トレセン学園の謎〜ウマ娘達が消費する食料は何処から来ているのか?〜   作:筆先文十郎

17 / 121
中央トレセン学園ドッペルゲンガー事件

 12時30分。中央トレセン学園正門前。

「……でさ、こういう事があってさ!」

「……へぇ、そういう事があったのですわね!」

 ちょうど学園前を通りかかったトウカイテイオーとメジロマックイーンが談笑しながら学園へと帰っていた。その時だった。

「えぇ!? テイオーちゃん、なんで外にいるの!?」

 悲鳴に近い驚愕の声をあげるマヤノトップガンに楽しく談笑していた二人は逆に驚く。

「……ど、どうしたの。マヤノ?」

 混乱するマヤノトップガンに戸惑いつつも、トウカイテイオーは優しく問いかける。

「えっとね……」

 呼吸を整え、マヤノトップガンは話し出す。

「多分30分くらい前だったかな。……マヤ、神妙な面持ちで他の人たちと一緒に理事長室に向かっているのを見ちゃったんだ。その時は『なんか珍しい組み合わせだなぁ~』って思って特に気にしてなかったんだけど。でも時間的に先回りでもしない限りテイオーちゃんと正門前で蜂合わせることなんてないと思ったから。ついビックリしちゃって……」

「……変ですわね」

 話を黙って聞いていたメジロマックイーンが口を開く。

「その時間から私はテイオーと一緒でしたわ。そして私もテイオーも理事長室には行ってませんわ」

「えぇ……そうなの?」

 メジロマックイーンの言葉にマヤノトップガンは顎に人差し指を置きながら首を(かし)げる。

「でもあれは確かにテイオーちゃんだったと思うけどなぁ……もしかして見間違えちゃったのかな?」

 腕を組んでマヤノトップガンは考え込む。

 結論から言えば。マヤノトップガンが見たトウカイテイオーはトウカイテイオーではなかった。そしてマヤノトップガンが言う他の人たち(・・・・・)も。

 

 

 

 25分前の12時05分。理事長室。

 

『この度は私どものせいでシンボリルドルフさん、そして学園の皆様にご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした!』

 

 理事長の秋川やよいにトウカイテイオーのそっくりさん、トウ(ちから)イテイオーと共に他のウマ娘そっくりさんが頭を下げていた。

 先日起きたシンボリルドルフが演じるシンボリルドルフのそっくりさん、通称『シンボリルドル(ふう)事件』は大きな反響を呼んだ。

 シンボリルドルフのおかげでものまね芸バ座が注目され客足が大きく伸びた一方、本人の強い希望があったとはいえ学園の許可なく出演したことに批難が殺到。また学園側にも「学園はそのことを承知でシンボリルドルフの出演を許可したのか?」という連絡が殺到。一時期業務に支障が出るほどだった。

 そのことを重く受け止めたトウ(ちから)イテイオーは、副座長のメジロパックイーンに留守を任せて時間に余裕がある者を連れて謝罪に訪れた。

「……頭を上げてください。トウ(ちから)イテイオーさん」

 やよいは『感謝ッ!』と書かれた扇子を広げる。

「確かに学園(うち)としてはまずは私に一言言ってほしかったという思いはありますし、それがなかったせいで対応に追われて他の者の仕事に支障が出るなどの問題も出ました。事前に言って頂ければあのような混乱は避けられたと思います」

「まさしくおっしゃる通りです!」

 頭を下げたまま、申し訳なさを(にじ)ませ答えるトウ(ちから)イテイオー。

 そんなトウ(ちから)イテイオーの肩にやよいは優しく手を置く。

「しかしものまね芸バ座さんのおかげでウマ娘(私たち)がどれだけ多くの人に愛され、そして支えられているのかというのを改めて知ることが出来ました。そして……「ものまねされるような凄いウマ娘になろう!」、「ものまねする人たちに恥じない走りをしよう!」という強い思いを多くの生徒が持つことになりました。……なのでこちらからもよろしくお願いします!」

 そう言って頭を下げるやよいに、トウ(ちから)イテイオーを始めとする面々は頭を下げながら涙を流していた。

 

 ウマ娘を愛し、彼女たちのように見る人を元気にするような存在になりたい。彼女たちの見る人を元気にさせる姿にあやかりたい。

 

 そう思って面々は自分が似ているウマ娘に真似て、そのウマ娘を演じた。しかしその想いとは裏腹に「ものまね芸バなんて所詮(しょせん)はウマ娘の人気にかこつけて承認欲求を満たしたいコバンザメみたいな存在」、「全く似てないし面白くない」など中傷や批難も少なくなかった。

 

 ウマ娘のものまねをすることは当人たちに迷惑ではないのか? 自分達がやっていることは見る人を元気にするのではなく不愉快にさせているだけではないのか? 

 

 そういった疑念を持ち、ものまねを辞める者も一人や二人ではなかった。不安や恐怖と戦いながら、それでも憧れるウマ娘のように自分達も多くの人を喜ばせたいとものまねを演じてきた。

 多くのウマ娘を預かる立場の中央トレセン学園理事長である秋川やよいの言葉によって、彼女達は安堵した。

 

 自分達が行ってきたことは間違いではなかったのだ。

 

 と。

 その後、理事長室を退出したものまね芸バ座の一人がこんな事を言い出す。

「ねぇ、座長。……ほんの少しでいいから学園をちょこっとぶらついていいかな?」

「いや、駄目にきまっているでしょ! 私達は秋川理事長に謝罪するために中央トレセン学園(ここ)に来たのよ。用が済んだら帰る! 早織(さおり)大東(おおひがし)早織(さおり)、メジロパックイーンの本名)達も待っているんだから!」

 提案したそっくりさんにトウ(ちから)イテイオーはきっぱりと言う。しかし

「でも、座長。こんな機会めったにないわけだし!」、「ほんのちょっとだけだから!」、「お願いしますよ~!」

 懇願する面々にトウ(ちから)イテイオーは少しだけ考える。

「わかった。じゃあ13時には正門前にいること。そしてトレセン学園とウマ娘に迷惑をかけないこと。それを守れるならいいわよ」

 

『やった! 座長、話せばわかる~!』

 

 そう言うと座員達は思い思いに散っていった。

 その後。

 

「もう少しで乳首が見えそうなほど胸を露出させたギム先輩のおっぱいが小さくなってる!?」、「タキオンさんの目がいつものに戻ってる!?」

 

 とタニノギムレットとアグネスタキオンを前にウオッカとダイワスカーレットが驚き、

 

「うわあああぁぁぁっ!? アグネスデジタルちゃんだぁっ!! ぶしゅぅぅぅっっっ!! ──」

「うぎゃあああぁぁぁっ!? 私のドッペルゲンガー!? …………──」

 

 自分を見て大量の鼻血を出して倒れる自分に驚いたアグネスデジタルが恐怖のあまり気絶し、

 

「……お前は、誰だ?」

「誰でもいい。それよりも私と競争して(走って)みないか?」

 

 自分と似た姿に勝負を挑まれたナリタブライアンが自分と似た姿と接戦をする事になった。

 そのような事態になることを、許可を出したトウ(ちから)イテイオーは露にも思っていなかった。




ものまね芸バ座メンバー紹介その2

・タニマギムレット
 タニノギムレットのそっくりさん。
 ヒミツ①胸が大きいのでそれを特色にした名前にしようか、それともタニノギムレット本人に似せるべきか一ヶ月近く悩んだ。
 ヒミツ②本当はもう少し胸の露出を減らしたいが、もし本物のタニノギムレットならこうするだろうと限界まで露出させている。

・アグネス滝音(たきおん)
 アグネスタキオンのそっくりさん。
 ヒミツ①滝音はタキオンと寝る時によくかけている滝の音から。
 ヒミツ②瞳は普通で誤魔化すためにショーに出る時はサングラスをかけている。

・アグネスアナログ
 アグネスデジタルのそっくりさん。
 ヒミツ①アグネスデジタルに負けないくらいのウマ娘ファン。
 ヒミツ②自身のパソコンにウマ娘の妄想小説を書きためている。

・ナリタブラリオン
 ナリタブライアンのそっくりさん。
 ヒミツ①とある大企業と二足の草鞋を履いている。
 ヒミツ②ウマ娘トレーナー育成学校出身者でウマ娘と拮抗できるほどの実力を持っている。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。