白兎千恋   作:鶏むね三太郎

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今回はベル側のお話です


番外編

 「すっかり暗くなっちゃったなぁ」

 

 レフィーヤさんと別れた僕は、そのまま本拠(ホーム)に戻る。いつものように門をくぐり扉へ進む。いつもと同じ──だが、今日は少し違った。

 ロキ・ファミリア所属のエルフの少女。今まで何かと怒らせてしまったり、会話も落ち着いてしてこなかった彼女との一日。

 嫌われていると思っていた彼女が、僕のことを知ろうとしてくれたことが嬉しかった。『ライバル』だと言ってくれた。

 

 「あんな凄い人が僕をライバルだなんて······」

 

 思い返すだけで嬉しくなってしまう。思えば僕にはライバルと呼べる相手がいなかった。アイズさんも、リューさんも師匠(マスター)も、僕に戦いを教えてくれる師のようなもので、ライバルとは間違っても言えない存在だった。

 そう考えるとレフィーヤさんは出会った時から僕に真っ直ぐ気持ちをぶつけてくれて、対等に接してくれていたように思う。

 

 「ただいまー」

 

 そんな良い気持ちで扉を開けると待っていたのは──

 

 「おかえりなさいベル様。随分と遅いおかえりですねぇ?」

 「リ、リリ······」

 

 笑顔なのに謎に凄みのあるリリが腕を組んで仁王立ちしていた。

 そのまま居間まで連れていかれ強制的に正座をさせられる。いつの間にかリリだけでなくヴェルフ、命さん、春姫さん、リューさん、神様のファミリア全員が僕の周りを半円状に囲んでいた。

 

 「あ、あの······これは一体······」

 「ベル様を詰めるの会です」

 「なにそれっ!?」

 

 これから行われる『何か』による恐怖で先程までの気分はすっかり落ち込んでいる。というか冷や汗が止まらない。一体これから何が行われるんだろう······。

 

 「さてベル様? まずはこんな遅くまで何をしていたのかお聞きしても?」

 「えっと、今日は一日オラリオを歩き回ってて······日も暮れてきたしお腹すいたので外でご飯を食べてました」

 

 嘘は言っていない。神様もいるし嘘を言ってもバレるだろう。ベルは頭をフル回転させてこの場から生き延びる道を探る。

 

 「ほうほう、オラリオをお散歩ですか〜······それは、おひとりで?」

 

 終わった。我らが参謀役(ブレーン)は小さな歪みも見逃さない。普段助けられている切れ者の少女に今は自分が追い詰められている。

 

 「そ、それは······」

 「それにその服······、随分と趣味が変わられましたねぇ?」

 

 ギクギクッ、と音が聞こえそうなほど露骨に反応をしてしまった自分を殴りたい。僕、いつになったらポーカーフェイスとかできるようになるんだろう······。と遠い目をして現実から逃避する。

 

 「どこからどう見てもベル様のセンスではありませんよね」

 「ベル殿······というより男性の趣味とは思えませんね」

 

 着実に逃げ道を無くされていくような感覚。命さんの追い討ちが何気に痛い。

 

 「そっ、それはほら、適当に選んだからっ」

 

 「嘘ですね」

 「嘘だな」

 「ベル殿、嘘はいけません」

 「ベル様······」

 「ベル、あなたは嘘が下手だ」

 「(ボク)じゃなくても嘘ってわかるよベルくん······」

 

 神様にまで呆れた顔をされた。なんでわかるんだろう。

 

 「このコーデといい色合いといい、選んだのは間違いなく女性ですね」

 「そ、そんなことまでわかるのでございますか?」

 「はい、この落ち着いた色合いに緩みすぎないセットアップ······選んだのはエルフですっ!」

 「もう探偵とかやったらいいんじゃないかリリスケ······」

 

 怖いっ、なんで服だけでそんなにわかるのっ!?

 

 血走った目で僕を見るリリに若干みんなも恐れを抱いている。そしてリリの横で神様も腕を組んでウンウン頷いているけど、神様もわかってたのだろうか。

 

 「ベル様、素直に吐いてくれるまで寝かせませんよ?」

 「なぁリリスケ、もうよくないか? ベルももう子供じゃないんだぞ」

 「ヴェルフ······」

 

 見かねた長兄(ヴェルフ)の援護に涙が出そうになる。だが、リリの勢いは収まることを知らない。

 

 「甘いですヴェルフ様っ! 立派な第一級冒険者でありながらこの可愛いさとかっこよさを両方兼ね備えたあどけない笑顔を向けられて発情した泥棒猫がいつ現れるか分かりません! 世の中にはリリ達の想像もつかないような変態(アポロン)がいるんです! 油断はできません!」

 「なんか一瞬恐ろしく不敬なセリフがあった気がするんだが······」

 「とにかく! 純粋なベル様をお守りするためにもリリ達は目を光らせなければなりません!」

 

 リリの怒涛の猛追にヴェルフの援護は虚しく散った。

 

 「ベル様······寂しさを感じているのでしたらわた、私がお相手いたしますから······っ」

 「「ちょっと待てぇぇえええい!!」」

 

 唐突な春姫さんの申し出に神様とリリが絶叫する。

 

 「なぁーにどさくさに紛れて誘ってるんですかこのムッツリ狐! ベル様の操はリリが「おいっ、処女神(ボク)の前で何を言ってるんだ君たち! ヘスティア・ファミリア(ウチ)でそんなこと許さないぞ!」

 「ヘスティア様はおひとりで貞潔を守ればいいじゃないですかっ!」

 「なっななな、何を言ってるんだ君はぁ!?」

 「へ、ヘスティア様っ、私はただベル様の支えになればと······」

 「君は君で悪意が無い分悪質なんだよこのポンコツムッツリ天然狐ぇ!」

 「こんっ!?」

 「ところでベル、私はまだ告白の返事をもらっていないのですが」

 「きええええええええええええええええええええ!!!」

 

 神様とリリと春姫さんの戦いにリューさんが爆弾を投下し、僕が悲鳴をあげる。いつかのようなド修羅場が完成する。

 

 その結果当初の問題は有耶無耶になった。

 

 




リューさんが推しなので告白の結果は書きたくないです
書けないです泣きます
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