白兎千恋   作:鶏むね三太郎

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第14話

 「ねぇねぇレフィーヤー、最近どうしたのー? ずっと変だよー?」

 

 ぼーっと窓を眺めるレフィーヤの頬をつんつんと指でつつきながら相部屋のエルフィは直球(ストレート)に疑問をぶつける。

 

 学区での実習が終わってから一週間。帰ってきてからというもの、今のように頻繁にどこかをぼーっと眺めていたり、と思ったらブツブツ独り言を発していたり。

 心ここに在らずな様子が続いていた。

 

 

 

 一週間。レフィーヤがベルに告白をしてから一週間が過ぎた。それきりレフィーヤはベルとは会っていない。

 ベルは会いに行くと言ってくれたから、レフィーヤはそれを待つつもりだった。ベルが約束を反故にすることは無いと確信していたから。

 

 ならば何故レフィーヤは周りから心配されるほど調子をおかしくしているのか。その理由は──

 

 (ベルに会いたい······)

 

 普通に色ボケていたから。

 

 己の本音、ベルへの好意を自覚してからレフィーヤは貪欲なまでにベルという存在に思い馳せていた。

 

 もしロキが全てを知ったとしたら「ウチのレフィーヤが色ボケみたいになってもうたああああ!」などと叫んで悶絶してしまうくらいレフィーヤの頭の中はピンク一色に染まっていた。

 

 (ベルは今何をしているんだろう。早く会いたいなぁ······)

 

 次に会う時が答えを聞く時。つまりまだ返答をもらってもいないくせに脳内お花畑になっているレフィーヤに現実を教えられる者はいない。

 

 (というか一週間も音沙汰無しって流石に長くないですか? いやいや、ベルにだって都合はありますし······)

 「いっそのこと······こちらから出向いてしまえば······」

 「レ、レフィーヤ? なんの話······?」

 「ひゃぁっ!? エ、エルフィっ、なんですか!?」

 「いや、ブツブツ言ってるから何言ってるのかなーって······」

 

 周囲に気を配る余裕などあるわけもなくひたすら色恋思考(ラブコメ)に溺れていたレフィーヤを引き戻したのは、いよいよ本格的に心配になってきたエルフィだった。

 

 「レフィーヤ、最近どうしたの? 私でよかったら相談乗るからさ。一人で抱え込まないで」

 

 気のいい友は真摯にレフィーヤと向き合い、そうするのが当然の如く悩みがあるなら共に抱えてくれると言う。

 実際は恋する乙女(ラブコメ)していただけのレフィーヤのために真面目な顔をするエルフィに対して、レフィーヤは感謝と共に深い罪悪感を覚える。

 

 「いえ、悩みというほどでは······」

 「でも、ずっと様子が変だし······、私じゃあ頼りないかもしれないけど、それでも友達のために何か出来るならなんでもするよ!」

 

 善意が痛い······。

 キラキラと純粋な眼差しで見つめてくるその顔を直視できず背けてしまう。この様子ではどれだけ否定しても納得はしてくれなさそうだ。

 実際にレフィーヤの様子がおかしいのは間違いのない事実であり、それを否定する材料が存在しないのも事実。

 

 このまま話を逸らすことは出来ない。そして、レフィーヤ自身も身の内に溢れるその感情を誰かに話したいと思ってしまった。

 

 「えっと······それじゃあ一つ聞いてもいいですか?」

 「······っ、うんっ! なんでも聞いて!」

 

 ようやく開いたレフィーヤの心にエルフィの顔はパァっと花を咲かせる。友達の役に立てる。花のような少女の力になれることを純粋に喜んだ。

 

 「エルフィは······好きな人って······いますか······?」

 「うんうん、好きな人ね! うんうん············ん? え、あはは、ごめんレフィーヤ、ちょっと聞き間違えちゃったかもだからもっかい聞いてもいい?」

 「だから、す、好きな人です······。エルフィは想い人はいるんですか······?」

 

 繰り返されるレフィーヤの問いにエルフィの時は凍結する。これまで一度も浮いた話の無かったレフィーヤから投下された衝撃発言(スクープ)。エルフィの脳を境するには十分過ぎる威力である。

 

 「えっ、レ、レフィーヤ······好きな人、できたの······?」

 

 聞かずにはいられない。質問に質問で返す矛盾もよそに今この瞬間、最も重要な情報を拾い上げる。

 

 「え、えっ······、だ、誰!? 私の知ってる人!?」

 「ちょっ、落ち着いくださいっ、まだ私何も言ってないですから!」

 「そんな顔赤らめながら目逸らしておいていないわけないじゃん!?」

 「人の顔を詳しく実況しないでください!」

 

 興奮冷めやらぬ勢いでエルフィはレフィーヤに詰め寄る。あまりの急変ぶりにレフィーヤは思わず後ずさる。

 自分で蒔いた種に躓くレフィーヤ(ポンコツ)は自分が周りからどう見られているかを理解していなかった。

 

 エルフィは知っている。入団当初からLv2であり、その後も順調に力をつけ今やLv4。リヴェリアの後釜としても期待されている彼女は密かに男団員からも慕われており、髪を切った後のギャップに落とされた者も少なくない。

 

 それでもこれまでそういった話とは縁がなく、アイズに熱愛していたレフィーヤに好きな人?

 ここでこれまでの疑問がパズルのピースのように繋がる。レフィーヤが恋愛に無頓着であり、そういった感情に鈍感なのは気付いていた。だからこそ排除されていた可能性。

 

 なればこそ溢れる好奇心が抑えられない。

 

 「だ、誰!? 誰なの!? レフィーヤの好きな人って!」

 「エ、エルフィ?」

 「私の知ってる人!? 」

 「いや、あの」

 「あっ、もしかしてベートさん!?」

 「なんでそうなるんですかっ!」

 

 止まらない連撃(マシンガントーク)にたじろぐレフィーヤも聞き捨てならない一声(ワンワード)に反撃。

 

 「だ、だって、最近レフィーヤと一緒にいた男の人ってベートさんくらいしか······。あ、あとは学区の生徒くらい······っ!? もしかして」

 「それも違います!!」

 

 もはや阿鼻叫喚とも言うべき本拠(ホーム)の一室。

 

 「レフィーヤダメだよ! いくら卒業生って言っても学生に手を出しちゃ!」

 「だ・か・ら! 違うって言ってるじゃ······あれ? でも······」

 「やっぱりそうなんだぁ〜〜! レフィーヤが生徒に手をモガァッ!! 」

 「ちょっと黙ってください! ていうかなんでエルフィがそんなに興奮しているんですかっ!」

 

 エルフィの大音声が部屋の外にも聞こえることを危惧して余計なことを口にする前に口を塞ぐ。

 ベルが一応学区にも籍だけは置いてある状態を知ってしまったことで咄嗟に生徒ではないと断言できなかった。

 

 「とにかく、下手に言いふらさないでくださいね」

 「······ぷはっ、はぁ······はぁ······、言いふらすも何も私何も聞けてないんだけど······」

 

 余裕がなくかなり本気で口を抑えていたので手を離されたエルフィは大きく息を吸って呼吸を整える。

 

 「今の反応見て言えるわけないじゃないですか······」

 「うぇ〜ん、ごめんねレフィーヤぁ······、あまりにも予想外というか、衝撃的だったから取り乱しちゃって」

 「それにまだ何かがあったわけでもありません。ただ私が勝手に好意を持っているだけなんです。だから、エルフィが喜ぶような面白い話はできませんよ」

 「べ、別に面白がりたいわけじゃないよ······。役に立ちたいって思ってたのは本当だし······」

 

 エルフィ自身もさっきまでの言動を反省しているのか、これ以上強引に聞き出そうとはしてこない。

 レフィーヤも思ったより過剰な反応をされたことにより相談する機会を逸してしまったため、この話題はこれで終わりにすることを決めた。

 

 結局レフィーヤ(ポンコツ)が血迷ったが故に起きた不幸な事故としてこの場は終わりを迎えた。




書いてたのが途中で消えちゃったので更新止まるかもです
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