新世界創造したらキヴォトスなるところだった by.天才物理学者と筋肉バカ 作:クラウディ
「これで最後だぁッ!! ハァアアアアアアアアア!!!」
崩壊していく空間の亀裂。
そこで一つの決着がつこうとしていた。
――光り輝く金と銀の光を一点に収束し、相手を打ち破ろうとする赤と青の戦士――"
――星を食らい、己の快楽のままに世界を滅ぼそうとする災害――"
ただの人であった戦兎と、星すら食らうまさに災害のエボルト。
簡単には覆すことができない圧倒的な力の差が、戦兎を苦しめていた。
――しかし、戦兎は1人ではなかった。
心火を燃やし、愛に生きた戦士――"
大義のために、自身の命を投げ打ってでも戦った戦士――"
そして、戦兎にとって最高の相棒――"
彼らの力、助けのおかげで、その差はゼロになった。
だからこそ、後は"心"という不安定な力による鍔迫り合い。
だが、その力による勝負になった時点で戦兎の勝ちは決まった。
「この俺が滅びるだと!? そんなことがあってたまるか!! 人間共がァァァァァァァァァッ!!!」
たった一人で自分の快楽で世界を滅ぼそうとするエボルトに対し、戦兎は多くの仲間がいて、彼らから託された願いがあったのだ。
――皆の願いを背負う
渾身の力を持って放たれたライダーキックは、エボルトという存在を打ち砕き、新世界創造の鍵となる。
「くっ……! くっそぉ……!」
世界の融合が進むにつれて足場が崩壊していく。
そんな中でも戦兎は
最後の最後でもお前を助けられるなら、と。
「万丈ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
――そして、新世界は創造された。
……我々は望む、七つの嘆きを。
……我々は覚えている、ジェリコの古則を。
「っ……こ、こは……っ! そうだ! どこだ万じょ……」
頭に響いた謎の言葉で目を覚ました青年――"桐生戦兎"は体を起こす。
おぼろげながらに思い出せたエボルトとの激戦の影響か全身が大きく軋みをあげるも、宿敵に取り込まれていた相棒のことを思い出し、忙しなく周囲を見回す。
だが、戦兎が気絶していた場所は想像の斜め上を行くところだった。
「どこだ……ここ……」
――そこはまるで列車の中だった。
火星で発見され地球に持ち帰られた災厄の箱――"パンドラボックス"によって発生した、日本を分かつ壁――"スカイウォール"の影響もあり、特定の地域で細々と運行されている乗り物が列車。
戦兎自身は自身の発明した"マシンビルダー"のおかげでそこまで乗ることもなかったが、知識としては知っていた。
そんな列車の座席に、戦兎は横になっていたのである。
「なにが……どうなって……って、万丈! どこだ!」
しかし、すぐさま自身の相棒のことを思い出すと周囲を見回した。
だが、列車の中に相棒の姿は見当たらない。
それどころか、列車の外の光景も奇妙だった。
「なんだ……これ……」
窓から覗ける列車の外には、どこまでも続く鏡のような大地が広がっている。
その世界はどこかで見たウユニ塩湖のように幻想的で、現実味がなかった。
"スカイウォール"がない新世界どころか、地球にすらないような別世界で……一瞬、戦兎の頭に嫌な考えがよぎる。
「まさか、失敗した……?」
想定も想像もしていなかった"
「いや、君は成功したんだ。桐生戦兎」
――それを思いもよらぬ人物から否定された。
「葛城……巧……?」
「あぁそうさ。久しぶりだね」
そこに立っていたのは、戦兎が戦兎になる前の自分自身――"
その姿を認識し、なおかつ葛城自身から告げられた言葉で、戦兎はこの場所に関してある程度の仮説が立った。
「お、お前がここにいるってことは、ここは俺の頭の中ってことなのか……?」
――戦兎と巧は一種の二重人格だ。
正確には、消されてしまった「巧」としての人格の後に形成された「戦兎」の人格に、「巧」の記憶がよみがえった結果、二人は一時的な二重人格となっているのだ。
そんな二人が話をすることができるのは思考の中でだけ。
だからこそ、戦兎はその仮定を立てたのである。
しかし、その問いかけに巧は首を横に振って否定した。
「いいや、その仮説は正しいようで正しくない。実のところ『僕』でも説明しづらくてね……」
「じゃ、じゃあなんでお前がいるんだ!? 万丈は!? 新世界はどうなったんだ!?」
「落ち着け。『僕』がここにいるのはその説明をしに来たからだ」
自分達が命を懸けて実行した作戦であり、世界を救える唯一の手段が失敗してしまったのかと取り乱す戦兎。
そんな戦兎をなだめながら、巧は冷静に事情を伝えに来たのだと話す。
「君達は新世界を創造することに成功した。これはまず間違いない。まさか"
「観測……?」
「あぁ、ほとんど事故のようなものだったけどね。そして『僕』は"
「親友? 課題? ……どういうことだ……?」
「君の創造した新世界に、"エボルト"とはまた違う"災厄"が迫っていると言えばわかるかい?」
「!?」
巧の話を聞けば聞くほど疑問が深まっていく戦兎に、巧は決定的な言葉を告げる。
全ての元凶であるエボルトに比類する"災厄"が新世界に迫っていると。
「これに関しては本当にそうとしか説明できない……本当に癪だがね……」
「……だからお前は俺に頼みに来たってわけか……」
「あぁ。君は『僕』ではできなかったことを成し遂げたからね。そうだな……君には一種の"奇跡"を起こす力があると思っている」
「……万丈はどうなってるんだ?」
「彼はすでに新世界にいるよ。生憎のところ、『僕』と彼には接点がなくて引き留めることができなかったんだ。それに関しても謝罪させてもらうよ」
「そうか……はぁ……最っ悪だ……」
葛城の言葉を聞いて、その天才的な頭脳で理解した戦兎は椅子に倒れるように座りこんで大きくため息をつく。
「だけど、結局はやっていくことは変わらないな」
「それが君の言う"愛と平和のために戦うヒーロー"じゃないのかい?」
「あぁそうだ、よっ!」
勢いよく立ち上がった戦兎は、気合を入れるように頬を叩いた。
「さてと、それじゃ行くとするか」
「もういいのかい? かなり無茶苦茶なお願いと思うけど……」
「何言ってんだ? それくらいやって見せなきゃ"仮面ライダー"じゃないでしょ?」
「……そうだね。それじゃ、頑張ってきてくれ」
そうして戦兎は一歩を踏み出したのである。
「ところでここどうやって出るんだ?」
「……そうなるだろうと思ったよ」
「……これでよかったのかい?」
「……君がそう言うならそれでいいさ」
「だけど、彼には本当に申し訳ないことをしてしまったね」
「僕達の事情だけを押し付けてせっかく大仕事を終わらせたばかりの彼をまた働かせる」
「……責任は取らないとね」