トレセン学園の謎〜ウマ娘達が消費する食料は何処から来ているのか?〜   作:筆先文十郎

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この話はお笑いコンビ、ライスの凶器が元ネタになっております。

YouTubeで先にご覧になった方がより楽しめるかもしれません。


博士はとある物で脅されるようです(ハルウララ誕生日回)

 某研究所。

 多くの研究員が帰宅し静まり返った夜の研究室で、一人の博士が狭い部屋にこもり、研究に没頭していた。

「ふふっ……これが完成すれば日本は大きく発展するぞ!」

 研究に夢中な博士は気づかなかった。

 部外者は絶対に入れないはずのセキュリティを突破し、何者かが背後まで迫っていることに。

「ッ!?」

 博士が異変に気づいたのは、背中に何か(……)を押し当てられた瞬間だった。

「動かないでくださいね」

 黒いフードを深くかぶった男が、耳元で低くささやく。

「貴様……何者だ? 私がこの研究所の所長とわかっての狼藉か?」

「ええ、もちろんわかっていますよ、博士」

 ねっとりとした声に、博士は眉をひそめる。

「目的は何だ? まさかトイレを借りるために幾重にも張り巡られたセキュリティを突破してきたわけではあるまい?」

「流石は博士。話が早い」

 男は静かに笑った。

「博士が熱心に研究されているデータ……それを私に譲っていただきたい」

「そんなこと出来るわけがないだろう」

 博士は静かに、しかし確実に怒りをにじませる。

「私がこうしている間に、素直に渡した方が利口ですよ?」

「私は暴力には決して屈しない! 時間の無駄だ。早く背中に押しつけたナイフを下ろしたまえ!」

「フッ……ずいぶん楽観的ですね。これはナイフじゃないですよ」

「ほう……拳銃か」

「拳銃じゃないですよ」

「……なめられたものだな。まさかスタンガンごときでこの私を脅そうとは」

「スタンガンじゃないですよ」

 博士の額に汗がにじむ。

「…………私は一体何を突きつけられているんだ!?」

「貴方が知る必要はありません」

「ま、まさか爆弾か!?」

「爆弾……じゃないですよ」

「じゃあ何なんだ!? 私は今どういう状況なんだ!?」

「研究データを譲っていただけますか?」

「やれるものならやってみろ! 私が心血を注いだデータをお前なんかに渡すものか! 例え命を奪われようともな!!」

「安心してください。私が持っているもので命を落とした人は一人もいません」

「いよいよ私は何を突きつけられているんだ!? 死なないのか!? 危険なのか!? どっちなんだ!?」

「ただ一つ言えることは……私は本気だということです」

「逆に怖い! 何かわからないというのが一番怖い! まだナイフとかの凶器の方が良かった!」

「怯えているようですね」

「何なんだ!? 今突きつけているものは一体何なんだ、教えてくれ!」

 男は鼻で笑った。

「まぁ……人生の大半をゲームや漫画、テレビなどに現を抜かすくらいなら、勉強や研究に費やしてきたであろう“頭の固い博士”にはわからないでしょうね」

「ん?」

 博士は助手と息抜きに見た深夜のお笑い番組を思い出す。

 国会議員に不審者が近づき、手にした『凶器』で脅す──まさに今と同じ状況。

 そして、あのオチ。

 博士は確信したように笑った。

「なるほど。その持っているハンガリー発祥の物では私は殺せないな!」

「発祥は日本です」

「日本!? ルービックキューブじゃないのか!?」

 驚く博士に、男は淡々と続けた。

「今私が持っている物は、生涯成績113戦0勝。1勝も挙げずに負け続けたことで逆に人気を呼び、“負け組の星”と呼ばれ、社会現象となり、さらに実在の競走馬を美少女化したゲーム『ウマ娘プリティダービー』にも登場する──作者最推しの競走馬、ハルウララと同年同日に世に送り出されたものです」

「ハルウララの情報量が多すぎて内容が入ってこない!! 何なんだ、教えてくれ!!」

「では研究データを譲ってください」

「わ、わかった!!」

 博士は震える手でパソコンのセキュリティを解除し、研究データをUSBメモリーに移して男へ差し出した。

「さぁ、研究データは渡したぞ! それを教えろ!」

「ご協力、感謝しますよ博士」

 男はゆっくりと背中から“それ”を離し、博士の目の前に差し出した。

 博士は目を見開いた。

「……こ、これは……!」

 博士が見た物。それは1996年2月27日、任天堂から発売されたゲームボーイ用RPGソフト。

 リザードンとフシギバナが描かれた『ポケットモンスター赤・緑』だった。




ハルウララ(実馬)の誕生日。1996年2月27日。

『ポケットモンスター赤・緑』発売日。1996年2月27日。
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