トレセン学園の謎〜ウマ娘達が消費する食料は何処から来ているのか?〜   作:筆先文十郎

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今日はサクラチヨノオーの誕生日なので。


サクラチヨノオーは相撲トレーニングをするようです

 中央トレセン学園。中庭のベンチ。

「……チヨトレ、やらないか?」

「ッ!?」

 担当するウマ娘の話題や私生活など話をしていたヒシアケボノのトレーナー(以下ボノトレ)の突然の発言に、サクラチヨノオーのトレーナー(以下チヨトレ)はベンチから滑り落ち、腰を抜かしながら後ずさる。

「……すまん。言葉足らずだった」

 青ざめるチヨトレに額に手を乗せてため息をついたボノトレは再びベンチに座るように促す。

「改めて言い直す。チヨトレ、相撲トレーニングをやらないか?」

「相撲? 俺とお前で?」

「バカ! 俺とお前がやってどうするんだ!? うちのヒシアケボノのお前のサクラチヨノオーとだよ」

「……ヒシアケボノとサクラチヨノオーを?」

 つい先ほどまで想像していた最悪の予想が回避されたことに安堵しつつ、チヨトレは聞き返す。

「いつも同じトレーニングばかりだとマンネリになるからな。それに相撲は全身を使うスポーツだ。俺から見て今のサクラチヨノオーは明らかにパワーが足りていない。お互いメリットはあると思うが……どうだ?」

「……ふむ」

 チヨトレは腕を組んで考え込む。

(確かに今のサクラチヨノオーはパワーが足りない。この間のレースだって逃げを得意とするウマ娘に追いつけるスピードとスタミナを持ちながら間にいたウマ娘を交わすことが出来ず勝てなかった。どんな壁も破壊するようなパワーを持っていたら……あのレース以外のレースも勝ちを拾えたはず。そしてサクラチヨノオーは相撲が好き……稽古の相手はヒシアケボノ。これは大金を払わなければ出来ないシチュエーション……乗らない手はないか)

「わかった。ヒシアケボノとのトレーニングならむしろこちらからお願いしたいところだ。よろしく頼む」

「ありがとう、チヨトレ」

 そうしてチヨトレはサクラチヨノオーにヒシアケボノとの相撲トレーニングを提案し、サクラチヨノオーも二つ返事で了承。翌日、ヒシアケボノとの合同相撲トレーニングが始まった。

 

 相撲トレーニング後。

「ぐすん……ぐすん…………トレーナーさん、私……悔しいです!」

 体操服姿にまわしをつけた砂だらけのサクラチヨノオーは泣いていた。ヒシアケボノとの取組で真正面からぶつかったサクラチヨノオーだったが、ヒシアケボノの圧倒的なパワーの前に押し出すことも投げることも出来ず何度も土俵の外へとはじき出された。

 サクラチヨノオーは持てる全ての力を出してヒシアケボノにぶつかった。しかし彼女には一切通用しなかった。

 その結果にサクラチヨノオーは泣いていた。

「…………」

 泣き続けるサクラチヨノオーを、チヨトレは何も言わず見守った。そしてサクラチヨノオーは涙をぬぐう。

「……ごめんなさい、トレーナーさん。せっかくアケボノさんと相撲をする機会をくれたのに無様な姿を見せてしまって……でも、私。次は負けません! アケボノさんに負けないくらい、強くて大きいウマ娘になってみせます!」

「よし、その意気だ!」

 涙を流しきり、次は勝てるように強くなることを誓う担当ウマ娘に、チヨトレは「最後まで付き合うぞ」と首を縦に振った。

 それからサクラチヨノオーの生活は変わった。

 朝は頭の上まで足を上げるほどの四股(しこ)を何百と踏み、四股を踏み……足をすりながら大木が揺れるほどの突っ張りを何度も繰り返す。

 トレーニングが終わればバランスの取れた大鍋のちゃんこを食べた後に登校。勉学に勤しんだ後に普段のトレーニングと並行して相撲のトレーニングを行った。

 そして1ヶ月後。

 

「うおおおぉぉぉりゃあああぁぁぁっっっ!!」

「うわあああぁぁぁっっっ!?」

 真正面からがっつりと組んだヒシアケボノをサクラチヨノオーが土俵の外へ投げ飛ばした。

「イタタ……」

 ヒシアケボノは起き上がると体についた砂を払い「強くなったね!」と全力を出せた喜びを全面にサクラチヨノオーと握手をする。

「トレーナーさん。私、アケボノさんに勝てました……! 私、強くなれましたよね?」

 1ヶ月前は勝てる気配すらなかったヒシアケボノに勝てたことが未だに信じられず、サクラチヨノオーは尋ねる。

「あぁ……強く、大きくなったな……」

 チヨトレは乾いた声でサクラチヨノオーの肉体を見る。

 自分の胴回りはある腕。大きく盛り上がった僧帽筋。ボーリング玉が埋め込まれたかのような三角筋。分厚く広い広背筋と大円筋。背骨に沿って二本のバズーカ砲を背負ったかのように盛り上がる脊柱起立筋群(せきちゅうきりつきんぐん)

 下半身に目を向ければ巨木のように太く堅い太腿四頭筋が腕や背中の上半身に負けない存在感を放つ。

 ヒシアケボノとの対戦に、力がみなぎった体中の筋肉は燃えるような熱さをたぎらせ、湯気がもうもうと立ち上がっていた。

 

 小さな活火山。

 

 それが今のチヨトレが思うサクラチヨノオーの印象だった。

「トレーナーさんのおかげです。……本当に、本当に……ありがとうございました!」

 そう言ってサクラチヨノオーはチヨトレに飛び込むと、力一杯抱きしめた。

 

 

 ボギィッ!!!!

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