トレセン学園の謎〜ウマ娘達が消費する食料は何処から来ているのか?〜   作:筆先文十郎

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劇場版『ウマ娘 新時代の扉』バンドル前売券が本日4月12日発売の後日談です。


とある大学の全ての学生は劇場版ウマ娘を見に行く

 ウマ娘LoveLove会の会長が主導する、大学を完全に包囲し全学生に脅迫して劇場版『ウマ娘 新時代の扉』バンドル前売券を買わせるという作戦は失敗に終わった。

 会長が所属するゼミの教授が決行直前に計画を察知。会長の最推しウマ娘であるハルウララに連絡をつないでもらうと会長に直接『そんなことをする人は嫌い!!』と直接言う奇策に打って出たからだ。

 最推しウマ娘による嫌い発言に、心臓麻痺・呼吸困難など身体に不調を起こした会長は卒倒。計画の要である会長を失ったことで作戦は決行する前に失敗に終わった。

 学生や教員達と刺し違う覚悟でこの日に臨んでいた会員は会長に失望。一週間以内に全学生に前売券を配布しかつ映画館に足を運ぶようにしなければ脱会する意思を会長に伝えた。

 全会員の信頼を失い、いつも会合で使用している空き教室で、会長は壇上の机に(ひじ)をついていた。

「ククク。百万の軍団を指揮する器とも言われた私が、今では誰一人会員(とも)のいない取るに足らない存在になってしまうとは。まぁ、あれほどのことを()いて決行前に卒倒する指揮官に誰が従うかという話ではあるが……」

 自嘲する会長の笑い声が不気味に部屋に木霊(こだま)する。

「学生全員に前売券を配布するだけでなく全員が劇場に足を運ぶように仕向(しむ)ける。それも一週間で。無理! 不可能! ……ククク、本当にバカげた話だ……」

 言葉とは裏腹に、会長はニヤリと笑った。「その程度のことでいいのか?」と言わんばかりの笑みで。

 

 翌日 大学内の人気のないカフェ。

「…………ッ!?」

 人気のないカフェで、さらに柱や観葉植物が邪魔をして周囲から拒絶した席で、整った顔立ちの男子学生がプルプルと震えていた。その手には数枚の写真が握られていた。

 学生は目の前に座りニヤリと笑う男を見る。

「いやぁ……この間、カメラを構えながら公園を歩いていましてねぇ。偶然にも金持(かねもち)先輩が女性と一緒に茂みに入って行くところが見えちゃってんですよねぇ」

「…………」

 金持と呼ばれた男子学生は冷や汗を流す。

「さすがは『愛の伝道師』という異名を持つ金持先輩! 卒業と同時に結婚される名家で大金持ちの貴家(たかいえ)さんだけでなく大学(うち)のミスコンで一位に選ばれた宇津櫛(うつくし)先輩、さらには後輩の河飯(かわいい)さんなど色々な女性の方に愛をプレゼントされるとは! いやぁ、先輩の女性に愛を語り幸福に包ませるその姿勢、見習いたいものです!」

 クククッ、と笑う男に、金持は周囲に人がいないことを確認して重い口を開く。

「──。な、何が目的だ……? 金か? 金なんだな!?」

「いえいえいえ」

 男は傷つかないようにかつ折れ曲がらないようにファスナー付きプラスチック・バッグとファイルに収められたチケットで顔を(あお)ぐ。

「いくら大学《うち》で一、二位を争うお金持ちの金持先輩からお金をせびろうなんて恐れ多いことですよぉ」

「だ、だったら……」

(何が目的なんだ! こいつは!?)

 金持は恐怖と不安で押しつぶされそうになりながら必死に頭を巡らせる。

(こいつは数多くの逸材をウマ娘ファンに引き込み、ウマ娘LoveLove会というファンクラブを立ち上げたほどウマ娘大好きバカ!! だったらこいつの場合欲しいのは金や女だけではなくウマ娘!! だったらウマ娘のどんなことがこいつは喜ぶ!?)

 ふと金持は男が持っていたチケットを見る。

(これだ!!)

 チケットに希望の光を見出した金持は話しかける。

「そうだ! お前はウマ娘が好きだったな!? だったら俺もウマ娘の前売券買ってやる! それでどうだ!?」

「あ、すみません。この写真を色々(・・)な人に見せないといけないので。お時間おかけして申し訳ありませんでした」

「ま、待て!!」

 立ち上がろうとする男の袖を、金持は掴む。

「だ、だったら俺のゼミの奴らに買ってやるそれで十数人分だ! これでどうだ!?」

「……」

「なら俺の友達も入れよう! そうすれば数十人になる! それでどうだ!?」

「……」

 話にならない、とゴミを見るような目で自分を見る男に、男は断腸の思いで言った。

「わかった……じゃあ俺のゼミ、親友、そしてその後輩に前売券を(おご)る……そして見に行くように宣伝する。数百人が見に行く計算になる……それでどうだ……?」

「すみません、金持先輩。自分急用(・・)を思い出したので──」

「わああああああっっっ!! わかった、全員! この大学の全員に前売券を手配する!! それなら文句はないだろう!?」

 その瞬間、男が満面の笑みを浮かべた。

「いやぁ、申し訳ございません金持先輩! 劇場版ウマ娘を皆に見てもらいたいという私の望みを手助けしてくださいまして。愛の伝道師の異名は伊達(だて)ではありませんねぇ!」

 そう言うと男は伝票を握り会計を済ますと店を後にした。

「…………」

 店を出る男の後ろ姿を恨めしそうに見ながら、一人残された金持はスマートファンで自身が預けている預金額を確認する。

「クソッ……たかだかウマ娘(こんなの)のために俺の、俺が今まで貯めた金が……数百万が!」

 その時見知らぬ番号から着信が入る。嫌な予感を感じた金持がとっさに出る。

 

『金持。次ウマ娘を『こんなの』と言ってみろ。さっきの写真、関係各所にバラまくぞ』

 

 決して大きくない、しかしあらゆる臓器を握りつぶすかの恐ろしい男の声に、金持は

「────」

 その場で失禁。気を失った。

 

 一時間後。

「──君。私が、その……アレをしていたなんて何を言うのかね!? それ以上バカなことを言うならば君を名誉棄損で訴えることになるよ……!?」

 とある大学で分かりやすい講義でかつ人柄の良さから受講する学生が一番多い教授、浦有(うらあり)の元に一人の学生が訪れていた。

「いやいや、名誉棄損だなんてそんなぁ。私も浦有教授を尊敬している学生の一人ですよ」

 首を横に振った男は懐からビデオカメラを取り出す。

「私、半年前にフランスに行っていたんですよ。そこで夜中にしか見ることが出来ない夜の蝶(・・・)がいるという噂を聞いて話のネタ(・・・・)にならないかと、出現するという森に足を運んだ訳ですよぉ」

「…………」

「で、そこで見てしまったんですよぉ。異文化交流でフランスを訪れていた浦有教授達がフランスのパリジェンヌ達と肉体(からだ)肉体(からだ)を交えたコミュニケーションをする光景を!」

 ビクッ!? と浦有は身体を緊張させる。そんな浦有を尻目に男は語る。

「いやぁ、あれは本当に素晴らしかったです。だからこうして何時でも復習出来るように……あ!」

 男は誤って(・・・)再生ボタンを押す。すると

 

『アァッ! ……オゥッ! ……アァンッ!!』

 

 何か(・・)をした浦有に反応した女性の嬌声(きょうせい)が部屋中に響き渡った。

「うわああああああぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!」

 防音設備を整えた部屋でも漏れてしまうのではと思うほどの声を上げながら停止ボタンを押す浦有。

「ハァッ、ハァッ、ハァッ…………」

 大量の冷や汗を流し、()つん()いで肩で息をする浦有に男は話しかける。

「浦有教授。実は私、劇場版ウマ娘を楽しみにしてましてねぇ。アニメ版ウマ娘は多くの人の心を震わせた。それをなぜウマ娘が多くの人の心を震わせるのかを客観的に分析させるというレポートを必修の単位に加えればより多くの学生の成長につながると思うのですが……教授はどう思われます?」

 どう思われます? という優しい言葉遣いに反し、否とは言わせない威圧感に浦有は呟いた。

「……あ、あぁ。その通りだ……。他の教授(・・・・)にも学生達に見に行くように伝えておく…………」

「そうですか、そうですか! ……では浦有教授、貴重なお時間を()いて頂きありがとうございました」

 悠々(ゆうゆう)と部屋を後にする男に、浦有は一人悔しさと恐怖でその場に伏して子どものように泣いた。

 

 

 

 後日。劇場版『ウマ娘 新時代の扉』の前売券が全学生に配布され、かつ全学生が何らかの形で劇場版の感想を真面目に書かなければ単位をもらえない事態になった。

 それによりウマ娘LoveLove会の会長は再び信頼を取り戻し、会長としてその手腕を振るうのであった。




ちょっとだけこの場をお借りしてお願いします。

サイレンススズカが気持ちよく走れそうな日本各地の名所は?
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=312242&uid=208178

日本各地のウマ娘ファンの皆様の知恵を拝借できれば幸いです。
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