「あっ、明るくなってきましたよ。」
そんなレイの言葉にその場にいる全員の視線が西へと向けられる。
「そろそろじゃない?」
マキの一言をきっかけに藍色の空が次第に変わり始める。雲の隙間からオレンジ色の光が漏れ出て次第に空が白んでいく光景。その場にいる全員が息をするのを忘れたように魅入っていた。
「……きれい」
「きれいで……そして、まぶしくて」
「……すごく温かい」
そんなハレたちの言葉が静かに夜明けの空に溶けていった。
そんな静寂もひとしお、レイのぐぅーというおなかの音が響いた。視線を向けられると当の本人は顔を赤くして顔を逸らした。
「レイさん、もしかしてお腹空いたんですか?」
「仕方ないじゃないですか!朝早くから走ってたので!」
スミレの質問に食い気味で返すレイ。まあお腹が空くのも仕方ないよなと思いながらフォローを入れようとするとそれより先にチヒロがフォローを入れてくれた。
「それじゃ、キャンプでみんなでごはんにしない?」
満場一致の賛成。こころなしかルンルン気分で先導するマキを先頭に一行は山を下りることとなった。
"写真を撮っていきたいから先に戻ってていいよ。"と生徒たちを先に帰らせると私はシッテムの箱を取り出して起動した。
「先生、生徒さんは先に行ってしまいましたが良かったのですか?」
ピンクのUIが輝くとともにプラナが隣にちょこんと現れながら質問をしてくる。
「"問題ないよ、ところで……アロナはまだ寝てるのかな?"」
「初日の出が出てきた時に起こそうとしたのですが……」
プラナの指す液晶の先ではアロナはすやすやと爆睡していた。起きなかったのでプラナがイタズラをしたのだろうか、頭の上にみかんが載せられていて鏡(アロナ)餅になっていた。
「"来年は3人で見れるといいね"」
「ところで、なぜわざわざ私を呼んだのですか?」
私の時の先生はそこまで気にしていなかったのに……とプラナは零した。
「"強いて言うなら私のエゴかな"」
「エゴですか?」
「"「私」と初日の出見たの初めてでしょ?"」
「……気づいていたのですか?」
(生徒のこと……お願いします)
記憶をよぎる
知っている人はほぼいない、けど確かに存在した世界。そこで背負うことになった自分自身の十字架の重み。託されたふたりの生徒。キヴォトス未曾有の事態となったあの一件は今でも鮮明な記憶だ。
(分かっているさ)
だからこそここから先は楽しい思い出をたくさん作ってもらいたい、そんなエゴで今こうしてプラナと過ごしている。
「"先生だからね"」
「そういうことにしておきます……」
少しの沈黙。
「今年はどんな年になるんでしょうね」
「“……きっといい年にはなるんじゃないかな”」
繋がらない会話を紛らわらすようにプラナの長い髪を撫でるとあきらめたようにプラナは目を細めた。
「そろそろ生徒さんのところに戻った方がいいと思いますよ」
大人しく撫でられていたプラナが名残惜しそうに言うと手から離れた私の正面に立った。
「そういえば言い忘れていましたね」
「“なにかあったっけ?”」
「今年もよろしくお願いします、先生。」
プラナの声とともに明るくなった空に控えめな流れ星がひとつ流れた。
ブルアカ初書き+初投稿です。
今年もいい年になりますように。