全てが狂っている世界に転生したから死ぬるのは嫌でござる   作:砂漠のタヌキ

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こんな時ですが。いや、こんな時だからこそ連続更新です。


眼鏡っ娘は世界の宝……守護らねば……守護らねばならぬ……!

(これまでのあらすじ)

 

不適合者の命を吸い取る名無しのオーラバトラーに適合してしまった主人公は、とりあえず食料と水を求めて、肉体を取り戻したショット・ウェポンと旅に出た。

 

そしていきなり、モヒカンに襲われていたコラム公子とおつきのメイドさんに出くわし、モヒカンを全滅させてこれを救出する。

 

コラムに臣下の礼を取った(そして無理やりショットにも臣下の礼を取らせた)主人公の狙いとは……?

 

 

(ここから本編)

 

いきなり馬鹿丁寧な臣下の礼を取った俺を、コラム公子はうさん臭いがどうやら敵意はないと判断してくれたようで、とりあえずリアクションを返してくれた。

 

「あいわかった。……ところで、私を知っているようだが兄の手の者でもない、お前は何者だ?」

 

説明しようと顔を上げると、俺の目の前の空中に浮かぶかき氷が出現した。

 

え、またこのパターンなの……?

 

俺はうんざりしながら、「失礼します」と頭を下げてかき氷をキャッチ。

 

刺さっていたスプーンで一気食いし……

 

絶叫しながらアイスクリーム頭痛にのたうち回ることで現れたぶっさいくな天使型クリーチャーが、コラム公子に世界の真実をささやき……

 

「うっそおおおおおおおおおおおおん!?」

 

全裸にならなかったぶん、写真に撮って残せないのが心底惜しまれるような崩壊しきったアホ面になって叫ぶと、コラム公子は額を押さえながら俺に向き直った。

 

「……信じがたいが、信じるしかないようだ。予は一度死んで、このめちゃくちゃな世界になにがしかの理由で転送されたのだな」

 

そしてメイドさんに向き直ると

 

「それに……どうやら、予の最後の忠臣は、命令を聞かなかったようだ。なあオフィーリア?」

 

と言い放つ。

 

おそらく睨みつけているのだろうコラム公子の視線をしっかり睨み返して、メイドさん……オフィーリアははっきりと返答する。

 

「生きながらえるなど考えられません。コラム様がいらっしゃらない世界になど、私が生きる意味も価値も一片もないのですから。どれほどお怒りになられようと、自害以外の選択肢はなかったのです」

 

あ、愛が重い……!

 

「たぶん負けるだろうことがわかって異母兄に対する反乱の旗頭に祭り上げられたうえ、最後は自分を捨て駒にしようとした実の母親を処断して毒杯を呷った悲劇の公子」コラム。

 

「生まれつき視力が悪いゆえにまともに勤めをこなせず、常にしかめっ面でものを見ていたために容貌をけなされ、誰からもさげすまれて、たった一人自分によくしてくれた主人であるコラム公子に最後まで付き添い、生きて落ち延びろと諭されたが自分も毒を呷って主人に殉じた侍女」オフィーリア……。

 

絵に書いたような悲恋カップルだ。

 

原作を読んだとき、俺は二人の最後に内心涙を流したものだ。

 

だが、何の因果か因縁か、死をもって終わったはずの二人の人生にはろくでもない第二幕が用意されていたのだ。

 

そして、俺には少なくとも、オフィーリアの今後を幸せにする手段が思いついている。

 

「僭越ながら。私にはオフィーリア嬢の憂いを取り除く手段に、いささか心当たりがございます。どうか我々に同行していただき、最寄りの街まで道行を共にしてくださいませんでしょうか?」

 

俺が声をかけたことで、二人は気まずそうに離れる。

 

「よい、わかった。信じさせてもらおう」

 

「な、なにとぞ……よろしくお願いします」

 

とりあえずモヒカンを殺戮したことで機体の背中から生えてきた2門のオーラキャノンの基部にしがみついて落ちないようにする形で二人には名無しのオーラバトラーの背中にタンクデサントしてもらった。

 

自分の専有面積が狭くなったショットに怨霊の時のようなすごい顔で睨まれたがシカトである。

 

「貴様……なんで私には妙に無礼で当たりが強いのだ……!」

 

「俺は尊敬に値する人物にしか敬意を払わねーことにしてるんだよショット様。様づけにしてるだけましと思ってね、ショット様♥」

 

返事代わりのボウガンを華麗にかわすと、俺は操縦席に乗り込むのだった。

 

 

 

ショットが上昇限度まで垂直浮遊して、村らしいものが見えるといってきた方向に向かって、俺のマシンは歩を進めた。

 

「そういえば」

 

右の砲身にしがみついているコラム公子が、収音装置に話しかけてくる。

 

「お前たちの名前と所属を確認していなかったな。今更ではあるが教えてもらえるか」

 

「はい。まず、お二人の後ろにいる、オレンジ色の練法師っぽいのはショット・ウェポンと申します。私とは異なる世界から来たものにて、怪しい念力も使えますが、本業は私が乗っているこのマシンのような機体を開発することです。公子にわかりやすく言えば、西方工呪会本部の操兵鍛冶とでもいったところでしょうか」

 

実務的な開発はほとんどゼット・ライトがやってたんだけどな……と言わないのは武士の情けである。

 

決してガチギレされて、かわしきれないほどめちゃくちゃにボウガンを打ち込まれて立ち往生するのが怖いわけではない。

 

「そして私ですが……先ほど世界の真実を公子のお耳に入れたバケモノが語ったよりも、さらに詳細で冒涜的なこの世界に関する真実を無理やり頭の中に植えこまれたせいで、自分の名前も生国も、どのような世界で死んでここに来たのかもきれいさっぱり忘れてしまったのです。公子とオフィーリア嬢の悲恋を書物にて読み、涙したことは覚えているのですが……」

 

これは本当である。

 

世界の真理と合一したショックで、転生前の知識は、バカみたいな死因と、おそらく見聞きしたり読んだりしたのであろう娯楽作品について以外、きれいさっぱりスコーンと抜け落ちてしまった。

 

名前とか家族構成とかその他もろもろの事柄は、思いだそうとしてもいっこも出てこなくなったのだ。

 

「そうか……しかし、いつまでもお前では不便だな。ちなみに、この操兵……ではないのか。マシンの名前は何というのだ」

 

「はい公子。このマシンは、俺と同じく名無しです」

 

「よし!それでは……兄の軍が使っていた古操兵の例に倣い、このマシンには≪銅亀(どうき)の古操兵 ブロンズ・アケロン≫の名を授ける。そしてお前は、これよりギガースと名乗るがいい。我が故郷の操兵の名だ、マシンで殺戮を繰り広げたお前にはふさわしいだろう」

 

「は……ははっ!有難き幸せ!」

 

なんかよくわからん命名をされてしまったが。

 

とにかく俺たち一行は、荒野の真ん中にポツンとある、オアシスのような村に着いたのだった。

 

 

 

 

「あ……あああ!見えます!目をしかめなくても、近づかなくても、コラム様のお顔がはっきりと……!!!」

 

野暮ったい瓶底眼鏡をかけたオフィーリアが、感動の涙を流している。

 

「これだ……これだよ!俺が見たかったのは!」

 

その尊い光景に、俺はこぶしを握り締め、熱い涙を流す。

 

村に入った俺たちがまず最初にやったことは、「何よりもまず、私の約束が空手形でないことをご覧あれ」とコラム公子主従を強引に説得し、食事や休憩より先に眼鏡屋に突入することであった。

 

モヒカンが持っていた、ピンク色の髪で緑の肌をした不気味な化け物が描かれたこの世界の貨幣……クルピラコインでもってきっちり支払い、オフィーリアに合った眼鏡を見立ててもらったのだ。

 

原作ではっきり目が悪いからずっとしかめっ面をしていると書いてある彼女の不幸は、ひとえに眼鏡が発明されていない世界に生まれたこと。

 

故に眼鏡を与えねばならぬ。

 

眼鏡は光!眼鏡は希望!眼鏡は叡智!

 

そして眼鏡メイドは究極にして至高!

 

守護らねばならぬ!眼鏡っ娘はすべて守護らねばならぬが、眼鏡メイドはとりわけ念入りに守護らねばならぬ……!

 

まともな記憶が消え失せても決して消えぬ、魂に焼きこまれた眼鏡フェチの本能に従い、俺が推奨した眼鏡が一人の女性を悲劇から救ったのだ。

 

こんなにうれしいことはなゴスッ!

 

「げあああああ!!!!!があああ!!!!!!!!!」

 

「……人の侍女に妙な色目を使うな。次はないぞ」

 

鞘に入ったままとはいえ、剣で思いっきり俺の頭をぶん殴るというコラム公子の制裁によって、俺の至福のトリップタイムは強制終了の憂き目にあうのだった……。

 

 

「……しかし、なんなのだこの世界は。どこからともなく武装した無法者が湧いて出たかと思えば、お前たちのような助けが現れ、あまつさえこのような宿に泊まって上々の食事がとれるとは。都合がいいのか悪いのかまるで分からん」

 

眼鏡屋での一幕の後、俺たちは村の宿に泊まることにし、宿の食堂で飯を食っていた。

 

王族だったコラム公子が表立って文句を言わない程度にはまともな飯が出てきて、俺やオフィーリアは喜色満面で料理を喰らっていたのだが、俺はコラムの言葉に食事を止めて返答する。

 

「ああ、この世界が狂った邪神みたいなものに造られた箱庭だということはご理解くださってますので、単刀直入に言います。この村も、食事も、上げて落とすための舞台装置ですよ」

 

「「どういうことだ?」」

 

コラム公子とショットの反問がきれいにハモった。

 

俺はまじめ腐って説明を続ける。

 

「この村の名前を聞いたんですが、シトオゲア村だそうです。逆から読めばあげおとし……つまり、幸せな村、おいしい飯、明日への希望といったものをことごとくぶち壊す何かがやってくるんですよ。これは世界の法則的に絶対間違いないです」

 

俺が言い終わるか終わらないうちに。

 

「あ、あれは何だー!」「化け物だ!空飛ぶ化け物だ!」「逃げろー!」「逃げろったってどこへ!?」

 

宿の外から声が響く。

 

「ほうらおいでなすった!コラム公子、御身はここに!オフィーリア嬢も!空を飛んでくる敵ならば、少なくともマシンがなければ手も足も出ぬはずです!私は迎撃に出ますればごめん!」

 

言い放つと俺は食堂を飛び出そうとして

 

「待て馬鹿者が」

 

ショットの念力で思いっきり急ブレーキ、というか首に見えない縄をかけて引っ張り戻す感じで制止された。

 

「どういう相手かきちんと確認しろ。お前から聞いた世界の法則とやらによると、殺戮と破壊のために無限に世界が生み出すモヒカンと、犠牲になって血と嘆きを世界に提供するために無限に世界から湧いてくる無辜の一般市民以外の敵は、その場にいるイレギュラーな存在次第で決まるのだろう?ならば私に引っ張られたオーラマシンか強獣。さもなくばこ……コラム公子の縁に惹かれた、西方とかいう世界の軍勢なリモンスターではないのか。ある程度知識のある人間が見立てられるように全員で構想すべきだろうここは」

 

く、ショット・ウェポン。さすがオーラクルーザーを一隻任されるだけあって、戦術戦略的な思考も学んでいたらしい。

 

コラム公子をこいつと呼ぼうとしたことはチクらないで置いてやるぞ。有難く思え。

 

 

改めて全員で宿を出て、俺は名無しのオーラバトラー改め、ブロンズ・アケロンに乗り込んだ。

 

そして迫ってきている化け物とやらを見たのだが……

 

いかん。ショットが明らかに冷静さを欠いている。怒りのボルテージが上がっている。

 

まあそれは無理もない。

 

何しろ迫ってきているのは……

 

悪趣味な目玉模様が描かれた気嚢を持った、おかしな形のゴンドラをつるした飛行船。

 

つまり、ショットが怨霊やってた頃に部下のラバーン軍が使っていた、オーラクルーザー・スプリガンの成れの果てである。

 

ただでさえ自分の持ち船を好き勝手に使われているうえに、バイストン・ウェルでは二頭の翼竜が動力として引っ張っていた飛行船は……

 

「ぶろぶろぶろぶろぶろぶろぶろぶろぶろぶろぶろぶろ」

 

「ぶたぶたぶたぶたぶたぶたぶたぶたぶたぶたぶたぶた」

 

256色にゲーミング発光し、長さ3メートルの巨大な顔をプロペラ代わりに回転させる、二人の異常全裸中年男性だったのだから……

 

「……命令だ。まずあのいかれたバケモノどもの顔面を吹き飛ばせ。それから飛行船の気嚢を撃ち抜け。あの高さから落ちれば、乗っている人間は助からん。一人も生き残らせるな」

 

「いや、あんたには尊敬も忠誠も払ってないですが。でもあの化け物をどうにかすべきなのは同意だし、なんかいらん事される前に敵を全滅させるのは理にかなってるので実行するぞショット様」

 

俺は相変わらずの調子でショットを煽ると、ブロンズ・アケロンの前足を突っ張って機体前部を持ち上げ、無理やり仰角を取らせる。

 

そして照準器を覗き込み……意識を集中し……照準を表す赤い光点が、ゲーミング発光しながら回転する巨大な中年男性の禿頭と髭面に重なり……

 

「ファイエル!」

 

ズドン!ズドン!

 

マシンの背面の2門のオーラキャノンから打ち出された砲弾は、無慈悲に全裸中年男性の頭部を爆発四散せしめた。

 

頭を失った全裸中年男性の屍が重りとなって、飛行船の船首が大きく下がる。

 

俺はすぐさま照準を気嚢に切り替え、次弾を発射!

 

「もういっちょファイエル!」

 

ボッボッ!

 

気嚢を撃ち抜かれた飛行船が浮いていられる道理はなく、もともと重たいスプリガンのボディをゴンドラ代わりにしていた飛行船は、石が落ちるように荒野に墜落した。

 

 

 

それから数日かけて、俺たちは村人に協力を仰ぎ、墜落したスプリガンの艦内に残されたモヒカンどもの死骸を片っ端から引っ張り出しては火葬し、村の墓地に卒塔婆を立ててやった。

 

仏心を出したわけではない。

 

死体を腐るがままに放っておいて伝染病などが起きても困るし、何よりきっちりと礼儀にのっとった葬り方をしないと、もともと前世からの宿業がキャリーオーバーしてやばい水準にいるショットや、今回大量の使者を一人で叩きだした俺の業が限界を突破し、ブタガルホザナキに一体化させられてしまう危険があったのだ。

 

もちろん、俺たちは村人たちをタダ働きさせたわけではない。

 

シトオゲア村から徒歩で1週間ほど行ったところに、モノソクリペペルというモヒカンの拠点がある。

 

そこは小高い丘の上に、異世界から転移してきた空飛ぶ船が墜落したものを再利用した要塞めいた場所であり、バイクに乗ってトゲのついた革ジャン着たモヒカンたちが、毎日四方八方に繰り出しては村やたまたま現れた転生者・転移者を殺戮して回っているという。

 

それを聞いた俺たちは、おそらく空飛ぶ船は別のオーラシップに違いないとあたりを付けた。

 

そして、その船の疑似オーラ発生器……うまくすればマシン用の艦内工房を利用して、スプリガンを直す部品を調達できないか試みることを俺がショットに提案。

 

ショットは提案を受諾し、二人がかりでコラムを説き伏せた。

 

「ショットはもともと自分のいた異世界で小規模ながら軍を率いていました。私ギガースは、軍を率いた経験はありませぬが、恐れながらマシンを持っております。我々二人を新たな家臣として、この世界に自分の国を打ち立てられませ、コラム公子……いえ、コラム王」

 

「コラム王……か。できもしないのに祭り上げられた時から考えてもさらに絶望的なのに……ふふふ。ギガース、お前の言うことを聞いていると、まるでできるような気がしてくるな。よし!その話に乗ってやろう。予は今から、新王コラム一世だ!」

 

こうしてコラムを乗せたのか、コラムが乗っかったのか、新国家建設を目標にすることにした俺たちは……

 

「予はこれから国盗りを始める!はびこるモヒカンに怯えず、異世界からの来訪者に蹂躙されない国だ!この村も放っておけばいずれ滅ぶ。そうならぬよう、お前たちも私の民になるのだ!」

 

コラム公子改め、コラム一世に演説をぶたせ、村人たちに新国家の国民たることを了承させた。

 

そしてモノソクリペペルを壊滅させて強固な暫定首都を作ると布告して、今回の飛行船撃退の一件でオーラノズルが生えて飛行可能になったブロンズ・アケロンに三人をデサントさせ、俺の操縦で一行は飛び立ったのだった。




行き当たりばったりの自我の吹き出しでも続いていくことが重要なんだと、俺は思います
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