ!」
「へ〜い」
門番の人は机の上の書類をパラパラめくりながら、僕に質問をしてくる。
「念のため手配書も再確認しておくか……ま、大丈夫だな、さて、色々と質問に答えてもらうぞ」
「はい!」
ワクワク! こういうの体験したことないから楽しみ! なんか取り調べ見たい!
「まず名前は?」
「ビーです!」
「……この街に来た目的は?」
「旅です!」
「……子供が旅か、まあ、いい、どれくらい滞在予定だ?」
「気が向くまでです!」
「……具体的にはどのくらいだ」
「未定です!」
「……長期か短期か」
「短期です!」
「……ああ、で、お前の故郷は?」
「ライトクラスターです!」
「いや、国の名前じゃなくてだな、村とか街とかの名前だよ」
「村です!」
「……村の名前は?」
そう言えば、あの村って名前あったっけ? 知らないや。
「知らないです! 村って呼んでます!」
「……ふむ、ここからどれくらいだ?」
「どれくらい? 急げば大体10分です!」
歩けば20日くらい?
「近いな、そのくらいに村があったか? ……ああ、そうか、よし、次、お前、金は持ってるよな?」
「はい! 持ってます!」
「こういう街に入るには、街の住民か、高位冒険者か、貴族などのよほどの身分を証明されたもの以外には、手形をここで買ってもらうことになっている、この街で問題を起こさず、街から出るときにここに手形を返しにこれば、9割は返す、1割は手数料だ」
へーそうなんだ!
「はい!」
「当然、問題を起こせば返金はないぞ、犯罪を犯したなら、手配書に記載されて他の街にも回される、注意しろよ」
「はい!」
「因みに、手形がどのくらいの値段か知ってるか?」
いつも普通に通れてたからしらないや。
どれくらいなんだろう?
「知らないです!」
「そうか、知らないか……ニヤリ」
え? もしかしてすごい高いのかな? 足りなかったらどうしよう? 1億ゴールドくらいしか持ってきてないけど。
「この手形はな……なんと……なんと」
「なんと?」
すっごいためる!
「なんと! ……100万ゴールドだ!」バァーン!
あ、よかった。そのくらいなら大丈夫だね。
「はい!」
僕はポケットから財布を取り出して、そこからお金を出した。
ジャラジャラジャラジャラ!!!
「ってのは当然冗だうぇぇぇ!?!?」
これで100万ゴールドかな。
「ま、待て待て待て待て!」
「はい! 待ちます!」
沢山待って欲しいみたい。
いやー、正規の手段で街に入るのは初めてだけど、色々聞かれるんだなー。
「いや、あの、あ、え、あ、お、あ」
「大丈夫です?」
「大丈夫じゃない、全然大丈夫じゃない!」
「あれ? 足りなかったかな?」
ジャラジャラジャラ。
「違う! そうじゃない! やめろ! やめてくれ! 待って! 頼むから!」
「ん? はい」
よく分からないけど、どうしたんだろう? 門番の人、すごい動揺してるみたいだけど。
「じょ、冗談だから! ジョーク!! ジョォォォォォークッ!!」
「冗談? やっぱり100万ゴールドじゃ足りなかったんですね」
さらにお金を取り出した。
ジャラジャラジャラジャラ。
「待て! 違う! 逆だ! 俺が悪かった! 茶目っ気なんて出してすまん! だからすぐにしまってくれ! 屑鉄級冒険者は1ゴールドだ! 1ゴールドで手形は買えるから!」
「あ、そうなんですね」
「やめてくれ! そんな大金見せないでくれ! 心臓に悪い!」
1ゴールドで良いんだー。
まあ、お金の使い道なんてあんまりないし、1ゴールドでも100万ゴールドでもどっちでも良いけどね。
僕はお金を戻して、1ゴールドだけ残した。
「え? いま、どう……アイテムボックス……いや、でも、くたびれた服着て、サビサビの剣を下げた、お金持ち? ……擬態?」
門番の人は考え込んでしまった。
「あ、あのー、も、もう一度お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「え? ビーです」
「あの、家名とかはあったりしますでしょうか?」
「言わないとダメなんです?」
あんまり名乗りたくないっていうか、術式の変更が面倒くさいっていうか。
あ、でも名字ならいいのか。
「ああ! いや! いやいやいや! 結構でございます! 大丈夫でございます!」
いいみたい。
なんか急に口調が変わった、変な人だなー。
「ブツブツ……家名があって、お金持ちで、アイテムボックスを持ってて、擬態している常識知らず、……箱入りのお坊っちゃん……」
急に貶された! というかアイテムボックスは持ってないよ!
流石にお父さんの部屋からアイテムボックスまで持ち出したらバレるから!
「お手数をおかけしました! こちら手形になります! どうぞお通りください!」
「あ、はい」
変な人だなー。
「あ、あと! 今現在は街の北部は危ない為通行禁止になっております! 近寄らないようにお気をつけてくださいませ!」
「はーい」
進入禁止ってことは、北側で何か面白いことをやってるってことなのかな?
行ってみよう!
門番視点
仕事も終わったし帰るか。
「うーん、全く見覚えないんだがなぁ」
荷物を取りに行くと、書類をパラパラめくって悩ましそうにしてる先輩がいた。
気にせず帰る。
「おさきー」
「お、リュウザキ! ちょうど良かった!」
はぁ、先輩に呼び止められた。
早く帰りたい。
「何すか」
「リュウザキ、この紋章に見覚えないか?」
そう言って王家の裏の紋章の1つを見せてきた。
「あー、ないっすね」
面倒そうな予感がする。
スルー安定だ。
「そうか、なら、どっかの新興貴族の家紋とかか? もしくは大商人? 教会、は、違うよな、んー?」
王家だよ。
なんでしらねぇんだよ。
門番なら知ってないとダメな情報だろ。
王家の裏の紋章は何種類かあるが、それを見せられたら、何も聞かず、誰かも詮索せずに素通りさせる。
そして後で王家に報告の手紙を出す。
それが門番の仕事の1つ。
それなのに先輩が裏紋知らないってどういうことだよ。
「分かった! 教養のないどっかの冒険者が適当に作った紋章だな!」
王家が作った紋章だよ。
「だからあんな子供の落書きみたいなやつだったんだな!」
王家侮辱してるぞ。
「たく、それにしても、どこの誰が作ったかは知らんが、ダッサイ紋章だな」
お前死ぬぞ。
「センスってものが感じられない、これを作ったやつは、きっとまともに教育も受けてないような野蛮人だろうな! あっはっは!」
どこまで敵に回す気だ?
王族も、王家の教育係も敵に回してるぞ。
「にしても、あんな大金持ってて、あんなボロい格好してるってことは、家出かねぇ」
裏紋使ってるってことは、この街のウッドエレメンタルに対処するために王家が寄越したんだろう。
それなのに、そんな人物に対して、先輩は色々やらかした、と。
巻き込まれる前に逃げるか。
どうせ、怒られるにしても先輩だろうし。
「お先ー」
「おう、気をつけて帰れよー、俺は王家に報告の手紙を送らんといかんから、少し残る」
報告? 裏紋関係と別か?
ま、いっか。
とっとと帰ろ。
「しーらね」