TS竜人の便利屋日誌   作:逆見御傘

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TS竜人、リモート窃盗犯と交戦する

 

「よーし、そろそろ帰るか……」

 

『よぉ姉ちゃん、良い犬連れてんな!』

 

 小一時間自然公園を散歩した後、そろそろ帰宅するかと地図を開こうとしたその時だった。

 

 肩にミサイルポッド、両腕にはガトリング砲。そんなロボットが頭上から降ってきたのだ。戦場帰りかよ。

 

 体格は3m前後、二足歩行、ボディは黒塗りでモノアイは緑、推定だが稼働音的に金属製。

 

 少なくともお散歩中にすれ違って雑談って雰囲気じゃないな、機械の感情なんて読み取れんが。

 

『グルルル……!』

 

「落ち着いて……預かってるだけですよ」

 

 牙を剥いて威嚇しているペロちゃんの顎を撫でて落ち着かせる。ロックハックの前に立つ。ガトリング砲に入ってる弾種によっては抜かれるだろうから気休めだが。

 

『関係はどうでもいいんだよ、そいつの首輪置いてってくれればなんもしないぜ』

 

 声は意図的なのかノイズ混じりで性別や年齢は分からない。話し方的に男っぽいけど。

 

「首ではなく首輪?」

 

 ロボットがガトリング砲のついた片腕でペロちゃんの首元を指さす。

 

『そいつがつけてる勲章のひとつなんだけどよ、もう本国じゃ廃止されてるらしくてな、コレクターに高く売れるから小遣い稼ぎに来たって訳だ』

 

 へー……

 

「……ごめん、そもそもどちら様?」

 

 少し冷静になって疑問が戻ってきた。

 

『はあ!?俺様の事知らないのか!?俺様は泣く子も黙るクラス4指名手配犯、『ウィンドウショッピング』だぞ!』

 

 ロボットは驚いたように自己紹介した。自分から身元言っちゃうあたり余っ程自信家なのだろうか。

 

「あー、自分は現場に出ないで画面越しに色々強盗するからウィンドウショッピングね……自分でつけたの?」

 

 あとついでに中身入ってる訳じゃないのが確定した、悪くない。

 

『つけたのは管理局だ!』

 

「まあ自分から名乗ってる時点でダサいと思うよ、リモート窃盗犯」

 

『その呼び方だともっとダサいじゃないか!』

 

「いや犯罪者の時点でダサさ限界突破だろ……そもそも、クラス5じゃなくて4でイキってるあたりお里が知れるぜ」

 

 クラスとは1〜5で分類される犯罪者や危険な遺物等の分類方法だ。数字が上になるほど危険。クラス4は『専門知識を有した/相性の有利な管理局員複数名で対処』だったか。ちなみにクラス5は『人命第一で職員も市民を避難させつつ逃げろ』。

 

 まあとにかく道徳的優位はこちらにある!なるべく煽って冷静な判断能力は失わせなければ。

 

『それで?返事は?』

 

 早速だがダメだった、おしゃべりとメインはちゃんと切り分けるタイプか。向けられたガトリング砲が威嚇するように回転し始める。

 

「依頼主に聞いてもいい?」

 

『いいぞ』

 

 いいのか。ガトリング砲も止まった。えーっと、管理局に通報する時の番号は9991だっけ。普段錆姫さんやテマリスに直接かけてるからこっち使うのは初めてだな。

 

「もしもし管理局?」

 

『依頼主にかけてないザマス!』

 

 目の前のロボットと携帯端末から同時に声が発せられる。ご丁寧に端末からは少し違和感があるがカネゼニー夫人の声だ。騙す気マンマンじゃねーかよクソ窃盗犯!

 

「チッ……持っててくれ」

 

『あいよー』

 

 通話を切った携帯端末はロックハックに預ける。持ってても邪魔だろうし。

 

『ガルルル!』

 

「まあなんだ、とにかくお断りだ」

 

 もう数秒後には飛び出しそうなペロちゃんを抑えるのも限界が近い。

 

『ガウッ!』

 

 このままだと引っ張られるのでリードから手を離す。

 

『残念だぜ』

 

 その言葉と同時に、ロボットの関節の隙間から見るからに体に悪い緑色のガスが噴出した。

 

「は?ガス!?背中のミサイルポッドは飾りか!?」

 

『ワハハ!弾代めっちゃ嵩むから中身入ってないんだよこれ!ガッツリ吸わないと死にはしないから安心しな!』

 

 迫る煙、ペロちゃんが呑まれて消える。背中の盾のスイッチに触れながらロックハックを胸元に押し込む。

 

『わお、ごくらく』

 

 そして視界は緑煙で染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 まあ気絶してる訳じゃないんだけどな。

 

 ガスで隠れるギリギリの瞬間に展開した盾についた魔法障壁のおかげでガスは吸っていない。

 

「ペロちゃんは……もう寝てるか、まあ仕方ないな」

 

 恐らくペロちゃんへと続くリードは障壁のすぐ外側でピクリとも動かない。

 

 多機能魔法盾『(しろ)(わだち)』、障壁球状展開(スフィアモード)。こちらからも攻撃出来ない上に盾のエネルギーの消費がバカにならない緊急手段である。

 

「動かないなアイツ、センサー死んでるのか?」

 

 位置関係的にあのでかいロボットが動けばペロちゃんより前にいる俺に見えるハズだ。

 

 んー、もしかしてこのガス煙幕代わりなのか?錆姫さんが何度か現場向かってるっぽいのに毎回撒いてるあたり中身は観測不能になるとか?

 

『わぷっ。あのロボ、わるいやつ?』

 

 胸元で潰しそうになっていたロックハックを解放する。とはいえ障壁内はそんなに広くないので中腰のままだが。

 

「多分この都市では上から数えた方が早いレベルで悪いやつだな。そのガスマスクって本物?ファッション?」

 

『つける?』

 

 本物のようだ。

 

「いや、ちっちゃい方がガス貰った時にヤバいから君お前さんがつけな。それにそろそろ拡散すると思う」

 

 ガスの噴出時の挙動的に空気より軽い。どれぐらい出したか知らんが。

 

『ロックハック、ちょーつよいよ』

 

 ロックハックはどこからともなく二振りのゴツい短刀のようなものを取り出した。

 

「初陣から誰かに助けて貰っちゃ締まらないからなぁ……逃げるなり助けを呼ぶなりしてくれよ、アレに2人とも背中向けるのは危ないだろうし。勿論要求を飲んで勲章を渡すのは論外だ」

 

『とにかく、わるいやつにはくっしない!』

 

 そう言うとロックハック短刀を何処かに仕舞いこんだ、まだ子供なのに戦わせるわけにはいかんしこれでイイ。

 

「そういう事だ。んー、エネルギー持つかな……」

 

 盾の裏側に着いているメーターは既に半分を割っている。ガスの拡散までは持つだろうけどあの銃火器相手にガス欠気味のスタートは困ったな。最悪自分の魔力で動かせるけど切り替えにワンアクション取られるのは宜しくない。

 

『……これがでんち?』

 

 ロックハックが盾の裏側のある部分を指さした。

 

「まあ認識は間違っちゃいないな。下手に触ると解除されて危な」

 

『えいっ』

 

 バチッという音と共にロックハックの指先がスパークした。

 

 突然のフラッシュに目を閉じてしまう。

 

「うわっ!?」

 

 目を開いて、盾の裏のメーターを見ると、エネルギーがフル充填されている。

 

『いけそう?』

 

 いや何者だよこの子……いや、異世界ならそういう技術もあるのか?

 

「……おうよ。解いたらどっか隠れてな、ガスから抜けるまではなるべく目も開けちゃダメだぜ」

 

『がってんしょうち』

 

 煙が薄くなってくる。

 

『さーて、そろそろ寝たかなっと』

 

『けんとーをいのる』

 

「了解!オラァ!」

 

 障壁を解除し、ガスの向こうに見えたシルエットに向けて盾でタックルをかます。ロックハックはロボから離れるように走り出したようだ。

 

『うわあああああ!!?』

 

 めっちゃ吹っ飛んだ、甲竜()の脚力が優れているのもあるけど見た目より軽いぞアイツ。

 

 そのまま数歩進んで煙を抜ける。息は止めてたから吸ってない。

 

「いや驚き過ぎだろ」

 

『ホラゲーみたいに出てきやがってふざけんな!』

 

 何言ってるのかわかんない、それはそれとしてガトリング砲のついた右腕をこちらに向けられる。

 

 一瞬逡巡。位置関係的にペロちゃんには当たらないな。ロックハックはもう遮蔽にでも逃げてるだろう。

 

『蜂の巣になりやがれ!』

 

「誰がなるかァ!」

 

 盾に組み込まれた術式を起動し、障壁を前面に展開。

 

 直後、連続して着弾。その衝撃が腕に来るが耐える。

 

『オラオラオラオラオラオラァ!!』

 

「うるせーなあいつ……」

 

 ガトリング砲の射撃音に負けず劣らずの五月蝿さである。

 

『……お前盾で防いでるとはいえ衝撃はモロに来るだろ!?』

 

「生まれつき頑丈なんだよ!」

 

 生まれた時とは性別変わってるがな!

 

 盾で受けた弾丸が足元に転がってくる。足で上手いこと盾の内側に転がって来た物をはね上げてキャッチ。

 

 弾丸の先端部分がガッツリ潰れている。目測だから弾速に関しては推定だけど障壁に加えて投射物に対して発動する減速魔法が組み込まれている盾であってもマトモな弾丸がここまで潰れるものでは無い。つまり……

 

 魔力を通して解析する、思った通りだ。

 

「おいこれ拡張弾頭じゃねぇか!外の戦争だと使用禁止だぞ!!?」

 

 弾頭が着弾時に潰れて貫通せずに人体に残るやつである。外だと色々な理由で条約で使用禁止だ。

 

『こかぁターミナルだぞ!それにこの程度で妖怪さびるんるん筆頭に管理局の奴がが死ぬわけねぇだろ!!!!』

 

「誤射とか考慮しろアホ!」

 

『俺が誤射なんてするかぁ!』

 

「ガトリングなんて嫌でも当たるだろ!」

 

『だからこうやって渋滞作って人払いした状態で殺ってんだよ!!』

 

「くそっ思ったより計画的犯行だなオイ!」

 

 来る途中で見た渋滞やら電波悪いのコイツの仕業かよ!

 

 遅滞戦術で管理局が来るのは期待できない、か。

 

 エネルギー残量は問題ない、さっきロックハックが充填してくれたので多少の無理は効く。

 

「っし、ぶん殴るか」

 

 盾を構えたまま1歩、踏み出した。

 

『ハァ!?クソッ!』

 

 直後、ロボットがもう片方の腕でもガトリング砲の射撃を始める。

 

「ぬうっ……」

 

 流石にガトリング砲2つからの掃射を受けつつ前進は出来ない。

 

 でもこれで明確にタイムリミットが見えた。

 

 ああいうのはずっと射撃は出来ない、バレルの冷却やら交換の為に止まる時間が存在するはずだ。

 

 それをカバーするための両腕ガトリングかもしれないが俺の前進は片腕だけでは牽制出来ない。

 

 つまり、もうしばらく耐えれば奴は明確に隙を晒すって訳だ。

 

「我慢比べだ……!」

 

 




Q.各クラスの評価ってどんな感じ?
A.
クラス3:専門知識/資格を有した職員1名、若しくはクラス2相当の熟練度の者複数名で対処する。ペットとして飼える魔獣はここまで。
クラス2:都市のプログラムによりある程度の訓練を受けた職員若しくは民間の有資格者が対処に当たる。
クラス1:ちょっとした危険物、所持していても特殊なものを除き法令違反等にはならない。(例:工事用の機械、よく切れる包丁など)
クラス0:危険は無い。

Q.主人公頑丈すぎん?盾越しでも貫通しないだけで衝撃は受けるよね?
A.種族特性です。有機人類としては龍種を除くと割と最高峰に位置します。
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