あ!ポケモンが現実世界に現れた! 作:青雲雪
ポケットモンスター。縮めて、ポケモン。
空に、海に、森に、街に⋯⋯世界中の至る所で人と共存する不思議な不思議な架空の生き物
「⋯⋯うっそだろおい」
俺、
見慣れた街並みの空を舞う、ポッポやムックル、マメパトといった鳥ポケモン達。
屋根の上で気持ち良さそうに眠っているニドランやニャース。
近所の庭の犬小屋でしっぽを振って主を待つガーディ。
俺がいようとお構い無しに部屋の窓枠に止まったチルット。
一言で言い表すなら、現実世界にポケモンが現れた。
「いや、これはきっと夢だ。絶対夢だ。こんな夢のような光景が現実で見られるわけがない。そうだろ、チルット?」
「チル?」
目の前の光景から目を背くために変なことを目の前にきるチルットに聞くが、そのチルットは「何言ってんだこいつ」と言わんばかりに首を傾げる。
「ああ、うん。訳わかんないよな。とりあえずチルット。俺に『つつく』」
「チル!?」
「構わん!一思いにやれ!」
「チルッル!!」
「痛ってぇッ!?」
手加減はしてくれたがジンジンと来る確かな痛覚。認めたくないが、これが現実だ。
「夢じゃないのかよ⋯⋯あ、チルット。変な事頼んで悪かったな」
「チルルー!」
元気よく返事をして大空に羽ばたくチルットは仲間のチルット達と合流し、森の方へと飛んでいく。
それにしても妙に人慣れしてたな。
「にしても痛かったなぁ。チルットのつつくでこれなら10万ボルトを平気で受けられるスーパーマサラ人はどうなってんだよ……って、あれ?」
外の光景に気を取られ、机のど真ん中に見慣れない手紙と、ハートの模様が施された桃色のボール⋯⋯ラブラブボールがいつのまにか置かれいたことに気づく。。しかもそのボールの中にはポケモンが入っているのか、時折左右に揺れている。
「入って……るんだよな?え?なんであるの?しかもなんでラブラブボール?普通こういうのってモンスターボールじゃねぇの?」
ラブラブボールは相手が同じポケモンで、異性の場合に捕まえやすいという効果を持つオシャボとして非常に人気なボールだ。
そして俺がこれまで捕まえたポケモンの中で、このラブラブボールを使ったポケモンはあいつしかいない。
かつて、誕生日の日にまさに運命の出会いをした俺の相棒。
上に投げると同時にボールが開き、中から何かが飛び出してくる。
真っ白な体毛。ピンと立ったウサギのような長い耳。
ポケモンというジャンルにおいてピカチュウに並ぶ人気ポケモン。
進化ポケモン、イーブイの色違い(♀)。
「やっぱお前だったか!イーブイ!」
「ブーイ!」
元気よく俺に飛びつくイーブイ。
抱きしめてみればふわふわとした毛並みの感触が伝わってくる。
「俺今初めて神様に感謝したわ」
「ブイ?」
だって本物イーブイだぞ!?モノホンのイーブイに触ってるんだぞ!?俺もう死んで……る暇はねえな。死ぬならブイズに囲まれて死にたい。というかもっと愛でたい。
「⋯⋯っと、そういえば手紙があったな。見てみるか」
テーブルの上に置いてあった見慣れない手紙を見てみる。
そこにはかなりの長文で書かれていたが、要約すると
・神様の使いの1人が間違えて現実世界とポケモン世界を融合させてしまい、元通りにしようとすればどちらかの世界に多大な影響を及ぼす可能性があるため、このままにするしかない。
・流石にこの状況を放置する訳には行かないので神様が選別したポケモンを安心して託せる1000人に相棒となるポケモンを一匹渡す。
・相棒となるポケモンはその人にとって一番思い入れのあるポケモンになる。
・トレーナーサポートアプリを全人類のスマホや携帯にインストールしたから、神様とその使い達はアプリから全力でサポートする。
・ポケモンというコンテンツそのものと、選ばれたポケモントレーナー以外の人類の記憶からポケモンに関する記憶が完全になくなっている。
・ひとまず選ばれたポケモントレーナーには人類とポケモンの共存のために頑張ってほしい。
・日本にいるポケモントレーナーは俺含めて8人。
とのことだった。
迷惑な話だが、ある意味ではナイスだな。こうしてリアルイーブイをモフれるわけだし。
とはいえ情報は必要だ。
ひとまず何か一つでも多く情報を得るために、トレーナーサポートアプリを起動する。
これまた便利で、モンスターボールやキズぐすりといったアイテムを収容するアイテムストレージとしての機能や、仮想通貨W(ワット)を利用してアイテムの購入ができるショップ。
ポケモンに関する情報を知ることができるポケモン図鑑。
手持ちのポケモン以外を預けられるボックス機能。
その他にもトレーナーをサポートするための機能がなんでも詰まっている。
しかもアイテムストレージには初心者セットとしてモンスターボール5個とキズぐすり10個、3000W、ポケモンスマートウォッチが最初から収納されている。
ひとまずポケモンスマートウォッチを取り出して左腕に装着。時計としての機能の他、ポケモンバトルのサポートやアイテムストレージの操作もこれでできる。
簡易版トレーナーサポートアプリのようなものだ。
ひとまずイーブイの状態を見てみれば⋯⋯
イーブイ ♀ Lv5
特性 きけんよち
技
たいあたり
しっぽをふる
すなかけ
にどげり
タマゴ技のにどげり覚えてるじゃん!しかも夢特性⋯⋯って、あの時はすぐにとくせいパッチ使ったもんな。
「まぁでも、これなら大丈夫そうだな。えらいぞイーブイ」
「ブイ!」
「よし!朝飯食べたら早速外に……の前に学校か。放課後は散歩だ!仲間増やしに行くぞイーブイ!」
「ブイブイ!」
だがこの時の俺はまだ知らなかった。
現実がいかに残酷であることを。ポケモンの恐ろしさを。
・榛名蒼翔
九州北部に在中の高校2年生。第4世代からポケモンを始め、当時の最初のポケモンはヒコザル。好きなポケモンはイーブイ。というよりブイズは全部好き。ブイズ以外ならヌメルゴン。最初の色違いもイーブイ。ラブラブボールで捕まえ、ニンフィアに進化させて特殊受け兼特殊アタッカーとして採用していた。
・蒼翔のイーブイ
ラブラブボール入りで色違いの♀。ゲームで使ってたニンフィアは持ってなかったが、この個体はなんと運命証持ち。
・窓枠に止まったチルット
野生の個体。♂。実はときどきみる証持ち。妙に人に慣れてたのはそのせい。