超高校級の幸運に内定していた少女は、高度育成高等学校に入学する。   作:杏仁豆腐

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皆さん、一日空いてしまいましたがようやく無人島編スタートです。
長らくお待たせ致しました。

今回の話は、終業式後の放課後と無人島試験のルール説明の二つについて書いています。

★そして、始めの前世に関する記述について少しグロい過激な表現が使われています。見たくない方、グロいものが苦手な方は◇◇◇まで飛ばして下さい。そこを読まなくても、楽しめると思います。

今回の話は少し方向性を変えて書き直した為、投稿が遅くなってしまいました。

いつも応援して下さりありがとうございます。
評価や感想、全て読ませて頂いております。
とても励みになっているので助かっております。


ちょっと今日は投稿お休みして、一日書き溜めdayにします。
感想については次話投稿後、お返事を返していきたいと思っております。無人島試験編、皆様が楽しめる様な面白い内容に出来るよう、頑張りますね。(2024/01/11 00:25:14)

※感想やコメント、是非お待ちしております。


無人島試験編
超高校級の幸運に内定していた少女は、無人島に上陸する。(前書きの★を必ず読んで下さい。)


Q:もしこの世界に神様がいるとするならば、貴方は何を願いますか?

 

A:世界平和一択です。

 

 

 

この答え以外を望む気は無い。億万長者になりたければ天に祈れば良いし、徒競走で一番になりたければ自分を信じれば良い。テストで一番になりたければ、自分を信じ天に祈れば完璧だ。

 

 

だから、私の力じゃどうにもならないこの世界を幸せにしてあげて欲しい。私はこの願い以外であれば、なんでも叶えられるから。

 

 

今もこの世界のどこかで戦争が起き、テロが起き、犯罪が行われている。誰かが死に、誰かが傷付き、誰かが罪を犯している。こんな世界クソ喰らえだ。

 

 

私は前世で世界が壊れていく様を見た。

 

 

親がミンチにされ、それをハンバーグとして焼き上げ、子供に食べさせる人。愛し合うカップルを別の人間と交わらせ、笑う教会の牧師。立て篭り事件が起き、市民を守ろうとした警察が何かを見て狂い、拳銃をぶっぱなし被害者を殺していく怪奇事件。

 

 

思い出すだけで体が震えてしまいそうになる。思い出すだけで冷や汗をかいてしまう。そんな絶望的な世界で、わたしは傷付く事なく家族と逃げ続けた。明日の命も分からない世界で、私は安全に生き続けた。

 

 

しかし、私の心の中には少しずつ傷が増えていった。塵も積もれば山となるとはよく言ったものだ。小さな傷も積み重ねれば大きなダメージに変わる。

 

 

私はこの世界で生きているだけで傷付いていった。こんな事を言えば『無傷で安全に生きている奴が何を言っているんだ!』と批判されてしまうだろう。

 

 

だけど私は普通の女の子だった。高校を卒業し、大学に通うはずの普通の、ちょっと運の良い女の子。それが私だったのだ。

 

 

突然世界が壊れ始めて、各地で暴動やテロが起きて、目の前で消えていく友人を助ける事も出来ず、無力さに打ちひしがれてしまうような、普通の女の子。女の子という年齢ではないというツッコミを入れたい人は、普通の女性だと思ってくれれば良い。私は非力な女子大生になるはずの女の子だったのである。

 

 

『苦しい』と叫ぶ後輩を、『助けて』と涙を流す近所の人を、『殺して』と絶望する友人を、私は見て見ぬ振りをして生きてきた。もしかしたら、私が強く願えば助かったのかもしれない。危険を回避出来たのかもしれない。だけど、あの時の私は誰かを救おうとは思えなかった。自分と両親が生き残る事だけを願って、壊れた世界で逃亡生活をするという事しか頭に無かった。

 

 

もしあの時に戻ったとしても、私の行動は変わらない。私は自分の幸運のために生きていく。それしか出来ないのだ。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「ではホームルームは以上だ。中間試験、期末試験、暴力事件…色々あったがこれで一学期は終了だ。明日からは夏休みに入るが、8月からはバカンスが始まるので、前日までには持ち物を揃えておくように。それから、各教科の課題については君達に言う事ではないかもしれないが、計画的に行うように。では、解散とする。」

 

 

そう締めくくり、真嶋は教室から去っていった。面倒な終業式は既に終わっており、これで放課後となった。私は、藍と美紀と一緒に一学期の打ち上げという事で、

 

 

「バカンス楽しみだなぁ。」

 

 

「そうですね。豪華客船の旅との事ですが、目的地はどこなのでしょうか。」

 

 

確かに、クルーズといえば途中で都市や島に降りて現地観光を行う事もある。といっても、港近くの町を見る程度のものがほとんどだが。

 

 

「ジャバウォック島だったりしてね。」

 

 

なんで冗談めかして言うと、藍が私に白い目で見つめてきた。

 

 

「何を言っているんですか?そんな島聞いた事がありません。」

 

 

確かにジャバウォック島は前世にしか無い島の名前だ。プログラム世界で行われた殺し合い修学旅行の舞台…そして、未来機関の施設がある元有名なリゾート観光地の一つの事だ。

 

 

「…今日はどこでランチにしますか?」

 

 

美紀がそう訪ねると、グルメマスター藍が数秒考えてから口を開いた。

 

 

私達の中で最も『食事』に関心があるのは藍だ。私は料理をする事は好きだが、そこまでグルメではない。美味しい物は食べたいと思うが、そこまで食に拘りは無い。美紀は美味しい物は好きだが、グルメ情報に疎く食欲も旺盛ではない為、我がグループのグルメマスターは一瞬で藍に決まったのである。

 

 

「決めました。」

 

 

「ほう。それで、今日は何系の料理にするの?」

 

 

藍は口を開き、今日のランチを発表する。

 

 

「今日のランチは、黒毛和牛ステーキのひつまぶしを食べに行きましょう。」

 

 

「く、黒毛和牛ですか?高くないんですか?」

 

 

美紀が不安そうに聞くが、森下は彼女の言葉をにすぐ首を横に振り否定した。

 

 

「高くはありません。2660プライベートポイントで食べる事が出来ます。薬味入れて出汁茶漬けにも出来ますし、特製ソースも付いています。確か、トロロもお好みで付ける事が出来たはずです。」

 

 

流石ひつまぶしなだけある。トロロも美味しそうだが、薬味を入れた出汁茶漬けというのはこの夏にピッタリだ。こってりした味付けでは無く、さっぱりとした味を楽しめるというのは素晴らしい。

 

 

プライベートポイントにも余裕がある為、私は藍野提案を受け入れる事にした。

 

 

「私食べたい。黒毛和牛のステーキも美味しそうだけど、出汁茶漬けにして食べれるって最高じゃない?」

 

 

「…そうですね、私も食べたいです。」

 

 

美紀も賛成の様だ。私達が賛成した事で、藍は嬉しそうに頷いた。

 

 

 

「では、早速行きましょうか。急がなければ混んでしまうかもしれません。」

 

 

こうして私達は黒毛和牛ステーキのひつまぶしを食べに行く事になった。学校から徒歩12分とかなり近くにあるが、価格帯が少し高めだからか、殆ど人は居ない。

 

 

「かなり空いてるね?お昼時なのにラッキーだね。」

 

 

「そうですね。今のうちにお店に入りましょう。」

 

 

美紀が安堵した様に笑い、藍も少しほっとした様に肩の力を抜いた。

 

 

「じゃあ、行こっか。」

 

 

私がそう言って店内に入ろうとした時、突然後ろから声を掛けられた。

 

 

「おや、奇遇ですね?神島さん、山村さん、森下さん。」

 

 

振り返ると、そこには坂柳と坂柳派の主要メンバーである神室と橋本、そして何故かBクラスの一之瀬と神崎が立っていた。

 

 

「坂柳派御一行と、Bクラスの一之瀬帆波、神崎隆二ですね。」

 

 

そう言い藍は、Bクラスの一之瀬と神崎をフルネームで呼び捨てし、彼らをじっと見つめる。

 

 

「…何だか珍しい組み合わせだね?一之瀬さん達って坂柳さんと知り合いだったの?」

 

 

二人を見て尋ねると、私の疑問に一之瀬素早く答えた。

 

 

「いや、私は坂柳さんとは今日初めて話したよ。確か、坂柳さんは神崎君と知り合いなんだよね?」

 

 

一之瀬がそう言い神崎と坂柳の顔を見て尋ねると、二人はすぐに首を縦に振り彼女の言葉を肯定した。

 

 

「坂柳とは古い知人なんだ。たまたま生徒玄関で会って、久々に食事でもどうかと誘われたんだ。」

 

 

「ええ、神崎君とは久しぶりにお話しましたが、変わりないようで良かったです。積もる話もありますし、一緒に食事でもとお誘いしたんですよ。」

 

 

私と神崎が通っていた中学は、かなり有名な学校で富裕層の生徒が多く在籍していた。そう考えれば、神崎と坂柳が知人というのもおかしな事では無い。確か、神崎はかなり裕福な家の生まれだという話を聞いた事がある。坂柳もここの理事長の娘だと話していた為、関わる機会もあったのかもしれない。

 

 

話を聞く限り、計画されたわけではなく、たまたまこのメンバーで食事をする事になったそうだ。BクラスとAクラスの生徒が一緒に食事とは珍しい事もあるものだ。

 

 

「何だか、珍しいね。他クラスのリーダーさんと仲良く食事なんて。」

 

 

山村も私と同じ考えだったらしく、少し不思議そうな表情を浮かべながら私の発言に頷いた。

 

 

「確かにそうですね。ですが、こうして他クラスの方とお話をする機会は滅多にありませんから、良い機会だと私は思っていますよ。」

 

 

坂柳がそう答えると、神崎も頷いた。一之瀬達も特に気にした様子は無くい。それから約10秒程沈黙が続く。そしてその空気に耐えられなくなったのか、それとも暑さに我慢出来なくなったのか、橋本が沈黙を破り口を開いた。

 

 

「ずっとここに居るのも迷惑になるだろ。折角だし、神島達も一緒に食事をしたらどうだ?良いですよね?姫さん。」

 

 

橋本は、坂柳に許可を求めるように視線を向ける。そして彼の言葉に神室が「そうね。」と言い、同意を示して坂柳に視線を向ける。

 

 

「ええ、私は構いませんよ。折角の機会ですから、親交を深めるのも良いでしょう。」

 

 

そう言い坂柳が了承すると、神崎と一之瀬も反対すること無く、彼女の言葉に頷いた。

 

 

「うーんどうする?私はどちらでも大丈夫だよ」

 

 

私は藍と美紀を見て問い掛ける。

 

 

「私は構いませんよ。」

 

 

「…私も大丈夫です。」

 

 

藍と美紀も橋本の提案に了承をしたので、私達も一緒に食事を取る事になった。一之瀬と連絡先は交換しているが、あまり関わった事が無いので良い機会かもしれない。

 

 

八人という大所帯で私達は店内に入った。八人用のテーブル席は無いため、私達は奥の座敷に通され、靴を脱いで用意された座布団の上に座る。少しすると、店員がお茶とおしぼりを持ってやって来た。そして全員が『黒毛和牛ステーキのひつまぶし』を注文し、料理が運ばれてくるのを待つ事になる。

 

 

「坂柳さん達も、一之瀬さん達もここの『黒毛和牛ステーキのひつまぶし』目当てで来たの?」

 

 

「はい。明日から夏休みですし、折角ですからプチ贅沢をしようと思いまして。」

 

 

「私達も同じだよ。クラスの子がここの『黒毛和牛ステーキのひつまぶし』が美味しいと話していたのを聞いてね。時間が合う神崎君と一緒に食べに来る事にしたんだ。」

 

 

私の質問に坂柳と一之瀬が答えた。そして神崎が一之瀬の言葉に「ああ。」と頷き、肯定した。

 

 

「そうなんだ?私は初めて来たけど、早く食べたいなぁ。」

 

 

「そうですね。とても楽しみです。」

 

 

私の言葉に藍が同意を示し、美紀も彼女の言葉に頷いた。

 

 

「そういえば、神崎君は神島さんと同じ中学校出身なんだよね?」

 

 

「へぇ?お前ら二人とも同中出身なのか。意外だな。実は付き合ってたりするんじゃないか?」

 

 

橋本が少し大袈裟に驚いた様な反応をし、ニヤニヤしながら神崎を肘で小突く。

 

 

「止めろ。俺達はただの元クラスメイトだ。ちなみにこの学校に来るまで連絡先すら交換した事がない、名前と姿を知っている単なる知人だ。」

 

 

神崎が橋本を払い除け、嫌そうな顔でそう言う。そんな風に言われると少し悲しい気もするが、彼の言っている事は事実なので、私もすぐに彼の言葉を肯定した。

 

 

「まあ、神崎君の言う通りなんだよね。関わる友達のタイプも違ったし、授業とか必要最低限を除いて関わった事すら無かったもんね。」

 

 

私がそう言うと、一之瀬が不思議そうな顔をして疑問を口にした。

 

 

「だけど、前放課後にBクラスに来た時はかなり親しそうだなって思ったけど。」

 

 

一之瀬の疑問に、神崎はすぐに自分の考えを話し始める。彼はかなり一之瀬に優しいというか、甘い気がする。彼女の人の良さにかなり絆されてしまっているみたいだ。

 

 

私は一之瀬の人を惹きつける魅力に若干の恐怖心を抱きながら、神崎の発言を聞いていた。

 

 

「彼女とは入学式の日、生徒玄関で会って一緒に教室まで行っているんだ。その時、元同中の知人という事もあり、連絡先を交換する約束をしたんだ。あの日は少し会話もしたし、そのおかげで多少は親しくなれたのかもしれないな。」

 

 

「へぇ。そうだったんだね。」

 

 

一之瀬は納得した様に頷き、神崎に優しく微笑んだ。

 

 

それから少しして、店員が私達の注文した料理を運んでくる。『黒毛和牛ステーキのひつまぶし』には、ソースや出汁、トロロ以外にも汁物と漬物が付いており、とても豪華だ。

 

 

私はすぐにスマホで写真を撮り、それから箸を手に取り、食べ始める事にした。

 

 

まずは特製ソースをかけて一口食べる。柔らかい肉は少しレアだが、ソースの旨味とよくマッチしており、箸がよく進む。次にとろろをかけて食べると、冷たいトロロが温かいご飯とよく合う。

 

 

「美味しい!凄く美味しいよ!」

 

 

私は思わずそう口にしてしまう。美紀と藍も美味しそうに食べており、橋本達も満足そうだ。坂柳は上品な所作で食べており、マナーのお手本映像を見ているような気分になった。

 

 

一之瀬達も同じ様に食べていて、皆の食べるスピードが速い事からもかなり美味しいのだろう。それから私達八人は会話を交えながら食事を楽しんだ。

 

 

「そういえば、神島さん達はよく一緒に居るところを見るけど、何時から仲良くなったの?」

 

 

一之瀬が私と藍、美紀に質問を投げ掛ける。彼女の言葉に橋本が同意し、更なる追い打ちを掛けてきた。

 

 

「確かに気になるな。神島と山村、森下は全員タイプが違うしな。」

 

 

一之瀬の質問に最初に答えたのは藍だった。

 

 

「美香と初めて話したのは、入学式が終わった後の放課後です。ランチに誘われた事が切っ掛けです。確かその時、坂柳さんも居ましたね。美紀と友達になったのは、中間試験が終わった日の放課後です。美香にランチに誘われて、その時近くに居た美紀を誘ったんです。その後うな重を食べましたね。あの日食べたうな重は、今まで生きてきた人生の中で最も美味しいうな重でした。」

 

 

藍が過去を懐かしむかの様な優しい顔つきで話す。その言葉に美紀は頷いて口を開いた。

 

 

「そうですね…藍ちゃんと話したのはうな重を食べたあの日です。美香ちゃんと仲良くなったのはそれよりも前で、中間試験のテスト期間でした。図書室に向かおうとした時、話し掛けられて一緒に行く事になったんです。」

 

 

美紀と初めて話した時は、お互いの趣味が合う事を知って、彼女からクローズドサークルをテーマにした小説を紹介して貰った。

 

 

特に面白かったのは『パライバトルマリンの涙』で、最後の結末には思わず叫び声をあげてしまった。『スノウ・ホワイト』は人間関係に重きを置いたストーリーだが、吹雪の中の小屋という要素を上手く活かした素晴らしい作品だった。

 

 

彼女と出会った時の事を懐かしみながら、私も二人との出会いについて話始める。

 

 

「美紀ちゃんとは趣味が合ったから連絡先を交換して、藍ちゃんとは入学式後もよく一緒に行動する様になったんだよね。懐かしいなぁ。うな重食べてからは、三人で一緒に居ることが多くなって、タコパしたり、焼肉食べに行ったり、一緒に私の部屋で夜ご飯食べたり…あれ?食べてばっかりだね。」

 

 

私は恥ずかしさを押えて苦笑した。最近体重が増えたのは、絶対このプチ贅沢のせいだ。私はそう確信している。

 

 

私達三人は一緒に行動する度、何かしら食べていた。うな重から始まり、ついには黒毛和牛にまで手を出してしまった。プチ贅沢も回数を重ねれば、それはタダの贅沢と大差ない。いやそれを軽く超える額のプライベートポイントを使っている様な気さえする。

 

 

「…あはは、確かに食べてばっかりだったね。」

 

 

美紀が恥ずかしそうにしながらそう笑う。

 

 

「…ダイエットします。私は今日からダイエットをして痩せます。」

 

 

「確かに夏だし、私も少し体を絞ろうかな。」

 

 

スタイル抜群の一之瀬にそう言われ、嫌味を言いそうになるが何とか堪えて我慢した。

 

 

私は世界で一番偉いよね。

 

 

そしてダイエットを宣言したが、翌日藍のメッセージにより、私はダイエットが先送りになる事を未だ知らない。

 

 

涼しい寮の自室で筋トレを行っていると、スマホの通知が鳴った。確認すると、グループチャットに藍のメッセージが送信された様だ。アプリを開き、中を確認するとそこには画像も添付されていた。その画像には『スイーツパラダイス〜夏のメロンフェア〜』と書かれていた。

 

 

ダイエット中に飯テロなんて酷いよ。

 

 

『今週限定でスイパラがモールに入っているそうです。メロンフェアを行っているそうなので、明日一緒に行きませんか?』

 

 

その数秒後、美紀のメッセージが送信された。

 

 

『とても美味しそうですね。特にメロンのパフェがとっても美味しそうです。是非御一緒したいです。皆で行けたら嬉しいです。』

 

 

『皆で行けたら嬉しい』なんて言われたら、行くしかない。ダイエットはやっぱり明日からだ。何よりメロンが私に食べてほしそうにしている。これはメロン助けなんだ。断じて、私が欲に負けたわけでは無い。

 

 

『美味しそうだね!是非行こう!』

 

 

私はそうメッセージを送り、メロンフェアの画像を恨めしそうに眺めながら筋トレを行ったのだった。

 

 

ちなみに、このメロンフェアに行ったお陰でモールで行われていた福引を3回回すことが出来た。そして、二等の『和牛宮川』という高級焼肉店のAコース無料チケット三枚が当たってしまい、夏休みの間に食べに行く事になってしまった。

 

 

つまり、夏は私に食えと言っているのだ。ダイエット中になんて酷いことを言うんだ。やめてくれ、そんな事言われたら食べるしかないだろう。

 

 

そんな幻聴まで聞こえる様になり、私の食欲が止まる事は無かった。

 

 

 

 

そしてついに8月になり、バカンスの日がやって来た。

 

 

「夏!海!かき氷!プール!つまり最高って事なのよ。」

 

 

「この暑い中、よく外に出ようと思いますね。」

 

 

それを暑い中、しゃぶしゃぶをするようなお前が言うのかと、私は目の前に座る藍に問いたい。

 

 

 

私は今、船内の中にあるしゃぶしゃぶの有名店でお肉を鍋に浸してしゃぶしゃぶしていた。勿論ここには美紀もいるが、彼女はしゃぶしゃぶでは無く冷しゃぶコースを頼んでいる。

 

 

「それにしても、突然今のうちにご飯を食べておいた方が良い気がするとは、どういう意味ですか?」

 

 

藍が鋭い視線を向け、私に尋ねる。

 

 

そう、私達が今こうしてしゃぶしゃぶを楽しんでいるのは、全て私の一言が切っ掛けだったのだ。

 

 

船に乗ってすぐ、何故か分からないが私は嫌な予感がした。そして何故か、食べなければいけないと思うようになり、二人を誘ってかなり早いランチを行う事になっなたのである。

 

 

「理由は…私の勘が食事をしろって言ったからだよ。」

 

 

「なるほど。」と藍は言い、見当違いな思考を私にぶつけた。

 

 

「つまり、美香はお腹が空いていたという事ですね。それならば理解出来ます。」

 

 

「いやいや、違うからね?」

 

 

お腹が空いていたわけではない。勘がそう告げたのだと、何度も話したが彼女は信じてくれなかった。

 

 

ちなみにしゃぶしゃぶをチョイスしたのは藍だ。珍しく美紀が嫌がったが、冷しゃぶあるからと藍は必死に美紀を説得し、何とかしゃぶしゃぶを食べる事が出来たのである。

 

 

「…こんな暑い中で、良くお鍋料理が食べられますね。熱気がこっちまで来ていますよ。」

 

 

美紀は時折パタパタと手を振り、煙を追い返しながら藍をジト目で見つめる。彼女の声には少し恨めしさが感じられたが、気の所為だと信じたい。

 

 

「それは失礼しました。しかし、この暑い時にこそ熱い物を食べたくなるのです。」

 

 

エアコンはそこそこ効いているが、確かに熱気は感じる。普段表情の乏しい美紀ですら、少し暑そうにしているのに、こんな熱気の中でも藍は涼し気な顔で熱々のしゃぶしゃぶを楽しんでいる。流石はグルメマスターだ。

 

 

その後、私と美紀は流石に熱気に負けて冷たいスイーツを注文した。私はマンゴージェラートを、美紀はわらび餅が乗った抹茶味のかき氷だ。ちなみに、藍は追加で豚キムチのスープを頼んでいた。

 

 

「よくそんなに熱い物を追加で頼めるね。」

 

 

そう言うと、藍は「熱いスープは締めに必須です。」と真剣な表情で言っていた。今の彼女は、グルメというより熱い物が好きなだけの様に感じてきた。

 

 

数分後、ジェラートとかき氷、藍の頼んだキムチスープが到着した。

 

 

「やっぱり、しゃぶしゃぶより冷たいスイーツだよね!ジェラート最高!」

 

 

「そうですね!とても美味しいです。」

 

 

美紀は、さっきまでの少し不満気な表情を一転させて喜んでいる。

 

 

私はスプーンでジェラートをすくって口に運ぶと、その冷たさが舌に伝わり思わず顔が緩んでしまう。やはり夏には冷たい物が一番だ。この暑さの中で食べるジェラートほど贅沢な物は無いだろう。そんな幸せそうな私を見てか、美紀もクスリと笑いながらわらび餅を口に運んだ。

 

 

「あれ?そういえばこの船、さっきからそこの島の周りを周回していませんか?」

 

 

藍がキムチスープを食べる手を止めて、窓の外に見える島を指差した。

 

 

「…本当ですね。どうしたんでしょうか。」

 

美紀も外を見て、不思議そうに首を傾げた。私も気になり、窓の外を覗いてみるが島しか見えないためよく分からない。だが、確かに船は少し速度を落として島の周囲を回っている様だ。

 

 

それから数分後に船は停止し、船内放送が流れる。どうやらこの船に乗っている生徒は、船を降りて島上陸するように、との事だ。私達はちょうど食事を終えたところだったので、個室に戻って準備を始める。

 

 

「何があるんだろうね。」

 

 

私がそう問い掛けると、美紀は両手を広げてさっぱり分からないといった様なジェスチャーを見せた。

 

 

「…さっぱり分かりませんね。」

 

 

その後、私達はジャージに着替え、鞄に下着と着替えを詰め込んだ。他にも、敏感肌専用の日焼け止めやスキンケアセットと化粧品の入ったポーチ、筆記用具の入ったペンポーチやノート、タオルを数枚カバンに入れておいた。

 

 

「日差しが強そうだけど、帽子持ってきてないなぁ。」

 

 

私がそう言うと、藍がこう言った。

 

 

「私の物で良ければ使いますか?丁度四つ持ってきています。」

 

 

そう言い、彼女は鞄から黒と紺のキャスケット、カーキとデニム生地のキャップを取り出した。用意が良過ぎて少し怖い気もするが、私は彼女の言葉に甘える事にした。

 

 

「じゃあ貸してもらっても良い?」

 

 

「ええ。色はどれにしますか?」

 

 

私は少し考えてからデニム生地のキャプを貸して貰った。

 

 

「美紀も帽子を被っていた方が良いと思いますよ?」

 

 

藍の言葉には美紀は少し迷っているようだ。藍の善意の申し出は有難いが、美紀は人に素直に甘えられないタイプだ。私は彼女の背中を後押ししてあげる事にした。

 

 

「炎天下の中にいたら熱中症になる事もあるかもしれないし、帽子は被っておいた方が良いと思うよ。多少は暑さも凌げるだろうしね。」

 

 

「…ではお言葉に甘えて、貸して頂きます。ありがとうございます、藍ちゃん。」

 

 

私がそう言うと、美紀はと少し恥ずかしそうにしながら帽子を借りると言い、紺色のキャスケットを被った。ちなみに、藍は黒色のキャスケットを被っており、美紀と双子コーデをしているみたいでとても可愛らしい。

 

 

その後、私達は準備を済ませて船から降りていく。降りた先には砂浜が見える。どうやらこの船は砂浜の近くの桟橋に停泊しているみたいだ。

 

 

数分後、他の生徒たちも砂浜に降りてきてクラスごとに固まって何が始まるのかと話している。私達三人もAクラスの生徒がいる方へ向かい、談笑していた。

 

 

「何が始まるんだろう?」

 

 

「…さあ?何が始まるんでしょう。」

 

 

私の質問に美紀は両手を広げて『さっぱり分からない』といったジェスチャーを私に見せてきた。

 

 

そんな話をしていると、各クラスの担任が砂浜に降りてきた。そして四人の教師の中から、真嶋が代表となって話し始めた。

 

 

「全員揃っているな。俺はAクラス担任の真嶋智也だ。只今より、本年度最初の特別試験を行う。期間は今日を含めて七日間。これより一週間、君達はこの無人島で過ごしてもらう事になる。」

 

 

突然の事に多くの生徒が声を上げ、ざわつき始める。しかし、真嶋は混乱する生徒たちを制止して、淡々と説明を始めた。

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

【無人島試験の概要】

 

 

〖基本ルールについて〗

 

●各クラスは1週間、無人島での集団生活を行う。

 

●テントや衛生用品は最低限配られるものの、飲料水や食料、トイレなどは試験専用の300ポイント(クラスごと)で購入する必要がある。

 

●専用ポイントは試験終了後、クラスポイントに変更される。

 

 

 

〖追加ルールについて〗

 

●島の随所に『スポット』と呼ばれる地点があり、占有したクラスのみ使用可能になる。

 

●スポットは専有する度に1ポイントのボーナスがある。

 

●スポットの占有は8時間のみ。切れた場合、更新作業が必要となる。

 

●スポットの占有には、リーダーとなった人物が持つ『キーカード』が必要となる。

 

●正当な理由なく、リーダーを変更することは不可能。

 

●最終日、他クラスのリーダーを当てる権利が与えられる。当てれば1人につき+50ポイント、外せば-50ポイント。

 

●逆にリーダーを当てられてしまった場合、-50ポイント。

 

 

 

〖禁止事項とペナルティについて〗

 

● 許可なく腕時計を外した場合にはペナルティが課せられる。

 

●体調不良や大怪我によって続行できない者は-30ポイント+リタイア。

 

●環境を汚染する行為は-20ポイント。

 

●毎日午前・午後8時に行う点呼に不在の場合、1人につき-5ポイント。

 

●他クラスへの暴力行為、略奪行為、器物破損などを行った場合、そのクラスを即失格+対象者のプライベートポイントを全て没収する事になる。

 

 

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この試験において重要な事は二つだ。

 

 

まず一つ目は、どれだけのポイントを残す事が出来るのか、という事だ。試験専用ポイントが試験後にクラスポイントとして加算されるのであれば、多くのポイントを残しておいた方が後のクラス争いで有利になれる。これについてはクラス内でポイントの使用について話し合う必要がある。

 

 

次に二つ目は、他クラスのリーダーを当てる事だ。他クラスのリーダーを当てられれば、50ポイントが獲得出来る。50クラスポイントは5000プライベートポイント分の価値がある。三クラスのリーダー当てに成功すれば、支給される額に1万5000プライベートポイントが加算される事になる。それはとても大きな利益なので、積極的に狙っていきたいところだ。

 

 

特にクラスポイントが減らされてしまったDクラスやCクラスは、ここでポイントを増やそうとするだろう。上手く誘導して外させれば増えるクラスポイントの額を減らす事が出来る。つまりこのルールは捉え方によっては、ポイントを得るのではなく、他クラスを潰す為手段を示しているとも考えられるのだ。

 

 

「これから、君たちに腕時計を配布する。これは試験中の時刻を確認する為だけでなく、体調の変化を常にチェックする事が出来る優れ物だ。故障や破損の際は、ただちに担任の教師に申し出るように。」

 

 

真嶋がそう言うと、各クラスの担任が生徒達に腕時計を配布していく。私は受けとった腕時計を右手に着ける。

 

 

「今から一週間後の正午丁度に終了となる。説明は以上だ。何か質問のある生徒はいるか?」

 

 

真嶋がそう言うと、私は今回の試験で勝つ為に彼にとあるお願いをする事にした。

 

 

「先生、お願いがあります。」

 

 

「何だ?言ってみろ。」

 

 

真嶋が私のお願いを聞き入れてくれるかは分からないが、ダメ元で頼んでみる事にした。

 

 

「今回の試験では、リーダー当てがかなり重要になってくると考えています。しかし、私達生徒の中には他クラスの生徒の名前をほとんど知らない人も居ると思うんです。そして私もここにいる半分の生徒の名前すら分かりません。ですから───」

 

 

そこで一度区切り、私はこう言った。

 

 

「全生徒の名前と顔写真つきの名簿を頂けませんか?」

 

 

「…すぐには用意出来ないが、確かに神島の思っている事は理解出来る。後程、全クラスに各クラスの生徒と名前の書かれた名簿を渡そう。その名簿は試験終了時に学校が回収する。」

 

真嶋は私の提案を受け入れ、全クラスに一学年の全生徒の名前と顔写真が載った名簿を配布すると約束してくれた。

 

 

私は彼に感謝を述べる。

 

 

「ありがとうございます、真嶋先生。とても助かります。」

 

 

名簿さえ手に入れば、後は私の幸運でどうとでもなるだろう。リーダーが居るということは、40分の1の確率で書いても当たるのだ。選択肢がある問題において、幸運である私は確実にリーダーを当てる事が出来る。

 

 

しかし、選択肢…今回の試験においては、各クラスの生徒の名前を知らなければ、当てたくても無理だ。当てずっぽうで適当に書いてその名前がこの学年に居なかった場合、ゲームにすらならない。だからこそ、私は選択肢を全て把握する必要があった。だから、各クラスの生徒の名前が書かれた名簿が必要だったのだ。

 

 

そして今回のゲーム、私がリーダーになればこの試験100%勝つ事が出来る。何故なら私は『超高校級の幸運』だから。私がリーダーになれば、きっと他クラスにリーダーだと勘付かれる事は無い。

 

 

だけど、ポイントのやりくりに関しては私の運補正だけでは限界がある。今回坂柳が試験を欠席しているので、Aクラスは270ポイントからのスタートとなる。どうにかして、ポイントを節約したいが無理をして体調を崩す生徒が出ては本末転倒だ。これについては、葛城や坂柳派の主要生徒達に任せるしかない。

 

 

その後、生徒は解散となり無人島試験が始まった。

 

 

私達Aクラスは葛城の指示で、葛城が船に乗っている時に見つけたという洞窟の方に向かって歩き始めた。

 

 

「それにしても、帽子を持ってきて正解だったね。本当にありがとう、藍ちゃん。」

 

 

そう礼を述べると、彼女は『気にしないで下さい。』と返事を返したが、その声は心做しか少し弾んでいるように感じた。そして、洞窟の前に着くとそこはどうやらスポットだったようだ。

 

 

序盤から私達は、なんて幸運なんだろうね。スポットを拠点にしてしまえるなんて、とってもラッキーだな。

 

 

そんな事を考えていると、葛城が話し始めた。

 

 

「今回の試験、俺は他クラスに勝ちクラスポイントを増やしたいと思っている。そこで、まずはこのスポットベースキャンプに登録し、占有したいと考えている。だが、今回の試験には、試験を指揮する人間とは別にリーダーという存在が必要だ。なので今からリーダーを決めたいと思う。」

 

 

彼は自分がリーダーとなるのではなく、別の誰かをリーダーをにしたいらしい。指揮権は彼が持つ様だが、それとは別にリーダーを決めなくてはならない。

 

 

そしてこのまま黙っていれば、私はリーダーに選ばれる事は無いだろう。確実に幸運を作用させる為にも、私はとある提案をする事にした。

 

 

「なら、公平にここはくじ引きで決めない?」

 

 

「…く、くじ引き、だと?」

 

 

葛城は引き攣った顔で私を見つめ聞き返す。私は彼の言葉に同意し、真剣な表情で彼の判断を待つ。葛城は数十秒悩んだ末、結論を出した。

 

 

「…分かった、くじ引きで決めるとしよう。確かに公平性という観点から考えれば、文句を言う人間もいないだろう。」

 

 

公平性とは名ばかりで、所詮これは出来レースというやつだ。私がリーダーになる為だけの手段に過ぎない。だが、私がくじで当たりを引けるような幸運の持ち主だという事を知っている者はここに居ない。だからこそ、誰も私の提案を疑わずにこれを受け入れたのだろう。

 

 

くじは私がたまたま持っていたノートを使って作られた。たまたま戸塚が持っていた黒いビニールの中にハズレ38、アタリ1の紙を入れ、一人ずつ一枚引いていく。そして私の番がやって来た。

 

 

私は自分の幸運を強く信じ、一番下にある紙を選んで引き抜いた。引いた紙を開くと、そこには『アタリ』と書かれていた。

 

 

「葛城君、どうやら私がリーダーみたい。」

 

 

こうして、Aクラスの特別試験は幕を開けたのだった。





ようやく、無人島編が始動しました。
今回は夏休みが始まる前の導入と、無人島試験説明編の二つに別れています。

夏休み導入編では、橋本が頑張って探りを入れたり、美味しい黒毛和牛ステーキのひつまぶしを食べたりと、皆で楽しい時間を過ごします。
二話前の話で、坂柳が橋下に神島について探るように頼んでいたので、それで彼は少し必死なんです。

無人島試験説明編の方では、普段あまり不満を表に出さない美紀が嫌がる姿を書いてみました。
原作森下が結構自由人というか、なんでもズバズバと言っている様に感じたので、傍若無人っぽい感じで書いてみました。
まあここは、よくあるじゃれ合いみたいなものですね。

そしてようやく説明が始まり、まさかの名簿です。これは前から考えていたので変更はしていませんが、今回の試験をきっかけに、神島に対するクラスメイト達の反応も色々変わっていくんじゃないでしょうか。

そして、感想にて頂いた意見の中に『小説投稿』は外部との接触になるのでは、という意見がありました。これについて、私の方の認識では『匿名投稿』をしているという点を考慮して、外部との接触にはならないと判断しております。

私の思っていた外部との接触が『知り合い又は家族との連絡』なので、今作品では配布された携帯端末は学校側が監視している、という事にしおきます。
今回の件について、どうか多めに見ていただければと思います。

では皆様、次話でまたお会いしましょう。

干支試験、主人公はどのグループに入って欲しいですか?(グループ詳細は8話後書きに記載しておきます。)

  • リーダーグループ
  • 参謀グループ
  • おバカ(?)グループ
  • 仲良し三人組グループ
  • 坂柳派グループ
  • 葛城派グループ
  • 坂柳派、葛城派混合グループ
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