ようやく体調と書くモチベーションが回復してきました。
これからは一週間に1話、出来れば2話投稿していけたらって考えてます。
「若狭さん、起きてください。もう出発しますよ?」
「………ん、ん~」
京香さんが六番組の寮にやってきた翌日。
僕はいつも通り若狭さんを起こしに彼女の部屋へとやってきていた。
最近、僕が彼女を起こすことが日課になっている。本当は自分で起きて欲しいのだが、放っておくといつまで経っても起きないから致し方なくだ。
「ほらっ、起きてください」
身体をゆすって声をかけてもなかなか起きないので、彼女の頬をペチペチと優しく叩いて起こす。
「ん~……やぁ~だ~」
「可愛くやぁ~だ~じゃないんですよ。いいから早く起きてください」
「……ん~、」
むぅ~、中々起きてくれないな。
仕方ないか……。
「若狭さん!お~き~て~」
今度はほっぺを優しくつねって横にむぎゅ~っと伸ばす。朝起きない人はコレをすると大抵起きる。
ちなみに以前、京香さんと一緒にお昼寝した時、好奇心に負けて同じ事をやったら怒られた経験があります。
京香さんのほっぺ……めっちゃ柔らかかったな。
「ん~……うゆ~……」
「……マジですか、これでも起きないとは。っていうか、若狭さんもほっぺ柔らかいな」
うわっ……すっげぇ~、めっちゃ柔らかい! 京香さんのはマシュマロみたいだったけど、若狭さんのはまるでお餅みたいだ。なんかずっと触ってられる。
……むにむに……もちもち……
「ふにふに………はっ!!」
…って、いかんいかん。何やってんだこのバカタレ!こんなことしてる場合じゃない。ってか最低か僕は!こんなのまるで変態みたいじゃないか!!
本来の目的を忘れ彼女のほっぺの感触に夢中になっていると、ようやく若狭さんが少し顔を歪めながら目を覚ました。
「うぅ~……いひゃいよ~」
「……痛くないですよね? 優しくつねってますし。それより、ほら、早く身体起こして下さい」
「う~~ん……。おはよ~」
「おはようございます。まずは顔洗ってきてください。今日は出雲組長が『組長会議』で居ないんですから、若狭さんもパトロールに出てもらいますよ?」
「は~い、頑張りま~す」
目をこすりながら、よろよろとした足取りで彼女は自室を出て行き洗面台へと向かって行った。
残された僕は彼女の部屋の有り様を見て思わずため息をつく。
「はぁ~。もう……脱いだ隊服はそのままだし、下着とか靴下とかちゃんと片付けて欲しいんだけど……」
そう言いながら僕は彼女の部屋に散乱する衣類を片付けていく。
あの人、見かけによらず結構きちんとした性格なんだけど、こういう所はちょっと抜けてるんだよな。
まぁ、疲れた時に服を洗濯に出さず、部屋に脱ぎ捨ててそのままにするってのは分からないでもないけど。
「まったく……、出雲組長を見習って欲しいよ」
数分程かけて彼女の部屋の整理を終わらせ部屋を後にする。
「もう……朝から疲れた。何で僕がこんな事……」
「大変そうじゃのう……犬っころ」
部屋を出ると、ツインテールが腕を組んで壁にもたれかかりながら話しかけてきた。そのポーズなんかムカつくな。
……ってか見てたんなら部屋の片付け手伝えやコラ。僕は六番組の管理人でも執事でもお世話係でもないんだぞ。
「あぁ、ツインテールか。あのさ……今日って三人でパトロールに行くんだよね?」
「あぁ、出雲組長が組長会議で寮を空けておるからの。致し方なかろう」
「…………」
普段、僕がパトロールに出る時は基本的に出雲組長と一緒だ。おそらく、僕が逃げないように監視しろって命令が日本政府から下されているのだろう。
しかし、先ほども言った通り出雲組長は今日、組長会議で魔防隊本部に行っていて今は居ない。
だから、若狭さんとツインテールの二人。計3人でパトロールに行くことになった。
別に、それについて何か文句があるわけではない。
そもそも僕は出雲組長から一人で寮を離れる事を許可されてない。六番組に来た初日にも───
『絶対に一人で寮の結界の外に出ちゃダメだよ?いい?絶対だからね?』
───と、言われてしまった。
別に、そんなに警戒しなくても逃げないっての。ってか、アンタらのボスは僕を一人で魔都に放り出してたけどね。
話がズレてしまったな。まぁそんな訳で、今日は僕達3人で魔都のパトロールに出ることになった。さっきも言ったが、それについて今更文句を言うつもりはない。
ただ……なんか嫌な予感がするんだよな。
最近、魔都の様子がおかしい。おかしいと言っても特別何かあった訳じゃない。
むしろその逆。
醜鬼の数が異様に少ない。別に悪い事じゃない、むしろ平和で良い事だ。だけど、僕にはそれが何か悪い事の予兆の様な気がしてならない。
なんて言うか……“嵐の前の静けさ”とでも言えばいいのか。
そんなことを考えていると、ツインテールがなんかムカつく笑みを浮かべながらこちらを見てくる。
「なんじゃ? 出雲組長と一緒でなければ不安なのか? 情けないのう」
「んなワケないでしょうが。……ただ、若狭さんはともかく、アンタと一緒にパトロールに行くのがめんどくさそうだな~って思っただけだ」
「それはこちらのセリフじゃ。精々、私様とサハラの足を引っ張る出ないぞ、負け犬」
「今なんて言った? 僕の耳には『どうぞ蹴り飛ばしてください』って聞こえたんだけど?」
「耳がおかしいのか? 私様は負け犬っと言ったのじゃがのう」
お互いに視線交えて睨み合い、バチバチと火花を散らす。
「はいはい♪2人共、ケンカしないの~」
「「───むぐ」
そんな僕達の間に顔を洗い終え隊服に着替えた若狭さんが割って入ってきた。
彼女はのほほんとした笑顔を浮かべながら僕とツインテールの頬を指先でつつき押し当ててくる。
地味に痛いから止めてください。
「やっちも蓮くんも仲良くしなきゃダメだよ~」
「フンッ……お断りじゃ」
「若狭さん……それは無理です。絶対に」
「う~~ん、何で2人共そんな仲悪いの?」
「「コイツが嫌いだからです(じゃ)」」
若狭さんの質問に僕とツインテールは互いに指を指し合い、声をハモらせて応えた。ハモってしまった事がなんかムカついたので、お互いに歯を食いしばりながら再び睨み合う。
って言うか、若狭さんは何を今さら。仲悪い理由なんてそれ以外考えられないでしょうに。
「え~っと……仲良いね~」
「「仲良くない(のじゃ)!!!」」
「仲良いと思うけどなぁ~」
若狭さんの言葉を否定し睨み合っていると、何を思ったか突然、ツインテールが若狭さんの右腕を掴んだ。
「もうよい!パトロールは私様とサハラでゆく。貴様はここで大人しゅうしておれ!」
………はぁ??
ツインテールの言葉を聞き、僕はイラッと来て額に青筋を立てる。そして、まるで対抗するかのように彼女が掴んでいる反対の腕、若狭さんの左腕を掴む。
──まるで、子供がオモチャを取り合ってケンカしている様な構図が完成した。
「それなら僕と若狭さんの二人で行くよ!ツインテールこそここに居ればいいじゃないか!」
「寝ぼけるでないわ。この三人の中で一番の弱者は貴様であろう? ならば貴様が残るのが合理的じゃ! 弱者は引っ込んでおれ」
「いやいや、パトロールなら機動力に優れた人の方がいいでしょ? なら能力的に僕と若狭さんの方が良いに決まってる。だってツインテール、めっちゃ足遅いじゃん?」
「貴様……今なんと言った?」
「めっちゃ足遅いって言ったんだよ。そっちこそ耳悪いんじゃないの? 耳鼻科行けば?」
お互いに相手を煽り、罵り合う醜い戦いが始まった。ギャーギャー騒ぐ両名の間に挟まれ、左右から両腕を引っ張られる若狭サハラはこの状況をどうすればいいのか必死に頭を回す。
(う~~ん、組長が居れば2人共喧嘩やめるんだけどなぁ~。組長は今ここに居ないし……どうしよう。あと……腕が凄く痛いよ~)
何も知らない者がこの光景を見れば、一人の女性を取り合っている様な光景に映るだろう。そんな茶番ともいえる醜い争いはそれから30分程続いたという。
結局あの後、若狭さんに『なんなら、やっちと蓮くんの2人で行ってきたら~?』と言われてしまい、お互いそれなら3人の方がまだマシだと考え、不本意ながら3人で行くことになった。
まぁ、僕も子供じゃないから仕事はきちんとやるつもりだ。ツインテールだってその辺はちゃんと弁えているだろうし。
「異常なし……ですね」
「そうだね~」
「……最近は醜鬼が少ないのう」
やっぱり、醜鬼の数が少ないな。寮を出て一時間、醜鬼が一匹も出てこないし遭遇もしない。
静寂、しかしそれがかえって不気味。異様な静けさと雰囲気に警戒を強める。
……何か変だ。何も起こらなければいいんだけど。
「……そう言えば犬っころ。海桐花様からお前に伝言を預かっておるぞ」
「海桐花さんが僕に伝言? 何て?」
「『強くなりたければ九番組へ来い。此方が手ほどきしてやろう』と言っておられた」
「ウン……結構ですって伝えといて」
懐かしいな、前にも聞いたわその言葉。
まぁ、僕が魔防隊に入ったら絶対なんか言ってくるとは予想してたから驚きはしないけど。
ってかまだあきらめてなかったんかい。
「蓮くんって元総組長さんと面識あったんだ~?」
「えぇ……まぁ……ハイ」
「気に入られておるようじゃのう。お前の話ばかりしておられたぞ」
「……いい迷惑だよ。ってか、ツインテールは僕の事を海桐花さんからある程度伝えられてたんだよね? あの人、僕の事どんな風に言ってた?」
「吸ってよし、愛でてよし、触り心地よしの一級品のペットと仰っておられた」
あの人……次会った時マジで覚えてろよ?
絶っっ対に蹴りぶちこんだるからな。どうせ僕が蹴って怪我してもすぐに
それに、元々あの人の頭は怪我してんだから本気でやって大丈夫でしょ。
「それと……いや、何でもないのじゃ」
「?? それと何? まだ何か言ってたの?」
「気にするでない。ただのひとり言じゃ」
「……あっそ」
ツインテールの意味深な言葉が気になるものの、あまり詮索をせず僕は周囲への警戒に意識を集中させる。魔都で油断は禁物。しっかりしないと命取りになる。
蓮が意識を周囲に向ける一方、八千穂は隣を歩く少年を見つめ、先程言いかけた言葉について考えていた。
(海桐花様は……『近い未来、山城蓮は
元・総組長であり、『東家』の現当主である東海桐花。そんな人間がこの少年が自分を超えると言った。たとえ尊敬している人間の言葉であっても、そうそう信じられるものではない言葉だ。
八千穂も蓮の事は多少なりとも認めている。一週間前の模擬戦で、戦闘において素人である蓮が自分と渡り合ったのだ。認めなければ愚かと言うもの。
──才能はある。
──能力も未知数な部分はあるが秘めた力は凄まじいだろう。
──学習意欲も高く、鍛錬を疎かにしない性格。
間違いなく、魔防隊という組織の中でも頭角を現す存在となるだろう。
───それでも、八千穂はこの少年が『
そんな事を考えながら、八千穂は懐疑的な視線を蓮に向ける。
尊敬する人に認められ、自分を超えるとまで言われ期待されている少年に対して───
───『嫉妬』『羨望』『艶羨』、そう言った類の気持ちを込め嫉視する。
(なんか……見られてる)
「………………」
(若狭さん、なんでさっきからツインテールは僕にメンチ切ってくるんですか?)
(ワカンナイ。う~ん、放っておけばいいんじゃないかな?)
(……デスネ。ソウシマス)
さっきから何? ず~っと変な目で見られてんだけど。僕なんかしたか?
ツッコむべきなのだろうか? いや、めんどくさいし若狭さんの言う通り放っておこ。この人のわけわからん行動なんて今に始まった事じゃないし。
「…………ん??」
魔都のパトロールを再開しようと歩きだそうとした時、感覚器官が人一倍鋭い僕がいち早くそれに気づいた。
前方から一匹の醜鬼が全速力で走ってくるのだ。
「あれは……醜鬼、かな?」
「……おそらくのう」
二人もそれに気づいたのか警戒態勢に入る。
若狭さんの言う通りあれはおそらく醜鬼だ。まだ200メートル以上先にいるのでぼんやりとしか見えないが、人間ではない異形のシルエットをしている。
しかし───何か変じゃないか?
「二人とも、構えて。何か様子がおかしい」
「「……??」」
まるで……自分達を狙ってるかのように走ってくる謎の醜鬼を見て、僕は警戒レベルを最大限まで引き上げる。
若狭さんとツインテールも少し違和感を感じ取ったのか、2人共何事にも瞬時に対応できるように警戒する。
──なぜ、あの醜鬼はこちらに向かって走ってくるんだ?
いや、醜鬼が人を襲うのは当然だ。そうじゃなく、
もし音や目視で気づいたのなら、
何かあると考えるのが自然だな。
少し嫌な予感を肌で感じながら、3人は向かってくる醜鬼が自分達の元までたどり着くのを待つ。
そして──醜鬼との距離が50メートル程まで縮まると、3人は醜鬼の風貌を捉えることが出来た。
それと同時に、3人は醜鬼の姿に驚愕の表情を浮かべる。
「えっ……ナニアレ? キモっ」
「腕が……六本あるね」
「気色悪いのう」
二本足で進む人型で4メートルはある巨躯。腕が6本あり、顔が3つ。それぞれの顔には鬼人の様なツノが二本ずつ生えている。
全ての手には、岩が形を成した
──『岩の
明らかに通常の醜鬼ではない。普通の醜鬼も異形の化物ではあるが、コイツはさらに異形の姿をしている。
迫りくる醜鬼を見据えて、蓮達3名は各々がそれぞれの能力を展開する。
「とりあえず、交戦します!能力解放──《
「《
「…………チッ!」
蓮とサハラは瞬時に醜鬼に対して突撃し距離を詰める。八千穂は後方支援の為に銃を構えながらいつでも能力を発動できるように待機する。
瞬く間に距離を無くし、攻撃しようとする蓮達に対し───異形の醜鬼は凄まじい速度で岩の
それを両者、横に飛ぶことで瞬時に回避し、醜鬼の攻撃は外れ地面へと落下する。振り落とされた衝撃で広い範囲に亀裂が入り、地面を大きく揺るがす。
(((速い……ッ!!)))
3名は奴の反射速度に驚く。が、それだけで気圧される彼らではない。
「蓮くん!」
「分かってます!!」
2人は両側から挟み込み、再び奴に向けて加速する。今度は先ほどよりも速く、鋭く、奴に反撃の隙を与えないようにさらに素早く迫る。
「「はぁぁぁ!!」」
左右同時から放たれる両者の蹴り。醜鬼はそれを腕で受け止めようとするが、勢いを殺しきれず腕が吹き飛ぶ。
しかし、その手ごたえに両名は再び驚愕する。
───硬いッ!! あの
両名とも、今の蹴りで仕留める気満々だったのだが、結果は腕を二本吹き飛ばしただけ。
しかも、再生が速い。飛ばした二本の腕はもう再生し始めている。その再生能力の高さを目の当たりにした蓮は、ある一つの結論に辿り着く。
コイツ……まさか“一本角”と同じ『強化種』か!!
京香さんに昔聞いたことがある。
京香さんの故郷を滅ぼしたとされる“一本角”。それは醜鬼の中でも特別に強力な個体だったと。
稀に、普通の醜鬼とは比べものにならない程の強さを持った醜鬼が生まれる時がある。
僕はそいつらの事を……『強化種』と呼んでいる。
まさか……こんな所で遭遇するとは。
「厄介だな……コイツ」
「蓮くん、一旦離れよ~」
若狭さんの指示を聞き、一度ツインテールの所まで後退する。
「サハラ、犬っころ、無事か?」
「大丈夫だよ~」
「
「いや、私様も初めて見るタイプじゃ」
「……私も~、資料にも載ってないしね」
魔防隊としての経験が長い2人でも見たことが無い醜鬼か。やはり、何か特別な個体と見て間違いなさそうだな。
そんな事を考えていると、醜鬼は腕の再生を終わらせ、醜い咆哮を巻き散らかし僕達へと迫ってくる。
固まっていては動きにくく、的になりやすいので僕達は散開する。確かに強いけど、それは普通の醜鬼と比べるとだ。魔防隊員が三人がかりで勝てない相手ではない。
異形の醜鬼は素早い僕と若狭さんを捕えるのが困難だと判断したのか、ツインテールの方へと向かっていく。
醜鬼は武器が届く範囲まで近づくと、手に持つ武器を振り下ろした。それに対し、ツインテールは余裕の笑みを浮かべ、あの構えとる。
「遅いわ! 《
───5秒止まる
振り下ろされた
五秒経ち、世界は再び動き出す。数発の銃弾を喰らった醜鬼はよろよろとよろめいた後、膝をつき倒れる。
「サハラ!!」
「任せて~!」
その隙を逃さず、サハラは醜鬼の両足をガシッと掴みジャイアントスイングでグルグルと振り回す。その勢いのままハンマー投げの如く空へと放り投げた。
「蓮くん!!」
「……はいよ」
花火の様に空へと打ちあがった醜鬼。ソイツを追いかけ蓮は地面を蹴り空中へと飛ぶ。打ちあがる醜鬼に追いついた蓮は身体を前回転させ、かかと落としで醜鬼を地面に向けて蹴り落とす。
流星の如く凄まじい勢いで醜鬼は地面に激突し、衝撃で土煙が舞い上がる。土煙が晴れると、醜鬼の身体はぐちゃぐちゃになっており、薄気味悪い色の血の華を咲かせていた。
「討伐完了……ですね」
「……うん♪」
「それにしても、奇妙な醜鬼じゃったのう」
青い炎に変わり朽ち果てる醜鬼を囲みながら、3人は勝利の余韻に浸る。
「蓮くん、いぇ~い♪」
「い……イェーイ……」
「ほらっ、やっちも。いぇ~い♪」
「……はぁ~、仕方ないのう」
サハラからのハイタッチを蓮は若干やりずらそうな表情を浮かべながら、八千穂はため息をつきながら応える。手と手が合わさり、乾いた音がその空間に響く。
「ほらっ、蓮くんとやっちもハイタッチを───」
「「──絶対に嫌です(じゃ)!!」」
「……あらら~」
2人共、サハラがそう言うと分かっていたのか、両者共タイムラグ無しで『NO』という意思を口にする。
「2人共、同じシスコンさんなんだから意外と良いコンビになると思うんだけどなぁ~」
「「コイツと一緒にしないでください(するでない)!!」」
「さっきから……2人共わざと被らせてる??」
今日何度目か分からないが、またもやハモリを見せる2人に対して、サハラは『しょうがないなぁ~』とでも言いたげな表情を浮かべる。
「いいですか若狭さん。僕は確かにシスコンですけど、ツインテールと一緒にしないでください。この人はダメなタイプのシスコンです。でも僕は大丈夫なシスコンなんです!」
「大丈夫なシスコンって……何??」
「少なくとも、僕は部屋の壁にびっしりと姉の写真を飾ったりはしていません。この人と違って僕はそこまでイカれてないんです」
一つ言っておくが、
ツインテールの部屋の壁には彼女の妹の写真が隙間なくびっしりと飾られている。初めて見た時はビックリしてつい逃げ出したくらい怖かったわ。入るとガチのストーカー部屋だったんだからな。
確か、妹さんの名前は───
聞いた話だと七番組の、つまり京香さんの組の副組長だそうだ。姉妹揃って副組長とは、ご立派な事だ。流石はあの『東家』のご令嬢と言ったところか。
「分かりましたか? だから僕は───ん??」
───ビリビリ
胸に手を当てて自分と八千穂の違いを熱弁していると、突然──
電気と言ってもそこまで強いものではない。まるで、静電気を帯びたモノに近づいた時に感じるゾワっとする気持ち悪さ。あの煩わしいビリビリ感が全身に纏わりつくような、そんな感じだった。
(なんだ……この感覚。全身の毛が逆立つような……、気持ち悪い)
───パチパチパチパチ
「「「───!?」」」
この僅かな気持ち悪さの正体は何なのかと思い、顔を歪めていると──突然、後方から一人の人間がパチパチと拍手を鳴らしながら近づいてきた。
その者は黒いコートに身を包んで、フードを被り、さらにその下から気味の悪い仮面で顔を隠している。
───まるで、醜鬼の顔を模したかのような仮面。
そんなこれ以上無いってぐらい怪しい人物が突然現れ、当然ながら3名はそれぞれが再び警戒した様子を見せる。
「いやぁ~、やるわねアンタ達。あの“改造醜鬼”をこうもあっさり」
声からしてその者は女性。少なくとも、3人に聞き覚えのある声では無かった。状況から鑑みて、魔都に侵入した
「……誰だ?」
最初に口を開いたのは蓮。
「ん? 私が誰かって? ま、一言で言ってしまえば……神に仕える“
「………何言ってんの? 宗教勧誘の話か?」
『神』『神奉者』……あまりにも頓珍漢な答えに、僕は口をぽかんとさせ頭に疑問符を浮かべた。
「アハハ!ごめんごめん、言っても分からないわよね。まぁ、簡単に言ってしまえば
「「「───!!!」」」
その言葉を聞き、3名は後方へと下がり距離を取る。
と、同時に戦闘態勢へと入った。彼女自身の口から敵だと語った以上、もう戦闘になることは避けられない。
「サハラ、魔防隊本部に連絡せよ!!」
「うん……!!」
正体は分からないが
蓮と八千穂はサハラの前に出て、奴に邪魔させないようにするが、2人の心配は杞憂で終わる。
「あ~、それ意味ないわよ。ま、やってみたら分かるだろうけど……」
「「───??」
「な、なんで……、やっち、
「なんじゃと!?……貴様、一体何をしよった。何かしたのであろう?」
「さぁね。そこまで教えてあげる義理は無いわね」
サハラの端末が使えないと知り、蓮もすぐさま自分の端末を操作する。が、結果は同じ。自分のモノも使用できなかった。
なぜ端末が使えないかは分からないが、それを考えても仕方がない。3名はすぐに切り替え、増援を呼ぶのを諦めた。
「さて、それじゃあ仕事を始めましょうか。と、その前に……」
神奉者と名乗る女はおもむろに顔を覆っていたフードを外し、その奥にあった仮面を脱ぎ去り地面に放り捨てた。
彼女は髪が青く、頬には薄い傷跡がある風貌をしていた。年齢は20代後半と言ったところだろう。
少なくとも、蓮は彼女の顔を知らないので特に心が揺さぶられる事は無かった。
しかし───他二人は違った。
「やっち……もしかして」
「あぁ……間違いないのじゃ。青い髪、頬の傷跡。海桐花様の言っておった通りの外見じゃ」
「えっ? 2人共アイツ知ってんの?」
「あぁ、あやつは───」
「───はいはい。おしゃべりはそこまでにして。そろそろお仕事はじめなきゃなの」
そう言って、青髪の彼女は胸ポケットから6枚のカードを取り出す。
それぞれのカードの絵柄には、先ほど倒した醜鬼と同じ姿形をしたものが描かれていた。
「まさか……!?」
「その……まさかよ!!」
6枚のカードを宙に投げ捨てると、それぞれのカードはその姿を変えた。
───再程、
「言っておくけど、私は“人外側”に組する者よ」
「「「───!!?」」」
「さぁ、
命令を聞き終えると、醜鬼共はサハラと八千穂に向かって突進していく。
二人はその勢いに飲まれないよう、さらに後方へと下がり態勢を立て直そうとする。当然、蓮も二人の援護に向かおうとする。
「2人共!! くそっ……」
「おっと、行かせないわよ」
「………ぐっ!」
「アンタの相手は私がするわ。悪いけど、あの二人は邪魔だから離れてもらったわ。あの醜鬼じゃ彼女らは倒せないかもしれないけど、時間稼ぎぐらいにはなるはずだし」
だが、
「…………最悪だ」
やばい、非常にヤバい。敵の正体も能力も分からないし、何よりここは平地だ。めっちゃ戦いにくい。さっきの醜鬼は若狭さんとツインテールが動きを止めてくれたから、何とかなったけど。
それに、ヤバいのは向こうも一緒だ。ツインテールはともかく、若狭さんさっき『3』で能力発動してたよな? 能力発動してから2分21秒。あと39秒で能力が解ける。そうしたら、3分間は能力が発動できない。本気でヤバい。
とにかく、相手の正体を探ろう。そして出来るだけ時間を稼ぐ。
「それじゃあ、邪魔者も居なくなったことだし、始めましょうか」
「ねぇ、その前に教えて欲しいんだけど。お前何者なんだ? 何が目的で魔都に侵入したんだ。桃の奪取? それとも魔防隊への攻撃か?」
「……質問が多いわね。まぁいいわ。一つ一つ応えていくけど、私の名前は
「………僕? どっかの国の政治家に雇われて、僕を消しにでも来たの?」
「……ブフッ、あははは!」
僕がそう言うと女は腹を抱えて笑い出す。
心底可笑しい物でも見たかのような笑い声を聞き、僕は少し怒気を含んだ声色で返す。
「……何が可笑しい??」
「ううん、ただ……アンタがどんな人生歩んできたかは分かったわ。けど、アンタ
さっきから何を言ってるんだコイツは?
僕を消しに来たんじゃなく、攫いに来た? 誰が僕を……と言うより、僕の身体を欲しがってるてんだ?
考えられる可能性は他国の首脳陣共だ。前に恋姉が教えてくれたけど、海外の国で僕の存在を知っている者は極少数。その中に実験用のモルモットとして僕の身体を欲しがっている人間が何人かいるらしい。
まぁ、僕みたいな
「そうか。それで、僕を欲しがってるっていうアンタの雇い主は誰なんだ? アメリカ? それともロシアかドイツあたりか?」
「いえ、言ったはずよ。私は
「……アンタ、頭大丈夫か??」
神やら神奉者やら。先程からヤバい宗教に洗脳された狂信者のような事を口走る彼女に対して、気味の悪いものでも見るかのような視線を向ける。
何なんだよさっきから言ってる『神奉者』って。
『神』ってなんだ? やっぱどっかの宗教団体の話か?
それともまともに取り合う気がないだけか?
……いや、今考えるべきはそこじゃない。
とりあえず、奴の目的は僕の身柄を搔っ攫う事。それさえ分かれば十分だ。
「とりあえず、お前の目的は分かった。あとお前がふざけてまともに取り合う気が無いってことも」
「……本当なんだけどね」
「……今ある事実をまとめると、お前は魔防隊の敵で、
「そうなるわね……」
分かり切っている質問内容。それを確認し終えると、蓮は拳を強く握り、脚をどっしりと踏み込み構えを取る。
その顔は覚悟と闘気で満ちていた。
「そうか、なら退場しろ。“魔都は
「……言うじゃない。言われなくても、こんな所すぐに退場してあげるわよ。アンタを連れ去った後でね!!」
山城蓮と神村鳴海。
「“
「───“
神に狙われた者と神に仕える者。
互いに敵を見据えて構えを取り、二人の視線と闘気が交差し結び合った。
能力を展開し、両者ほぼ同時に戦闘準備が完了する。
そして次の瞬間───両名の姿が搔き消えた。
《神奉者》 神村鳴海の能力───“
自身の肉体速度を向上させる能力。
数年前、他国から『魔都に侵入し桃を奪取せよ』という依頼を渡され、魔都に侵入した経験がある。
その時に当時の魔防隊員3名を殺害し、大量の桃を奪い去り消えた最悪の
しかし、今は国の命令で動いてはおらず、
《神奉者》として“八雷神”の下で働いている。
“八雷神”から山城蓮を捕獲せよという命令を受け、その代価として
読んでいただきありがとうございます。
評価・感想いただけると幸いです。
次回『神に与えられた力と錫杖』