全てが狂っている世界に転生したから死ぬるのは嫌でござる 作:砂漠のタヌキ
これまでのあらすじ
ただでさえ敵勢力がいつ攻めてくるかわからず頭が痛いところに、野良モーターヘッドが襲撃してきて、サーティーンロボは一蹴された。
今までのさんざんな態度を主人公がぶっちめられた後、急遽出撃したザカーは、攻めてきたモーターヘッドを討ち取るのだった。
ブーレイが倒された後。
俺たちは緊急会議を開いていた。
会議が始まると同時に、開口一番ショットが発言した。
「いきなりで悪いが……モータードーリーではファティマのメンテナンスはともかく、モーターヘッドの騎体に関しては簡易的な整備は行えるが、パーツを製造しての本格修理は行えん。どうやらモーターヘッドにはある程度の自己修理機能はあるようだが、それでも先の戦いで切り落とされた角を再生するのは難しいし、そもそもあと数回も戦闘すれば、超音速で動く機体の関節や伝達系が摩耗してどうにもならなくなるはずだ。スパイドも研ぎなおしが必要になるだろうしな」
つまり、パーツの新造が行えないザカーは、下手をすると襲撃を迎撃する前に使えなくなる可能性があるということである。
敵のブーレイにバラバラに切り刻まれたサーティーンロボが直せないのも、機械の館のバイストンウェル式やアハーン式の半分手工業みたいな工場で作れるパーツではどうにもならないからだしなあ。
かといって、モーターヘッドが作れるレベルの工場をゲットしようとすると、どれほどの業を積み重ねなければならないのか考えただけでも恐ろしい……。
会議室にいやな沈黙が落ちる。
「そして、問題はザカーが倒したブーレイの騎士とファティマだ」
回収された騎士の遺体は、ノイエ・シルチス騎士団の人間ではなかった。
というか、本来虹のブーレイに乗っているわけがない人間だった。
「騎士の体には人間的な外見と精神を著しく損なうレベルでのサイボーグ化が施され、ドーピング系の薬物各種が投与されるシステムが埋め込まれていた。血の十字架のマークが描かれた外套。……とどめにモーターヘッドの頭部にはエトラムルファティマが搭載、ときた」
エトラムルファティマというのは、スカのパートナーのリンザのような人間型のファティマではなく、不気味なクリーチャーめいた姿をしたバイオコンピューターである。
人間型のファティマと違って騎士との相性を考慮する必要がなく、単にデモンストレーションとして動かすだけなら騎士でない人間がモーターヘッドに乗っても動かしてくれる。
現にこれから攻めてくる予定のユーバー・バラダは、権力と財力を見せつけるためだけに、エトラムルファティマにコントロールされたヘルマイネというモーターヘッドに自ら乗り込んでいるのだ。
ちなみにバイオコンピューターなので、普通のファティマのようにサブシートに座るわけではない。
培養液に漬け込まれて、エトラムルシェルというモーターヘッドにもそうそうぶっ壊せない頑丈な容器に詰め込まれてモーターヘッドに搭載されるので、当然そのために騎体を改造する必要がある。
サイボーグの騎士とエトラムルの組み合わせ。しかも血の十字架の外套……
「こいつら未来のゴーズ騎士団ですか……」
「ゴーズ?AKDの軍勢か!?それなら私にも因縁があるが、エトラムルなど使っていなかったはずだが」
原作でAKDのミラージュ騎士団が誇る、「錨は巻き上げられ、炎の時代が始まる(制式名称)」ことヤクトミラージュにしめやかに爆発四散させられたスカが反応したが
「ああ、スカ殿が戦った時代より、はるかに未来なのですよAKDがサイボーグ騎士とエトラムルに頼るのは。
騎士がほとんどいなくなったうえに著しく弱体化した末のことだそうで。
もちろんその時代には虹のブーレイなど存在していません。
……つまり、ユーバー・バラダでない何者かが、おそらくは乗り手を失ってこの世界に流れ着いただろう虹のブーレイをエトラムルコントロール仕様に改造して、ゴーズ騎士団のサイボーグ騎士に与えた、ということになります」
と俺が返答したのを聞いて、場の空気が一段と重くなる。
そのとき、スカが持っていた騎士端末が反応した。
「む?吾輩当てに通信だと……?知らんコードからだが……」
「ふむ。今のところ、ユーバー・バラダとやらからの通信は一切ない。となるとブーレイを送り込んだか、少なくとも関係ある者か?許す、通話するが良い」
コラム王の許可を得て、スカが端末を操作した。
※※※
30分後。
俺はコラム王とスカにお供して、先日ザカーがブーレイを倒した城門前に出てきていた。
さっきスカの端末に通信してきた相手を出迎えるためである。
「通信ではAKDの関係者ということだったが?」
「はっ、ミラージュ騎士です。陛下にわかりやすく申せば、その辺の古操兵などは軽くひねるような化け物級の旗操兵を任されたエリート中のエリートです。私が戦いぶりを知らないので実力のほどは読めませんが……」
「吾輩とリンザを倒したデカ物を使っていたのもミラージュ騎士なのだろう?あれの同輩というだけで脅威度は跳ね上がるな」
会話する俺たちの目の前でヴンッっ!と空間が揺らいで、モーターヘッドがワープしてきた。
白一色の騎体に、ベイル(盾)に赤く描き抜かれた血の十字架。
緑に輝くツインアイ。
全体はモーターヘッドにしてはやや工業製品的というか、ぶっちゃけ分離変形合体モビルスーツの風格を漂わせる。
お蔵入りしたダブルゼータガンダムの永野案そのもののこのMHは……
確かにレッドミラージュだけは勘弁してくれと祈っていたけど、よりにもよってワイツミラージュ持ってくるかよ!
同じ没機体なら個人的にはルージュミラージュに来てほしかったなあ!
俺の思考が全力で現実逃避を始める中、膝立ちになったワイツミラージュの胸のコクピットと側頭部のファティマコクピットの扉が開き、騎士らしい身のこなしで通信相手が降りてきた。
頭に赤いターバンを巻いたインドっぽい八の字髭の偉丈夫に、ファティマは……えーっと俺あんまファティマの顔覚えてねえんだよな……
「丁寧なお出迎え痛み入る。元AKDミラージュ騎士団オレンジライトNo.15、ビョトン・コーララです。こちらは現在私のファティマを務めてくれているウリクルです」
おわ。原作で悲劇の最期を遂げたキャラの条件に合致する、マスターのコーラス23世への恋心を秘め、コーラス23世妃のエルメラからは怨念を向けられてたファティマ来ましたか。
そしてコーララ……原作では、不意打ちされて「わあ!」の断末魔を残しただけであっさり死んでしまったせいでさっぱり強さが分からん。
とはいえ、ミラージュだからスカより弱いことはないはずなので油断はできないが。
「予がフレム・リュード王国国王、コラム・イスカ・コーバックである。こちらはそちと同じ世界から来た元シーブル国筆頭騎士、メイユ・スカ。それと通訳……といえばいいのか。この世界の事情に通じている者でギガースという」
「お初にお目にかかります、コーララ殿。このような世界にいきなりやってきてさぞお困りのことと思います。僭越ながら説明をさせていただこうと思います……」
そういうと、俺はいつもの調子で神を念じたが。
おかしな現象も起こらなければ、自称天使のぶさいくな生き物も降臨しない。
「失礼。この世界の神の調子が悪いようなので、神託が降りませんゆえ、私の口から直接説明いたします」
「だ、大丈夫なのか……?」
いかん。いきなりコーララに不信感を抱かれてしまった。
気を取り直し、この世界と我が国の現状に関する俺の説明を聞いたコーララは、思いっきり頭を抱えた。
「うーむ。私も死んだと思ったし他にも明らかに死んだだろう人間が揃っていたのだが、ここがあの世なのか……?だとしたらずいぶん救いがない」
「あの世と申しますか、正直言って私にもよくわからないのですが……。失礼ですが、先日ゴーズ騎士が乗ったモーターヘッドが我が国を襲撃し、我が国の騎士のスカ殿が撃破しました。その件も含めて、ということでしたが、どのようなご事情で……」
「うむ。あのゴーズ騎士と私は、モーターヘッドなしでユーバー・バラダのもとに出現したのだがな。我々はAKDの人間なので勧誘を断り、持て余していたらしい主なしのモーターヘッドを奪って脱出したのだ。ゴーズ騎士はどうやら強化薬物の影響で精神をやられているらしく、こちらとも会話がかみ合わず物別れになってしまったが」
まあそうだな、自分たちの王様にナイト・オブ・ゴールドのバスターランチャーで消し飛ばされた相手から誘われてホイホイついてはいかんだろうな。
ゴーズ騎士もそこまでラリっていたなら、仲間になったところで持て余すどころの騒ぎではなかったろうし、彼と機体に傷をつけられたスカには悪いが倒されるのが落としどころだったのかもしれない。
「ただな……モーターヘッドなしに、本人1人だけやってきた人間が向こうについた。……ギガース殿ならおわかりだろう。元ミラージュ騎士団グリーンレフトNo.3、クー・ファン・シー・マ王子だ」
「ブバッ!!!!!!」
俺は思わず血を吐きそうになった!
あかんやん!レッドミラージュ来んでも、単騎でこっちをほぼ全滅させられる逸材やん!!!!!!!
しかも倫理観とかのブレーキがぶっ壊れておられるし自分が死ぬこともなんとも思ってないタイプのお人ですやんか!!!!!!!
「し、失礼。あまりのことに我を失いました……それで、彼はなんで向こうについたのです」
俺が辛うじて意識を現世に引き戻して問うと、コーララは
「よくわからないが、「自害しようとしてもできんのだから、いっそ好きにやらせてもらおう。ここでもう一度俺を負かせるやつがいたらそれはそれで面白いかもしれんしな」と言い置いて、ユーバー大公を脅してヘルマイネを奪っていた。そのうえで我々とは同行しないと宣言したのだ」
「あ、ああ……」
クー・ファン・シー・マ王子は騎士だけでなくダイバー(何でもありに近い攻撃的な魔法使いというべきか)の力も併せ持った、バイアという存在。
要は「めちゃくちゃ強くてサイコパスで快楽殺人者でおまけに権力者」という極悪コンボを搭載したキャラクターである。
で、作中では同じミラージュ騎士のオレンジライトNo.1、アイシャ・コーダンテとの勝負に負けたことでマイルールに従って自害してしまった。
つまり仲間になる見込みもなければ敵に回した瞬間にすべてが終わるというこれまでのすべてを超えた超超超ド級の厄ネタそのもの!
本来の乗騎であるレッドミラージュを使っていないことなど何の慰めにもならないのだ。
「と、とにかく情報ありがとうございます……それで、こちらに情報提供と合流してくださったのは」
「うむ、実はな……」
※※※
そして俺たちは、今度は技術陣を加えてスプリガンで移動することになった。
「これは……またなんとも」
スプリガンで移動した先には、何の因果に引き寄せられたのかはわからないが、俺たちの知らぬ間に、巨大な宇宙船が転がっていたのだ。
「どの程度まで生きているかはわかりませんが……とりあえず私が調べた範囲では、モーターヘッドを何とかできそうな設備はあります。といっても下手をするとジョーカーより進んだなにがしかの技術で作られている可能性があるのですが」
技術者連中は色めき立っているが、世界法則からするとどえらい反動がありそうで俺は怖い。
いや、もしかして、クー・ファン・シーマが敵に回った代償がこれなのか?
とりあえずは戦力化ができるかを調査していくことになるだろうか。
今回ほぼFSS回でしたね……