「はじめましてユグドラシル君」
「はじめまして…」
特徴的なデザインの鼻掛け眼鏡の男、1級術師七海建人はそう言うと軽く会釈する。
少年はそれを見て慌てて自分もと頭を下げる…同い年の伏黒少年や論外の五条悟などとしか接していなかった為にわからなかった事だが、少年はこれでも人に敬語を使って敬える人間であった。
「……中々礼儀正しいのですね、
「一体何を言われたんですか?」
「……………プライベートな事ですので回答は控えさせてもらいます
一応、君の人間性について…とだけ」
人間性……と呟く少年に七海は思っていた疑問を口にした。
「ところで、何故そんな意外そうな顔を?
私は君とは初対面だった筈ですが」
「えっ?あ…あー……その…」
少年は顔に出ていたのかとバツの悪そうな表情で頬を掻く。
「笑わないのかと…俺…いや、自分の名前を口にしてなんの反応も示さなかった人物が周りに居なかったので」
「なんだ…そんな事ですか」
たどたどしい少年の敬語に七海はため息で返す。
「別に君の名前がユグドラシル悠仁だろうとポセイドン悠一だろうと…はっきり言ってどうでもいいです」
「ど、どうでも……」
「名は体を表す、と言いますが…私はそうは思いません
名前はあくまでも名前でしかありません…君を表すのは君の行動、そして君自身だけ…違いますか?」
真っ直ぐに少年を見る七海。
良くも悪くも、『人』というものを広く見てきた七海だからこその持論であり術師としては珍しいある種大人…と言える対応だった。
「行動と俺自身……」
口の中でそう繰り返す…少年はゆっくり笑みを浮かべると、七海に向かって胸を張る。
「なら…見てて下さい、七海1級術師!
今回の任務、ビシッと決めてみせますよ…なにせ全力投球が若者の美徳ですからね…!!」
「いえ、そこそこで済むならそこそこで」
そう言って気怠げに眼鏡を直す七海。
ズッコケかけた少年の行き場のないやる気だけが空回りしていた。
何処までいっても俺は大昔の死人
そこに変わりはねぇ…だから、本当の意味で悠仁の側に居る事なんざ出来やしねぇ
それはわかってる……わかってるが……
「やっぱりファイブヘッド・ジョーズはクソ映画の皮を被った良コメディなんだって!
テンプレ的なサメ映画って言うのかな…とにかく!前提知識が必要だけどクソ映画って一言で評価するのは絶対良くないよ!!」
「そうか……わかってくれるか順平!
シャークトパスやゴーストシャークにも言える事だが、やはりサメ映画はサメ映画なんだ…
パニックホラーやスラッシャームービーと混同されるが体系的に作られてきたそれらの映画とはやはり別物…!
サメ映画とは今現在進行形で新しく開拓されている言わばブルーオーシャンなんだ!!」
この会話が理解出来ねぇのは多分…なんか違う気がする……
こんな目がキラキラしてる悠仁なんか初めて見たんだが…
「そう!!それなんだよね!!やっぱり映画コーナーにはサメ映画コーナーを作るべきなんだよ!!!
それがわかってないDVDショップがどれだけ多いか…!!」
「逆にサメ映画コーナーがあるショップを見るとおっ…!ってなるよな?
俺の地元のショップで悪いんだが、実はB級映画コーナーまで作られててな…」
「マジで!?スゴ……やっぱ個人店だとそこら辺強いんだ…」
おかしい……確か俺達は事件の重要参考人の調査に来た筈……だよな?
それがなんだってこんな事に……
「もう我慢できん…!!順平!今からレンタルショップでミミズ人間を借りて来よう…!!
徹夜でクソ映画耐久だ!!!!」
「やるんだね悠仁…今ここで!!」
「ああ…勝負は今、ここで決める!!!」
おかしい……さっきまで改造人間がどうだの言って空気も張り詰めてた筈なんだが……
まぁ…たまには息抜きも必要……か?
やったぜ。投稿者:変態クソラノベ(9月16日07時14分22秒)
昨日の9月15日にいつもの師匠(488歳)と容疑者でクソ映画好きの学生のにいちゃん(17歳)と俺(15歳)の3人で県北にある川の土手の下で盛り上がったぜ。
今日は明日が休みなんでコンビニでコーラとポテチを買ってから滅多に人が来ない所なんで、
3人でクソ映画を観ながらお家映画スタイルになり持って来たポテチを3袋ずつ開けあった。
しばらくしたら、師匠のこめかみがひくひくして来るし、呪力が出口を求めて腹の中でぐるぐるしている。
師匠にホームランバーなめさせながら、兄ちゃんと映画の安っぽい脚本を舐めてたら、先に餌役のジョックがサメの口にドバーっと入って来た。
それと同時ににいちゃんも俺もコーラを噴き出したんや。もう顔中、草まみれや。
3人で借りたクソ映画をお互いの脳内にぬりあったり、クソまみれの脚本家を舐めあってああ~~たまらねえぜ。
しばらくクソ映画を
それからは、もうめちゃくちゃに師匠と兄ちゃんのクソ映画を罵倒しあい、クソ映画を押し付けあい、二回も脳汁を出した。もう一度やりたいぜ。
やはり大勢でクソまみれになると最高やで。こんな、変態クソラノベとクソあそびしないか。
ああ~~早くクソまみれになろうぜ。
仙台の県北であえる奴なら最高や。俺は173*90*15,師匠は182*80*488、や
クソまみれで地獄見たいやつ、至急、メールくれや。
制服姿のまま鑑賞して、クソだらけでやろうや。
都市の地下を巡る下水道、その一つにて七海はため息と共に呪具である大鉈を血振りする。
大鉈に巻きつけられた赤黒く染まった呪符と、足元に散らばる改造人間達の亡き骸が否が応にも激戦の後を物語っていた。
「出てくるならさっさとして下さい
・異形
・手遅れ
とはいえ…人を殺めるのは気分が悪い」
その声に反応したのか…ジャブジャブ、と下水の中を歩く人影がゆっくりと七海の前に姿を現わす。
『いやぁ、よかったよかった
こっちがちゃんと
全身に継ぎ接ぎのある青年のような外見…
しかし、その身に纏うのは下水の臭いですら誤魔化せぬ程の…死臭。
「言う通りにとは?誰かの命令に従っていると判断しても?」
『ん~?あーー……別に口止めとかはされてないし…
教えてあげるよ───俺に勝てたらね』
左右に引き裂けたような笑みを浮かべ、呪霊…特級呪霊【真人】は歩み寄る。
七海は、この任務を自身に振ってきた男…学生時代からの先輩である五条悟との一幕を想起していた。
「特級呪霊が徒党を組んで何かをしようとしている?
…………なぜそれを私に…?正直言って私では戦力不足です、誰か他の…それこそ特級術師に──っ!?」
あの人が頭を下げるところを、初めて見た
「呪霊を操る…ソレは、まさか……」
あんなにも感情を剥き出しに、今にも泣きそうに震えるところだって初めてだった
「………なぜ私に…?私よりも強く、聡い
意趣返し…そのつもりが無かったとは口が裂けても言えない
全て貴方がやれば良い
だが、五条悟は一人で…手が回らないからその補欠として私達が居る
何時からか、そんな風に考えていた
無敵超人、完全無欠の呪術師五条悟は何が起きても一人で全てを平定する
呪術界において、誰もが信じて疑わないこと
だが───私は知っていたはずだ
あの人が、そんな理想の超人ではない事ぐらい
回転寿司と聞いて、寿司が回るわけねーだろと居丈高に喚いた挙げ句大層気に入って暫く回転寿司三昧になった話
わらび餅はワラビーを乾燥させて作った粉で出来ていると話せば、顔を
ボウリングをすると聞いて、当日に重機を買い付けて同級生の二人を危うく笑い死にさせるところだった話
あの人は、最強になった
でも───あの人は、何も変わっちゃいない
中身は子供のままだし、脳のデリカシーを司る部分は死滅してるし、横暴で、粗野で、乱雑で、横着で……
ずっと変わり無く、私の先輩なんだ
変わったのは、私達の目だ
あの人を見る、私達が変わったんだ
「やってらんねー」
どの口が言う
「もう、あの人一人で良くないですか?」
ふざけるな
「なんでって…
私達がどんなに変わろうと、あの人は変わらなかった
あの人はずっと、私の先輩で
ずっと───
「ユグドラシル君にああ言った手前、少々心苦しいですが…
貴方は此処で、私がビシッと決めてみせます」
『何ソレ?なんかの暗号?』
五条さん、少し…ほんの少しですが
貴方の事を、尊敬しますよ
1級術師七海建人VS特級呪霊真人──