前編
『助けて……私たちを………』
謎の声はカナ達に助けを乞うている。
リュウタ
「助けて…って言ってるぞ。」
レックス
「教えて下さい。あなたは誰なんですか?」
『助けて……私たちを………』
レックスが問いかけてみるものの、同じ言葉が返ってくるだけである。
カナ
「同じ言葉を言ってる…」
マルム
「この言葉しか記録されていないのかしら…?」
剣竜
「り、リュウタ…一体何があったんだ?」
リュウタ
「石板が助けてって喋ったんだ……」
どうやら声が聞こえていたのはD-KIDSの四人だけで、剣竜は一体何があったのか分からない様子だった。
その後、Dラボへ戻ってきたカナ達はさっき聞いた事を古代博士に詳しく説明することにした。
剣竜
「…なるほど、助けて、か。」
レックス
「それが石板の伝えたい恐竜の声なんでしょうか?」
剣竜
「うむ…助けてというからには、あのアクト団とかいう連中から守ってくれ…という事なのかもしれんな……」
リュウタ
「そうだよ!あいつらいきなり出てきたけど何者だったんだ?」
剣竜
「とにかく分かっている事として、奴らは赤いティラノサウルスを召喚してガブとエオちゃんを襲わせた。そしてそのティラノサウルスも力尽きるとカードに戻った。これだけは確かだ。」
マルム
「うーん…なんか謎ばっかりね……」
するとカナはある事に気づく。
カナ
「あれ?私は石板なんて持ってませんよ?なんで私にも声が聞こえたんですか?」
カナの疑問に古代博士が答える。
剣竜
「君のデバイス…《ダイナライザー》を調べてみたんだが、どうやら内部に石板が埋め込まれていた。」
カナ
「石板って、どんなのですか?」
剣竜
「《♾️》の紋章だ。」
カナ
「♾️?」
レックス
「僕達のは雷、風、草と自然に関するのに対して、♾️…やっぱり僕達のディノホルダーとは仕組みが違うのか…」
リュウタ
「…そういえばあのアクト団、赤いティラノサウルスを召喚していたからには俺達のように石板を持っているって事だよね?」
レックス
「確かに…そうなるね……」
リュウタとレックスが考察していると、リアスが上の階から降りてきた。
リアス
「あら博士。こちらにいらしたんですか。」
マルム
「お姉ちゃん!」
リアス
「あなたの携帯電話にオーエン博士からの着信がありましたよ。」
レックス
「パパから?」
レックスの父親であるオーエン博士は世界的な古生物学の権威で、古代博士の師匠にあたる人物である。
剣竜
「あっ!また置き忘れてたか。ハハハ…すまないねリアスくん。」
そう言うとリアスから携帯電話を受け取り、古代博士はいそいそと地球儀型の装置へ接続した。
すると画面が変わり、画面からオーエン博士の姿が現れる。
剣竜
「これはこれはDr.オーエン!お久しぶりです!」
オーエン
『やあ古代君!…恐竜大好きー!』
剣竜
「恐竜仲間ー!」
剣竜&オーエン
「『化石探してどこまでも〜!ボクらは仲良し恐竜仲間〜!イエーイ‼︎』」
突然歌って踊り出す大人二人をDキッズ達はこの世のものとは思えぬ程冷たい視線で遠巻きに見つめる。
実は二人は顔を合わせるとあの様なやり取りをする。
電話ならまだしも、発掘現場で直接会った時もやっている為Dキッズからしてみれば恥ずかしい事この上ない。
剣竜
「それで先生、本日はどの様なご用件で?」
オーエン
『君がこの間話していた恐竜カードの事なんだが…見たかったんだよ。』
カナ&リュウタ&レックス&マルム
「「「「ええっ⁉︎」」」」
思わずその場にいる全員が驚きの声を上げる。
『ワシは今、カナダのアルバータ州立恐竜公園に来ておるんじゃが、ここでリュウタ君が見つけたカードと非常によく似た恐竜カードが見たかったんだ。それも…二枚だ!』
そう言い、オーエン博士が二枚の恐竜カードを見せる。
レックス
「カルノタウルス!」
マルム
「パラサウロロフスだわ!」
レックス
「カルノタウルスには風の紋章が…」
マルム
「パラサウロロフスの方は草だわ…」
しかも運が良い事に、二枚の恐竜カードはそれぞれレックスとマルムが持つ石板の紋章とピッタリ合っていた。
オーエン
『ん?おぉレックス!いたのか!』
レックス
「さっきからいたよ!」
オーエン
『どうだ日本の生活は?なかなか良いものだろう?それに日本食は美味いだろ?特にワシは焼きサンマの味が今でも忘れられなくてな…』
レックス
「パパ!そんな事より大至急そのカードを送って!」
オーエン
『勿論そのつもりだ。ワシもこれらを研究したいのは山々だが、いかんせんこっちには石板が無いからな。古代君、カードはそっちで役立ててくれたまえ!』
剣竜
「師匠、ありがとうございます!」
オーエン博士の言葉を聞き、古代博士が深々と頭を下げる。
こうしてオーエン博士が見つけた二枚の恐竜カードは、すぐにDラボ宛てに送られる事となったのだった。
オーエン
『レックス、折角日本に留学したんだ。よく勉強して、留学生活を楽しむんじゃぞ?』
レックス
「はい、パパ。」
レックスがそう答えると、オーエン博士は満足げな様子で通信を切った。
レックス
「石板と同じ紋章のカードが来るって事は……」
マルム
「アタシ達のパートナーになる恐竜が来るって事ね!」
レックス
「そういう事だね。」
マルム
「可愛い子だったら良いな〜♪」
自分達にもパートナー恐竜が出来る事に、レックスとマルムは喜ぶ。
剣竜
「うーん!羨ましいぞー!私も恐竜のパートナーが欲しいのに!何とかして出て来ないのかー!」
そんな二人を羨ましがった古代博士は三人のディノホルダーを握って色々とやってみるも、何も反応は無い。
リアス
「…石板は最初に触れたリュウタ君達を選んだんです。博士はそうじゃないですから諦めて下さい。」
剣竜
「それもそうか…残念だ。」
分厚い本を抱えて現れたリアスに血も涙もない一言をぶつけられ、古代博士はがっくりと肩を落とした。
するとマルムはリアスが持ってきた分厚い本に気づく。
マルム
「お姉ちゃん…それは?」
リアス
「これ?ディノホルダーのマニュアルよ。」
リュウタ
「ディノホルダーって?」
リアス
「コレの事よ。」
剣竜
「いっ、いてててて‼︎ちょっと!痛いよリアス君⁉︎」
古代博士が持っている電子機器もといディノホルダーを博士の手を捻ってまでマルム達に見せ、そのまま説明を始めた。
リアス
「カードをスラッシュさせるだけじゃなくて石板とカードを納めるホルダーになってるでしょ?折角作ったんだから使い方をよーく読んでね?」
剣竜
「痛い痛い痛いっ!アーッ!」
悲鳴を上げる古代博士をよそに澄ました表情で軽く説明すると、六法全書並に厚いマニュアルをリュウタ達に投げ渡した。
マルム
「これ全部読むのー⁉︎」
リアス
「当たり前でしょ。」
分厚いマニュアルにマルムは露骨に嫌そうな表情を浮かべるも、レックスは早速マニュアルを手に取っていた。
ようやくガブを引き離したリュウタだったが、渡されたマニュアルが自分を含めて三人分しか無い事に気づく。
リュウタ
「あれ?そういえばカナのは?」
カナ
「大丈夫。ダイナライザーのマニュアルは電子版としてしっかり記載されているよ。」
カナがデバイスを操作して画面を見せる。
そこにはダイナライザーの操作方法やカードホルダーに入っている各種カードの説明、さらにはエオラプトルの詳細について画面に表示されていた。
マルム
「いいなぁ〜」
あまりの利便性にマルムが羨ましがると、リュウタが古代博士に話しかける。
リュウタ
「ところで父さん。この間ガブ達や石板の事は誰にも内緒って言ってたけど、もしかしたら世界中の恐竜博士が知ってるんじゃ…」
剣竜
「いや、そこは安心してくれ!この事を知ってるのはここにいるみんなとオーエン博士だけだ。博士は父さんの師匠のような人だからな!だから研究の協力を頼んだんだ!」
リュウタの懸念に先程のダメージから回復した古代博士はそう言った。
レックス
「でも博士。他にもこの事を誰よりも知っている連中が居ますよ。」
剣竜
「…そうだ!アクト団だ!」
場所は変わってアクト団の基地『アジ島』
ソーノイダ
「ぐぬぬぬ…許さん!許さんぞい!なんで見知らぬガキがワシの技カードを持っておったのだぞい!」
帰還したウサラパ達の報告を受けたソーノイダは激怒していた。
だが、それより気になる事があり、ソーノイダはすぐに落ち着きを取り戻す。
ソーノイダ
「…まぁそれは置いておくとしよう。恐竜カードと共に技カードも散らばってしまったのじゃからのう。そのガキが偶然拾ってしまったという事は無きにしもあらずじゃぞい……だがこればかりは納得いかん!どうしてワシの連れてきた覚えのない恐竜が現れたのじゃぞい!」
ソーノイダの気になる事、それはエオラプトルであった。
ソーノイダ一味はマシンで過去に飛び、恐竜をカードにしたが、カードにしたのはジュラ紀・白亜紀の恐竜ばかりであり、恐竜黎明期である三畳紀にはめぼしい恐竜がいない理由からカードにしていない。
にも関わらず、三畳紀に生息していたエオラプトルが現れたのだ。
ウサラパ
「ですからドクター、アタシ達も困惑していたところなんですよ。ドクターなら何か知っていると思ったのですけど…」
そう言うウサラパをよそにソーノイダは悩み唸りながら研究所の中を行ったり来たりしている。
ソーノイダ
(…考えられるとすればヤツか?確か恐竜に興味があると言って自作のタイムマシンで同行したアイツ……恐竜カードとタイムマシンを奪う計画に協力し元の時代に帰る際に事故によって離れ離れになった……ワシらもこの時代にたどり着いたがヤツは別の時代に流され、それ以来音信不通…もしかしてエオラプトルはヤツが…?)
色々考えてたソーノイダだが、考えても仕方ないのである作業に取り掛かる。
ソーノイダ
「えーい!分からんことをとやかく考えていても仕方ないぞい!取り敢えずこの疑問は置いておいて、新技カードの開発に取り掛かるぞい!」
ロト
「でもお爺ちゃん…これじゃエネルギーレベルが高すぎるよ。」
ロア
「こんな有り合わせの道具だけじゃ、カードの熟成までもたせられないわよ〜?」
ロト・ロア兄妹の言う通り、材料は虫や市販のトレーディングカードなど本当にこれで大丈夫なのか?という有様だった。
呆れている兄妹はもちろんのこと、ウサラパ達も困惑の声を上げる。
エド
「これ、マジでヤバいッスよ…」
ソーノイダ
「やかましいぞい!技カードの製作はわしの専売特許だぞい!まぁ任せておけい!もうすぐ技カードの熟成は完了ぞい。コレさえ完成すれば、ティラノをコケにしてくれたガキ共を泣かせて黙らせる事が出来るんじゃぞい!」
ロア
「おじい様、私達お勉強の時間だからもう行くね〜」
ロト
「俺も〜」
自信満々に豪語するソーノイダだが、ロトとロアは興味なさげに部屋から出て行ってしまった。
ウサラパ
「あーっ!アタシ達も少し用事が…」
ノラッティ〜
「そ、そうそう!すっかり忘れていたザーンス!」
エド
「お、おれもッス…!」
ロト達に便乗し、ウサラパ達も抜き足差し足忍び足で研究室を出て行こうとする。
ソーノイダ
「どこに行くつもりじゃぞい⁉︎」
ウサラパ&ノラッティ〜&エド
「「「ギクゥッ⁉︎」」」
ソーノイダ
「持ち場を離れるんじゃないぞい!」
ウサラパ&ノラッティ〜&エド
「「「はーい…」」」
が、結局バレて引き止められてしまった。
すると技カード製造マシンが突如として輝き出す。
ソーノイダ
「キタキタ!北は南の反対ぞい!」
機体の面持ちで技カード製造マシンを見つめるソーノイダ。
マシンはどんどん輝きを増していき…
ドガーーーーーン‼︎
大爆発を引き起こした。
製造は失敗に終わり、研究室にいた4人は下着姿の黒焦げとなり、バッタリ倒れ込んでしまった。
さらに悪いことに爆発音を聞きつけてタルボーンヌがやってきた。
タルボーンヌ
「ドクター!何ですかこの騒ぎは⁉︎」
ソーノイダ
「ゲッ⁉︎」
タルボーンヌ
「全く…お夕飯までに片付けてください!じゃないと今日のお夕飯は抜きにしますわよ‼︎」
ソーノイダ
「トホホ…」
ノラッティ〜
「ミー達まで貧乏くじ引かされたザンス…」
製造に失敗した上にその後始末までさせられる事になり、がっくりと肩を落とすソーノイダと工作員トリオなのであった。
一方その頃、エジプトのギザの大ピラミッド近く。
その一つであるクフ王のピラミッドの足元に卵型カプセルと水の紋章が刻まれた石板が落ちていた。
するとカプセルが割れ、中から恐竜カードが出てきた。
カードは風に乗って近くの観光地へと流され、ファーストフード店に置かれてあるテーブルの下に落ちた。
そして先程利用していた客がテーブルから立ち上がろうとした際、置かれていた紙コップにぶつかり落としてしまう。
片付けもせずにその場を立ち去る客だったが、紙コップから溢れた水がカードにかかった次の瞬間…カードが青い光を放ち、恐竜が現れる。
灰色と紫色の身体にワニ顔、背に大きな帆の様な突起が特徴的な恐竜…
《伝説の狩猟者》
スピノサウルス
突如として現れたスピノサウルスを目の当たりにし、街の人々はパニックを起こし我先に逃げ出した。
一方アジ島では夕食の時間までに何とか片付けを済ませたソーノイダと工作員トリオは、ちょうど夕食を食べている頃だった。
すぐ横ではティラノも与えられたドライフードをボリボリと食べている。
そんな時、ソーノイダのアクトホルダーから甲高い音が鳴り響く。
アクトサーチに引っかかったのだ。
ソーノイダ
「おっ!アクトサーチが反応したぞい!」
タルボーンヌ
「ドクター!お行儀が悪いですよ!」
ソーノイダ
「何を言っとる!アクトサーチが反応したんじゃぞい!飯など食っとる場合ではないぞい!ウサラパ!ノラッティ〜!エド!今すぐ捕獲に出撃ぞい!」
ウサラパ&ノラッティ〜&エド
「「「は、はいーっ‼︎」」」
タルボーンヌ
「いけません‼︎」
すぐさま工作員トリオに出撃させようとしたソーノイダだが、タルボーンヌが怒声で引き止める。
タルボーンヌ
「お食事を済ませなければ席を立つ事は許しません!」
ソーノイダ
「は、はい…」
タルボーンヌ
「それとドクター、お皿の下に隠したピーマンとシイタケも残さずに食べて下さい。」
ソーノイダ
「ゲゲッ!気付かれておったのかぞい!そ、それだけは勘弁してほしいぞい!」
タルボーンヌ
「ダメです!さあ口をお開けなさい!」
ソーノイダ
「い、い、いやじゃー‼︎」
結局ソーノイダが完食するまで、アクト団工作員の出撃はお預けとなった。
その頃、暁家でも夕食の最中であった。
カナとその母である暁リナが向かい合って食事をしている。
その下にはエオちゃんがドライフードを食べていた。
リナ
「ふふっ、よく食べるね。」
カナ
「でしょ!」
エオちゃんを飼い始めた当初はトカゲという事で隠し通そうとしたカナであったが、亡き夫から恐竜の事を聞かされたリナには通用せず問い詰められ観念して本当の事を話した。
リナ
「それにしても本物の恐竜なんて…あの人がいたらとても大喜びするわよ………」
カナ
「ママ…」
リナが悲しそうに呟く。
カナの父親である暁トガは古生物学者であり遺伝子工学の権威でもあった。
古代博士やオーエン博士とも親交があり、恐竜が好きな人でカナの恐竜好きも彼の影響である。
そんな彼だが研究協力の依頼を受けて、ある古生物研究所へと出向した一年後悲劇が起こる。
なんと彼が所属している研究所が火事で全焼し、研究所にいた職員全員が死亡したのだ。
トガは遺体すら残らなかったという。
夫の訃報を知らされたリナは泣き崩れてしまい、立ち直るのに時間が掛かった。
カナ自身も悲しみに暮れるも、自分がしっかりしなくてはと奮い立ちパートで働く母に代わり家事に奮闘するようになる。
昔を思い出し、しんみりした雰囲気になっていると、テレビにとんでもない映像が入る。
なんとスフィンクスを背景に吼える恐竜…スピノサウルスが映っていた。
カナ
「うそっ…これって……!」
アナウンサー
『こちらは本日、エジプトのピラミッドで有名なギザに現れたという恐竜の映像です。』
エジプトにスピノサウルスが現れたというニュースにカナは驚愕する。
アナウンサー
『皆さんもう一度ご覧下さい!これは本物の恐竜です!』
ニュースキャスターの声に合わせて映像が流れるが、スピノサウルスがカメラに気付いたのか大口を開けて襲い掛かり、そこで映像は途切れた。
アナウンサー
『…い、一旦CMに入ります。』
それからしばらくして電話が鳴り、カナが出るとリュウタだった。
リュウタ
『カナ!ニュース見たか!』
カナ
「ええ、エジプトにスピノサウルスが…!」
リュウタ
『俺達もマルムから言われてニュースを見たんだ!とにかくそっちの夕食が終わってからでいいからDラボに来てくれ!』
カナ
「分かった!」
基本的に前編・後編に分けます。