【第1章完】ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ   作:阿弥陀乃トンマージ

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第11話(2)槍手のイチロー

「キョ、キョウ! てめえ、言ってくれるじゃねえか……!」

 

「……」

 

「無視すんな!」

 

「………」

 

 

 

 俺はジャックのことを一瞥する。今はこいつに関わっている場合ではない。存在をほぼ忘れかけていたというのもあるが……。ジャックが兵士たちに向かって声を上げる。

 

 

 

「くっ! お、おい! てめえら! 山王さまをちゃんとお守りしろ! わざわざ避けているんじゃねえよ!」

 

「……構わん」

 

「や、山王さま⁉」

 

「こやつを倒せば良いのだろう……?」

 

「山王さまのお手を煩わせるわけには……!」

 

「良い……大事な初戦だ。ここでわしの力を示そうではないか……」

 

「は、はあ……た、確かに、まずは味方の士気を上げておく方が賢明か……」

 

 

 

 ジャックがぶつぶつと呟く。山王がジャックに重ねて問う。

 

 

 

「……良いな?」

 

「は、はい! お願いいたします!」

 

「ふむ……」

 

「そうはさせん……」

 

「む……?」

 

 

 

 俺の前にアヤカたちが進み出る。

 

 

 

「この国の平穏を守るため、キョウ殿だけに戦わせるわけにはいかん……」

 

「なんだ、あの女たちは……?」

 

「……山王さま、ここは……」

 

「我らにお任せ願います……」

 

「どうか……」

 

「イチロー、ジロー、ゴロー……良かろう、貴様らに任せよう」

 

 

 

 山王に頭を下げ、イチローたちが前に進み出てくる。

 

                ♢

 

「へへっ、さっさと片付けてやるぜ……」

 

「『槍手のイチロー』さんだ!」

 

「あいつら串刺しだぜ!」

 

 

 

 兵士たちから声援が上がる。イチローが笑みを浮かべる。

 

 

 

「へへっ……」

 

「…………」

 

 

 

 アヤカが刀を鞘からスッと抜いて構える。イチローが目を細める。

 

 

 

「なんだ? まずはお前が相手か? 侍女……」

 

「ああ……」

 

「悪いが、マジで行くぜ? 山王さまもご覧になっていらっしゃるからな……遊んでいる暇はねえんだ……」

 

「それはこちらの台詞だ……」

 

「はっ、まさか勝つ気かよ?」

 

 

 

 イチローが苦笑交じりに尋ねる。アヤカが頷く。

 

 

 

「そんなことは当たり前だろう……」

 

「互いの実力差を分からないほどのもんじゃねえだろう?」

 

「しっかり分かっている……!」

 

 

 

 アヤカがイチローを睨み付ける。イチローが真面目な顔つきになる。

 

 

 

「そうかい……それなら……あっという間に終わらせてやるよ!」

 

「くっ!」

 

 

 

 イチローの鋭い突きをアヤカが防ぐ。イチローが声を上げる。

 

 

 

「一度防いだくらいで調子に乗るなよ!」

 

「!」

 

「そらっ! そらっ! そらっ!」

 

「くっ! ぬっ! むっ!」

 

 

 

 イチローの連撃をアヤカがなんとか防ぐ。

 

 

 

「どうした、どうした⁉ 凌いでばっかりじゃあ勝てねえぞ⁉」

 

「くっ……」

 

「さらに連撃の速度を上げるぜ!」

 

「なっ……」

 

「うらっ! おらっ! こらっ! そらっ! どらっ!」

 

「くっ! ちっ! ぬっ! はっ! むっ!」

 

 

 

 イチローのさらなる連撃をアヤカが防ぐ。

 

 

 

「へえ! これも凌ぐってか! それならば……」

 

「ふん……」

 

「? どこか余裕がありやがるな……はっ⁉」

 

「ええい!」

 

 

 

 ウララが横から飛びかかる。イチローが驚く。

 

 

 

「し、しまった⁉」

 

「もらったでござる!」

 

「……て、慌てるとでも思ったか⁉」

 

「なにっ⁉」

 

「おらあっ!」

 

「うおっ⁉」

 

 

 

 イチローが左腕の方の槍を振るう。刺されるのは避けたが、激しくしなった柄の部分で殴りつけられたウララは横方向に吹っ飛ばされる。

 

 

 

「左腕にも槍はあるんだぜ。てめえらの目は節穴か?」

 

「ちっ……」

 

「っていうかよお! 二人がかりかよ! 随分と卑怯じゃねえのか、侍女⁉」

 

 

 

 イチローが声を荒げる。アヤカが冷静に答える。

 

 

 

「勝つために最善を尽くしているまで……貴様に敬意を示している」

 

「はっ、物は言いようだな! まあいいさ、雑魚が何匹増えようが同じことだ!」

 

 

 

 イチローが両腕の槍を構えながら叫ぶ。体勢を立て直したウララが再び襲いかかる。

 

 

 

「『分身の術』でござる!」

 

 

 

 ウララが数体に分かれる。イチローが面食らう。

 

 

 

「なっ⁉ 増えるにも限度ってもんがあるだろうが⁉ ならば!」

 

「むっ⁉」

 

 

 

 イチローが突きを数度、素早く繰り出して、分身をすべて突く。本体も迎撃されてしまったウララは後退を余儀なくされる。イチローが笑みを浮かべながら呟く。

 

 

 

「へっ、数撃ちゃ当たるってやつだよ……」

 

「そ、それならば! 『身代わりの術』!」

 

 

 

 ウララが飛びかかる。イチローが呆れ気味に声を上げる。

 

 

 

「術名を言っちゃあ、意味が無えだろう⁉ おらあっ!」

 

「‼」

 

「と見せかけて、本命はこっちだろう!」

 

「ぐっ!」

 

 

 

 イチローの左腕の槍が丸太を貫き、右腕の槍がウララの脇腹を貫く。

 

 

 

「甘えんだよ!」

 

「そ、それがしはあくまでも身代わりでござる……!」

 

「なにっ⁉ はっ⁉」

 

「はあああっ!」

 

 

 

 アヤカの振るった剣ががら空きのイチローの体を斬る。

 

 

 

「じ、自分の体を身代わりかよ……イカレてやがる……」

 

 

 

 イチローが仰向けに倒れる。

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