エルフィと起こったなんだかんだの後、そのまま部屋にいるのは流石に気まずいと思ったレフィーヤはとりあえず
太陽が傾き始める頃、活気づく通りは『世界の中心』たるオラリオとしての威厳を見せつける。
学区が帰ってきたばかりの頃に比べたら落ち着いてきてはいるが、未だに賑わいは衰えずあらゆる職業、あらゆる種族がこれほど行き交う場所は他にないだろう。
その雑踏の中でも決して多くはないが、見かけなくはないのが男女の二人組。すなわちカップルである。
ここが露店の多い通りであることも相まっておそらく観光に来たであろう
視界に必ず入り込む男女の逢瀬。これまでは特に気にしたこともなかった光景にレフィーヤは浅からぬ羨望を抱いていた。
腕を組んで歩くカップルや、露店で買った食べ物を食べさせ合うカップル。それを見る度にレフィーヤはもし同じことをベルとできたら······と思い馳せてしまう。
(あれ? 似たようなことしたような······)
まだベルへの気持ちを自覚する前にやらかしたレフィーヤの
(あ〜〜〜っ! なんで私はあんなことを! むしろ今したいくらいなのに!)
もはや過去の自分すら羨んでしまうレフィーヤは内へ内へと意識を向けていたせいか、露店を眺めていたであろう少女にぶつかってしまう。
「あっ、すみません···········あなたは······」
「およ?」
顔を上げた先に見えたのは褐色の肌、そしてその肌を惜しげも無く晒す服装。その姿はアマゾネスの特徴そのもの。そしてその顔は確かに見覚えのあるものだった。
「あなたは、たしかレナ······さん?」
「あー、『
そこにいたのは以前ベートの
「こんなとこで何してるのー?」
「私は特に······あなたは?」
「えっ、えへへぇ、私はねぇーベート・ローガとのデートのために下見してるんだよ! いつ脅······弱味······気が向いてくれるかわからないからね!」
ベートさん、大変だな······。
思わず憐憫の情を抱かざるを得ない。元々大した交流もない相手なのでそのままゆっくり過ぎ去ろうとする。
「では私はこれで」
「あっ、待って待って! ちょっと聞きたいんだけどさ!」
「なんですか?」
「『
「はぁ?」
思わず素っ頓狂な声をあげる。たしか前にも私がベートさんとデートをしているなどと叫んでいたのを覚えている。
「いや、そんなことありえないです」
「ほんとー!? よかったぁ〜······けど、それはそれでモヤモヤする〜! ベート・ローガより良い雄なんて存在しないもんっ!」
否定しても肯定しても納得しない
ただ、『ベート・ローガより良い雄なんて存在しない』というセリフは聞き捨てならない。
(ベートさんよりも良い雄がいない? 別に悪く言うつもりはないですけど、ベルの方が優しいし、かっこいいだけじゃなくて可愛い一面もあるんですよ。嘘が下手で純粋で、それなのに気遣いもできるんですから!)
流石に直接言いはしないが、代わりに心の中でひたすらベルの良いところをあげつらう。
ここでレフィーヤはあることに気づいた。
(もしかして私に必要なのはこういう人なのでは?)
エルフィが相談相手として適さなかったのは好きな人がいないからでは? むしろ好きな人がいて猛烈アピールをしているレナは恋愛相談としては適任ではないか?
ファミリア内で気軽に話せることでもない内容。もしかしたらこの人の話が参考になるかもしれない。と考えたレフィーヤは早速話を持ちかけることにした。
「あの、私もレナさんに聞きたいことがあるんですど······」
「んっ? なになにー?」
「ここじゃ話しにくいので近くのカフェにでも行きましょう」
流石に往来で話すことでもないので近くの店に入ることを提案する。快く受けてくれた少女と共に目に入ったカフェに入り、人の少ない奥の席に座る。
「それで、何を聞きたいの?」
「それは······レナさんは、好きな人にどうやってアピールしているんですか?」
単刀直入に聞く。今自分が悩んでいること、手探りで試す訳にもいかずに二の足を踏んでしまうであろう事柄を先人に頼ることに決めた。
「えっ、好きな人いるの!? ベっ、ベート・ローガじゃないよねっ?」
「違います、そこだけは絶対に違います」
「お、おう······ごめんね?」
否定するレフィーヤの気迫に初めてレナの勢いが弱まる。
「でも好きな人はいるんだー、だれだれ?
「······すみません、そこは詳しくは言えないんです」
言えるはずがない。他派閥の構成員に想いを寄せるというのはどこでも歓迎されないことだと言うのは理解している。相談を持ちかけておいて不誠実であるとは思うがベルに迷惑をかけることになってしまうし軽々に話せることではない。
「そっかー、まぁいいけどね。それで、好きな人のアピールだっけ?」
「はい、男の人って何をすれば喜んでくれるんでしょうか······。私はこれまでこういった経験はなくてどうすればいいか分からないんです」
「へー、てことはレフィーヤちゃん処女なんだ?」
「しょっ、んんっ、なっ、何を言っているんですか!?」
「だって経験ないってことはそういうことでしょ? 私みたいに娼婦やってたわけでも無いだろうし」
いきなり何を言うのか。思いもよらぬ発言に露骨に動揺してしまう。
「しょ······、まぁ、確かに経験は無いですけど······」
「それならねー、男の人は女の子の初めての相手になれるの喜ぶよ!」
「そっ、そんなこと出来るわけないでしょうっ!」
本日二度目の絶叫。
自分より圧倒的に経験豊富な相手は平然と口にするが、レフィーヤにしてみれば考えもしなかった概念だ。
もしベルとそんな関係になったら······と考えると鼓動はかってないほど脈打ち、沸騰しそうなほど顔も熱くなる。
「······今
「っっ!······ぁぅ············」
レフィーヤの表情から思考を読み取ったのか、はたまたわかり易すぎたのか図星を当てられたレフィーヤは声も出せず両手で顔を覆うことで隠蔽を図るがもう遅い。
「いやー可愛いなー、今どきこんな子もいるんだねぇ、アオハルだなぁ」
大して歳も違わないであろう少女は微笑ましくレフィーヤを眺める。その視線はやがて子供を見守る姉のような優しい瞳から少し悪戯心が芽生えたような鋭いものへ変わっていった。
「よし、ちょっちこっちおいで!」
「うぅ······なんですか······」
チョイチョイと手招きされたレフィーヤがレナの隣へ座ると、レナは更に椅子を近付けそのまま耳元へ囁くように、
「これからお姉さんが男の子を悦ばせるいろんなこと······教えてあ・げ・る」
この日、