魔都精兵のペット 〜山城恋の弟くん〜   作:ハトル

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【発情】 山城恋の場合①

 

 

 場所は魔防隊本部──山城恋の部屋。

 

「……ただいま。帰ったわよ」

 

 今日の仕事を終え、自室へと帰って来た恋。彼女の声に返事を返す者は居ない。返ってくるのは気味の悪い程に静かな静寂のみ。

 正直、返事が返ってこないのは分かっていた。だが、彼女は返事が返ってくるのを期待……いや、懇願するかの様なか細い声で、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……まだ、起きていないのね。……本当に困った子」

 

 神村鳴海の襲撃から三日が経った。だが、東八千穂、若狭サハラ、そして山城蓮。襲撃を受けた者達。あの戦いの場に居た張本人達は誰一人として目覚めてはいない。

 東海桐花と五番組副組長・五木(いつき)カイコの能力で全力で治療しているが、三名の意識はいまだ戻らない。

 

 八千穂とサハラは六番組の寮で。蓮は一番安全な魔防隊本部の山城恋の部屋で眠っている。

 

「……蓮」

 

 彼の身体を包み込んでいる繭に、恋は右手をあてがい優しく撫でる。目を閉じ、額をくっつけ、まるで甘える様な声色で弟の名を呼ぶ。

 

(何やってるのかしら私……らしくないわね。しっかりしなさい山城恋)

 

 冷静になって自分でもらしくない事をしていると自覚したのか、そっと繭から離れようとする。

 ──……が、その前に、弟を包み込んでいる繭に一つキスを落とした。静寂な部屋に彼女のリップ音が良く響いた。

 

「飼い主の命令よ、早く起きなさい(さて、お風呂に入ってさっさと寝ましょ)」

 

 恋は紅のマントを脱ぎ捨て、部屋の風呂場へと向かって行く。

 彼女が扉を閉めた直後、繭に僅かな動きがあったことに気付けなかった。

 

 蛹から羽化する蝶のように。孵化する雛鳥の様に。自分を覆っていた繭を突き破り、一匹の狼が再びこの世に生まれ落ちる。

 

 愛する者のキスか。それとも飼い主の命令に反応したのか。それとも単純にこのタイミングで治療が完了したのか。

 何が目覚めのきっかけになったのかは分からないが、山城蓮は意識を取り戻した。

 

 その白魚のような色白な肌から怪我の跡や痣は一つも見当たらず、重体であった身体は完治していた。

 

 だが、様子がおかしい。

 身体は完全に治ったはずだが、呼吸は荒い。鼻息も荒く、口から洪水の様によだれが垂れ流しになっている。

 

「ふーッ♡ ふーッ♡」

 

 身体が熱い。身体が疼く。身体の内側から途方もない獣欲が溢れてくる。放置すれば頭がおかしくなってしまうほどの衝動に襲われる。

 

 本能的に雌を求めているのか、うつ伏せの体勢の黒狼は腰をビクビクと震わせる。

 

 そんな狼の嗅覚が、すぐそばに居る一人の雌の匂いを捉えた。それも、この世で最も愛している女が醸し出す芳醇な香り。

 

 その匂いを鼻で捕えた瞬間、黒狼は何も考えず、本能の赴くままに、身体を震わせながら風呂場へと向かって行った。

 

 そんな事は露知らず、一枚、また一枚と身を包む隊服と下着を脱いでいく恋。弟が目覚めている事、弟が腹を空かした(ケダモノ)の様になっている事に気付くことも無く、生まれたままの姿へと変わっていく。

 

 全ての衣類を脱ぎ終え、シャワーで身体を清め始める。まずは髪を洗おうとシャンプーに手を伸ばそうとした瞬間、風呂場のドアが荒々しく開かれる。

 恋は驚くより先に反射的に扉の方へと振り返り、それと同時に胸や秘部、身体を腕で隠すが、入ってきた人物が誰なのか理解した瞬間、目を見開いて警戒が緩んだ。

 

「蓮……貴方ッ!」

 

 風呂場に突撃してきたのは意識不明の重体であった弟。彼の姿を見た恋は込み上げてくるナニかに身を委ね、すぐさま抱き寄せようとする。

 だがそれより先に、蓮の方が彼女の胸に勢い良く飛び込んだ。

 

 山城恋の裸身。それはまるで彫刻の様な美しさと、蠱惑的な色気を秘めている。

 雪の様に透き通る色白の肌。それをより一層輝かせる艶のある黒髪。豊かな乳房と臀部。引き締まったくびれ。芸術的なまでに均整の取れた肢体。

 

 そんなグラマラスな姉の裸体(エサ)を見た瞬間、黒狼の中でナニかがブチッと切れた。

 

 本能の赴くままに、彼女の胸元目掛けて飛び込んだ。

 

「れ、蓮……?」

「ふーっ♡ ふーっ♡」

「……やっぱりね(予想はしていたけど、発情してるわね)」

 

 自身の胸に顔を埋め、鼻息を荒くする弟。身体をこれでもかと密着させ、強く抱きしめてくるその様子から恋は《“鳳雛の首輪(ペット)”》の代償である発情が起こっていることに気付く。

 恋はどこか苦しそうな表情で身体をこすりつけてくる弟の頭をよしよしと撫でる。

 

「(だけど、今までと様子が違うわね。もしかして、理性を失ってる?)……蓮、飼い主の命令よ。一旦離れなさい」

「ハァ…ハァ…♡」

「聞こえてないわね(やっぱり、様子がおかしい)」

 

 彼の様子に違和感を抱く。蓮が発情するのはこれが初めてではない。陰陽寮の実験などで、過去に4回ほど発情している。

 

 だが、今まで一度たりとも今回の様に理性を失うほど発情したことは無い。発情中でも会話は成立するし、飼い主である恋の言う事は絶対聞く。

 

 それが今や命令ですら届かなくなっている。

 一体どれだけ能力と身体を酷使したのか? そんな考えが頭をよぎった恋は弟を強く抱きしめ返し、キスを落とす。今度は繭にではなく、彼の口に直接。

 

「んっ……蓮、頑張ったわね」

 

 労いの言葉と笑みを浮かべた後、再び唇を押し付ける。

 風呂場には2人の身体に温水をかけるシャワーの音と、二人の唾液が入り混じり奏でる艶めかしい音、二つの水音が響く。

 

「んっ……は、ぁむ……んちゅ♡」

「ハァ…ハァ…♡ れろっ……ぁむ」

 

 押し付けられる唇と舌を受け入れるだけでなく、蓮も積極的に舌を絡ませにいく。理性がなくとも本能でやり方を自然と理解しているようだ。

 

 片方の手で頭を撫で、もう片方の手で尻尾の付け根をトントンっと叩く。

 彼女のキスに、彼女の愛撫に気持ちよさそうに喘ぐ蓮。それを見て恋は更に手の動きを速め、唇を押し当てる力を強める。

 

 勢い増した接吻と愛撫。姉の唇によって物理的に口を抑えられているのにも関わらず、ほんの僅かな隙間から弟の甘い声が漏れ出る。

 それは姉の方も同じで、熱の籠った両名の声が風呂場によく反響する。

 

 しばらくすると、チュパっと生々しい音を響かせて姉弟の唇が離れる。離れても、まるで繋がりを求めるかのように銀色の唾液の橋が両者を繋いでいる。

 

「はぁ……はぁ……蓮、満足したかしら?(かなり長い間キスしたからこれで発情も収まるでしょう)」 

 

 発情とは《“鳳雛の首輪(ペット)”》を酷使した時に現れる現象。過去4回、全て『キス』や『ハグ』『頭ナデナデ』などでその発情は収まった。

 (ペット)らしく、ワンちゃんらしく実に可愛らしい。だから今回もこれで十分。そう考えて油断してしまった。

 

 だが、今回は今までとは違う。それは山城恋も分かっていたはずだ。今までと違って、理性を失うほどの発情具合を見ても、『これで十分』と考えた恋は浅はかとしか言いようが無い。

 

「ハァ…ハァ…♡ ふーっ♡ ふーっ♡!!」

「ん?……蓮?」

 

 収まるどころか、キスによってさらに高まった獣欲と荒くなった鼻息。

 こんなものでは足りないと言わんばかりに、彼は無理矢理に、それも荒々しく彼女の口に唇を押し付ける。

 荒々しいキスに思わず身体がビクンッと跳ねてしまう恋。

 

「んんっ!?……まっ……れ、れん……んっ♡」

「れろっ……ふぅ……んちゅ♡ れろっれろ」

 

 唇を味わうように舐めた後、今度は舌を口内に無理矢理押し込んでいく。蓮は姉の口内を蹂躙するように舌を激しく動かし、自分の唾液を必死に送り続ける。

 恋は当然、抵抗しようとするものの何故か身体に力が入らず、蓮の事を引きはがせない。

 

 密着する両名の身体に挟まれた恋の乳房はむにゅりと押しつぶされ、その形を変える。

 

「んんっ! ちゅ……待ち……れ、れろっ(身体に力が入らない! というより何よこれ!?)」

 

 何度も静止を訴えかけようとするものの、キスによってそれを遮られる。

 キスだけに飽き足らず、蓮は彼女の背中に回していた両腕を解き、彼女の身体を上からなぞるように揉んでいく。

 

「んっ……♡ ちょ、ちょっと蓮! 貴方何処触って……あっ♡ や、やめっ♡」

 

 右手はうなじ、肩、背中、臀部の順に辿って行き。左手は鎖骨、胸、お腹、おへその順に蹂躙していく。

 

「や、やめなさ──むぐっ……んっ……ちゅ♡(この子ッ……キスで黙らせようとしてる!?)」

 

 身体をなぞられる度に、揉まれる度に、全身に稲妻のような快感が走る。

 キスによって口を閉ざされているから漏れずに済んでいるが、そうでなければ風呂場には嬌声が響き渡るだろう。

 

 

 

 

 いつだって主導権を握っているのは山城恋であった。

 いつだって、優位(マウント)を取るのは飼い主であった。

 

 キスする時も。愛でる時も。撫でる時も。いつだって山城蓮を支配し、好き放題するのは山城恋の特権であった。

 なんなら以前発情した時は、悪戯心でキスやハグを求めてくる蓮を放置して、限界まで我慢させるという事をしたこともある。

 

 それが今や……。

 

「いい加減ッ……ひゃん♡……れ、蓮! んんっ♡」

 

 よだれを垂らし、獣欲にまみれた黒狼(ペット)に身体を好き放題にむしゃぶりつかれている。

 いつの間にか体勢は変わっており、抱き合うような体勢から一変、恋は壁に手をついて背後から蓮に抱きしめられる体勢へと変わっていた。

 

 シャワーから出る温水が身体を伝って流れる感覚と、身体をまさぐる彼の手つきが生み出す快感だけが恋の脳内を占める。

 

 抱きしめるように背後から腹部へと回していた両手は、なぞるような手つきで上の方へと辿っていき、二つの果実を包み込むようにきゅうっと絞る。

 その瞬間、恋の嬌声がこの空間に大きく響き渡った。風呂場である為、その声はより大きく反響する。

 

 信じられない程、官能的で、淫らで、いやらしく、艶めかしい声が口から出た恋は、咄嗟に口を両手で塞ぐ。出た後なのでほとんど意味はないが、反射的にそうしてしまった。

 

(く……屈辱ッ! 私が……山城恋があんな声をッ!? それも蓮に出させられるなんて!)

 

 口を抑えながら後ろを一瞥し、いまだに背後から胸を揉んでくる弟を鋭い眼光で睨みつける。

 それを受けてなお、蓮は手を止めようとしない。両手に広がる弾力と、自分の意のままにその形を変えられる双丘に夢中になっている。

 それは狼の獣欲と手つきをさらに加速させる魔力があった。

 

(し……しつこい! この()、私の身体をおもちゃみたいに! いい加減にッ!)

 

 こうなったら能力でぶっ飛ばしてやろうかと思った矢先、再び蓮の口がこちらへと迫ってくる。またキスされるかと思ったが、今回の行き先は唇では無く、恋の耳であった。

 

「れ~ろっ……ジュプ……むぐむぐ」

「んんんんッ♡!!?」

 

 彼の舌は恋の耳まで侵食していく。

 ──ニュルニュル……じゅる……にゅぷぷ。

 生々しい唾液の音がシャワーの水音と共に鳴り響く。

 

 最初は入り口のくぼみをなぞるように舐めていき、満足したら舌を伸ばして穴に挿入していく。耳穴の中でせわしなくレロレロと不規則に動く舌は、彼女の鼓膜へと唾液の音を響かせて、全身に快感を走らせた。

 

「あっ……んんぅ……れ、ん、……ぉねがい♡ もう、やめッ♡」

 

 片方の手は口を抑え、もう片方の手は風呂場の壁につける。

 手で必死に抑えるものの、隙間から声が漏れ出てしまう。全身を駆け巡る快感に、砕けそうになる足腰を支える為に壁に手をつく。

 

「れん……お願イッ♡……良い子だから……あっ♡」

 

 押し寄せる快感の波に飲まれたのか、恋の瞳に少し涙が浮かび上がり、潤いを見せ始めた。

 いつの間にか『命令』では無く『哀願』へと変わっている事に山城恋は気付いていない。

 

 そんな表情を見せられても、飢えた獣が止まる筈も無く。むしろ肉欲は更に上がり、耳を蹂躙する舌の動きと身体を弄る手の動きは激しさを増していった。

 

 雌としての本能か。身体を舐められたら無意識に腰が浮かび上がってしまい、身体を揉まれたらこれまた無意識に声が漏れ出てしまう。

 

 少しづつ、だが確実に、山城恋の抵抗する力が徐々に弱まっていく。

 それが快楽によって身体が言う事を聞かないせいなのか。それとも、彼女自身がこの行為を求め始めたのか。それは誰にも分からない。

 

 されるがままにまた体勢を変えられ、再び向かい合って抱き合うような形へと変わる。

 これまた同じく蓮は姉の唇へ自分の唇を押し当て、貪るように味わっていく。舌を口内へと侵入させ彼女の舌と絡め合わせる。

 

 だが、気のせいだろうか。先程までとは違って恋の方からも舌を絡ませにいっているようにも感じた。舌を送り込む際にも、抵抗される事無くスムーズに口内へと侵入する事が出来た。

 

 理性を失っている蓮からすればどっちでもよく、今はとにかく彼女の身体の味を、舌の甘さをよく味わうためにひたすら舌を動かす。

 

「んむっ……れろ、ちゅ……♡」

「あっ♡……んぅ……れろ……じゅる♡」

 

 唇同士が離れても、姉弟の舌は離れない。

 互いにいやらしく口を開けながら、舌先同士を空中で絡め合う。蛇の様に艶めかしく動き、絡め合う両者の舌は、再び相手の口の中へと侵入していき、それと同時に唇も重なった。

 

(もう……どうでもいいわ♡ もっと♡……もっと♡)

 

 山城恋は──……堕ちた。

 すでに抵抗するという考えは彼女には無い。両腕を弟の首に回し、抱き寄せるように身体を密着させる。

 身体を完全に蓮に預け、抵抗することなく蓮の望む行為を受け入れる。

 

 恋の胸に覆いかぶさるように置かれていた蓮の左手は、なぞるように下へと移動。おへその周りを少し撫でた後、お尻を経由し太腿の裏へと持っていき、彼女の右脚を少し持ち上げる。

 

 その行為に身体をビクンと反応させるものの、恋は抵抗することなくソレを受け入れる。されるがままに身体を弄られて尚、何も言わない。むしろキスの勢いは増していき、奉仕するかのように彼の舌を吸い始める。

 最早、どちらがペットか分からない。

 

「ハァ…ハァ…♡ ??……蓮?」

 

 しばらくすると、蓮がキスを止めて彼女の首筋に顔を埋めた。彼女の背中へと両手を回し、力一杯抱きしめる。

 突然どうしたのかと様子を伺っていると、飼い犬(おとうと)は大きく口を開け、その牙であろうことか飼い主(あね)の首元へと()()()()()

 

「……んっ!?」

 

 その牙は、姉の色白な肌に強く刺さり、血を滲ませる。シャワーから流れ出る温水と共に、血は身体を伝って流れ落ちていくが、跡は決して流れていかない。

 山城恋の首元にくっきりと残った噛み跡。

 ()()()()()して満足したのか、蓮は魂が抜けたように膝をつき、そのまま風呂場の床に倒れ込んだ。

 

「ハァ…ハァ…れ、蓮? はぁ……も、もしかして、終わった?」

 

 発情した(ペット)は、飼い主の慰めが完了すると必ず眠りにつく。今までの発情も度合いに関わらず、慰め終えると蓮は電源が切れた様に意識を失っていた。

 

 一定のリズムで寝息を立てる蓮を見て、発情の終わりを理解した恋。彼女も足腰が限界だったのか、身体の火照りを思い出したかのようにその場に座り込む。

 

 

 


 

 

 

 山城恋はあの後、数分間その場から動かなかった。

 否、動けなかった。頭がおかしくなるくらい与えられた快感と快楽。それによって火照った身体を冷まし、脳みそを落ち着かせるのに少々時間を有した。 

 

 数分後、落ち着きを取り戻した恋はまず最初に自身の身体を洗い、その次に眠り込んでいる弟の身体も清めた。

 風呂から上がれば当然服を着て、蓮も同様に着替えさせる。

 

 とりあえず蓮の身体を布団まで運んだ後、恋は部屋をそっと出て行った。彼女の首には魔都包帯が巻かれており、さっき付けられた嚙み跡を誰かに見られないよう処置が施されている。

 部屋を出てやって来たのは組長会議でも使われる会議室。扉の鍵を閉め、誰も入って来れないようにした後……恋はみっともなく地面に転がりまわる。

 

「うぅぅぅーーーッ!!! あぁぁぁぁッ!!」

 

 もしここが魔防隊本部の中でなく外であったならば、山の一つや二つ吹っ飛ばしていただろう。それ程までに感情と心が乱れている。だが、彼女の最後の理性が仕事したのか、能力を発動せず、生来の肉体のみで感情を発散させようともがく。

 

(蓮のクセにッ……弟のクセにッ……飼い狼(ペット)のクセにッ……!)

 

 彼女の頭の中では幾度となく先程の行為が繰り返し流れていた。

 その度に、思い出すたびに顔に熱が籠り、耳まで真っ赤に染め上げていく。

 

(あの駄犬!! 絶っっ対に許さないわ!)

 

 怒りが沸々と湧いてくる。腸が煮えくり返る。この山城恋に対して、飼い主に対してあれだけの恥辱を与えた男に対して殺意に近い感情が湧いてくる。 

 

 女という生き物は勝手だ。確かに、あの行為を始めたのは蓮。誰が悪いのかというアンケートを取れば殆どの者が山城蓮と答えるだろう。だが、彼女も途中から彼に身体を預け、自分の方からも彼の事を求めていた。

 

──もう……どうでもいいわ♡ もっと♡……もっと♡

 

「ア”ぁぁあぁぁ!!」

 

 行為中、弟に堕ちた事。姉や飼い主としての矜持よりも、雌としての本能を優先した事を思い出したのか、恋は会議室の壁に向けて右ストレートを放つ。部屋全体が揺れて、壁に大きな亀裂が入った。

 

(どうかしてるわ!! この私が……山城恋があんな、あんな!)

 

 山城恋が、『地球の答え』が屈服しかけた快感。心も身体も、人格ごと支配されるような行為。

 思い出すだけで身体が熱くなってしまいそうになる。つい思い出してしまいそうになるのを、両手で顔を覆って必死に留めようとする恋。

 

(普段はワンコのクセにッ……!)

 

 普段は『受け』。好き放題されるだけの、愛でられるだけの『子犬』。だが、あの瞬間だけは違った。

 あの瞬間、あの少年は女を自分が気持ちよくなる為の道具としか見ていない『狼』だった。

 

 普段は絶対に見せないそのギャップ。

 そのギャップに打たれてのか。それとも彼の端麗で蠱惑的な表情を思い出したのか、心が脈打ち、再び顔にかぁぁっと熱が籠りそうになるが、頭をブンブン振ってそれを阻止する。

 

「~~~~ッ!! 蓮、起きたら覚えてなさいよ!!」

 

 






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次回『お仕置きと満たされない心』
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