【それを決めるのは私ではない ネイト自身だ】   作:蒼三日月

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あけましておめでとうございます。


A組B組対抗戦 前編

 季節は寒冷さが増してきた、冬空の下。

 

 英雄を志し、憧れ、そう成るべく日々研鑽を積む少年少女たちに休日というものは存在しない。

 

 雄英高校ヒーロー科、一年A組、そしてB組。

 神野の悪夢が起こる引き鉄となった二度にわたる雄英高校襲撃事件により、生徒の安全を考慮し導入された寮制度により登校時間などが短縮され、生徒たちはより濃密な自己研鑽に励むことが可能となった。

 

「馬鹿な……!」

 

 この日は、互いの研鑽の成果と意見交流を兼ねたクラス対抗交流戦が行われている。

 

「庇ったというのかッ! あの傲岸不遜な暴君を体現したような男が、チームメイトを救けただと……常識が粉々に破壊されて、頭がおかしくなりそうだ!!」

「元々頭おかしいだろ物間お前」

「そこ! うるさいぞ!」

「本当のことだからだ!」

「正しい根拠を言いたまえ!」

「ガチうるせえなお前ら」

 

 相澤消太の放った捕縛布が物間と泡瀬、B組2人の首を締め上げる。

 

「静かに見れねえなら次は訓練場外に放り出し、今授業分の単位与えねぇぞ」

「「スミマセンデシタ」」

「あはは、ドンマイノコね」

 

 小森という名の小柄な女子生徒が声を掛けてくる。物間は不貞腐れながらも画面を見上げる。奮闘するクラスメイト、だが連携の取れた爆豪率いるA組チームが優勢か。

 

「劣勢だな」

「取蔭さんはおそらく、傲慢と憤怒の大罪の具現こと爆豪君の性格を軸に作戦を立てていたのだろうね……集中砲火でネチネチと攻撃してから撤退、これを繰り返し苛立ちを溜めさせる作戦のつもりだったのかな」

「大罪の具現て……ボロクソに言うじゃん」

「だが、知的生命体が進化の過程で初めて群れることを覚えたように、彼もまた他者との協調を覚えた。僕らの知らぬ間に成長していたんだよ。こればかりは僕らでも想像出来ようがない」

「遠回しに猿以下って言ってね?」

「言ってないよ、回原君。猿どころか群生生物でも出来ることをかつての彼は出来なかっただけの話なんだ」

「まさかのイワシ以下!?」

「そこまでは言ってない」

「言ってるだろ……」

 

 何か、彼の中で自分を省みて、変わるきっかけがあったのだろう。

 おそらく、神野の悪夢……世間ではオールマイトを終わらせたのは爆豪でもあるという声も少なくはない。攫われた当事者として彼の中で思うところがあったのではないか。

 

(いや、憶測で物事を語るのは失礼か。レプリカに怒られるな)

【私を呼んだか? ネイト】

「いーや、何もないよ」

 

 知らぬ間に声に漏れていたようだ。

 今はまだ、A組には彼の存在は伏せておきたい。

 

「なんだろうね、にっくきA組でもいい加減成長していなかったらそれはそれで腹が立つんだけど……成長した結果やられ役のように僕のクラスメイトが蹂躙される様を見るのはもっと腹立たしいし、嫌な気分だな」

 

 画面の中で、閃光が爆ぜる。

 小型手榴弾の装備でのデコイを目眩しに接近した爆豪が【閃光手榴弾】を起こして司令塔の取蔭を失神させ、A組の完全勝利となった。

 

【ネイトはどうしたい?】

「……勝ちたい。このままA組の勝ち逃げで終わらせてなるものか。必ずや勝利を掴み取り、僕の友人達に捧げよう」

 

 何より、僕自身がムカついているんだ。この鬱屈した気持ちを晴れやかにするには、やはりA組をボコボコにするしかない。

 

「勝ちに行くぜ。いつも通り力を貸してくれ、レプリカ」

【心得た】

 

 

 

 

 第五セットのスタート。

 A組は緑谷、麗日、峰田、芦戸の4人。

 対するB組チームは心操を加えた5人であり人数では負けている。

 

 前回の爆豪チームの作戦を踏襲するかの如く、緑谷が囮として先行し、B組を釣り出す。それを麗日達3人がサポートする。

 だが耳郎のように索敵をこなせる人物がチームにいないため緑谷1人が囮と索敵と遊撃、全てをこなさなければいけない。

 

「物質を念力……いや念動力系の力で操作する『柳さん』、触れた物体のサイズを変える『小大さん』、衝撃を与えた箇所に、再び衝撃を数倍の威力で与える『庄田くん』、応答させた相手を支配する『心操くん』ーーーそして、触れた相手の個性をコピーする『物間くん』」

 

 ブツブツと呟き考察する緑谷の中で特に未知数なのが物間という青年だった。他の4人は大まかな戦闘スタイルや前衛後衛などのポジションが明確だが、物間は多種多様な個性を模倣しその場で使いこなすため全くの不明。

 

(加えて実力も不明。真っ黒なボディースーツに両腕両脚に装甲をしているから、近接戦闘を意識している? だめだ、わからない)

 

『キャア!!!』

「ッ、麗日さんの声———!?」

 

 咄嗟に声の方角に視線を向ける、誰もいない。思考を高速回転させる緑谷の死角から勢いよくドラム缶が迫り来る。その一手を予測していた緑谷は瞬時に振り返り、視界で捉える。

 

(来た! 柳さんのポルターガイスト! 或いは、)

 

 飛んでくるドラム缶を回し蹴りで撃ち落とす。

 

「そりゃあ防げるよね! その個性、その出力、羨ましい限りだ」

 

(物間くんのコピー!)

 

 洗脳をコピーしている可能性を考慮して応答せずに視線だけを向ける。

 

「応答なし。洗脳は対策済みか……体育祭で何度も引っかかるザマを晒していたもんね。純粋? 単純? いやあれはただの間抜けというべきか。まァ流石に馬鹿でも学習するよね?」

 

(煽ってくるな、口を開かせようとしてくるけどそうはいかないぞ)

 

「ーーハァ、こんなにも嫌味がスラスラと出てくる僕の悪役っぷりに嫌気がさすね」

【そう悲観せずとも良い。ネイトは頭の回転が速く、演技派なのだと私は知っている】

「……そうだね。そういうことにしておくよ」

 

 (? 誰と喋ってるんだ?)

 

 疑問に首を傾げるが、すぐに脳の片隅に追いやる。

 

「さァて緑谷くん。今聞こえた『キャア!』が麗日さんの声だとしたら? 君は即座に助けに戻らないといけないよねぇ。

 あるぇ〜? でも待てよぅ? 仮に今の悲鳴が心操くんが出した声だとしたら? 君は愚かにも罠にかかって僕に仲間の居場所を教えてしまうことになる。ハハハ、困ったなぁ!」

 

 (会話には乗らない、速攻でケリをつける!)

 

 ダンッ、と足場を蹴って両手の指に【エアフォース(デコピン)】を構えながら、物間に向かって突っ込む。

 

「仲間の方も見向きもしないなんて———」

『弾』印(バウンド)

 

 空中に出現した『弾』の文字が刻まれた円形の印を踏み付け、緑谷に向かって勢いよく飛び出す物間。

 

 (速ッ———)

 

 エアフォースを放つ予備動作を取った頃には、目の前には拳を振りかぶった物間がいた。

 

「薄情だ、なァッ!!!」

『強』印(ブースト)二重(ダブル)

 

 物間の背中に『強』の文字が刻まれた青色の印が浮かび上がり、危機を悟った緑谷は反射的に腕を交錯させて防御の構えをとる。

 物間の強化された拳が腕の交錯部分のど真ん中に突き刺さり、緑谷は殴り飛ばされ配管が入り組む壁に叩き付けられる。

 

「ガハッ!ーーーがっ!?」

「【『鎖』印(チェイン)】。拘束完了っと。あれで終わりだと思ったかい? 僕のバトルフェイズはまだ終わっちゃいないぜ」

 

 首に巻き付くオレンジ色の鎖状のエネルギー。それは周囲の瓦礫に展開されたオレンジ色の円形の印から射出されていた。

 これが、個性:コピーの技だと? 明らかに逸脱している何かじゃないか!

 

 フルカウルの身体強化で鎖状のエネルギーを砕こうとして、目の前に高速で接近する影。

 

 加速して跳んでくる物間に対応できず、繰り出される膝蹴りを顔面に食らってしまう。ガードをするはずの腕は鎖で雁字搦め。ぼきりと嫌な音が響く。今の一撃できっと鼻が折れた。

 

「バーサーカーソウル、ってね! 遊戯王は知ってるかい? そらそらそらそらッ!」

 

 殴る、蹴る、殴る、殴る、蹴り上げる。一撃一撃が身体強化系の個性に匹敵する出力で繰り出される。怒涛の連撃に鎖で物理的に手も足も出せず、ひたすら打撃をその身に食らい続ける。

 拘束を解こうとフルカウルを再起動させようとしても、殴られた箇所から意思に反してふっと力が抜けてしまう。

 急所を穿たれたために激しい痛みが全身を駆け巡り、その為どうしても力が抜ける。的確に人体の急所を狙い続ける拳や蹴りは重く鋭く、身体の芯まで響く。蹴りを叩きつけられ右腕が骨折した瞬間、緑谷はもう二度と使うまいと自重していた手段を使うと決めた。

 

(ごめんなさい、母さん! オールマイト!)

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛ッッッ!!!」

 

 ———ワンフォーオール、100%解放

 

 自損必至の過剰火力攻撃。だけど当てるつもりはない、なぜなら当てれば物間は骨も残らず消し飛ぶ。あくまで相手を回避させるための一撃を地面に向かって放とうとした瞬間、

 

 

 ズクン

 

 

「なっ———」

 

 

 右腕から黒い力の塊が噴出した。

 

 

 

「ッ、【『弾』印(バウンド)】+【『盾』印(シールド)】』

 

 物間は攻撃を中断し、盾と書かれた印を前方に展開しながら後方に大きく跳躍して回避。緑谷の右腕から大蛇のようにうねる黒い力の奔流を見て、物間は目を細める。

 

「まーた新しい力か? 嫌になるね、レプリカ、解析を頼む」

【現在行なっている。ただ……現状分かることはあの黒い力は、ミドリヤの持つ超パワーの“個性”とは全くの別の“個性”であること。そして彼のコントロールを外れて暴走しているということ位だ】

「自分の力も制御できないのかってなんて情けない……は? 待ちたまえ。今なんて言った?」

 

 動くものに反応するのか、ギュオン、と唸りを上げて黒い力は物間に向かって勢いよく伸びる。【『弾』印(バウンド)】を空中に展開し、側面から自分を弾き飛ばすことで緊急回避。

 

「あとでその辺り、詳しく聞かせてもらうよ!」

【承知した。私は引き続き解析に集中する】

 

 物間の個性の“コピー”とレプリカの個性解析機能は連動している。

 そのためコピーを発動させて、体内にそれこそ『ペースト』するように取り込んだ個性因子の情報をレプリカと共有することでレプリカの解析精度を上げたいと物間は考えていたが、緑谷が暴走させるソレが触れたら危険な個性の可能性もあるため一旦諦めて回避に努める。

 

【ヒトシには端末を通じてその場から逃げるよう、ネイトとの合流場所の位置情報を指示した。だが、】

「流石は僕の相棒だ。んで何だい?」

【状況が変わった。ヒトシの退避は間に合わないかもしれない】

「は? ああ、チクショウA組め!!」

 

 黒い力がやたらめったら周囲の物体に伸びて絡みつき、引き剥がすように破壊活動を繰り広げる。ギチギチとゴム紐が伸びきったような音が耳に届いた瞬間、物間は反射的に心操の元へ走り出した。同時に、パチンコで射出されるような勢いで緑谷の身体が心操のいる方角の建物に飛んで行ってしまった。

 

「レプリカ、スーツの肉体保護機能を最大出力で励起しろ!」

【心得た】

「【『強』印(ブースト)五重(クインティ)】+【『弾』印(バウンド)】!」

 

 背中に五つの小さな円を宿した大きな印が現れる。物間がレプリカの助けを得ることで使用可能となる『印』は様々な効果を付与する。その中でも多重印。リソースの消耗と肉体に掛かる負担は大きいが、重ね掛けした分その印は瞬間的に絶大な力を発揮する。

 目一杯強化された脚力で【『弾』印(バウンド)】を限界まで踏みこんだ物間は、次の瞬間さながら一条の弾丸のように飛び出す。その尋常ならざる加速によって一瞬でトップスピードに到達。弾丸飛行する物間はあっさりと緑谷を追い抜かす。進路上の障害物を目の前に突き出した拳で粉砕しながら、建物の物陰にいた心操の身体をすれ違いざまに引っ掴み、直後心操のいたところに緑谷が着弾し、ガラガラとコンクリートの壁が崩壊する。

 

「間一髪だった。大丈夫かい?」

「うっぷ……急なGがかかって吐きそうだ」

「……必要な犠牲でした。命は助かったんだ、コラテラルダメージは許してくれ」

「陳宮かよお前」

「ほう、さてはFGOを知ってるな? 授業後にフレンドになろうじゃないか」

 

「逃げて……心操くん、物間くん! この力、僕じゃ抑えきれない、内から溢れてくるんだ!」

 

 暴れる右腕を、必死の形相で全身の体重を乗せて押さえつける緑谷。物間は嘆息し、緑谷をどこか眩しいものを見る目で見ていた。

 

「緑谷……!」

「他人の事も気にかける余裕はあるみたいだね。流石は優等生サマ、随分と高潔な自己犠牲精神だこと」

 

 吐き捨てるように言い放つ物間。その言葉をレプリカだけが静かに聞いている。

 

「個性:コピー。触れた他人の個性を使える、他者に依存した個性。この個性じゃあ、憧れには到底辿り着けない。何でも1人でこなせる存在には絶対になれない」

 

「物間くん、何をしてるの!? 早く逃げてってば!」

「まぁ大人しく聞いてよ。どうせ君程度の実力じゃあ僕を傷付けられないんだしさ」

 

 緑谷に向かって歩み出す物間。オートで反応する黒い力が鞭のようにしなって物間に襲いかかるが、【『弾』印(バウンド)】で横から弾き飛ばし、足元に伸びる黒い力を踏み付けて固定する。

 

(先端に触れなければ“掴まれない”…! 物間くん、既にそこまで理解して…!?)

 

(やれやれ、流石は僕の相棒だ。黒い力の特性も概ね解析済みとはね)

 

 

「何でもできるためには、何でもしなくちゃならない。罠、奇襲、人質、偽装、エトセトラ。手段なんて選べるほど贅沢には在れない。清濁併せ呑む覚悟がないとヒーローには“なれない”って。まァ昔はそう思ってたんだ」

 

 

『【“個性”をコピーする“個性”? 素晴らしい“個性”じゃないか。ちなみに私も同じような能力だ】』

 

 物間が想起するのは小学校時代のある日。今でも鮮明に覚えている。野生のカラスに襲われて、力が尽きかけていた喋る機械を助け出したのが、2人の邂逅だった。

 

『【なれるなれないではない……と私は思っている。何故ならネイトは、とっくに私にとってのヒーローに“なっている”】』

 

『【ありがとう、私の命を救ってくれた“ヒーロー”。君に出会えたことが、私にとっての最大の幸運だ】』

 

 

 レプリカから伝えられた感謝の言葉。その言葉にどれだけ救われたことか。そして物間は自分の思いをレプリカに面と向かって一度たりとも語ったことはない。

 

 

「緑谷くん。君たちのような、生まれながらにして恵まれた力を持った人間には分かるまい。

 近づけば近づくほど憧れから乖離していくと悟った絶望感に、心から苦しんだかつての僕の怒りを! 悔しさを! 抱えてしまった悍ましく黒い感情を……!

 そしてたった一言で、1人の少年の心が救われたことなんてさァ!」

 

 

 束になって勢いよく伸びてくる黒い鞭を正面から両手で掴み取り、引きちぎりながら物間は背後を振り返る。

 

「心操くん! 借り物の言葉だが、ヒーローはなれるなれないじゃないぜ! ()()()()()()()()()()! コピーヒーロー『ネイト』だ! 君は“どう”なんだ!?」

 

「——物間」

 

「君もヒーローであるなら、どうか力を貸して欲しい。手の掛かる同級生1人ぐらい、ちゃちゃっと助け出そうじゃないか!」

「……ああ!」

 

 

 ペルソナコードを外し、ありのままの肉声で心操は緑谷に向かって叫ぶ。

 

 

「【緑谷、俺と戦おうぜ】!!」

「———ッ、応!!」

 

 心操の叫びが届き、緑谷が個性の暴走を抑えようとしながら必死に叫んで応える。途端に緑谷は虚ろな表情に変わり、黒い力が緑谷の右腕に戻っていく。いや、あれは吸い込まれていってる? 物間は首を傾げた。

 

「全く、発動条件が緩いくせに強力な個性だよ、“洗脳”って」

「ああ……俺は、助けられたのかな」

「それは後から緑谷くんに直接聞きたまえ。さぁて、捕縛だ捕縛ゥ!」

「えっ」

 

 つったかたーと緑谷に駆け寄る物間は懐から拘束した人間の個性因子を封じる特殊手錠(製作者:レプリカ先生)を取り出して緑谷の両手首に嵌めようとする。

 

 本来の作戦なら緑谷を物間が接近戦で相手をし、隙を見て心操が洗脳をかけて無力化、激カワ据え置きプリズンに叩き込む手筈だった。暴走というイレギュラーが発生してしまったが警戒されることなく速やかに洗脳出来てむしろ好都合だった。

 

(ついでにレプリカの言う緑谷くんの個性2つ所持疑惑の件だ。全く、今世間を賑わす脳無を想起させるじゃあないか。無関係だといいんだけどね)

 

「レプリカ、()()()()()()()()()()()()()()。あとはよろしく」

【ああ、頼む】

 

(コピー、発動)

 

 物間の個性“コピー”は、対象の肉体に触れることで個性因子の情報を“コピー”し、自身の肉体に情報を“ペースト”するという工程を経ることで、初めて自身の体内に宿った他者の個性を使用出来る。

 

 “コピー”とは、イレイザーヘッドの抹消のように、個性因子に直接干渉できる個性とも言えよう。

 

 ところで個性因子の情報とは、具体的に何を指すのか。かつて物間はレプリカと共に、個性への干渉能力について検証していた時期があった。

 検証の結果、個性因子に対し干渉力を広げている間は、個性因子には所持者の記憶———いや、()()が宿っており、その記録を覗き見ることができると判明した。

 

 レプリカ曰く、その人がどのように個性を使ったのか、己の個性をどう解釈しているのか、それを深く知る事でより精巧に個性を“コピー”したいという、物間の持つ願望が個性の新しい能力として発現したんじゃないか?と推測していたが、まあこの際どうでもいいこと。

 

 結果的に物間は、個性因子を介して擬似的な記憶を閲覧できる術を身につけるに至ったのだ。

 

 だが今回は記憶を閲覧するまで深く潜らないつもりだ。ただどういう個性なのか、表面的にはわからないことを、ちょーっと浅く、それこそスイカの表面をピールで軽ーく、だけど内皮もちょい削るような絶妙な力加減で掠るぐらいの、弱すぎず強すぎずな干渉力で情報をコピーしようとしていた。記憶閲覧は脳に多大な負荷をかけるし、何より他者に個性を与えるオールフォーワンと緑谷くんが繋がりがあると仮定するなら、記憶閲覧対策に何かしらのカウンターを仕込んでいるかもしれないとレプリカは推測していた。だからあまり深くまで潜らないようにギリギリのラインを攻めるぞ、っといつもより深層部分に()()()瞬間、物間の意識は緑谷の個性因子に()()()()()()()()()()()

 

「何が…………!?」

 

 

 

「いいか坊主、これからお前には6つの個性が発現する! だが安心しろ、俺たちがついている。お前がワンフォーオールを、完、すい…

 …………誰だお前!?」

 

 物間の目の前では、口から下がモヤになった緑谷と、スキンヘッドの男性が向かい合っていた。緑谷もなんで君がここに!?と驚愕した表情を浮かべている。

 

「そうか、そうか……緑谷くん。君は———

 

 

 

 

 

——————スタンド使いだったんだなッッッ!!!

 

 

違えよ!?!?? ああクソ、残り時間がなくなっちまった!!」

 

 

 視界が明るく染まり、物間達は精神世界から弾き出された。

 




意外ッ!
それはスタンド【ワン・フォー・オール】ッッッ!!!
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