全てが狂っている世界に転生したから死ぬるのは嫌でござる 作:砂漠のタヌキ
(これまでのあらすじ)
スカルバインとの戦いでマシンを破壊され、致命傷を負って意識を失ったギガース。
精神世界で危うく破壊と殺戮の意思に飲み込まれかけるが、自分が手にかけた相手の魂との対話を経て、覚悟を決めなおす。
そしてスカルバインのパイロットシャルド・スカルスと、麻薬中毒らしい謎の日本人女性の魂との交戦を経て、足の裏の痒さと毛虫の神てぽーぴちの加護を得るのだった。
(ここから本文)
「お、おお!ギガース様が目を覚まされたぞ!」
「わっわかりました!すぐに報告を!」
どたどたどたと、俺の様子を見ていたらしい兵の一人が走っていく。
「ここはいったい……」
「はい、城塞都市内の病棟です。動けますかギガース様」
「ん……おっ!?左手治ってるしナイフが刺さったとこも両足も完璧だ!どうなってるんだこれ!?」
俺は思わず声に出して驚いた。
触った感じでは傷跡すら残さず、大けがが全部完治しているのだから。
「ショット様の機械のお力です。そのあたりも含めて説明があるので、動けるようならばできるだけ早く来てほしいとの伝言を受け取っております」
「なーるほどね……」
俺はわかったようなわからんような……いや全然分からん状態で、とりあえず説明を受けるため、衣服を改めて部屋を出るのだった。
そして俺は会議室で予想通りの人物と顔合わせを果たすことになる。
「よう、ドモン・カッシュ。生きてやがったか」
「その呼び方をやめんか!」
初手でシャルド・スカルスに言葉のジャブをかまし、後ろにいる女性二人に低調に頭を下げる。
「シャルド・スカルスの従騎士、シリア・クロウバ殿。お初にお目にかかる。まずは快癒されて祝着至極に存じる」
やや困惑気味にうなずいた長髪の女性。
彼女がほんの1か月前までは、首だけにされてブレインデバイスとしてスカルバインのオーラ力供給ポッドに突っ込まれていたとはだれも思うまい。
そして、その横の……なんつうかすごい頭が痛くなる。
俺の失った記憶によれば、聖子ちゃんカットと呼ばれる髪型の、怯えまくる女子大生……
「聖戦士田村 美井奈(たむら みいな)殿、俺はギガース。はじめまして」
「えっ、なんで私の名前を知ってるんですか……」
「言っただろう。ギガースはこの世界に転移してきたと自覚のある人間の過去を、物語として知っていると」
困惑する彼女にショットが横合いから声をかける。
ちなみに気が付かなかったが、ショットの後ろにミュージィ・ポーもいるではないか。
「そ、そうでした……っけ……」
いかんな。めちゃくちゃ怯えている。
どういう経緯かはわからないが、俺の精神世界では麻薬中毒でぶっ壊れていた彼女が五体満足の健康体でここにいるからには、治療されついでにトラウマもんのバイストン・ウェルでの記憶を呼び起こされたか?
「まずは現状認識をすり合わせたいと思ってな。生きていた世界が近そうな人間を集めたのだ」
そういってオフィーリア嬢を控えさせたコラム王は、ここに至る状況を説明し始めた。
【side コラム】
ガロウ・ランの大軍勢との戦いの後、予は敵中に落下したギガースをオーラマシン部隊に探させつつ、自らもショットと共に現地見分を行っていた。
ショットいわく、死に切っていなかったり、死んでいても程度が良い強獣の遺体であれば、オーラマシンの素材になる。
なかんずく貴重な、ダンバインの予備部品に使える「キマイ・ラグ」なる強獣……ダンバインそっくりの頭をしているから見分けやすいらしいそれをできるだけ探してほしいとショットは現地見分部隊に頼み込んでいた。
まさか王となって自ら、落穂ひろいのような真似をするとは思わなかったが、キマイ・ラグも含めかなりの素材が集まったところで、予はぎょっとするものを見た。
「ド、真龍(ドゥラ・メーア)!?……いや、落ち着け……動いていないし傷が治ってもいない。これはただの強獣だ……」
予が住んでいたアハーン西方の世界ではもはや伝説に語られるだけの存在となった怪物にそっくりな強獣が死んでいるのをみて、思わず驚愕に足を止める。
興味を引かれた予は、よく見ようと操兵の胸ハッチを開けて……
「ギィー!グガァー!」
襲撃を受けた!
「ぅっ!慮外者め!」
とっさに操手槽に備え付けてある、切っ先鋭い非常用のナタを振るって襲撃者の短剣を跳ね飛ばす!
「ガァ!ガアッ!ガアー!」
ガロウ・ランか、獣のように吠えながら怒り狂って掴みかかってくる相手は、狭いコクピットにいる自分が相手をするには不利だ。
もみ合っていると
ドス!
飛来したクロスボウのボルトが突き刺さり、さしものガロウ・ランも耐えかねて落下する。
「危ないところでしたな王よ!」
「助かった、ショット!」
操兵につかず離れずいて、いい素材があれば持ち帰らせようと考えていたのだろうが、結果として予を救ってくれたショットに礼を言う。
ショットは撃ち落とした相手がまだ死にきれずにもがいているのを見てとどめを刺そうとしたが
「……、ム?ふむ。そういえば……」
何かを一人合点したらしく、念力でガロウ・ランの襲撃者を浮かべると、近くにいた従兵機に運ばせていったのだった。
【side out】
「そのあと城に帰ってから、シリアを蘇生させ、撃墜されたスカルバインとブロンズ・アケロンの横に倒れていたお前たちを治療させたわけだが」
コラム王の言葉をショットが引き取る。
「ミイナ・タムラは運転免許証を後生大事に持っていたのでな。私はショウ・ザマの免許証を見たことがあるから、日本の運転免許だとすぐわかったよ」
「なるほど。それで前世日本人疑惑のある、私にお鉢が回ってきた、と。ちなみにシャルドはなんで助けたのです?思いっきりわが軍に敵対してましたが」
俺の問いに対して、コラム王は
「もともとのバイストン・ウェルの行きがかりは知らぬ。だが、今後、ダカイト・ラズマとユーバー・バラダの連合軍とやらが攻めてくるなれば、戦力は一人でも多いほうがいいと思ってな。予の独断だ。まあ、シリアからはいたく感謝され、協力を快諾してもらえたので結果としてはよかったのではないか?」
と返答する。
「陛下がそうお思いならよろしいのです。……さて、意識を失っている間にもいろいろありまして。少々託宣のやり方が不快になりましたが許されよ……」
俺はたぶん頭にハテナマークが飛びまくっているであろう新人三人と、他のこの部屋の人間に手っ取り早く説明するため意識を集中し
「うおおおおお!!かいかいかいかいかいいいいっ!!!!!!!」
靴を脱ぎ捨て、靴下を放り出し、重傷の水虫患者ばりに足の裏をかきむしる!
「な……うわっ」
無礼を咎めようとしたらしいオフィーリア嬢の表情が一気にドン引きになった。
どこからともなくわいた毛虫が、群れを成して俺の全身……主に頭や顔面をはい回り出したからである。
「かゆい!だけじゃなく気持ち悪いー!」
俺の叫びを無視して、部屋の中にどこからともなく光が降り注ぎ……
またぶっさいくな羽根つき赤子型クリーチャー(くどいようだが俺はこれを天使と認めないし呼びたくもない)が現れると、人数分に分裂して、その場にいる人間全員の耳に耳打ちをする。
「ひでぶ!」「あべし!」「はぶらばら!」「びィえ!」「かぴぷ!」「あぶた!」「びぎょへ!」
俺以外の全員が、秘孔を突かれたごとくに爆発四散し、一瞬で元に戻る。
「……なるほど、わかった。わかりたくないが……」
額を押さえるコラム王のコメントが、すべてを物語っているといえよう。
それから一日、ツトムやスカとリンザをはじめとした、城の主だった人間に託宣による説明をして、俺の足の裏はかきむしり過ぎてボロボロになった。
ちなみに、どこからともなくわいて俺に取りついた大量の毛虫は、城下に配布して飼われることになった。
どうやらバイストン・ウェルにいた絹糸が取れるタイプの蛾の幼虫らしい。
実用的と言えば実用的だが……俺も釈然としないんだよ。
それからさらに数日。
俺は、破壊されたブロンズ・アケロンをベースにショットが作り上げた新型オーラバトラーの慣らし運転のため、オーラバトラーで空を飛んでいた。
俺の新しい機体は……カーヴァル・ウシュタ。
ゲーム用の機体としてデザインされたのだが、没になったせいで設定とかが何もない。
見た目はズワァースの顔面にライオンのような面をかぶせ、大型オーラコンバーターを黄色いカバーからピンクの鳥の羽のようなものが生えた姿に換装したといえば、当たらずとも遠からず。
武器としては、クリスナイフを大型したかのような蛇行剣と、目玉模様が描かれた黄色い三日月形の盾……というイラストまんまの装備だが、俺はショットに注文を付けて少し改良してもらっていた。
まずオーラコンバーター上部にはフレイ・ボムを増設し、盾の下側は刃になっているのだが、それを邪魔しないように、ブロンズ・アケロンの背中のオーラキャノンの一門を盾の裏に取り付けたのだ。
ちなみに、股間には最初から三連装ガトリングガンがついている。
オモシロ装備にしか見えないが、レプラカーンやズワァースの股間砲の例もあるので、きっと役に立つ……と信じたい。
俺の機体の真後ろには、やたらとげとげしてマッシブになったダンバインのようなオーラバトラー、バルバインが飛んでいる。
これもゲーム用の没機体なのだが、こちらではショットがキマイ・ラグ素材を用いてスカルバインを改造修復したものだそうだ。
本来の武器は鉈型のオーラソード1本のみなのだが、スカルバインを修理したことで、左右の手首からオーラショットを放つことができるようになっている。
ちなみにシャルドの生家であるスカルス家は、ナの国の地方領主だったが、オーラマシンの開発に傾倒しすぎ、シャルドの父である前当主を開発中の事故によって失って以来急速に没落したらしい。
その結果スカルバインのようなマッド極まる代物を作っていれば世話はない……と言いたいところだが、人に優しくないオーラ力限界搾り取り機構の開発という一点がショットの琴線に触れたのか、寄ると触ると仲良くオーラマシンの技術談義をしてやがる。
業の溜まる化け物を生み出さないように、コラム王に定期的にシメてもらう必要があるかもしれん。
閑話休題、俺とシャルドの中間には、やや左右に分かれて、シリア・クロウバの試作型ダンバインと、田村美井奈のヴォルバルが飛んでいる。
試作型ダンバインは、トカマクのダンバインを修理するためにパーツを抜かれまくったショット専用ダンバインの成れの果てを、オーラバトラーとして使えるように仕立て直したものである。
これはちゃんと登場したゲームオリジナル機体、だが、ワイヤークロ―がないゲドの腕に爪で引き金を引くダンバインのオーラショットをそのままつけているポカが治っとらん!
と突っ込もうとしたら、
「接合部分からの電気信号式に改めたわ。それぐらい考えないで俺がマシンを作っていると思っているのか」
とどや顔でショットに嫌味を垂れられてしまった。
本来の稼働にはバカ高いオーラ力がいるのだが、そこは彼女をデバイス化して閉じ込めていたポッドから移植したオーラ増幅器を改良し、眠らなくてもパイロットのオーラ力を引き出しまくることで解決している。
パイロットのガス欠が怖いが、ドラムロよりは頼りになるはずだ。
ヴォルバルは覚醒した強獣の脳をショットがぶち抜いて倒しているため、修理の際に脳を入れ替えられた。
しかし入れ替えた脳までシステムのせいか覚醒してしまいどうするんだよ!となった時に、ガロウ・ランで飛竜型強獣、もとえドラゴ・ブラーを操っていた時の経験を活かし、美井奈がヴォルバルを手懐けてしまったのだ。
そのためこの機体がなし崩しに彼女の専用機となった。
俺たちはしばらく飛び回り、武器のテストとして模擬戦を行い、帰路に就こうとしたのだが。
(やはり迷っている)
俺は美井奈と模擬戦をしたときに、動きぶりからどうもトラウマで戦えなくなっているようだと思わざるを得なかった。
これは少し深刻かもしれん。
早急に何とかしたいがどうしたものか……。
オーラバトラーの戦力強化はこの辺でいったん打ち止めになります。
次回予告、スカ様活躍するぞ!たぶん。