脹相。“呪い”としての君はここで死んだ。生きろ。 作:みんなのお兄ちゃん
脹相達3人が五条管轄の元、高専内のみ自由に移動出来るまでに信用された。案の定呪術規定に則り死刑にすべきとの案が上層部から出たが、五条が家の名前と自分の名前を使いそれを推し留めた。
「五条悟。何故ここまでする」
脹相が高専内の廊下にて、五条を捕まえてそう質問する。脹相達受胎九相図の受肉体は、人間でもあり呪霊でもある。しかし逆に言えば、人間でもなければ呪霊でもないのだ。呪術師に味方する理由はない。
脹相からしたら「勘」で、異形の肉体を持つ弟達が受け入れられないかもしれないとすら危惧していた。だが、この男はそれらを文字通り力尽で跳ね除けたのだ。
「何?死刑になりたかった?」
「ふざけるな。確かにお前の名は俺達九相図兄弟にとって都合がいい。俺はともかく、弟達を保護・身の安全を保証してくれた事も感謝はしよう。だが何故だ?俺は“人”じゃない。」
「それを決めるのは、脹相。君じゃない。」
「何?」
「君が“人”か“呪霊”か。それを決めるのは、君達自身じゃない。周りだよ。僕がしたのは、君達が最低限動ける環境を作っただけだ。血塗のような異形の肉体を持っていようが、脹相のような普通の肉体を持っていようが、人か呪霊かなんて結局周りが決める事なんだよ。少なくとも僕は君達九相図兄弟を“人”だと判断した。」
「......何故だ」
「簡単さ。“呪霊”が呪術師に「最悪俺の事はどうなってもいい。弟達は助けてくれないか」なんて言う訳がない。自己犠牲は立派だけどね。見てくれに囚われて本質を見抜けない程、僕や生徒達は馬鹿じゃないよ」
「そう、か」
「そもそもうちパンダ居るし」
そして、脹相と五条が別れる。五条は特級術師だ。本当ならこんなに暇じゃない。最近は我々九相図関連でよく学校に来ているが。
「生徒か......見ておこう」
九相図兄弟にそれぞれ与えられた部屋を訪問し、壊相と血塗を連れ出す。高専結界内に限るが、自由に行動していいとお墨付きを貰っているので、生徒達を探す。今は授業中だろうか。そう思い、校舎の中を散策する。
「なんだか新鮮だね、お兄ちゃん!」
「そうだな。俺達は学び舎に通った事がないから分からんが、“青春”......と言う奴か」
「兄さんにしてはふんわりとした言い方だね」
カッカッカッとチョークで黒板を叩く音が聞こえる。高専は4年制だが、4年生は居らず、3年生は停学中らしいので、2年生か1年生だろう。授業の邪魔をしない為、廊下から授業を観戦する。
「おっ!?......って、九相図の奴らか。なんだ。何か用か」
2年生に対し授業をしていた1級呪術師
「悪いな。生徒達に興味があって散策していただけだ。授業の邪魔をするつもりは無い。」
「(アレが例の受胎九相図の兄弟か?)」
「(しゃけ)」
「(俺が言うのもなんだが、3人中2人は人間っぽくないな。変な匂いするし)」
丁度今は数学の時間だった。
「数学か。発展したものだな」
「あぁ(ナチュラルに話入ってきたな。邪魔しないんじゃねーの?)」
「お前達、名前はなんて言うんだ。俺は脹相だ」
「私は壊相と申します」
「俺は血塗!よろしくな!」
「2年の担任の日下部篤也だ。」
「
「俺はパンダだ。こっちは
「しゃけ!」
「?しゃけがどうした?」
「悪いな。棘は呪言師の末裔なんだ。語彙がおにぎりの具しかない」
「呪言師か。なるほどな。コントロール出来ないのか?大変だな」
「しゃけしゃけ」
「ふむ。解読出来るように努力する。して、今日は1年生は居ないのか?」
「居る筈だ。授業受けてんじゃねーか?」
そして、2年生とその担任に別れを告げ、2年生の教室を後にする。後は1年生だ。場所は分からないが、呪力のある所を当たっていけばいずれ会えるだろう。
そう思い歩いていると、次に到達したのは職員室だった。中には教職についている呪術師が複数居る。流石に中に入るのは邪魔になるので一瞥して去った。
高専はあくまでも“高等学校”なのだ。一般教養に加え、呪術学や結界学・選択制だが傀儡呪術学も取れるらしい。暇なので授業を受けるのも悪くないな。
そして到達したのは、1年生の教室。
「あっ!あの時の!」
「受胎九相図だっけ」
「こんにちは。壊相さん、血塗さん。脹相さんは初めまして」
「............!!!!」
天啓!!
脹相の肉体に走る稲妻。マジで霹靂一閃。六連と言われても可笑しくない。
「弟......なのか?」
「え?」
「は?」
「え?」
脹相の言葉に首を傾げる1年ズ。
「俺の術式なんだ。離れていても兄弟の事はわかる。虎杖悠仁......お前は俺の弟だ!!」
「俺えぇえぇええぇぇぇ!?!?!?」
「兄さん!?」
「お兄ちゃん!?」
脹相にはもう虎杖が弟に見えている。壊相、血塗。お前達の弟だ。ん?何をそんな顔をしている。お前達の弟だぞ*1。
「まさか高専に先に保護されていたのか。受肉体......ではないな。この感覚。だが、そうか。ふむ......」
「ちょっと待って!なんで!?なんで俺がお前の弟なの!?」
「......思い出せ悠仁。お前の母か父に、額に縫い目は無かったか?」
「え?」
「お前は俺達の弟だ。それが感覚でわかる。だが受肉体ではない。つまり悠仁。お前は加茂憲倫により造られたのだ。」
「加茂......って、京都校の?」
「そっちの加茂憲紀じゃないんじゃないか?最悪の呪詛師として歴史に名を残す加茂家の汚点、加茂憲倫。流石に虎杖と釘崎は知らないか」
「私まだついていけなてないんだけど......」
「授業中......」
授業をしていた英語担当の童顔の女性教職呪術師が1人で縮こまっている。
「すまない。つい興奮してしまった。悠仁、お前にも急な話だったな。」
「お、おう」
「だがお前は俺達の弟だ」
「なんだろう。どっかで聞き覚えあるな。最近そんなゲームした気がする......あっ!バイオハザードだ!バイオハザード7!」
「悠仁はゲームが好きなのか。今度みんなで一緒にやろう」
「兄さんが言うなら、悠仁は私達の弟なんですね。そんな気がしてきます」
「お兄ちゃんが言うなら!よろしく悠仁!」
「なんかよくわかんねーけど......俺に兄貴が3人も出来たな......」
「さて、悠仁達の授業をこれ以上妨害する訳には行かないな。俺達はもう行く。時間はあるんだ。これから失っていた時間を取り戻していこう」
「(あんたのおにーちゃん、意外と聞き分けいいわね)」
「(釘崎の中ではアイツらはもう俺の兄貴で決定なのか......?)」
「(口裏だけでも合わせとけ。少なくとも不利にはならん)」
「(伏黒まで。まぁいいけど......)」
「悠仁。最後に1回だけお兄ちゃんと呼んでみてくれないか」
「帰ってくんねぇかな!」
弟を困らせる訳には行かないので、仕方なくその場を去る。
その日の夜。五条と脹相は脹相の部屋で話し合っていた。
「悠仁が加茂憲倫の息子?」
「恐らくな。九割九分」
「悠仁が弟じゃない可能性1パーしか残ってねぇじゃん。」
「分かるんだ。説明し難いが......」
「ふぅ〜ん......ちなみに、悠仁の家系は悠仁が来る時に調べてるよ」
「だろうな。加茂憲倫だということには気付かなかったようだが。加茂憲倫の特徴は額にある縫い目だ。目視でもなんでもいい。悠仁の母か父にそれがあったという情報は無いのか?」
「聞き込みした訳じゃないから分からないけど......「額に縫い目」だけで探すのは、流石にちょっと難しいかな。」
「そうか......明日は悠仁達は任務だったか」
「そっ。京都まで行って内通者の確認をして貰う」
「すまないな。時間が限られていた故、そこまで情報は抜き取れなかった。」
「漏瑚に花御、陀艮に真人。そして加茂憲倫。生後十何時間にしては大分頑張った方だと思うよ。10月31日に何か“事”を起こすんだろ?」
「あぁ。内容は俺も何も知らんが、ナニカをするつもりらしい。大規模な作戦と言っていた。気を付けた方がいい。」
その頃、敵サイドは。
「まさか受胎九相図が裏切るとはね。我ながら、子に裏切られるとは。」
「
「Was it good?」
「いいさ花御。確かに彼らは戦力増強の為に盗んだけど、あくまでも受胎九相図はオマケだったからね。宿儺の指回収の。」
「それに私の研究成果を知りたかっただけだ。“こう”動くのも、予想の範疇だよ。」
「しかし夏油。特級相当が3人も敵になって本当に良かったのか?」
「どうせ“失敗作”さ。計画に変更はないよ。10月31日ハロウィン渋谷、五条悟を獄門疆で封印する......まぁ、脹相を失ったのは確かに惜しかったが、それ以下の壊相や血塗は別に気にしなくていい。脹相程強くない。」
「ふーん。じゃあ次漏瑚」
「ん?あぁ......」
「漏瑚は俺の事嫌い?」
「嫌いだ。「ブブー!」いったい!!」
「アハハハハ!!!嘘ついた!」
「けっ!なんだこの嘘発見器とは!!ルールもクソもないでは無いか!!夏油!なぜこんなものを買ってきた!」
「面白そうだったから」
「ぶふぅー!」
翌日、虎杖らは京都に行ってしまった。
九相図兄弟は暇だった。3人で何か面白いゲームでもしようと、五条の部屋に侵入、テレビゲームを漁った。もちろん鍵はかかっていたが、赤血操術を扱う脹相ならば鍵の偽造なんておちゃのこさいさいである。鍵穴に血液を差し込み、形を合わせ回すだけ。電子キーでもない古い錠前など無意味なのだ。
「兄さん、これ面白そうじゃない?」
「桃太郎電鉄か。なになに......「桃太郎電鉄2010 戦国・維新のヒーロー大集合!の巻」か。8年前か。少し古いが、まぁいい。3人で出来る上、現在の日本の立地も学べる。」
桃鉄2010を起動する。
メニュー欄から、「いつもの桃鉄」を選択する。
「おっ!丁度3人だ!!」
「兄さんから入力していいよ」
「あぁ。Wiiか。機械は難しいな......」
拙いながらも、「ちょうそう」と入力しようとするが、名前欄は4文字までしか入力出来ない。もちろんだが、漢字は使えない。
「ぐぬぬ......」
仕方ないので、「ちょそう」という名前にした。
その後、弟達も「えそう」と「けちず」と入力。桃鉄2010は丁度3人用ゲームなので、人数はピッタリだ。
「プレイ年数?」
「どうする兄さん?」
「......まぁ、そうだな。程度が分からん。とりあえず半分にしておこう」
プレイ年数を50年に設定。0〜100年まで選べるので、半分の50年にした*2。
「50年ですと、スムーズに行けば凡そ15時間程度で終わりますが、よろしいでしょうか?」
「......長くない?兄さん」
「長いな。戻ろう」
その後試行錯誤して、15年でスタートする事にした。4時間半くらいで終わるらしい。まぁまぁ長いが、やってるうちに楽しくなるだろう。きっと。多分。
「どのゲームデータに保存しますか?」
「知らん。1番でいいだろう」
脹相は容赦なく「ごじょう」のデータを「ちょそう」で上書きした。哀れなり「ごじょう」。独りコツコツ遊んでいたゲームを無断侵入した脹相達に上書きされてしまった。
「社長の皆さん!4月ですよ〜」
「4月スタートなのか?」
「季節に合わせてるんじゃないかな?」
「お花見したいねぇ」
「春になったら悠仁達も連れて花見をしよう。同級生の......伏黒と釘崎も連れてな」
「まずは国からの援助金1000万円を持ってスタートしてください」
「太っ腹だな」
「最初の目的地は、1853年ペリー来航。下田!皆さんが最初に目指す目的地は下田です!」
「下田って何処だ?」
「マップ見れば分かるんじゃないかな......あ、ほら。14マスだって。近いよ」
「血塗、まずはお前だ」
「わかったよお兄ちゃん!」
血塗がサイコロを振る。出た目は6。順当に下田に向かって進み、プラス駅に止まった。
「わぁ!600万円だ!」
「いきなり凄いじゃないか血塗!」
「流石私の弟ですね」
その後、壊相が出した目は5。カードが貰える駅につき、急行カードを貰った。
脹相の番だ。
脹相がサイコロを振るが、出た目は3。
「1番少ない......」
そして到達したのは、渋谷駅。
「渋谷か」
「でも何も出来ないね。」
「1000万円もあれば1つくらい買えないものなのか。なんだ?兆?そこまで高いのか?」
その後暫く遊んで、10年程経過する。
脹相の持ち金は10億2000万。
壊相の持ち金は23億4000万。
血塗の持ち金は21億5000万。
「目的地に着いたのはまた壊相か......そしてまた貧乏神は俺につくのか!!特級呪霊め!!」
「悪いね、兄さん」
「元気だしてよ兄者......」
「ありがとう弟達よ......お兄ちゃんは負けないぞ!!」
ダブルスコアで負けている脹相はあと5年で勝つと意気込んだ。
そしてゲーム内時間が5年経過し、終了する。
「おめでとう!けちず社長!」
「やったー!」
「やりますね、血塗」
「負けたか......しかし、弟の成長を見るのも悪くないな」
総資産
けちず社長 30億1200万円
えそう社長 28億600万円
ちょそう社長 -2億8000万円
「兄さん大負けだね」
「俺は何回
「ざっと4回だね!」
「............」
ガチャ。
五条の部屋の扉が開く。開けたのは、部屋主の五条だ。丁度任務終わりだろうか。
「え?脹相達何やって......桃鉄?」
「あぁ。地理を学ぼうと思ってな」
「あと暇だったから!!」
「ふーん。まぁいいけ......待てよ。データ何処にセーブした?」
「知らん。適当にやった」
「「ごじょう」消した?」
「知らん*3」
「......*4」
「??*5」
血塗がWiiリモコンを奪われ、ポチポチとボタンを押す五条。やがて案の定自分のデータが上書きされている事に気付き、脹相に向かってWiiリモコンを投げた。
脹相は冷静にキャッチした。
「消えてんじゃねーか!!」
「知らんと言っただろう......」
「独りで!コツコツ!!100年やってたんだよ!!」
「五条、友達とか恋人とか居ないのか?」
「それは特級呪言だろぉ!?」
ペペイペイペイと自室から3人を放り出す。
放り出された脹相は立ち上がり、尻餅したケツをパンパンと払ってから、壊相と血塗に手を貸して立ってもらう。
「俺のぉぉぉ!!!71年がぁぁぁ!!!」
「帰るぞ。」
「そうだね兄者!」
「......*6」