前を歩くベルに続いて少し後ろを歩くレフィーヤ。
現在、レフィーヤのみ
『
そのまま扉の前まで進み、ベルが静かに扉を開く。鈍い音と共に開かれた扉を押さえ透明なレフィーヤを先に促すように視線を向けてきた。
それに従い先に扉をくぐる。その後からベルも続き扉を閉める。
「ぷはっ」
頭まで被っていたヴェールを脱ぎ、その窮屈さから解放された反動で深呼吸をする。
「ベル、ありがとうございます。色々手を回してくれて」
「あはは、僕の都合に付き合ってもらうわけだし、これくらいはしないと······といっても僕はアイテムを貸してもらっただけなんですけどね」
軽口を叩来ながらベルの先導で廊下を進んでいく。やがて一つの扉の前で立ち止まり、ベルが振り返る。
その顔は僅かに緊張の色が見て取れた。
「ここで、みんな待ってくれてます」
「······はい」
レフィーヤが一度大きく息を吸って吐く。それを待ってからベルがゆっくり扉を開いていく。
そのまま中へ入るとそこは談話室だろうか、
(リリルカ・アーデ、『
勢揃いのヘスティア・ファミリア。彼らの表情は驚きの一色だった。ベルはどういった説明で集めたのだろうか?
そちらも気になるが、何よりも部屋の隅に立つもう一人のエルフに目がいってしまう。
(『
そのエルフは壁に背をつけ、腕を組んだ姿勢で目を瞑っていた。
ベルが呼んだのかと思ったが、どうやらベルも知らなかったようだ。
「
「愚兎、お前の真意は既に認めてやった。だがそれは私が直々にこの眼で見定めない道理にはならん。何より、私にはこれを見届ける責任がある。それだけだ。分かったらその不快な阿呆面を晒すのを止め、成すべきことを成せ」
真意を認めた? 責任? なぜヘディンさんがベルをそこまで······。
ベルがヘディンさんに鍛えてもらっていた話は聞いた。しかしそれとこの問題とは結びつかない。
「心配するな。悪戯に場を乱すつもりは無い。私のことはいないものと思え」
(そんなことを言っても······)
団長から
あとずっと思ってたけど『
「それじゃあ、本題に入ろうか。ベル君」
ヘディンの件が済んだところでヘスティアが本題を持ち出す。その姿勢は厳格で、過去にロキと言い争いをしていた時とは
「僕たちはベル君から大事な話があるとしか聞かされていなくてね。ロキの眷属のエルフ君。なぜ君が一緒に来たのかも含めて、聞かせてもらおうか」
ヘスティアの向かいに立つレフィーヤは畏れか、息を呑む。そしてそれは隣にいるベルもであった。
一拍置いてベルが話し始める。
「はい、大事な話というのは、ここにいるレフィーヤさんとのことです」
レフィーヤがここにいる時点で察しはついていたようでその言葉に対する動揺はない。ただ、数人眉をひそめて視線が鋭くなったように思える。
「僕は······レフィーヤさんに告白されて······僕もそれに応えたいって思ったんです。だから、その、僕はレフィーヤさんと付き合うことにしました!」
ベルの
「ベル様······何を言っておられるのかわかっているのですか」
「わかってる。それでも、僕はこの人と一緒にいたいって思ったんだ」
それでもベルの意志は揺らがない。ファミリアから白い目で見られたとしても、それでもレフィーヤと共にいることを選んだのはベル自身だ。
「ベル様がそう望まれるのでしたらリリは何も言えません。ただ、レフィーヤ様」
「は、はいっ」
ベルの言葉を認めて瞑目するリリルカ。しかしその目を開くと、Lv2とは思えない眼光でレフィーヤに向ける。
「あなたの気持ちを聞かせてください。レフィーヤ様はベル様をどう思っておられるのですか」
「私は······」
リリルカの目はレフィーヤを見極めようとするかのようにじっと見つめている。その瞳は細かく揺れ動き、唇を噛むその口は何かに必死に耐えているようにも見えた。
真剣に見定めているのだろう。レフィーヤがベルの隣にいるべきか否かを。
「私はベルのことが好きです。こんな気持ち······初めてなんです。誰かと過ごす時間がこんなにも愛おしいものになるなんて、誰かの支えになれることがこんなにも幸せな事だなんて。私はベルと共に生きていきたい。それが答えです」
ならば本心で返すしかない。そもそも中途半端な覚悟など持ち合わせていなかったレフィーヤは堂々と想いを口にした。
「ロキ・ファミリアからヘスティア・ファミリアに移籍することを条件にしても答えは変わりませんか」
「リリ!?」
それに対するリリルカはベルの抗議にも耳を貸さず冷徹に淡々と残酷な宣告を告げる。
それに対してレフィーヤは
「それはできません。これまでお世話になったファミリアを個人的な理由で辞めるなど、そんな恥知らずにはなれません。それに、ベルもそんなことは望まないでしょう」
リリルカは目先に囚われてファミリアを移籍するなどと言えば即座にこの場を終わらせるつもりだった。ファミリアへの義も持たず、理知すら捨てたエルフなど信用できない。としてさっさと追い出すつもりだったが、レフィーヤは目の前の事象に固執せず、その先まで見通していることをリリルカは理解してしまった。
見込みが外れたリリルカは深いため息と共に一歩下がる。無言ではあるが、納得はしたようだった。
どうやらリリルカは団員の意見を代弁する役目だったのか、少女が引き下がったことで他の団員達も口を挟むつもりは無いようだ。
「俺はベルが決めたんなら応援してやりたいと思ってる」
「自分もベル殿の意思を尊重します」
「
「······私も、ベルが決めたことなら何も言うつもりはありません」
満場一致──とはいかない。口では受け入れたように言っていてもその表情からは複雑な感情が見て取れる。それはレフィーヤに向けられたものというよりは、ベルに向けた想いによるものだろう。
ここでもベルは全員から愛されているのだというのがよくわかる。
レフィーヤ自身としてはもっと大きく反対を受けると思っていたため、全員が潔く認めたことに違和感、とまではいかずとも不可解に思うところはあった。
「ボクは······正直言ってロキのとこの
「神様······」
やはりヘスティアも明確に反対はせず受け入れる方針のようだった。
結局、その後も怖いほどにすんなりと受け入れられ、それ以上の話も無くこの場はお開きとなった。