後日譚というか、単純に事後処理と報酬の話。
『ウィンドウショッピング』の最後っ屁で服が破壊された後、ロックハックが戻ってきた。
『たいじょう、ぶ?』
「服が不味い、普通に捕まってしまう!」
一応胸と股間部分を腕や尻尾で隠すがこれでは俺が通報される側になってしまう。
『きんきゅうひなん!』
「うわっぷ」
白い上着を投げつけられた。袖を通すと思ったよりでかいので太腿より下はアレだがとりあえず局部は隠れた。虹色の謎ラインは消えてるけどこのじゃないと何かしらの能力は機能しないとかだろうか。
『もらるのピンチ、ふうきがみだれる!!!』
「酷い言い様だな」
人様の裸をそこまで罵倒するか普通。
『あのふたつのおやまはロックハックがせんりょーしたい!』
「おいライン超える寸前だぞ、男相手に」
『……おとこ?』
「言って無かったっけ、俺体が女になってるだけで心は男」
『……つまり、どうせいかんのせくはらはてきおうされない!?』
「異性間のセクハラはもっとアウトだが!?」
壊してしまった……!幼女の性癖を……!
「あ、そうだ、預けた携帯返してくれ」
『わるいやつ、つーほーずみ!』
ロックハックは親指をだけを突き上げて手をこっちに向けた。なんかのスラングだろうか。
「そりゃよろしい、電波も回復してるな。とりあえずカネゼニー夫人……ペロちゃんの飼い主に連絡するからちっと待っててくれ」
ペロちゃんは起きる様子が無い……寝息を立ててるから生きてはいる。、と首輪と勲章は無事だな。うん、良かった。
『もしもし、こちらカネゼニー夫人ザマス』
「もしもし、便利屋スタークです。今大丈夫ですか?」
『ヴァタクシは大丈夫ザマス。何か問題があったザマス?』
「ウィンドウショッピングを名乗るロボットに襲撃されました、目的は首輪の勲章だとか言ってました」
『……大丈夫ザマス?』
「返り討ちにしたんで問題ないです……がペロちゃんがなんかよくわからんガスを吸って今ぐっすり眠ってます。管理局には通報済みです」
『わかったザマス、とりあえず管理局の指示に従うザマス。ヴァタクシの予想が正しければ現場で事情聴取の後一旦解放されるからその時にペロちゃんを帰してくれれば一旦依頼満了にするザマス』
「すみません、ペロちゃんがガッツリガス吸ってますけど検査とかは……?」
『帰ってきたらヴァタクシ側で行きつけの病院に連れてくザマス。ぶっちゃけ襲撃のリスクは伝えなかったヴァタクシにも非があるしアフターケアはいらないザマス』
「了解です、失礼しますね」
『ええ、ペロちゃんのお世話ご苦労ザマス』
通話が切れ、携帯端末から耳を離すとちょうどサイレンの音が聞こえてきた。
それと同時に爆風。凄まじい速度で『何か』がロボットの自爆した爆心地付近に着弾した。
「あ、錆姫さん。ご苦労さまです」
着弾した『何か』……錆姫さんは錆びた大鎌を片手に焦ったような顔でこちらに迫ってきた。
「ハートさん、あのポンコツは何処に逃げましたか!?」
「そこで首だけになってます」
自爆から辛うじて残ったロボットの頭部が残った爆心地を指さす。。
「は……え?勝ったんですか?」
「相性勝ちですね、あっちの攻撃はガスと電流以外はそんなに効かないので。この後どうすれば?」
「……とりあえず後詰めの職員と軽い事情聴取の後直ぐに解放されます。私は少し周囲を見てくるのでこの場を動かないでください。そちらの子は?」
「偶然居合わせた迷子です」
『とおりすがり』
ロックハックは人差し指と中指を立てこちらに向けている。やはり何かのスラングだろうか。
「一応関係者ですし事情聴取があると思いますが大丈夫でしょうか」
錆姫さんは屈んでロックハックに目線を合わせてから言った。
『もんだいない』
「ご協力感謝致します」
ニッコリ笑ってから立ち上がると凄まじい音と共に跳躍し、視界から消えた。
やっぱりあの人、身軽とかそういうレベルじゃない身のこなしだな……
その後は事情聴取の後に目覚めたペロちゃんとカネゼニー邸に帰還(管理局の車両で送って貰った。なおペロちゃんは車両に並走してた……元気すぎだろ)、カネゼニー邸ではまた風呂に入れさせてもらって返したばっかりのメイド服をまた借りる事になってしまった。
「下着吹っ飛んだからスースーする……」
『のーぱんのーぶらめいど、ありよりのあり』
しれっと俺の隣にひっついてカネゼニー邸で俺の後に風呂に入ったロックハックがうんうんと頷き腕組みしながら言った。無し寄りの無しに決まってるだろ。
「というかお前さんなんでまだいるの?迷子センターは?」
『こーとかえしてもらってない』
「いや俺が風呂入った時点で回収出来ただろ」
『……さいきんはいれてないからひとっぷろはいりたかった』
ガスマスクと眼帯で顔の大半を隠した幼女は目を逸らしながら言った。
「普通に突っ込みづらいのやめろよ……」
『うん、じぶんでもおもった』
本当に何者なんだコイツ……入都管理局がガチガチに審査してるのに家なき子が生まれる理由がわからん。密航者なら錆姫さんが放っておくはずないし。
「すみませんねまた風呂まで」
『またペロちゃんに舐められるのも想定してたから大丈夫ザマス』
そんな訳で屋敷の応接間でカネゼニー夫人と依頼についての報告と相談。
「それで依頼の方ですが……」
「満了でいいザマス、ペロちゃんが長めのお昼寝をした以外は不利益は出てないしヴァタクシ達の財産はしっかり護られてるザマス。良い仕事だったザマスよ」
「はい、ありがとうございます。振込の方ですが指定の口座にお願いします」
「もう入れたザマス」
「確認しますね」
携帯端末を起動して口座を確認、ちゃんと入金されてるが…………なんか多くね?
「……多くないですか?桁間違えました?」
「セレブがそんなことするはずないザマス。ヴァタクシが正当だと思った値段を付けただけザマスよ」
ペロちゃん1匹で普通の大型犬27頭分の労力と言っても過言じゃないからむしろ安いもんザマス、と付け加えた。
まあ確かにそうだが……今度からちゃんと値段について相談してから依頼受けるか……
とりあえずお礼だけ言って〆るか。
「本日は便利屋スタークをご利用頂き誠にありがとうございます。またのご利用をお待ちしております」
「ええ、またお散歩をお願いするかもザマス」
実入りはいいが暫くは勘弁して欲しい。
どっかで飯食ったら家帰ってさっさと寝たい所だがそうは問屋がなんとやら。
ロックハックとカネゼニー邸を出た瞬間に電話がかかってきた。
「もしもし、便利屋スタークです」
『錆姫です。体調の方は大丈夫ですか?』
「はい、さっき仕事も終わって今から帰宅です」
『ええと、まだ傍にロックハックさんは居ますか?』
「え?いますけど」
隣には眼帯ガスマスクの幼女がしっかりついてきている。
『今車で向かってるので合流したいのですが可能でしょうか?』
「さっきの管理局の人が合流したいだと」
『いいよ』
幼女は二つ返事で了承した。
「……分かりました、場所はどうしましょうか」
『ピン指したマップを共有しますね』
「はい、じゃあまた後で」
プツン、と電話が切れた。信号待ちの間に掛けてきたのだろうか。
「管理局に呼ばれるような心当たりは?」
『いっぱいある』
「俺は無いんだなコレが」
はー、感謝状でも出るのかね?