脹相。“呪い”としての君はここで死んだ。生きろ。 作:みんなのお兄ちゃん
「やぁ。起き抜けに申し訳ないんだけどさ。ちょっとお遣い行ってきてくんない?」
人が人を恐れ、憎悪し、嫉妬した負のエネルギーから生まれた特級呪霊、真人。
そして、
「あぁ〜......あぁ?誰だ、オマエ」
「あー自己紹介がまだだったね。僕は真人!よろしく!」
「......そうかぁ」
血塗は即座に状況把握。
兄者の気配を感じ取れない。
「お兄ちゃんと......兄者はぁ?」
「他の九相図の事?まだ受肉させてないけど、今日中か......今夜にはさせるつもりだよ」
「なら、お兄ちゃん達に会ってから決める。」
「......そっか!まぁどっちにしろ2番と3番にはお遣いに行ってもらうつもりだったからいいんだけどね!」
そして受肉した受胎九相図が2番、
更に、受胎九相図が1番、
受胎九相図は1番〜9番まである特級呪物である。しかし、現在受肉可能なのは1番〜3番の3
「
受胎九相図が1番であり、長男である脹相がそう宣言する。壊相と血塗は顔を見合わせる。
別に反対な訳では無い。異論はない。
「胡散臭いし、良いと思うよ兄さん。でも理由は?」
「............わからない」
??とクエスチョンマークを浮かべる壊相と血塗。
らしくない。脹相は1番のお兄ちゃんであり、頭も悪くない。むしろ良い方だ。その脹相が、「わからない」とは。
「恐らく、呪霊側につくのが楽な道だ。」
「......」
「だが、遠い未来。俺はそれを、後悔する気がするんだ。」
「いや、違うな。壊相、血塗。これは
「勘......なの?お兄ちゃん。」
「そうだ。
「水臭いよ、兄さん。」
脹相が目を上げると、笑顔の壊相と血塗が微笑んで肩を組んでいた。
「兄さんの決定なら、私達は従うさ。それに――」
「お兄ちゃんはいつも正しいもんな!それに――」
「「
思わず息を飲む。
嗚呼、すまない弟達よ。
俺達が歩むのは茨の道かも知れない。
俺の勘は外れているかもしれない。
呪霊と人間の混血である俺達を、呪術師共は認めないかもしれない。
異形の肉体を持つ弟達を、呪術師共は、人は、受け入れないかもしれない。
でも、茨の道だとしても、道は確かにそこにある。
進め、脹相。
進め、壊相。
進め、血塗。
九相図兄弟はまだ産まれたばかりなのだ。
戻る術などない。そもそも戻る道すらない。
「ありがとう。壊相、血塗。」
「だから、水臭いよ。」
「お兄ちゃんはドンと構えてよ!」
頼りになる弟達だ。
「まずは、ここから逃げ出す。いいか、
「大丈夫なの?」
「問題ない。アイツらは俺達が呪霊側につくと思っている。そこを突く。」
「最後に」
「壊相は血塗の為に」
「血塗は俺の為に」
「俺は壊相の為に生きる。」
「俺達は、3人で1つだ」
「あ、話終わった?」
「あぁ。真人とか言ったか」
「うん」
「俺達は呪霊側につく。最初の話通り、壊相と血塗には
「「わかった」」
そうして、壊相と血塗を外に出す。
「(もしも両面宿儺の指回収の際に呪術師に会うのならばそれも
脱する
――9時間後――
壊相と血塗は、両面宿儺の指の気配のする場所。深夜の
「血塗」
「何?兄者」
「兄さんの言葉は覚えていますね?」
「もちろんだよ!」
両面宿儺の指はどうやら呪霊に取り込まれているようだ。そして、呪霊の生得領域と思しき結界内に呪術師が3人。
脹相と別れる前、あらかじめ決めていた事を思い出す。
「いいか。凡ゆる可能性を想定・検討する。」
「ケース1。両面宿儺の指が剥き出しだった場合。お前らが回収し、八十八橋で俺が来るまで待機していろ。」
「ケース2。両面宿儺の指が呪霊に取り込まれていて、尚且つ非術師・術師関係なく誰も居なかった場合。お前らが呪霊を殺し、両面宿儺の指を回収しろ。後はケース1と同じだ。安心していい、両面宿儺の指1本分程度、お前達片方だけでも事足りる。」
「ケース3、両面宿儺の指が呪霊に取り込まれていて、呪術師が回収に来ていた場合。事情を説明して保護して貰え。聞き過ぎて耳が痛いだろうが、絶対に戦闘・敵対的行動はするな。最悪捕縛されるでもいい。俺の術式でお前らの場所はわかる。後から追いつくさ」
「ケース4、両面宿儺の指が既に呪術師により回収済みだった場合。これはケース2とほぼ同じだ。八十八橋で俺が来るまで待機していろ。」
この場合、ケース3。
両面宿儺の指は既に呪霊に取り込まれていて、呪術師が回収に来ていた場合に当てはまる。
「助けるよ、血塗」
「了解だよ兄者!!」
ズズズ......と血塗が結界内に入る。
「あ゛?」
そこに居たのは、3人の呪術師。
「......
「あぁ」
「なら、俺が祓――」
「ちょちょ、ちょっと待ってくれよぉ!」
血塗は慌てて両手を上げ降参のポーズをとる。
その異形の肉体とは思えぬポーズと言葉に、思わず
「......なんだよ」
「俺は別に悪いやつじゃねぇよぉ!呪霊でもないし!」
「ハァ?アンタねぇ。そんなナリした奴が呪霊じゃないって?馬鹿も休み休み言いなさいよ」
「まぁまぁそう怒らずに。綺麗な顔が台無しですよ、お嬢さん?」
血塗が入ってすぐ、壊相も結界内に侵入する。
状況はあまり分からないが、明らかな異形の血塗に先に行かせたのはマズかったなと思う。
「何?お仲間?てか何この匂い。」
「失礼。私の匂いですね。術式上仕方ないのです。許してください」
「......敵、じゃ、ねぇのか?」
虎杖が拳に溜めていた呪力を離散させる。
「とりあえずは、後ろの呪霊を仕留めては?両面宿儺の指、どうせ差し上げますので」
「「「宿儺の指ィ?」」」
「?おや。てっきり同じお遣いかと思いましたが......違いましたか?まぁ事情は後で説明しましょう。今は共闘と行きませんか?」
蠱惑的な迄の衣装を羽織る......まるで、そう。効果音を付けるなら、「フワァ〜オ♡」といったような衣装を羽織る壊相を見て、呪術師3人はヒソヒソ話に洒落混んだ。
「(どーする)」
「(どーするったって、怪しすぎんでしょ)」
「(まず人間では無いな。それは間違いない)」
「(人間、呪霊......後は?)」
「(虎杖、あんたバカ?あんた自身がそうじゃない)」
「(えぇ俺?俺......あっ、宿儺か!)」
「(
「(押忍)」
「(仕方ないわね)」
呪術師3人組のヒソヒソ話終了。
壊相と血塗は黙って事の成り行きを見ていた。
「とりあえず、俺達もあんたらと事を構える気は無い。だが味方とも分からん。共闘云々はナシだ」
「私と血塗はそれでも構いませんが......もし危なくなったら助けても大丈夫ですか?呪術師には恩を売っておきたいので」
「好きにしろ」
その後暫くは、壊相と血塗は暇を持て余す事になった。やっている事は八十八橋の呪いことモグラ呪霊を叩く事。この八十八橋の呪いの事は壊相、血塗は知らない。宿儺の指があるとだけ聞かされ、気配を追って来ただけなのだから。
「血塗、油断しては行けませんよ。“見殺し”も立派な殺しです。兄さんに怒られてしまいます。いつでも加勢できるように。」
「わかったよ兄者!」
現状が動いたのは、モグラ呪霊を祓い終わった後。案の定、宿儺の指を取り込んだ特級仮想怨霊が現れた。しかもどうやら3人中2人は見覚えがあるらしい反応をしている。
「手伝いましょうか!?」
「いい!!」
結構食い気味に女性の呪術師に否定されてしまった。紳士的な性格の壊相は少しだけ落ち込んだ。血塗が頑張って隣で慰めてくれる。おぉ血塗、可愛い弟よ。
暖かい目で3人を見守っていた壊相と血塗の2人。特級相手に中々頑張っている。呪術師にしては骨がある奴らじゃないか?我々九相図兄弟からしたらなんて事ない相手だが......おや。終わってしまった。あのツンツン髪の少年の出した犬か狼のような式神は強力だ。それに加え、先程のピンク髪の少年の
呪霊の生得領域が解かれ、八十八橋の下に風景が戻る。
「なんて事はなく終わりましたね」
「ホントにあったな、宿儺の指......」
「......てか、アンタら見てないで参加しなさいよ。私達見なさい。ボロボロじゃない?」
「え?」
加勢の協力を申し出て、それをすかさず却下したのは貴女では......と言いかけた壊相だが、それをグッと飲み込んだ。壊相は紳士なのである。
「まぁいいわ。それで?アンタらナニモン?」
「......コホン。まずは自己紹介を。私の名は壊相と申します。」
「俺は血塗!よろしく!」
「よろしくするかはまだ決めてないぞ」
「えぇ!?」
「あまり弟を虐めないでください。さて、我々が何者か。差し当たって、貴方達は「真人」という特級呪霊を知っていますか?」
「!」
「(それって――!)」
「(虎杖が遭遇した特級呪霊!)」
そして、事のあらまし。受胎九相図の事や、産まれた事。呪霊側ではなく呪術師側につく事を説明する。
再度コソコソ話に洒落込む3人組。
「(どーする!?どーする!?)」
「(うっさい!)」
「(受胎九相図は実在する特級呪物だ。高専の
「(真人の話がマジなら、味方につけたらデカイんじゃね?)」
「(でもその分リスクがあるわね。内通者になられでもしたら元も子もないわ)」
「(......聞くだけ聞いてみるか)」
「(伏黒?)」
「おい、オマエら」
「はいなんでしょう」
「『縛り』を結べ。」
「(伏黒マジか!!)」
『縛り』。一種の呪術的因子の1つであり、基本的には己が己に縛りを設け、何かを得る代わりに何かを失うといった場合が多い。他者間でも縛りは結べるが、余程重要じゃない限り結ばない。結ぶのは相当リスキーだからだ。というのも、己が己に掛けた縛りは破っても得た能力を失う程度で済むが、他者間で設けられた縛りを破った場合は、破った方にどんな厄災が降りかかるか分からない。いつ、どんな、どのようにペナルティが来るか分からないので、他者間での縛りは基本的に結ばないか、結ぶとしてもしっかりとルールを決める。
九相図兄弟は『縛り』の存在を知っていたし、その事を引き合いに出される可能性も脹相は考慮していた。つまり、想定内の事。
「別に構いませんよ。我々九相図兄弟の安全を保証して頂けるのであれば。流石に内容によりますが」
「......そうか。」
「(ちょっと伏黒!アンタ本気!?)」
「(違う。本気じゃない。カマかけただけだ。だが、より分からなくなった。これなら素直に襲って来てくれた方が分かりやすい。)」
「(伏黒、嘘下手ね。ドンマイ!)」
「(うるっさいな虎杖。とりあえず、この件は保留だ。アイツらが本当に
「(どうやって?)」
「(......今はアイツらを信じるしかない。虎杖、釘崎。敵対的な行動は慎めよ)」
「(俺の事なんだと思ってんの......?)」
「(虎杖はともかく私に言うのはムカつく)」
脹相の想定したケース3の思惑通りに事が進みそうだ。
「とりあえず、虎杖。宿儺の指は1番元気なお前に預ける。念押しするが食うなよ」
「伏黒は俺の事犬並みの理解力だと思ってんの?」
伏黒が虎杖に宿儺の指を渡す......が、手から生えた口が宿儺の指を食べてしまった。
「「食うなっつったろ!!」」
「え俺ェ!?」
「(賑やかですね)」
「(そうだね兄者)」
「クラァッ!!!オマエらァ!!!............ん誰ェ!?呪霊ィ!?」
「あ、
「ブチ切れてるわね」
「......おいアンタら。ついてこい」
「良いですけど......その......私達一応150歳を越えているので......敬語を使っていただけると......」
「味方だって分かったらな」
その後、新田の車で伏黒、壊相、血塗は高専に帰宅した。定員オーバー*1なのでそれ以上は乗れなかった。虎杖と釘崎は追加の補助監督を呼ぶ事にする。
翌日、高専東京校にて、アラームが鳴る。
侵入者警報である。授業中だったが慌ててそれらを中断し、学長の夜蛾正道、担任の五条悟が校門に急行した。
「ここに、弟達......受胎九相図の受肉体が保護されていないか」
「誰だ」
「受胎九相図が1番、脹相......と、言えばわかるか」
「あぁ、お前がか」
先日教え子達が保護してきた、盗まれた筈の受胎九相図1番〜3番の受肉体の残りだと五条悟が当たりをつけた。五条悟の六眼は相手の術式解析から呪力効率の最適化までなんでもござれな万能
「(まさか本当に来るとは。壊相と血塗は受胎九相図の受肉体で確定。脹相とかいうコイツも......確定かな。)」
六眼で、脹相と壊相と血塗の本来見えない呪力の“繋がり”を見る。
「いいよ。おいで。弟達に会わせてあげる」
「無事なんだろうな?傷一つでもつけてみろ。タダでは済まさんぞ」
「おー怖。安心しなよ。尋問はしても拷問はしてない」
「ならいい」
「ついてきな。学長は戻っててください」
「......わかった。任せたぞ、悟」
特級呪物『受胎九相図』の受肉体が3人も。呪術総監部・上層部は黙っちゃいないだろう。まぁ、いざとなったら五条悟パワーで跳ね除ければいい。
「兄さん!」
「お兄ちゃん!」
「壊相!血塗!無事だったか!!怪我ないか!?」
ひしっと抱きしめ合う3人。見てくれは3人とも大分違うが、こういう場面だと兄弟に見えるのだから不思議なものだ。その後行われた五条による脹相の尋問。すると出るわ出るわ呪霊側の情報が。
「呪霊の頭は真人という特級呪霊だ。そしてこれは逃げ出す直前に分かった事なんだが、呪霊と手を組んでいる呪詛師は俺達を造り出した
五条は思わず目隠しの下で六眼をシパシパと瞬かせた。
「......はぁ。あの史上最悪の術師?150年くらい前の存在でしょ。何?死んでないの?」
「厳密に言えば
「そっ。まいいや。呪力凪いでるし、嘘っぽくない。」
「嘘をつくならもっとマシな嘘をつく」
「それもそだね。でも一応君ら受肉体だから。暫くは高専か僕の監視下で大人しくしててね〜」
「言われずともな」
そして、脹相達3人を残して部屋から五条が出ていく。
「兄さん上手くやったね」
「あぁ。このまま呪術師につき、呪霊を殲滅するぞ。して2人とも。宿儺の指はどうなった?」
「あぁ〜なんか、ピンク髪の男が手から口生やして食べてたよ!」
「......ん?食べた?どういう事だ血塗。」
「そのまま!」
「兄さん、血塗は嘘を言ってないよ。多分だけど、ピンク髪の少年は両面宿儺を受肉してる」
「ふむ。共存しているのか?......いや、相手はあの両面宿儺だ。恐らくその少年は器......と言うより、檻に近いな。両面宿儺を受肉して尚、閉じ込めている。凄まじいな」
脹相が虎杖悠仁に会うまで、残り1日――
正月元旦の朝に何書いてんだ俺は......
久々に筆を取りました。お兄ちゃんがいいキャラし過ぎてて......