トレセン学園の謎〜ウマ娘達が消費する食料は何処から来ているのか?〜 作:筆先文十郎
②ジャングルポケットとウイニングチケット。最後の『ケット』つながりでこの話を思いつきました。
③キャラが崩壊しています、特にビワハヤヒデ。
④実馬ウイニングチケットの命日なのでそれをお悔みする意味で書きました。天国で三頭が仲良く走っていれば……と。
それでも良ければ読んで頂けると幸いです。
刑務所。
ガツガツガツッ
地面を掘る音にナリタタイシンに
「……ちょっと、うるさくて眠れないんだけど! さっきからアンタ何やってんの?」
ウイニングチケットはお手製の小さなスコップを止めて振り返る。
「決まってるじゃん……囚人が夜な夜なする事って言ったら……脱獄だよ」
「ッ!?」
脱獄。その言葉にナリタタイシンは目を大きく見開く。
「……いや、アンタ……何を言ってんの……私たち明日出所だよ!?」
「そんなの関係ないよ!」
「いや、関係あるでしょ! 明日まで待てば──」
「大きな声を出しちゃダメだよ!! 看守さんに見つかっちゃうよ!!」
「アンタの方が声でかいよ! ……落ち着きなよ」
興奮するウイニングチケットをナリタタイシンはなだめる。
「ちょっと待って……私たち明日出所するんだよ。何のために脱獄する必要があるのよ?」
ウイニングチケットはスコップに力を込めて大きいな音が出ないように掘りながら答える。
「出所する前日にあとは決行するだけって所まで穴を掘り進めることが出来たんだ……だから私はここから出ていく! ……それだけだよ」
「いや、話聞いてもわからないから! 明日待てば出所出来るんだから……って」
コツコツコツッ
近づいてくる硬い靴音にナリタタイシンは声のトーンを下げる。
「ヤバい……看守が来た……」
コツコツコツッ
足音はナリタタイシンとウイニングチケットがいる牢屋の前で止まった。
「おい、お前たち。こんな夜中に何を騒いでいる?」
ふわふわの長い髪と眼鏡が特徴な看守ウマ娘、ビワハヤヒデが牢屋をジッと見る。
「あ、すみません。ちょっと寝付けなくて……すぐに寝ますので、すみません」
ビワハヤヒデに申し訳なさそうにペコリと頭を下げたナリタタイシンは横になって布団をかける。
「……」
その様子にウイニングチケットはビワハヤヒデをしっかりと見て立ち上がる。
「看守さん……私は今から脱獄しようと考えている!!」
「何で言っちゃうの!? バカでしょ、アンタ!?」
ウイニングチケットの予想外の発言にナリタタイシンは飛び起きる。
「脱獄だと……お前たちは明日出所だろう!? 明日まで待てばここから出られるというのに……お前は……一体、何を考えているんだ?」
看守の自分に対して堂々と脱獄するというウイニングチケットに怒りを通り越し、哀れみの視線でビワハヤヒデは尋ねる。そんなビワハヤヒデにウイニングチケットは真剣な顔で答える。
「私は脱獄するためにわざと捕まったんだ! 渋谷のスクランブル交差点を全裸で歩いてね!!」
「そんな事で捕まっていたの、アンタ!?」
まさかの事実にナリタタイシンは我を忘れて突っ込む。
「……」
ウイニングチケットの言葉を黙って聞いていたビワハヤヒデは再び尋ねる。
「ウイニングチケット……何がお前をそうさせる?」
「……」
一瞬遠くを見つめた後、ウイニングチケットは言った。
「プリズン……ブレイク!」
「動機が海外ドラマ!?」
予想を大きく下回る犯行動機にナリタタイシンは頭を抱えてその場にしゃがみ込む。
「……プリズンブレイクか。わかるぞ」
「看守?」
真面目と思われたビワハヤヒデのまさかの発言にナリタタイシンは思わず呟く。
「実は私もプリズンブレイクを見て『脱獄されてみたい』……そう思っていた」
「え? ……ちょ、ちょっと。何を言って……」
「だから毎週水曜日は鍵を施錠せずにガムテープで止めていた……」
「看守失格だよ、アンタ!!」
ビワハヤヒデのまさかの爆弾発言にナリタタイシンは全力で突っ込まずにはいられなかった。
「でももうその必要はなくなった……では帰ってコーヒーでも飲むとしよう」
ビワハヤヒデは牢屋に背を向ける。
「本日の見回り……異常なし」
「ありまくりだわ!!」
突っ込みを入れるナリタタイシンに対してウイニングチケットは目頭を押さえる。
「まだ……いたんですね。貴女のような人が……まだ日本に」
「いや、コイツだけだから! こんな頭がおかしいのは!!」
ウイニングチケットは穴を完全に貫通させて牢屋に背を向けるビワハヤヒデに振り返る。
「ありがとうございます、看守さん。この御恩は一生忘れません。……私、また戻ってきます…………桜が、咲く頃に!」
「いや、アンタまた捕まるだけじゃないのよ!!」
ナリタタイシンの突っ込みが牢屋と通路に木霊した。
ウイニングチケットのあの黒光りする馬体……好きでした。タイキシャトルやゼンノロブロイ、ナイスネイチャ、カワカミプリンセス、シンコウウインディ……馬は人より短命とはいえなぜこう死ぬのが早いのか。
命というのは誕生した以上いずれ終わる時は来る。それは理解してますが……やはり悲しいです。