TS竜人の便利屋日誌   作:逆見御傘

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TS竜人、服が燃える

 

 均衡を崩したのは『ウィンドウショッピング』の方だった。

 

『クソッ、赤字ギリギリだ!』

 

 両腕のガトリングから射撃が止み、右肩のミサイルポッドの蓋が開く。

 

 あいつ初手から嘘ぶっこいてやがった!

 

「チッ!」

 

 タックルしたら吹っ飛ぶ程軽いのといい引き撃ちしないのといいアイツの体幹はそんなに強くない、ガトリングで射撃しながらミサイルばら撒いてればこっちの択は更に削れたはずだ。コレは収穫、多分殴り合いに持ち込めばこちらが有利。

 

 障壁を解除し、盾の下面をミサイルポッドに向ける。この距離なら流石に当たる……!

 

 息を止めて、フックショットのトリガーを引いた。

 

『ハッ、生憎鉛玉程度じゃ装甲は抜けないぞ!』

 

 問題ない。

 

 魔法で射出されたワイヤー付きの杭はミサイルポッドを貫いた。

 

『城と轍』は盾に魔法式フックショットを2つ取り付けられるように設計したものなのだ。魔法式フックショットは特別製、特に『ウィンドウショッピング』に対してはそこらの鉛玉以上に効果を発揮するだろう。

 

『なっ!?クソ、遺物(アーティファクト)か!』

 

 暴発や爆発はしなかったが片側のミサイルポッドは潰した。返しのついた杭は深く刺さっているのでワイヤーを引いてロボットの体勢を崩す。相手体幹カスだなやっぱ。

 

『ぬわっ!?』

 

 距離詰めて解体してやる……!

 

 ワイヤーを引いて距離を離されないようにしつつ接近する。

 

『こなくそ……ッ!』

 

 刺さったワイヤーをロボットの腕が掴んだ。

 

「ッ!」

 

 嫌な予感がしたので即座にフックショットを盾からパージする。

 

 直後にロボットの手から電流が迸った。フックショットをパージしていなかったら送電ケーブルになっていた所だった……

 

『おっ、これは効くみたいだな!』

 

 泡食ってパージしたのを見逃す相手でもない。

 

 そりゃ近接戦闘用のギミックもあるだろうとは思っちゃいたが結構面倒なもの載せやがって……

 

 打ち捨てられたフックショットは多分壊れてるので回収はしない。

 

 盾にはフックショットは2つついており、残った片方もパージして左手で持つ。自分の魔力で射つ事になるが障壁よりは燃費がいいし問題ない。電流流される直前でのパージはミスると盾の術式まで壊れるからな。

 

『ハッハァ!殴り合いと行こうぜぇ!』

 

「生身相手に遠隔操作でステゴロとはいい度胸だな!」

 

 今度は距離を詰めて来た、素手でも『脆化』が使えるのはバレて無いな。遺物の効果によるものだと勘違いしている。

 

 掌から電流が流れるので掴みは貰うと不味い、拳や蹴り自体は貰っても問題ないが一応盾で受けるべきか。

 

 右からの拳打を盾で弾き、回し蹴りは回避してから軸足に盾でタックル。

 

 二足歩行型故に重心の位置や身体運びは肉で出来た人間と大差ない。音を立ててロボットが倒れるが……特に損傷らしい損傷は無し、やっぱりただド突き回してもダメージが入らないか。

 

 フックショットを起き上がろうとする『ウィンドウショッピング』に向ける。

 

 狙うのは体のド真ん中。どこが急所か分からんが末端にはつけないだろうし風穴開ければ以降戦いやすいだろう。

 

『ダルいんだけどマジで!!』

 

 キレ気味な声と共にロボットは左腕で防御、杭が貫通したガトリングは煙を上げる。戦場では相手の嫌がるべきことは積極的にするべきだよな?

 

 これで左腕と左側のガトリング砲は潰した、ガトリング砲は片方だけでは盾を構えた状態の俺は止められないので手札上だいぶ有利。

 

 残念ながらフックショットに巻き取り機能が付いていない。コンパクト化の弊害である。掴んで電流流される前にさっさと投げ捨てる。幸い体勢は崩しているのでミサイルが飛んでくる事は無いだろうし走って距離を詰める。

 

 盾は左手で保持、右手は魔法を発動しつつ拳を握る。

 

 あと数歩で間合いに入る、その時だった。

 

『仕切り直しだ』

 

 ロボットの機体から緑色の煙が吹き出した。まだ残ってたいたのか!

 

「っ!クソッ!」

 

 盾の障壁魔法を起動、前面に壁を作りつつバックステップで後退。あと一歩詰めた所で使われてたら多分貰ってた、奴が辛抱弱くて助かった。

 

 煙の噴出自体は直ぐに止まった、元から残料僅かだったのだろう。

 

 距離を取られた、フックショットは品切れ。つまり相手が一方的に殴れる状態だ。

 

『よーくもやってくれたなァ!』

 

 ロボットの腕が煙を裂き、姿を顕にする。

 

 ロボットの左肩のミサイルポッドが開いている。

 

 それを認識した瞬間に盾の側面を持って円盤投げの要領でブン投げた。

 

『は?』

 

 発射されたミサイルは盾とぶつかって派手に炸裂。

 

 爆炎による煙でまた視界が潰れる。

 

「ッ!」

 

 多分ここでトチッたら逃げられる!

 

 煙を裂いて、1歩前へ。

 

 ロボットの左腕のガトリング砲が回転しながらこちらを向いている。

 

『もう防げないぞ!』

 

「……防ぐ必要なんてないさ」

 

 結果から言うと銃弾で穴だらけにはならなかった。

 

 ──────────

 

 ターミナルには『固有技能』と呼ばれる技術区分が存在する……というかカテゴライズが難しいものはとりあえず1度ここに放り込まれるらしい。まあ錆姫氏から聞いただけだが。

 

 生体魔力の波長や精製する龍気の性質、神秘率の偏り、集めた信仰の属性etc……理由は多岐に渡るが一部の奴しか行使できない術理術式。神秘率とか信仰の属性ってなんだ……?

 

 まあとにかく大雑把に定義するなら特殊体質の人間にしか発動出来ないものらしい。

 

 そして、俺は魔力によって物質同士の結びつきを強化する『硬化』、逆に物質同士の結びつきを極限まで弱める『脆化』。この2種類を扱え、条件によっては付与できる。正確には一族代々使えるモノだから固有技能に入るのかは知らんが。

 

 ──────────

 

 俺の場合は『硬化』を自身に使用すれば戦車に轢かれた程度ぐらいなら傷1つつかない。つまるところ貫通力よりも殺傷力重視の弾丸なら『硬化』中なら皮膚で受けても問題ないし、この程度は打撲にもならない。

 

『……は?』

 

 まあ事前準備無しで使うとハチャメチャに肌荒れるから毎朝薬塗る必要があるんだけどな。

 

 呆然としているうちに肉薄、ぶん殴れる距離までついに詰めた。

 

『硬化』単体ではそれこそ戦闘用ロボットの装甲を抜くのは難しい、コイツ軽いからそのままの装甲貫くレベルで殴ると多分『飛ぶ』し。

 

 まあ、問題ない。

 

「スクラップにしてやるよ!」

 

『生身で調子乗ってんじゃねぇぞ!』

 

 ガトリング砲では効果がないのを察したロボットもこちらを殴りにかかる。

 

 拳と拳が激突し……鋼鉄の拳のみが一方的に砕ける。

 

 焦ってグーパンせずに掴んで電流流すのを狙うべきだったな。

 

『脆化』。

 

 触れた物質の結合を『緩める』固有技能。まず緩めるだけなので対象の破壊にはこれに加えてもう1アクション必要、更に有機生物全般には生体魔力でジャミングされるのでまず通らない。防具や武器は破壊できるとはいえ同じリソースで攻撃魔法を使った方が多分効率がいい、一族の固有技能。

 

 それでも血の通わない戦闘機械を破壊するには十二分だ。

 

 二度目の鉄拳で右足を破壊。三度目で左足。機体から破損したパーツが飛び散る。

 

 もうコイツは動けないとはいえなんかされる前にシメるか。

 

「なんか言い残す事は?」

 

『覚えてろよ!』

 

「晩飯までなら……」

 

 嫌だよ寝る前までお前のモノアイ思い浮かべるの。

 

『……せめてお前も赤字晒しやがれバーカ!!!』

 

 罵声と共にパカーン!という擬音の聞こえそうな勢いでロボットの胸部が開いた。

 

 剥き出しの動力炉と思わしきものが急速に赤熱していく。

 

「は?」

 

 自爆?機体の回収が見込めないなら足跡になる可能性があるものを処分しつつ相手のリソースも削る手段としては有効的、問題なのはその有効的な行動を相手方が取ってる点だ。

 

「おまっ、ふざけんな」

 

 破壊……はもう間に合わない、赤熱部分にわざわざ手を突っ込むべきじゃない、盾は投げちゃった、こいつ自身を真上に投げ……

 

『あばよォトカゲ女!』

 

「待て俺はおとk」

 

 訂正は間に合わず咄嗟にまた皮膚に魔法を使用し腕で顔を守ったところで直後に閃光と爆音が迸る。鋭い金属の破片が幾つも飛んでくる感覚。

 

 

 

 

 

 

 

 

 気絶はしなかった、閃光と爆音で耳と目が回復しなかっただけだ。

 

 魔法を解除し目を開けると周辺の芝生は吹っ飛んでいた、何度も皮膚に硬化を使ったので腕や顔が少しヒリヒリする。

 

 ……遠くで寝てるペロちゃんは無事だ。

 

 それと胸元がスースーする、魔法を使った時とはまた違う感覚…………

 

 下を見て、気がついた。

 

 服、前面が焼け飛んでる。

 

「どうやって帰るんだこれ」

 

 人気のない公園なのが幸いして誰も見て居ないが、胸やら腹やら放り出す羽目になりながら、途方に暮れて呟いた。

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