全てが狂っている世界に転生したから死ぬるのは嫌でござる 作:砂漠のタヌキ
狂気のストレージは常にパンパンなんですが放出する指向性に問題がありまして。
とまれ更新再開です。
(これまでのあらすじ)
新戦力を加えたり乗り換えイベントがあったりはしたのだが、新規加入パイロットのひとり、平和な昭和末期日本からきた田村美井奈は、戦いのトラウマから戦闘に躊躇するようになってしまっていた。
訓練飛行から戻ってくると、なにやら機械の館が騒がしい。
「真龍(ドゥラ・メーア)だ!真龍が出たア!」
騒いでいるのは工呪会の連中か。
そして……コラム王のウェル・カーシムが、暴れるドラゴ・ブラーを切り捨てようとしているが……明らかに腰が引けているな?
「陛下、どうされたのですかっ」
とりあえず無線機で呼びかけてみると
「た、大変だ!機械の館に運び込んでいたドラゴ・ブラーだったか?の一頭が、息を吹き返して……」
うわー。文字通りの不死身で、首を落とそうが時間をかければ復活してしまい、事実上殺す手段がない亜龍(ドラヒム)やら真龍(ドゥラ・メーア)という化け物が跋扈する聖刻世界から来た連中はパニックになるのも無理はないわな。
「下がってください!今こちらの火力をぶち込んで……」
俺が攻撃しようとすると、
「待ってくださいっ」
先ほどの訓練でトラウマからまともに動けず、俺の頭痛の種と化していた田村美井奈が、ヴォルバルを突進させる!
そしてなんとコクピットを開けて飛び降りた!
「だめ、トキョー!落ち着いて!」
皆があっけにとられる中、美井奈の声を聴いたドラゴ・ブラーは
「ヴルルルル……」
と首を垂れ、暴れるのをやめてしまった。
※※※※
「なるほどな。ガロウ・ランにさらわれて麻薬で操られている間、その方はトキョー……だったか?そのドラゴ・ブラーの乗り手として訓練を積んでいたというわけか」
ひと騒動の後、落ち着いた俺たちは謁見の間でコラム王に事情説明をしていた。
田村美井奈は数奇な運命をたどった少女である。
昭和60年代(昭和65年に期限がくる運転免許証を持っていたことから、おそらく1980年代最末期)にバイストン・ウェルに召喚された彼女は、恋人のジョクこと城毅と離れ離れになり、こちらでも先日俺たちを襲撃してきた、ガロウ・ランと呼ばれる邪悪な亜人種族に捕まってしまった。
そして麻薬で精神を壊されたうえで、ドラゴ・ブラーの乗り手に仕立て上げられ、ガロウ・ランの先兵としてオーラバトラーを操る聖戦士となった城毅と戦ったのち……
最後は部分的に正気と記憶を取り戻して、彼女を壊して利用した怨敵というべきガロウ・ランの族長、ギィ・グッガの斬撃から城毅をかばって命を散らせたのだ。
ちなみにドラゴ・ブラーのトキョーというのは、壊れた美井奈が唯一覚えていた日本語が「トウキョウ」だったことから、それがなまってついた名前である。
非業の最期を遂げたキャラクターが呼び寄せられるこの世界の法則には合致しているのだが……
「もともと乗っていた愛馬、いや愛龍のトキョーまでこっちにきてしまったというわけか」
コラム王が腕組みをして唸る。
「そのトキョーも問題なんだよなあ……」
俺は会話に割り込んだ。
「何が問題だというのだギガースよ?」
コラム王の問いに、俺は
「おそらくトキョーは死にかけた状態から再生したせいか、パワーアップしております。外見を見ただけですが、おそらく今のトキョーはただのドラゴ・ブラーではなく、オーラバトラーとも互角に渡り合える、パンツァー亜種に進化しています」
と端的に答えた。
俺のカーヴァル・ウシュタをはじめとした、ヴォルバル以外の新型オーラバトラーと同じゲームのバイストン・ウェルで、オーラマシンを開発せずに戦い抜くルートを選ぶと手に入るようになる、オーラバトラー並みに強力な飛竜がパンツァー亜種なのだが。
まさか、トキョーが一度死んだもしくはほとんど死に近いところまで生命活動が低下してから何らかの理由でよみがえった際に、思いっきり生命力が活性化されてパンツァー亜種に進化してしまうとは。
ヘタに野に放つわけにもいかないし、ばらしてオーラマシンの材料にするにはてごわすぎるしどうしたものか……と考えていた俺だったが。
美井奈が意を決したように口を開いた。
「王様、どうかトキョーを軍に入れてください!私はトキョーと意思疎通ができます。ヴォルバルも強獣の自我が生きているから、トキョーとコミュニケーションできるみたいなんです。コンビを組んで戦えば、きっと役に立ちます!」
「おいおん……ミイナ。やめておいたほうがいい。さっきのような動きでは死ぬだけだぞ」
おい女、と呼び捨てに仕掛けて俺に思いっきり睨まれたシャルドが止めようとするが、美井奈の意思は固いようだ。
「この世界がどういう場所か、私が何でここに呼ばれたのか、聞いたときにはものすごくショックだったし悲しかった。もう日本では私は死んでしまって、二度とお父さんにもお母さんにもジョク先輩にも会えないんだから!それでも生きていかなければならないし、私が戦わないと、私みたいに死んでしまう戦えない人がこの国にはたくさんいるんですよね?……だったら私も戦います。きっと、ジョク先輩もそう思って聖戦士になったんだって思うから」
決意表明を聞いたコラム王は頷くと、
「覚悟を決めたようだな。シャルドよ、田村美井奈は聖戦士としてお前の下につけよう。お前が戦場で使い物になるといえるレベルに達するまで鍛えるがよい」
と命を下し、シャルドが不承不承ながらこれを受けたことで(「素人どころか強獣まで指揮させられるとは」とだいぶ愚痴っていた)、思いがけなくも増えた戦力は収まるべきところに収まることになったのだった。
※※※※
そして数日後……
とても思いがけない、というかぶっちゃけ破滅的な事態が生起した。
モーターヘッドが攻めてきたのだ。それも現在の敵のユーバー・バラダ配下じゃない奴。
超音速での戦闘とワープを駆使するモーターヘッドに、操兵やオーラバトラーが対応できるわけがない。
唯一マッハで動けるからと急遽迎撃に出たサーティーンロボをいたぶるように切り刻み、機体ごとやられて瀕死のツトムにモーターヘッドのヘッドライナーは
「口ほどにもない。次はお前らのところの騎士、2回も格上にたてついて2回とも敗れ去った愚か者のメイユ・スカに出てくるように伝えろ。出てこなければ、お前らが立てこもるその哀れな都市国家を丸ごと焼き払ってくれるわ」
と言い捨てていった、らしい。
「す、すまねえギガース……おいらがもっと強ければ……」
病床で必死に詫びるツトムに、俺は何も言えなかった。
俺が気に入らないからとメイユ・スカとの仲を険悪にしていなければ、もしかしたら、ツトムは大けがをすることも機体を失うこともなかったかもしれないと思うと、いたたまれなかったのだ。
ツトムを見舞った後、俺はやっと退院できたスカの足元に土下座をしていた。
「何のつもりだ?今までさんざんな目に合わせておいて、まさか吾輩にこのチンケな国を守るために出撃しろとでもいうのではあるまいな?」
俺を絶対零度の視線で見下ろすスカの目をしっかりと見上げて、俺は返答する。
「申し訳ない。そのまさかだ。詫びて許されるものではないが、今までの非礼を詫びたい。そして、騎士メイユ・スカ殿、あなたに謎のMHを打倒してもらいたいのだ。……今までの非礼な扱い、責任はことごとくこの俺、ギガースにある。俺をどうしてくれても構わん、カーヴァル・ウシュタは俺以外にも預けられる人物が現れなくはないだろう。だが……」
そこまで言ったところで俺の目から火が出た。
土下座した俺の顔面を、スカの軍靴が蹴り上げたのだ。
飛びそうになる意識を必死に抑え込み、なおも言葉を続けようとする俺を、スカはねめつけると
「ふざけるな。お前の責任感とやらはその程度か?それとも軍事バランスが落ち込むことも考えられんほどの阿呆なのか?」
と冷たく吐き捨てた。
「お前も、ツトムも軽率に過ぎる。吾輩をおちょくったり、感情でぶん殴ったり、かと思えば都合が悪くなったら土下座して頼み込んだり……聞け。吾輩は騎士だ。国家の剣として絶大な権力を与えられた存在だ。しかしそうなる前は……どのような目に逢おうとも、一般人に手を出せばそれだけで死刑!理不尽極まる扱いを受けてきたのだ。お前らもウースーやシーブルの一般人どもと変わらん、何も変わらん。感情の好悪で騎士をぞんざいに扱ったり卑屈に持ち上げたりする!」
俺は何も言えなかった。
ジョーカー太陽系で騎士やファティマが「生きた兵器」としてどのような立場にあり、過酷な人生を運命づけられているか、それを知っているはずなのに。
キャラクターとしての好き嫌いだけで、あまりにあんまりな態度を取ってしまった……。
「正直に言おう。吾輩はお前が嫌いだ。お前の言うことなど聞きたくもない……だがな。吾輩を愚か者呼ばわりした騎士もまた、許しておくわけにはいかぬ」
後悔に乱れる俺の思考に、スカは言葉を突き刺してくる。
「お前やツトムのためではない。吾輩がこの国、フレム・リュード王国の剣たるヘッドライナーとして、権限を振るえるよう王に掛け合え。それが通らぬならば、吾輩を正しく評価してくれるところへ行くとする」
「か、かたじけない……、騎士メイユ・スカ殿。今より王に掛け合うゆえ、お待ち願いたい」
それから1時間後。
ジョーカー太陽星団にいたころと同等とまではいかぬが、かなりの高い地位と権力の保証と引き換えに国家の剣たることをコラム王が認め、メイユ・スカはザカーで出陣することとなった。
コラム王と俺は、城門の上の見張り台から、スカの対決を見守ることになった。
「今回の契約、ずいぶん高いものについたな?ギガース」
王の言葉にもいつになく棘がある。
「……面目次第もございません。私には伏して謝罪することしかできかねます……」
こわばった表情のまま、蹴られた打撲に湿布を張りたぐった俺の顔を見て、コラム王は
「これからスカのみならず、知らぬものも増えよう。混沌たる世界に少しでも秩序を撒けと神から命ぜられたというのなら、お前もそれらしく振舞うことだ。王としての言葉はそれだけだ……」
と言って言葉を切り。
「今回法をもって処断すべき罪はお前にはない。ないが、新しい来訪者が現れた時に、たった一人状況を理解したり、意思疎通を行えるのがお前だけだということは忘れるな。ゆめゆめ、軽率な行動をとるのではないぞ」
と釘を刺した。
俺が無言で首を垂れるのと同時に……
地平線の向こうから、敵MHが姿を現した!
「ツトムから、妙に着ぶくれたような紫色の機体が攻めてきたと聞いていたが……また趣味が悪いな。肩に目玉など描きおって」
コラム王がつぶやき、俺はだらだらと冷や汗を流す。
「……王よ。あれはブーレイという機体ですが、操兵で例えるならばそうですね、王の兄君の従える古操兵の外装を、普通の重操兵の装甲と取り換えて正体を隠しているようなものです。あの見た目の機体は……モーターヘッドが使われていた世界でも指折りの機体が中身です」
虹のブーレイかよ!
死んだ者が流れ着くこの世界の法則からして、正体はおそらくコーラス戦で倒されたサイレンだ!
ザカーは限界まで性能を引き出された強力なカスタム機とはいえ、所詮原型機は量産型のデボンシャだ。
星団三大モーターヘッドの一角、しかもおそらく操る騎士はノイエ・シルチス騎士団員相手に、どこまで食い下がれるものか……
コラム王と俺がかたずをのんで見守る中、勝負は一瞬で付いた。
一瞬、2騎のモーターヘッドの姿がぶれたかと思うと、次の瞬間にはザカーの右肩の角が根元から切り落とされ、ブーレイは顎下の急所を突かれてバラバラに砕けながら倒れ込んでいったのだ。
「や、やって……くれた……」
俺は心中スカに感謝の祈りを捧げながら、安堵のあまり腰が抜けてへたり込んでしまった。
ずいぶん長いこと放棄してしまいました。申し訳ない。
モーターヘッド戦闘がキンクリされたのは、一般人には見えないからです。ビバ設定!
しかしスカ様の傲慢な性格も、騎士は戦闘以外で一般人に手を出せないから、特に子供のころは悪質ないじめやハラスメントの標的にされやすいって設定から起きたもんじゃないかなーとちょっと思ったり思わなかったり。
あと、主人公の他人に対する態度があまりにあんまりなのは、こうやって〆られるためにあったんですね。(ということにしておくと丸く収まる)